概要
単独音は1つのノートに1音の歌詞が対応した音源方式です。「あ」「か」「さ」「た」「な」を録り、「あ」「か」「さ」「た」「な」のノートでそのまま「あ」「か」「さ」「た」「な」の音が鳴ります。
作る側も歌わせる側もシンプルで、初めての音源制作やお試し、難易度の高い声の音源制作への採用など、今でも多く使われ愛されている方式です。
単独音の原音設定は多くのセオリーがあり、高い完成度を出すためには全てのパラメータの理解が必要です。
原音設定の理解が進めば単独音に限らずより自由自在に音源を制作できる事でしょう。
※自動で設定してもらう手もある
外部リンク
当ページ内の解説で分からなくても、他の解説で理解できる事もあります。
原音設定解説
単独音は発音毎に注視する点が異なるパラメータがあります。各パラメータの詳細な動きは
原音設定の基礎理論で解説。
以下の見出しから見たい解説を[+]ボタンを押して展開してください。
母音(あ、い、う、え、お、ん)
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エイリアス/エントリ
歌詞の事です。「あ」の音なら「あ」、「ん」の音なら「ん」と書きます。
バリエーションを増やす
母音ノートは特に使用頻度が高く大事な音となるため、歌い始め用の母音や、母音から母音へと繋げる用、発声終わりの母音の音と、3種類ほどバリエーションを用意している音源が多いです。
(中には母音だけは 連続音を収録するという音源も!)
「あ」「あ2」「あ3」でも良いですが、なるべくは発音や設定に合わせて事実上の標準とされる Prefix/Suffixの命名規則にならうと取り回しが良くなります(下記参照)
Prefix/Suffix(プレフィックス/サフィックス)
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IT用語ですがUTAUでも使われています。日本語では接頭辞/接尾辞といい、歌詞の頭と後ろに付ける符号となります。
UTAUでは主にエイリアスの音色や音階による差分を表記したものにこの用語が用いられます。
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Prefix/Suffix、どちらに何を付けるべきか?
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好きなように設定できますが、サフィックス側に付ける事が多いです。
連続音や下記で登場する「- あ」や「* あ」などと言った、前の音に関連付けた記号も全てプレフィックスに当たり、これらを含めた 連続音の歌詞が影響してプレフィックス部分はややこしくなったので、表情や音階の差分などの記号はサフィックス部分に表記することが多くなりました。
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母音で主に使われるプレフィックス
「あ」を例にしています
- 「- あ」 歌い始めの部分で主に使います
- 「* あ」 歌の途中で使います。母音を滑らかに繋げる用で、先行発声やオーバーラップの値が大きい傾向にあります
- 「・ あ」 母音を区切って発音する際に使われます。UTAUでは一般的に「喉切音」と呼ばれていますが、音声学では「声門閉鎖音」にあたるようです。
サフィックス※大抵は連続音に倣い、母音はローマ字表記になります(「あ」→「a」)
- 「あ2」「あ3」 単純にテイク2とテイク3を収録している、微妙に発音の違う「あ」を並べている等
- 「a R」 歌い終わりの部分で主に使います。UTAUでは「R」歌詞が休符なのでこれですが、「a -」表記の音源も一定数あり
- 「a 息」 発声の終わりに息を多めに吐く用で使われます
- 「a ・」 母音を区切って発音させたりアクセントに使われます。UTAUでは「喉切音」と呼ばれています。
サフィックスと言いつつ「R」や「息」を基準とするならば連続音歌詞(プレフィックス)とも言える。ややこしい!
オフセット/左ブランク&右ブランク
オフセット(左ブランク)はその音が始まる部分。「あ」なら「あ」の音が始まる直前を指定します。
右ブランクで音の"終わり始める手前"に設定します。
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例1
例2
どちらかと言えば途中の音として使うのに向く
「* あ」と言った途中の音として使う用のエイリアス/エントリを付けているのであれば、この時点で
- 子音部/固定範囲:50
- 先行発声:40
- オーバーラップ:20
などと設定してしまっても大丈夫です(子音部/固定範囲以外の詳細な数値はお好みで)
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子音部/固定範囲
母音へ続けて安定する位置まで囲います。UTAU上では子音部/固定範囲の終わりから右ブランク開始までの何も設定してない部分の音を引き延ばして歌わせます。
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例1
先頭の「あ」はこう。波形がなだらかでスペクトルは同じ模様が続いてる場所になるまでを指定しよう
例2
途中の音用の「* あ」だとこう。先行発声とオーバーラップよりちょっとだけ大きい数値ならなんでも良い。
既にオフセット/左ブランクの設定で先頭の「あ」の子音部/固定範囲の部分までをカットしているので、安定した母音しか使わないようになっているという訳ですね。
ついでに先行発声やオーバーラップと合わせて全ての母音の設定で同じ数値にしてしまっても良いです。
伸縮範囲
正式名称かは不明ですが、UTAU上で引き延ばされる音の範囲をこう呼びます。
オフセット/左右ブランク、 子音部/固定範囲、そこから 右ブランク。ここまででどの範囲の音を切り出し、その範囲の音を引き延ばして歌わせるかが決まります。
不安定な音だとそのまま不安定な発声のロングトーンになってしまいますので、しっかりと安定した母音で括りましょう。
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先行発声
リズムを決める重要なパラメーターとなります。「あ」なら「あ」の開始地点に設定します。
ただ、先頭の部分が殆ど息だけの音だったり唸るような「溜め」のようなものが存在する場合はスペクトルの方を確認し、母音の発音になり始めた位置を探ってしっかりと設定しましょう。
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歌い始めの音「あ」「・ あ」など
歌の途中の音「* あ」など
「* あ」の先行発声とオーバーラップを0にすると歌い始めの「あ」としても使いまわせます。先頭の音に違和感があるようならオフセット/左ブランクでカットして使っても良いでしょう。
また、「* あ」のような歌の途中で挟む母音ノートは「母音結合」といって、UTAU側の設定でノート毎に先行発声とオーバーラップの値を上書きして使われる事が多いため、例に出した数値も仮置き程度のものでしかありません。あまり深く考える事は無いです。
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オーバーラップ
これは前の音符の音をどれだけ重ねるかの設定です。数値を上げるほど長くクロスフェードをして滑らかに音が繋がりますが、発音によってどれだけ滑らかに音が変わっていくかが違っており難易度が高いです。
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歌い始めの音「あ」「・ あ」など
歌の途中の音「* あ」など
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余談
接続用のエイリアスについて
「* あ」系の音に関しては「* い」や「* ん」などの全てのエイリアス/エントリで
これらを共通の値で統一させると使い回しが効いて調声の助けにもなります。また、オーバーラップの値を先行発声の2倍にするのを推奨していますが、これは違う母音同士を繋げた際のリズム感を調節して「あ」→「い」ノートの並びなら「い」のノートの頭で「い」の音が聞こえだすようにしています。
連続音や他の子音の存在する音ならば母音の開始地点に先行発声を置けば良いだけなのですが、 単独音の場合は発音の遷移が存在しません。そのためにこのような値になってしまう訳です
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さ、な、ま、や、ら、わ行
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←押すと解説が開きます |
エイリアス/エントリ
歌詞の事です。「さ」の音なら「さ」、「ま」の音なら「ま」と書きます。
主に使われるプレフィックス
主に使われるものは先頭の音用のバリエーションだけです。「ら」を例にしています
- 「- ら」 歌い始めの部分で主に使います。使用頻度は低いですが用意しておけば歌い出しの音が綺麗になります。
- 「ら」 プレフィックス無し。歌詞としてはデフォルトの状態なので、一番使用頻度がある歌の途中の音として向くように原音設定をします。
オフセット/左ブランク&右ブランク
オフセット(左ブランク)はその音が始まる部分。「さ」なら子音の「s」、「な」なら子音の「n」の音が始まった直後を指定します。
右ブランクで音の"終わり始める手前"に設定します。
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例1
例2 子音の長さの調節
子音があまりにも長いなど、他の音と子音の長さが食い違ってくると歌った際のリズム感に影響します。さ行、な行、ま行など子音の種類ごとに長さを統一すると良いでしょう。
元から短い場合はどうしようもありませんが、長い場合はオフセット/左ブランクの値で子音長の調節が可能です。大まかな指標として、後述する「先行発声」の値が100を超えてくるとスタッカート気味な「溜め」のある発声になっていきます。
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子音部/固定範囲
子音から母音へ移動した後、母音が安定する位置まで囲います。UTAU上では子音部/固定範囲の終わりから右ブランク開始までの何も設定してない部分の音を引き延ばして歌わせます。
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子音部/固定範囲の例
伸縮範囲
正式名称かは不明ですが、UTAU上で引き延ばされる音の範囲をこう呼びます。
オフセット/左右ブランク、 子音部/固定範囲、そこから 右ブランク。ここまででどの範囲の音を切り出し、その範囲の音を引き延ばして歌わせるかが決まります。
不安定な音だとそのまま不安定な発声のロングトーンになってしまいますので、しっかりと安定した母音で括りましょう。
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先行発声
リズムを決める重要なパラメーターとなります。「ゆ」なら「y」から「う」になる瞬間の地点に設定します。
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どこを見て判断するべきか? |
どこを見て先行発声の位置を判断するべきか?
SetParamの画面で説明しますが、vLabererでも考え方は同じです。
無声子音の場合
「か」「さ」「た」「は」「ぱ」行の音が該当。声帯の振るわせず息だけを使って鳴らしてる音なので「無声」子音と呼ばれています。
これらは 声帯からの声が始まった瞬間に先行発声を置きましょう。
有声子音の場合
「な」「ま」「や」「ら」「わ」「ば」行と、発音によっては 「が」「ざ」「だ」「ば」行も該当します。無声子音と区別してずっと声帯を振るわせて発音しているので「有声」子音と呼ばれています。
これらは 母音の発音になる瞬間に先行発声を置きましょう。…… 結局同じ事しか言ってない
特に波形で判断するのはかなり難しいので、スペクトルの情報を読み取って母音と子音の模様をしっかりと見極めましょう
半母音の場合
「や」「わ」行の音が該当。 「いぇ」「うぉ」等も含まれます。殆ど母音と言えるような発音の音が子音として使われているので「半」母音と呼ばれています。
先行発声の位置は 母音の切り替わる中間地点となります。考え方は母音の原音設定とほとんど同じなのですが、こちらは子音が特に短くなりやすく非常に見えにくいです。
波形で判断するのはかなり難しいですが、スペクトルを確認すると「y」や「w」の音から各々の母音へ移動するスペクトルのピークが見えるはずです。そこを中心に模様が分かれるはずですのでそこを割るように先行発声を設定してください。またこの音以外にも言える事ですが、しっかりと発声タイミングのチェックは行いましょう。
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オーバーラップ
これは前の音符の音をどれだけ重ねるかの設定です。数値を上げるほど長くクロスフェードをして滑らかに音が繋がります。基本的には先行発声の値を超えない範囲で子音をどれだけ前の音と重ね、滑らかに発音が切り替わるようにするかを指定します。
オーバーラップは20前後を基準に設定しよう
「さ」、「な」、「ま」、「ら」行では大体の発音の遷移時間は20ミリ秒前後です。それより低い数値に設定すれば明瞭でハキハキとした発音に、大きい数値にすると柔らかくぼやけた発音になっていきます。
下限はどの発音であっても早くて15ミリ秒程度、上限は先行発声と同じ値くらいまで許容できます。
「や」、「わ」行では30ミリ秒前後が良いでしょう。殆ど母音同士の接続みたいなものなのでクロスフェードの時間が短いほど違和感が出てきやすいです。あまりにも子音部分が短い場合は先行発声の値を超えるのも許容して発音をぼかす方が良いという事もあります。
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画像による実例と比較 |
「さ」の音比較(オーバーラップ値:20)
「ま」の音比較(オーバーラップ値:20)
「わ」の音比較(オーバーラップ値:30)
今回の「わ」の場合は子音が収録者の連続的な発音に比べて明らかに短かく発音されていました。歌い出しの音であればこれで構わないのですが、単独音収録ではこの音で連続的な発音としても使うことになります。
なるべくは子音を長く録り直すべきですが、UTAU上で子音の長さや前の音の音量や発音等を調節して滑らかに歌わせる事も出来なくはないです。音源を作る側と使う側、どちらで支えるのかが選びどころですね。
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破裂音(か、た、ぱ行)
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エイリアス/エントリ
歌詞の事です。「く」の音なら「く」、「つ」の音なら「つ」と書きます。
主に使われるプレフィックス
主に使われるものは先頭の音用のバリエーションだけです。「ぽ」を例にしています
- 「- ぽ」 歌い始めの部分で主に使います。使用頻度は低いですが用意しておけば歌い出しの音が綺麗になります。
- 「ぽ」 プレフィックス無し。歌詞としてはデフォルトの状態なので、一番使用頻度がある歌の途中の音として向くように原音設定をします。とはいえ破裂音に限っては歌いはじめと途中の音で原音設定にこれと言った違いは出ません。
オフセット/左ブランク&右ブランク
オフセット(左ブランク)はその音が始まる部分。「か」なら子音の「k」、「ぴ」なら子音の「p」の音が始まる直前を指定します。後述する先行発声やオーバーラップの兼ね合いで多少は融通が利くため、音が欠けてしまわないように多少は発声直前の余白部分も残して設定するのがおすすめです。
右ブランクで音の"終わり始める手前"に設定します。これはどの音でも同じルールです。
子音部/固定範囲
子音から母音へ移動した後、母音が安定する位置まで囲います。UTAU上では子音部/固定範囲の終わりから右ブランク開始までの何も設定してない部分の音を引き延ばして歌わせます。
これは破裂音に限らずどの音でも同じルールです。
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子音部/固定範囲の例
伸縮範囲
正式名称かは不明ですが、UTAU上で引き延ばされる音の範囲をこう呼びます。
オフセット/左右ブランク、 子音部/固定範囲、そこから 右ブランク。ここまででどの範囲の音を切り出し、その範囲の音を引き延ばして歌わせるかが決まります。
不安定な音だとそのまま不安定な発声のロングトーンになってしまいますので、しっかりと安定した母音で括りましょう。
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先行発声
リズムを決める重要なパラメーターとなります。「ぷ」なら「p」から「う」になる瞬間の地点に設定します。
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先行発声の設定例
子音と母音の模様を見分けよう
破裂音は無声子音と呼ばれる種類で、声帯を震わせずに発音する音です。なので先行発声の位置は声帯を鳴らした開始位置を探すと良いでしょう。
スペクトル上ではまだらに並んだ横線がそうです。一番下にある横線の開始位置が先行発声の位置となります。
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オーバーラップ
これは前の音符の音をどれだけ重ねるかの設定です。数値を上げるほど長くクロスフェードをして滑らかに音が繋がります。基本的には先行発声の値を超えない範囲で子音をどれだけ前の音と重ね、滑らかに発音が切り替わるようにするかを指定します。
オーバーラップで「無音部分」を再現する
破裂音と呼んでいる「か」、「た」、「ぱ」行では、子音を発音するためにおよそ30ミリ秒前後の無音部分が生まれます。
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画像による解説 |
破裂音に存在する「無音」
オーバーラップをマイナスにして無音を作る
本人の発音や歌のテンポにもよりますが、実際に発音してみて30ミリ秒の無音があればオーバーラップ-30に、50ミリ秒ならオーバーラップは-50に設定します。
オーバーラップはマイナスじゃなくても大丈夫?
UTAU上で出力する際に無音が出来れば良いので、オフセット/左ブランクを使って発音前の無音部分を確保すれば必ずしもマイナスにする必要はありません。
とはいえ、原音に入っている音を使うことになるのでノイズが混ざっている場合は一緒に鳴ってしまいます。
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濁音(が、ガ(カ゜)、ざ、だ、ば行)
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←押すと解説が開きます |
エイリアス/エントリ
歌詞の事です。「く」の音なら「く」、「つ」の音なら「つ」と書きます。
因みに「ガ」行と書いてるこちらは鼻濁音という発音で、デフォルト音源とその音声元であるAquestalkではNHKのアクセント辞典に倣い「カ゜」行の表記で存在していますが、UTAU間では利便性を取ってか単純にカタカナにした「ガ」行で浸透しているようです。
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エイリアスの画像による図解 |
エイリアス/エントリの記入例
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主に使われるプレフィックス
主に使われるものは先頭の音用のバリエーションだけです。「ぽ」を例にしています
- 「- ぽ」 歌い始めの部分で主に使います。使用頻度は低いですが用意しておけば歌い出しの音が綺麗になります。
- 「ぽ」 プレフィックス無し。歌詞としてはデフォルトの状態なので、一番使用頻度がある歌の途中の音として向くように原音設定をします。特に濁音の発音をする際に「ん」の音から始まりやすく、これをそのまま使うと繋がりが悪くなりやすいのでオフセット/左ブランクで省略して使うことが多いです。
オフセット/左ブランク&右ブランク
UTAU上でどの部分の音を鳴らすかを指定します。声を発していない箇所まで指定していると環境音なども再生されてしまうため、基本的には省くように設定します。
オフセット/左ブランク
声を発する直前の音を全て切り捨てるように設定します。「が」なら子音の「g」、「ぶ」なら子音の「b」の音が始まる直前の位置を指定します。
後述する先行発声やオーバーラップの兼ね合いで多少は融通が利くため、音が欠けてしまわないように多少は発声直前の余白部分も残して設定するのがおすすめです。
右ブランク
音の"終わり始める手前"に設定します。これはどの音でも同じルールです。
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←画像によるオフセット/左ブランク、右ブランク解説 |
例1 歌い始めの音向け
他の音の原音設定と見る箇所は同じです。
画像では始まりの無音箇所は全て オフセット/左ブランクで切り取っていますが、「- ぶ」等のエイリアスで歌い始めの音として分けて設定するのであれば切り取らない方が良い場合もあります。
これは歌い始めの息などの空気感をそのままUTAU上で出せるメリットがある為なのですが、収録環境による雑音も一緒に鳴る事になるため、実際の音源がどのような状態なのかはしっかりと見極めましょう。
例2 歌の途中で使う音向け
濁音は人によっては「ん」の音から発音が始まり、長い溜めの音が入る事があります。邪魔になるようであれば オフセット/左ブランク/で省略してしまいましょう。
「が」「だ」行に入っていた場合は後述する 先行発声の値が最大でも50程度になるよう短めに調節すると発音として間延びせず明瞭になるでしょう。なるべくは同じ子音、同じ行の先行発声の値は揃えておくと歌った時のリズム感が良くなるので、上手く揃えられるように調節するのがおすすめです。
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子音部/固定範囲
子音から母音へ移動した後、母音が安定する位置まで囲います。UTAU上では子音部/固定範囲の終わりから右ブランク開始までの何も設定してない部分の音を引き延ばして歌わせます。
これは濁音に限らずどの音でも同じルールです。
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子音部/固定範囲の例(画像仮置き)
伸縮範囲
正式名称かは不明ですが、UTAU上で引き延ばされる音の範囲をこう呼びます。
オフセット/左右ブランク、 子音部/固定範囲、そこから 右ブランク。ここまででどの範囲の音を切り出し、その範囲の音を引き延ばして歌わせるかが決まります。
不安定な音だとそのまま不安定な発声のロングトーンになってしまいますので、しっかりと安定した母音で括りましょう。
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先行発声
リズムを決める重要なパラメーターとなります。「ぷ」なら「p」から「う」になる瞬間の地点に設定します。
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例1 基本的な考え方
どの音であっても 母音の開始地点が先行発声の設定位置です。
スペクトル上では子音の模様の終わり、母音と同じような模様が始まる位置に先行発声を置きましょう。
例2 子音と母音、切り替わりの目印
「が」「ガ(鼻濁音)」「だ」「な」「ば」「ま」「ら」行でよく見られる目印なのですが、破裂音や弾き音といった音は、発音するとスペクトル上に縦線の模様で見える事が多いです。
この縦線模様の終わりの部分が母音の始まり、つまり 先行発声の位置となるので参考になります。
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オーバーラップ
これは前の音符の音をどれだけ重ねるかの設定です。数値を上げるほど長くクロスフェードをして滑らかに音が繋がります。基本的には先行発声の値を超えない範囲で子音をどれだけ前の音と重ね、滑らかに発音が切り替わるようにするかを指定します。
「が」「ざ」「だ」「ば」行のオーバーラップ
ほぼ濁音全てに言える事なのですが、これらの音は特に歌い始めの語頭と後とで発音が変わりやすく、大まかにオフセット/左ブランクと連動させる2種類の設定位置があります。
今設定しようとしている原音がどのタイプなのかを確認して設定を行いましょう。
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画像による解説 |
2種類の発音の違い
単独音でこれら2種類の発音が混在した場合は、なるべく1番の発音に合わせた原音設定をすると良いでしょう。
前提として 先行発声をなるべく近い値で統一するのがリズム良く歌ってもらうコツなのですが、最初の「ん」のような「溜め」の音を含める分だけ 先行発声の値に大きな違いが出るので、リズム感が合わなくなります。
例1 無音の溜めがある発音
「か」「た」「ぱ」行のような「破裂音」と呼ばれる発音にとても近いタイプですので、設定方法も全く同じようになります。
「あった」等といった小さい「っ」を発音しようとする際にこのような無音の「間」ができやすいです。歌の途中など前の音と繋がる場合には完全な無音はできにくいので、間が長すぎると感じたらオーバーラップの値は徐々に上げて、適切な場所を探っていきましょう。
どうしても切り貼り感が抜けないようであれば、先行発声の値を超えてでもオーバーラップの値を確保して前の音と滑らかに繋げるのも良いでしょう。その分だけ発音は不明瞭になるのでやりすぎには注意です。
例2 「ん」のような溜めが入る発音
だ行の例
ざ行の例
歌の途中、語中などでこのような「ん」に近い音が挟まって発音される事が多いです。歌い始め、語頭でも力んで発声をすると現れやすいかもしれません。
これらの音は「さ」「な」「ま」「や」「ら」「わ」行の原音設定と殆ど同じです。画像の例ではオーバーラップの20前後を前の音との滑らかな接続に費やし、残りの30ミリ秒前後で子音の音のみが鳴るように設定しています。
この「ん」のような音がむしろ違和感を感じるようであれば、オフセット/左ブランクを使い切り取るなり短くするなりして歌わせた際に丁度良い塩梅になるようしっかりと設定しましょう。
実際の発音を再現できているか比較してみよう
上で挙げられた例1と2をUTAUで実際に出力し、収録者本人が直接発音した「ど」とどれほど似ているかを比較してみました。母音から子音への繋ぎの音が存在しないので細かい発音は再現が出来ませんが、ただ繋げただけで大まかに接続部の音量の変化度合いなどが似ていればそれで十分です。あとは調声、実際の打ち込みの方でなんとかしてもらいましょう。
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「ガ(鼻濁音)」のオーバーラップ
基本的には「さ」「な」「ま」「や」「ら」「わ」行の原音設定と殆ど同じです。十分な子音があるならばオーバーラップは20前後に設定しましょう。
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画像による解説 |
波形やスペクトルで見ても「な」行や「ま」行あたりと殆ど同じですね。
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拗音(きゃ、じゃ等の〇ゃ系)
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エイリアス/エントリ
拗音とそれ以外で違いは無いので省略します。
オフセット/左ブランク&右ブランク
拗音とそれ以外で違いは無いので省略します。
子音部/固定範囲
子音から母音へ移動した後、母音が安定する位置まで囲います。UTAU上では子音部/固定範囲の終わりから右ブランク開始までの何も設定してない部分の音を引き延ばして歌わせます。
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画像付きの解説が開きます |
子音部/固定範囲の例
拗音の場合は特に母音の最初と後の部分で違う段の母音になっているので、伸縮範囲に目当ての母音だけが残るように設定しましょう。
特に拗音は小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」の音があるので気を付けます!
「きゃ」や 「みょ」など、小さい 「ゃ」「ゅ」「ょ」の拗音の子音は全て 「い」の母音に繋がる音( 「き」や 「み」など)なので、母音の最初の方は 「い」の発音が残りがちです。
ここを 子音部/固定範囲に含め切れていないと遷移途中の部分までもが引き延ばされ母音の発音が不明瞭になってしまいますので、一層注意して設定しましょう。
特殊なテクニックとして、あえて子音部/固定範囲を母音部に用意せず伸縮範囲をこの遷移部分に限定させる事で曖昧な母音の発音を獲得する事も可能です。
伸縮範囲
正式名称かは不明ですが、UTAU上で引き延ばされる音の範囲をこう呼びます。
オフセット/左右ブランク、 子音部/固定範囲、そこから 右ブランク。ここまででどの範囲の音を切り出し、その範囲の音を引き延ばして歌わせるかが決まります。
不安定な音だとそのまま不安定な発声のロングトーンになってしまいますので、しっかりと安定した母音で括りましょう。
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先行発声
リズムを決める重要なパラメーターとなります。「きゃ」なら子音の「k」から母音の「y」になる瞬間の地点に設定します。「しょ」なら「sh」から「y」ですね。
基本的な部分は拗音とそれ以外で違いは無いのでまずは各々の設定方法を確認してください。「きゃ」行なら破裂音(か、た、ぱ行)の項目です。
こちらでは主に拗音で頻出する発声タイミングの注意すべき点について紹介させていただきます。
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画像付きの解説が開きます |
拗音でも先行発声の基準は同じ
画像の例では「みょ」です。ローマ字にして書くと「myo」となる訳ですが、先行発声は「m」の終わりで「yo」の開始地点に設定します。
リズムの基準にする子音は1種類というわけですね。「y」の音から先は全て母音として扱います。
先行発声の基準はあくまで「発音」!
拗音は特に小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」の発音となる「y」の音が母音の開始地点に挟まります。これは母音の中では口の中を小さくして発音するタイプなため、単純に音量が小さくなりがちです。
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母音ごとの音量の違いを比較してみる |
「あ」が一番口を開くので大きく、「ん」が一番口を閉じるので小さくなっていますね。
「あ」が声の通りが良いのはこういう理由があるわけなのですが、人が聞く分にはこれで同じ声量で発した音に聴こえるので波形基準で音量を合わせる必要はありません。
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この母音ごとの音量の違いが激しくなり、波形基準で見た場合のリズムの位置が実際の発音と食い違う現象が起きることがあります。
画像の例では「き」と「よ」で完全に分かれて発音してしまったようです。特に「よ」の発音部分の波形が大きいので、そのまま聞く分には音量を基準にした先行発声(右側)の方がリズムが合っているようにも聞こえます。
しかしMIXの段階、楽曲とのミキシングではボーカルにも音量差を埋めて聞こえやすくする処理などが行われます。
加工をした後では音量にさほど違いは無くなるので、先行発声は左の候補のが合っているように聞こえます。なので音量を基準にして先行発声を設定するのは推奨されていません。
無加工では遅れて聞こえるようでも、あくまで発音を基準に設定しましょう。
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オーバーラップ
拗音とそれ以外で違いは無いので省略します。
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その他豆知識など
Q.エイリアスが空欄だとどうなる?
A.
「ら」を収録してるファイル名が「ら.wav」だった場合、実はエイリアスを書かなくても「ら」のノートで鳴ります。
これはUTAU初期からの名残りの仕様で、初期の頃はファイル名=エイリアスとして音源制作がなされていました。基本的にwavファイル一つに1音を収録するスタイルだったので浸透していませんでしたが、今は単独音であってもエイリアスに表記するのが主流です。
画像に使用した参考音声:VOICEVOXずんだもん