3. 一筋の、希望
夢を、見ていた。
まだ見ぬ、未来の夢。
すぐに気付いた。
これはわたしの符号、『未知夢』だ。
数年前から見る事はなかったから、
失われたのだとばかり思っていた。
まだ見ぬ、未来の夢。
すぐに気付いた。
これはわたしの符号、『未知夢』だ。
数年前から見る事はなかったから、
失われたのだとばかり思っていた。
夢の中のわたしは、笑っていた。
こんな絶望しかない世界で、どうして笑えるのだろう?
世界に絶望して、諦めて笑っている様子ではなかった。
明らかに、希望を持っている。
その姿を見るだけで、今のわたしもほんの少しだけ、
気持ちが明るくなる。
起きるかどうかさえ分からない未来だけど、
まだ何もかも終わったわけじゃ、ないんだ。
こんな絶望しかない世界で、どうして笑えるのだろう?
世界に絶望して、諦めて笑っている様子ではなかった。
明らかに、希望を持っている。
その姿を見るだけで、今のわたしもほんの少しだけ、
気持ちが明るくなる。
起きるかどうかさえ分からない未来だけど、
まだ何もかも終わったわけじゃ、ないんだ。
そこにはライジングちゃんもいた。
『暁天』を使っているみたいだ。
それにしても、ここはどこなんだろう?
広々とした空き地に、何やら低い建物が並んでいる。
その中には…………動物?
たくさんいる。
これ、まるで牧場みたい。
わたし達が、願ってやまないもの。
牧場やもっと広い農地があれば、安定的に
食料を確保できるはずだから。
『暁天』を使っているみたいだ。
それにしても、ここはどこなんだろう?
広々とした空き地に、何やら低い建物が並んでいる。
その中には…………動物?
たくさんいる。
これ、まるで牧場みたい。
わたし達が、願ってやまないもの。
牧場やもっと広い農地があれば、安定的に
食料を確保できるはずだから。
未来のわたし達は、どうやってか牧場に辿り着いたのだろうか?でも一体誰が手入れをしているのだろう?もう人類はほとんど残っていないはずで……。
いや。
もしかして。
わたし達が、牧場を作った?
自分たちが生きるために?
いやいや、そんな簡単にできるはずがない。
人智を超えた力でもないと、
イチから牧場を作るだなんて────。
もしかして。
わたし達が、牧場を作った?
自分たちが生きるために?
いやいや、そんな簡単にできるはずがない。
人智を超えた力でもないと、
イチから牧場を作るだなんて────。
「ああああああああああっ!!!!」
「うぉっビックリしたぁ!!」
ガバッ!!と起き上がる。
隣にいた朝河ちゃんがビクーッと飛びのく。
「あっ、ご、ごめんっ!
って、朝河ちゃん、わたしの事見ててくれたの?」
「あはは、ただ横で座ってただけだよ。
はもはもちゃん、最近無理しがちだからね。
もっとゆっくり寝てていいんだよ?」
朝河ちゃんが手に持っている黄色の液体が入ったグラスの事はスルーして、立ち上がる。
「ううん、大丈夫。今は本当に、寝てる場合じゃないの!すごい事思いついたかも……いや、未来のわたしに、教えてもらったかも知れない!!」
「へ?」
「うぉっビックリしたぁ!!」
ガバッ!!と起き上がる。
隣にいた朝河ちゃんがビクーッと飛びのく。
「あっ、ご、ごめんっ!
って、朝河ちゃん、わたしの事見ててくれたの?」
「あはは、ただ横で座ってただけだよ。
はもはもちゃん、最近無理しがちだからね。
もっとゆっくり寝てていいんだよ?」
朝河ちゃんが手に持っている黄色の液体が入ったグラスの事はスルーして、立ち上がる。
「ううん、大丈夫。今は本当に、寝てる場合じゃないの!すごい事思いついたかも……いや、未来のわたしに、教えてもらったかも知れない!!」
「へ?」
いける。
普通なら難しい事でも、
わたし達ならできる!
符号を使えば、絶対に……!
でもそのためには、入念な準備が必要だ。
まずは、確認しなくちゃいけない事がある!
普通なら難しい事でも、
わたし達ならできる!
符号を使えば、絶対に……!
でもそのためには、入念な準備が必要だ。
まずは、確認しなくちゃいけない事がある!
「え?私の結界の面積を、もう少し広げて欲しい?可能だけど……どうして急にそんな事を?」
「ええと……ちょっと思いついた事があるんです!もしかしたら、食料問題を解決できるかも……!」
「うーん……広げるのは良いけど、具体的にはどれくらい?あんまり広いと、少しエネルギーを消耗する可能性があるの」
「この地図で言うと、ここの裏山の一部くらいまでなんですけど……」
「ええと……ちょっと思いついた事があるんです!もしかしたら、食料問題を解決できるかも……!」
「うーん……広げるのは良いけど、具体的にはどれくらい?あんまり広いと、少しエネルギーを消耗する可能性があるの」
「この地図で言うと、ここの裏山の一部くらいまでなんですけど……」
「わたしの、女児符号……?も、もうここ数年使ってないよ?そもそもまだ使えるのかどうかも分からなくて……」
「お願い!力を使えるかどうか、試してみて欲しいの。この作戦には猫丸ちゃんの力が不可欠だから、ね?」
「わ、わたしが……不可欠!?はもはもちゃんが、わたしを必要としてくれてるっ!?」
「え、な、なんでそこでそんなに驚くの……?わたしはいつだって猫丸ちゃんがいなきゃダメって思ってるよ?」
「!!!!! わたし……頑張る!絶対絶対、成功させるねっ!!」
「う、うん……ありがとう(助かるけど、なんで急にやる気になってくれたんだろう?)」
「お願い!力を使えるかどうか、試してみて欲しいの。この作戦には猫丸ちゃんの力が不可欠だから、ね?」
「わ、わたしが……不可欠!?はもはもちゃんが、わたしを必要としてくれてるっ!?」
「え、な、なんでそこでそんなに驚くの……?わたしはいつだって猫丸ちゃんがいなきゃダメって思ってるよ?」
「!!!!! わたし……頑張る!絶対絶対、成功させるねっ!!」
「う、うん……ありがとう(助かるけど、なんで急にやる気になってくれたんだろう?)」
「暁天の持続時間?うーん、あんまり考えた事ないけど、どうして?」
「少し試してみたい事があってさ、ライジングちゃんの体力に影響が出ない程度の放出量なら、どれくらいの時間使えるのかなって」
「うーん……加速符号に進化してからは前みたいに不調が出る事はなくなったけど、ずっと連続で使う事って、考えてみたらあんまりないねー。じゃあ今度試してみるね」
「うん、お願い!後は……」
「少し試してみたい事があってさ、ライジングちゃんの体力に影響が出ない程度の放出量なら、どれくらいの時間使えるのかなって」
「うーん……加速符号に進化してからは前みたいに不調が出る事はなくなったけど、ずっと連続で使う事って、考えてみたらあんまりないねー。じゃあ今度試してみるね」
「うん、お願い!後は……」
「ン、アチキに用?なんでェ、はも蔵が珍しいじゃねェか。そこに座んな、話なら聞くぜ」
少し変わった話し方をするこの子は、
清水 御滴(きよみず みだれ)。
普段はそこまで交流のある子ではないけど、今回の作戦には、この子の持つ力が必要不可欠なのだ。
「……ふぅん、なるほどナ。アチキの符号を使って……。面白ェじゃねぇか!皆で共同作戦ってわけだ。はも蔵、オメェなかなか斬新な発想してんなァ!イヤァ前からもっと話しときゃァ良かったぜ」
御滴さんはからからと笑い、ばしばしと背中を叩いてくる。
こういう激しいノリはあんまり得意じゃないんだけど……協力してくれるなら何よりだ。
これで、もしかしたら希望が見えてくるかも知れない!
少し変わった話し方をするこの子は、
清水 御滴(きよみず みだれ)。
普段はそこまで交流のある子ではないけど、今回の作戦には、この子の持つ力が必要不可欠なのだ。
「……ふぅん、なるほどナ。アチキの符号を使って……。面白ェじゃねぇか!皆で共同作戦ってわけだ。はも蔵、オメェなかなか斬新な発想してんなァ!イヤァ前からもっと話しときゃァ良かったぜ」
御滴さんはからからと笑い、ばしばしと背中を叩いてくる。
こういう激しいノリはあんまり得意じゃないんだけど……協力してくれるなら何よりだ。
これで、もしかしたら希望が見えてくるかも知れない!
……………………
………………………………
…………………………………………
ズズーン……。
学園から程近い、裏山の森の中。
久しぶりの外だけど、神楽坂さんが結界を広げてくれたおかげで機人や熊などを警戒する事なく作業に当たれるのはありがたい。
まずは邪魔な大きな木を切り倒し、雑草を取り除いて土地を確保する。
この作業は純粋なパワー系の能力を持つ子にお願いをした。みっちゃんやアもちゃん、他にもたくさんの子たちが手伝ってくれたおかげで、そこまで時間もかからずに進める事ができた。
学園から程近い、裏山の森の中。
久しぶりの外だけど、神楽坂さんが結界を広げてくれたおかげで機人や熊などを警戒する事なく作業に当たれるのはありがたい。
まずは邪魔な大きな木を切り倒し、雑草を取り除いて土地を確保する。
この作業は純粋なパワー系の能力を持つ子にお願いをした。みっちゃんやアもちゃん、他にもたくさんの子たちが手伝ってくれたおかげで、そこまで時間もかからずに進める事ができた。
次は猫丸ちゃんの出番だ。
猫丸ちゃんの女児符号は、「無意識に想像した物を形にする」というもの。「これを作ってくれ」と頼まれてポンと出せるものではないので大丈夫かな、と思っていたけど……猫丸ちゃんは数日前からわたしがお願いした「あるもの」の事だけを考えながら過ごしてくれているようだ。思った以上に頑張ってくれているようで、負担をかけてしまっているのが少し心苦しいけど……これが成功すれば、わたし達の未来は大きく開ける。
どうか、どうか成功して……!
「『純真の創造』(イノセント・クリエイター)ッ……!!」
猫丸ちゃんの女児符号は、「無意識に想像した物を形にする」というもの。「これを作ってくれ」と頼まれてポンと出せるものではないので大丈夫かな、と思っていたけど……猫丸ちゃんは数日前からわたしがお願いした「あるもの」の事だけを考えながら過ごしてくれているようだ。思った以上に頑張ってくれているようで、負担をかけてしまっているのが少し心苦しいけど……これが成功すれば、わたし達の未来は大きく開ける。
どうか、どうか成功して……!
「『純真の創造』(イノセント・クリエイター)ッ……!!」
ズッ…………!
ズズズ…………!!
さっき整備したばかりの土地に、空間の裂け目が出現した。
これは、もしかして……!
「出てきて…………『牧場』!!」
ズズズ…………!!
さっき整備したばかりの土地に、空間の裂け目が出現した。
これは、もしかして……!
「出てきて…………『牧場』!!」
ズド───ン!!!!
わたしが猫丸ちゃんにお願いしていたのは、
「牧場の概念」を召喚すること。
飼っている動物だけでなく、専用の施設が必要で、これを揃えるのは現実的にわたし達では不可能だ。だけど猫丸ちゃんに「牧場そのもの」を召喚してもらえば、それらは全て揃った状態になる。かなり強引な発想だったけど、なんとかなった……の……?
「牧場の概念」を召喚すること。
飼っている動物だけでなく、専用の施設が必要で、これを揃えるのは現実的にわたし達では不可能だ。だけど猫丸ちゃんに「牧場そのもの」を召喚してもらえば、それらは全て揃った状態になる。かなり強引な発想だったけど、なんとかなった……の……?
「はぁっ、はぁっ、はぁ……!
きょ、教科書の牧場のページをず───っと見続けてた甲斐が、あったかな……!」
「猫丸ちゃんっ!!すごいよ、本物の牧場ができた!!」
「や、やったんだね……わたし……!」
「うんっ!これで、第1関門はクリアだよ!」
きょ、教科書の牧場のページをず───っと見続けてた甲斐が、あったかな……!」
「猫丸ちゃんっ!!すごいよ、本物の牧場ができた!!」
「や、やったんだね……わたし……!」
「うんっ!これで、第1関門はクリアだよ!」
そう。まだ終わりではない。
牧場そのものが出来ても、牛たちは放っておけば死んでしまうし、そうでなくても牧場の運営は大変だ。牛が食べる牧草、それを育てる時間、他にも様々なものが必要になる。
まずは牧草を育てるところからだ。
「ライジングちゃん、御滴さん!よろしくっ!」
「任せて!」「任せなァ!」
牧場そのものが出来ても、牛たちは放っておけば死んでしまうし、そうでなくても牧場の運営は大変だ。牛が食べる牧草、それを育てる時間、他にも様々なものが必要になる。
まずは牧草を育てるところからだ。
「ライジングちゃん、御滴さん!よろしくっ!」
「任せて!」「任せなァ!」
2人に頼んだのは、超速での牧草育成。
草が自然に生えるのを待っていては、牛たちが飢え死にしてしまう。だから次から次に草を用意し、牛たちの餌を確保するのだ。
「『暁天』ッ!!」「『時の螺子を一巻き』(タイム・リミテッド・ルーラー)』!!」
日差しと、時間。そして水があれば牧草は育つ。
「次はわたしの出番だねー、雨よ、降れっ!」
ザアアアアァ…………。
五月ちゃんのおかげで、水も十分に用意できた。これなら、いけるはず……!
草が自然に生えるのを待っていては、牛たちが飢え死にしてしまう。だから次から次に草を用意し、牛たちの餌を確保するのだ。
「『暁天』ッ!!」「『時の螺子を一巻き』(タイム・リミテッド・ルーラー)』!!」
日差しと、時間。そして水があれば牧草は育つ。
「次はわたしの出番だねー、雨よ、降れっ!」
ザアアアアァ…………。
五月ちゃんのおかげで、水も十分に用意できた。これなら、いけるはず……!
……………………
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「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
みんなの力を合わせた一大作戦から一夜明けた、朝。猫丸ちゃんが召喚した牧場の中には、牧草がびっしりと生えていた。
ライジングちゃんと五月ちゃん、そして御滴ちゃんが一晩中時間を早めて草を育ててくれたおかげだ。
わたしは指示を出すだけで何もできなかったけど、せめてもの協力をしようと飲み物を準備したりみんなのご飯を用意したりしていたら意外にヘトヘトになってしまった。
みんなの力を合わせた一大作戦から一夜明けた、朝。猫丸ちゃんが召喚した牧場の中には、牧草がびっしりと生えていた。
ライジングちゃんと五月ちゃん、そして御滴ちゃんが一晩中時間を早めて草を育ててくれたおかげだ。
わたしは指示を出すだけで何もできなかったけど、せめてもの協力をしようと飲み物を準備したりみんなのご飯を用意したりしていたら意外にヘトヘトになってしまった。
「みんな、ありがとう……!これでわたし達、きっと助かるよ……!」
「うんっ……!そうだね……まだ土地は余ってるし、校舎内に作ったやつより大きな畑も作れるんじゃないかな!?」
「それだ!それも今日やっちゃおうよ!
そうすればもっともっとたくさん、みんなのご飯が用意できるよ!」
「それならアチキも手伝うぜ。はも蔵、ライ蔵、猫蔵、みんな改めて、よろしくナ!」
「うんっ……!そうだね……まだ土地は余ってるし、校舎内に作ったやつより大きな畑も作れるんじゃないかな!?」
「それだ!それも今日やっちゃおうよ!
そうすればもっともっとたくさん、みんなのご飯が用意できるよ!」
「それならアチキも手伝うぜ。はも蔵、ライ蔵、猫蔵、みんな改めて、よろしくナ!」
未知夢の中で見た、みんなの笑顔。
こんなにも早く実現するなんて!
まだこの世界には希望が残されている。
わたし達はまだ、終わりじゃない……!
こんなにも早く実現するなんて!
まだこの世界には希望が残されている。
わたし達はまだ、終わりじゃない……!