DX3rdキャンペーン「ゼロ」

キャンペーンあらすじ

20XX年8月15日―――ニヒツが再び引き起こした黄泉還り事件により多数の死者が現世へ呼び戻されてしまった。
RBのクローネによって事態は収束されたが、誕生したRBの一人が事件後も自立的行動を始めた。
それは13年前、鷹宮壱子が失った記憶に深く関係しているのであった。


第1章 レムレース編

1.Hope in the Dark

◆あらすじ
ニヒツ氏が再び起した黄泉還り事件によって誕生したRBはクローネに抵抗し、消滅する事を防いだ。
しかしその反動により、一時的に暴走状態に陥ってしまう。
死者の肉体に取りついた不完全な状態を修復しようと、下水道で人間とジャームを黒い霧によって取り込み始める。
PCは一般人にまで被害が及んでしまっているこの事態を解決すべく、RBへと近づいて行く。
RBの発生させる黒い霧はレネゲイドを沈静化させていき、PCは苦戦を強いられるも、事態の鎮静化に成功する。
事件の元凶であったと思しきRBの青年は自身と生前の記憶を失っていた。
青年・霧は後悔の念に苛まれており、やるべきことがある、記憶を一緒に探して欲しいとPCに願い出る。

◆情報まとめ
  • ニヒツ氏による黄泉還り事件の再来により、各地で死者が蘇っていた
  • 霧は暴走時、腹部を貫かれる感覚、皮膚が焼ける感覚、体温が奪われる感覚、謎の罪悪感の4つに苛まれていた
  • 『13年前のUGN支部襲撃事件』でオーヴァードを無力化する物質が発見されたが、アールラボでも解明されなかった
  • 霧は身元不明でさらに記憶喪失である。何らかの影響で話せず、初期は筆談をしていた
  • 霧は微弱だが常時《フォールダウン》状態になる場合がある

◆組織の動き
  • ゼノス:都築京香は霧を助けてくれとPC達に直接頼む。“あの男”のプランを阻止する為に動いている

◆覚えておいて欲しい事
  • 霧は蘇ったが肉体は身元不明の死体であり、この外見は死体の人物である
  • 霧は黒い霧を操っていた対抗種である
  • 霧は記憶に関連する物事に接触すると《フォールダウン》が無意識に強化される
  • 霧は強い罪悪感と使命感に駆られており、その理由は失った記憶にある

◆トレーラー&マスターシーン

+ トレーラー
【トレーラー】

かつて全ての記憶の中で裏切り者は死んだ
最後に見たあの涙だけが酷く印象的だった
瞳に焼きついて離れないほどに

だが、残した闇はまだ世界に息づいていた
もうあの涙を二度と見たくない
だから生きた証をゼロにしよう

そして、希望は新しく出会う
記憶の闇の中を彷徨いながらも―――

ダブルクロスThe 3rd Edition 『Hope in the Dark』
ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉。

+ マスターシーン
【マスターシーン】

下水道入口、竜崎ミヤコは腕を組み、眉を顰め、気の強い表情をより一層険しい物へと変化させていた。

「そんなに気を張り詰めていては、成功する作戦も失敗してしまうな」

ダンテは彼女に声を掛ける。ミヤコは咳払いをし、「す、すみません…」と謝る。

「オーヴァード能力の無効化について気になるのか?」
「ええ……」
「薬の散布によって無力化しているものもあれば、物質の開発で無力化している事例もあるだろう。UGNの開発ではそこまでだ」
「13年前にあの襲撃事件で見つかった物質……あれは未だに解析が進んでいないんです。
発見時には既に炎による長時間の加熱によって劣化していました。それだけじゃないです。
アールラボ内の低能な研究員にたらい回しにされた挙句、完全に消滅してしまいました。
……久しぶりにその事を思い出しました。あの物質も能力の無効化でしたから」

ミヤコは指の先でとんとんとリズムを取り始め、苛立ちが露わになっている。

「ヘルズ・アイの殺戮の謎……研究者の血が騒いでいるようだな」
「彼女は野蛮で粗暴で嫌いです。UGNの裏切り者ですし。いつかうちの支部も破壊させられるかもしれないですから」
「ははは。しかし彼女に包囲網の依頼をしたのは君だろう。彼女の記憶喪失の診察をしていたのも君だ。
それに……私の支部が簡単に潰れるなんて事はない」

ダンテは不敵に笑うと、下水道の闇の一点を見つめる。

遠く離れたビルの屋上に黒髪を風に揺らす少女はミヤコとダンテの話を聞いていた。
彼女――都築京香は離れた場所から今回の事件を観測していた。

「思えば発端は私のプランにあったのかもしれません。ですが、今のFHは私のFHではありません」

彼女は誰もいないはずの場で独り言のように呟く。その言葉は空気に溶けてゆくほど儚い。

「あの男のプラン……これは私達に対する復讐なのでしょう……。
しかし、あなたのプランは既に私のプランの内…私達RBという種の進化、ここで根絶やしにされるわけにはいきません」

強い意志の籠った眼差しで、彼女の存在に気付きもしないだろうあなた達PCを見やる。
その丸くつぶらな黒い瞳には、あなた達に対する確かな期待が宿されている。

「我々の希望の誕生、そして彼らと希望の邂逅……今まさに奇跡の確率が発生した事を、あなたはまだ知らないのですから」

そして彼女は風に包まれるようにゆっくりと姿を消す。
その場には最初から誰もいなかったかのように、跡形もなく消えた。



2.The Claustrum to Memory

◆あらすじ
コードウェル博士は計画の為に使用する薬品の開発が、滞りを見せている事を懸念していた。
そんな折、薬品開発の第一人者・化野秋彦の隠れ家が発見された事により、黒須左京はPCに2つの極秘任務を依頼する。
1つは薬品に関するデータを入手する事、1つは隠れ家における化野秋彦のプロファイリングであった。
しかしデータの取得には2つのキーが必要であったが、所持しているのは鷹宮壱子であり、奪取する事になる。
隠れ家でデータを取得した際に地下室を発見してしまうPCは、調査を続けていく。
《ハートレスメモリー》によって呼び出されたのは死者のレネゲイドではなく、霧に似た姿のジャームであった。

◆情報まとめ
  • 化野秋彦に似た人物が大量に培養管の中で眠っていた
  • 抗レネゲイド物質『クラウストルム』は化野秋彦が開発した。『バベル』にも物質提供を行っている
  • FHは鷹宮壱子の日常生活行動パターンを事細かに分析している
  • 鷹宮壱子は13年前のUGN支部襲撃事件でUGNのみならずFHエージェントも含め全員殺害している
  • 隠れ家である朽ちた屋敷の表札は「御堂」と書かれていた
  • 隠れ家における化野秋彦に対するプロファイリング結果(達成値秘匿)
  1. 積み上げられた参考書から……→大変な読書好きで、本の虫である
  2. 大量の食品のゴミ山から…… →家事が全く出来ない人物
  3. 書きなぐられたレポート用紙から……→感情の起伏が激しく、右利き
  4. 複数台のパソコンから……→頭の処理能力がとても早い人物
  • 隠れ家地下には薬物の小瓶が転がっており、αトランスのラベルが貼られていた

◆組織の動き
  • FH:化野秋彦が隠していたUSBデータの回収と化野秋彦のプロファイリングをPC達に極秘任務で依頼
  • ゼノス:FHの極秘任務を阻止する為、坂月那岐がキーを奪取しにPC達を強襲
  • ジン:任務達成とUSBデータをコピーして持ち帰る
  • 鷹宮壱子:記憶の鍵である大切な人から預かったネックレスの秘密が知りたい

◆覚えて置いて欲しい事
  • 化野秋彦についての情報(UGN版、FH版)の違い
  • 化野秋彦の消息は13年前のUGN支部襲撃事件で死亡か行方不明になっている
  • ネックレスに対しての《ハートレスメモリー》→何も起こらなかった
  • 隠れ家地下での《ハートレスメモリー》→霧に似た人物(ジャーム)の出現、ジンは“清明”と呼び掛ける
  • プロファイリング結果に対して、黒須左京は「本当にそれで正しい結果なんだろうな…?」と不安を示した

◆トレーラー&マスターシーン

+ トレーラー
【トレーラー】

託した鍵は奪われた
奪われた鍵によって新たな鍵は解かれた
果てのない裏切りを繰り返す為に

闇の中、もう一人の裏切り者は目覚めてしまう
生み落された鴉の記憶に彼女はいない

記憶や絆は彼にとって無意味だ
彼の理性を拘束する“錠前”にしかならないのだから―――

ダブルクロスThe 3rd Edition 『The Claustrum to Memory』
ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉。

+ マスターシーン
【マスターシーン】

ここは薄暗くも広い研究施設。その奥深い一角、複数の培養管が密集しており、
その全てがこの静かな空間に稼働音のみの環境音を奏でている。
透明度の高い黄緑色の培養液の中には、同じ顔の人物が気泡を出しながら眠っている。
濡れた黒い髪、液体で育成されたにも関わらず鍛えられたしなやかな筋肉、
瞳の色は固く閉ざされた瞼の向う側にあり、その色は分からない

金髪に碧眼、白衣にも見える衣服をその身に纏う男―――
アルフレッド・J・コードウェルは培養管に目線をやりながら重々しく呟いた。

「我々の研究は次の段階へシフトする……」

シェルターが開き、影が伸びる。影は複雑に絡み合い、室内に張り巡らされている配線を避けつつ歩く。
コツコツと革靴を鳴らしコードウェル博士に接近したのは、一つの人影。
その顔は培養管の発する不明瞭な光で照らし出されたが、確かに認識できる。
コードウェル博士の背後で足を止めた男は、培養管の中の男達と瓜二つの顔をしていた。
ただ1つ、液体に揺蕩い、眠っている彼らと異なり、彼の瞳は髪と同じ濡れた漆黒である。
勿論、培養管の中の彼らの瞳も、彼と同じく漆黒なのかもしれない。

「化野、来たのか」

化野と呼ばれた男性。その目には光はなく、まるで闇を携えている。
彼はコードウェル博士に向かって一礼をし、真剣に頷く。

「準備が整った。君の力、思う存分に発揮してくれ。私の元なら……君の才能は輝く。もう一度、私に見せてくれ」

コードウェル博士は化野の肩に手を乗せる。その手は期待の意味が込められているように感じる。
そして全ての培養管の機能が停止し、培養液の中に赤い液体が注入される。
一瞬だけ視界が赤く染まるが、液体は等しく混ざり合い、再び黄緑に支配される。
揺蕩い、眠りについていた培養液の中の人物達はゆっくりと崩壊を始める。
皮膚が溶け、四肢が崩れ落ち、肉体そのものが分解されて、人としての形を保つことなく、塵となった。
火葬された灰の様に。時間を掛けて、培養管の底にしんしんと降り積もってゆく。
化野はそれをただ眺めている。表情に心はなく、読み取ることもできない。彼のその黒き双眸には、血も涙も浮かんではいない。
彼はコードウェル博士の肩越しから、雪を眺めているようだった。

「UGNで作られているエリュシオンという薬品だ。どうやらバベルからUGNに流れたようだ。
しかし見ての通りだ。化野、君の研究がここまで形を成し遂げた。化学の進歩は偉大だな。完成は間近だろう」

そこまで口にすると、コードウェル博士は無表情を貫く化野の顔を一瞥し、呟く。

「いや、正しくは君ではなかったな……。時間だ。では、行こう。エリュシオンのその先に………」

コードウェル博士は彼に告げる。彼らは外へと歩き出す。隔壁が開き、光が彼らを包み込む。
研究室は閉ざされ、他の侵入を許さない様に、固く、固く、鍵が掛けられた。



3.Poison Lady

◆あらすじ
最近、オーヴァードが理性をなくしジャーム化する問題が増えている。
ある日、雨の中、ジョン・ドゥに駆け込んできた不破早苗は、忍人と娘がギルドに誘拐されたとPCに助けを求める。
ギルドはヘルヘイムを売買し、蔓延させている不破夫妻を指名手配する事にしたが、人違いで誘拐されたのであった。
ヘルヘイムの蔓延は、ギルドを内部から崩壊させる危機にまで陥っている。
不破夫妻の実娘である葵は、自らギルドへ赴き、話を伺うと過去を清算する為に両親を探す事にする。
PCは葵が裏切らないか見張る様に言われ、誘拐した人質はそれまで解放しないと交渉される事になる。
不破夫妻がジャームに首輪をつけてどこかへ輸送している場に、PCと葵は居合わせ、決着をつける。

◆情報まとめ
  • 22年前、不破夫妻はFHからαトランスを麻薬と偽り売買し、今回はヘルヘイムを流出させた
  • ジャームの出所は裏社会の人間が多く、霧の観察によると薬物の過剰摂取が原因
  • 首輪にはクラウストルムが使用されており、デザインはバベルで運用されている首輪と同じ
  • ギルドは不破夫妻と同様に、FHからバベルの物と酷似したクラウストルム製の首輪を試験目的で提供されていた
  • フェルナンドは不破葵を『ストレイハウンズ』の社員、そして『レムレース』とも呼んだ

◆組織の動き
  • FH:クラウストルムの効力を首輪に転じさせて実験中
  • ギルド:ギルド内での薬物問題を解決する、不破夫妻への制裁

◆覚えておいて欲しい事
  • 22年前にはαトランスが裏社会で横流しされていた
  • 不破夫妻はFHは「首輪の耐久実験でもしてるのではないか?」と話していた
  • UGNや護人会設立以前から自らオーヴァード達を集めていた人物がいるらしい
  • 霧は医学に精通している様で、ジャームに対して何か思うところがある
  • 常盤縁は霧に対して「御堂さん若返りました?」と発言した

◆トレーラー&マスターシーン

+ トレーラー
【トレーラー】

それは毒であった
肉体を、精神を、遺伝子を、心を蝕んでゆく
あらゆるものをバケモノに変貌させた

猛毒を以て居場所を失くした者達は
彷徨い、陽の光の下から存在を消した

彼女は毒を憎む
血潮が毒に支配されたと知っても
毒を以て、毒を制する

彼女はその為に生きている

ダブルクロスThe 3rd Edition 『Poison Lady』
ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉。

+ マスターシーン
【マスターシーン】

蒸し暑く、湿気の籠った空気が部屋を充満している。
外にはお隣さんが植えたのだろう向日葵が、高く、高く太陽に向かって一直線に伸びている。
その高さはまるで壁の様であった。外との関係を断絶する壁。高く聳える向日葵の群れを、窓から瞳に映す幼い少女がいた。
痩せ細った少女――不破葵は床に転がっていた。目は虚ろで焦点が合っていない。
身の丈に合わない質素なTシャツがまくれ上がり、日焼けをしていない肌からあばら骨が浮き出ている。
冷房も掛けられておらず、所々散らかっている室内に横たわって茫然と眺めていた。

ガチャンと扉が開閉される音。そこへ男性と女性が入ってくる。片手には携帯電話。男は怒鳴りながら会話している。

「おい!」
『兄さん…もう関わらないでくれ。俺はもう兄さんがやってる事、全部知っているんだ』
「はああああ?お前と俺は兄弟だろ。兄貴の言う事ぐらい聞けっての!」
「ちょっとアンタ!声が大きいよ!隣に聞こえるかもしれないだろ!」

舌打ちをして、通話を切る男。注意をした女は持っている袋から小瓶を取り出す。

「ねえそんな事よりアンタ~、αトランス……これ、すごいよね~」
「“能力者”だっけ?になれるって!これ、もう1年間は売り払っては来たけど…
実際さ~、ウチらってこれの効力よくわかってなくない~?」
「じゃ、いつもの事。あいつで試してみるのが手っ取り早いっての」

男は床に転がる少女に視線を投げかける。葵は寝返りをする様に振り向き、乾いた唇を薄く開く。

「お父さん…お母さん……お帰り……」
「葵、また手伝って欲しいんだけどね~。こ・れ」

“お母さん”。そう葵から呼ばれた女性は、小瓶を持ち、床に転がる葵の前にしゃがみ込む。
葵はゆっくりだが確かに首を振る。それは拒否の反応である事が伺える。

「また頭がボーっとするかもしれないけれど、多分すぐに気分が良くなるからね~」
「我慢出来たら、葵の好きなもの買ってきてあげる」
「オイ、葵に変な事を吹き込むんじゃねぇよ」

葵は虚ろな目で小瓶を見つめる。女性は抵抗する気力がない彼女の口を無理矢理こじ開け、瓶の中身を一気に飲ませる。

「……げほっ!ごほっ!うっ…うぐっ……あああ、ああ、あっ…ぎゅうっ……」

葵は咳込み、胸を抑え、もがき、苦しみ出す。痛みを紛らわす為に、床に爪を立てる。
あばら骨が浮き出ている細い体は、蚕の如く背を丸める。伸びた爪にヒビが入り割れ、出血する。

「すっご~い!」
「おおおお!マジで“能力者”って奴になるのか!?」

興奮し、嬉々として声を荒げる男女。そこへ扉を開けて騒々しく入ってくる足音。

「不破隆史、不破菫…ギルドでの数々の悪行、死をもって償え!」

刹那、叫んだ男の首は宙を舞う。失った首から噴出する血飛沫がリビングを赤く染める。
悲鳴が室内を木霊する。そこにいたのは、少女。虚ろな目をした葵。
長く、肥大化した舌が小さな口に収まりきらず、頬に至るまで口先が大きく裂けて出血していた。
漏れ出す涎が皮膚を容赦なく焼いている、化学反応を起こし、葵は痛みに呻く。
鋭利な爪が、刃となり空を切り、侵入してきた男達を切り裂いていく。
舌でなめる様に締め付け、傷つけられた傷跡を更に溶かしてゆく。
焼け爛れ、皮膚が剥がれ落ちる者もいる。そこに立つ者は誰もいなかった。両親も。

「あ、ああああ、ああああ……!だ、れ…だれか……たすけっ……!!おかあさん…おとう、さん……!!く、るし……!」

裂けた口から奇声を上げる葵。痛みにのた打ち回る。異形化した腕、血、舌、死体、視界に写る全ての物に発狂する。
殺伐とした部屋に一つの影が落ちる。葵は影を爪で襲う。しかしその爪はあっけなく、熱気に包まれた刃で受け止められた。

「……暴走状態。俺達と同類か」
「だゃ、れ…?」
「俺は――、亡霊だ。そして、お前の味方だ」

熱気とは異なる冷たい静かな声音が、葵の質問に答える。彼女の瞳孔に反射して映ったのは、明るい色の髪を持つ男。
こちらを覗き込み、夕日を閉じ込めた様な緋色の瞳がレンズの向こう側にあった。
突然、彼女の首筋に鈍い痛みが走り、彼女は瞼の奥にその光景を閉じ込めた。



4.Unhappy Rebirthday

◆あらすじ
長閑な休日、それぞれショッピングモールへと足を運んでいたPCは明川清の殺戮現場に遭遇する。
八神凛太郎は明川清によって殺害されるが、影に取りつかれ、不自然な蘇生を遂げて暴れ出す。
影は凛太郎を操り、レネゲイドハザードを起こし始め、ジャームの大群まで押し寄せてくる。
UGNや特調からは事態収束の為、凛太郎の殺害命令が下る。
PCは新しいオーヴァードの臭いを嗅ぎつけてきた錦戸帷とジン、無線機の男と共に凛太郎を追いかける。
凛太郎の影がPCの攻撃によって怯み、霧の発生させる能力によって凛太郎は平静を取り戻した。
鷹宮壱子は霧に見覚えがあると突っかかっていくが、霧は走って逃げてしまうのであった。

◆情報まとめ
  • 八神凛太郎はウロボロスオーヴァードとして覚醒後に暴走しており、その暴走を止める為に錦戸帷はやってきた
  • 錦戸帷は覚醒したオーヴァードの保護と社員としてスカウトする事が仕事
  • ジンは霧が黒い霧でレネゲイドを沈静化させた事に目を見開いた
  • 棟居誠司は鷹宮壱子を『親の七光り』と嘲笑し、またコードネームで呼ぶと鷹宮壱子はブチ切れた
  • 霧は鷹宮さんと会った直後、精神不安定で《フォールダウン》現象が微弱に起き、声が出なくなった
  • 霧は鷹宮壱子と接触した後、「ここが痛くなる」と胸の下(腹部)を指した

◆組織の動き
  • ストレイハウンズ:覚醒したばかりのオーヴァードを保護、及びスカウト

◆覚えておいて欲しい事
  • 錦戸帷は霧を「御堂だけど御堂と違う臭いで、死臭がする」と発言した
  • 鷹宮壱子と霧はお互いを覚えていないが知っているらしく、鷹宮壱子は霧を「どこかで会った事がある気がする」と発言した

◆トレーラー&マスターシーン

+ トレーラー
【トレーラー】

その日、彼は望まぬ死によって生まれ変わった

今日は新しい自分の誕生日
誰にも歓迎されない影になった誕生日

黒き影は理性を貪り、咀嚼する
影は力に溺れろと誘惑する

昨日の日常にさよならを告げ、今日は凄惨な非日常の始まりだった

―――誰か、俺に帰り方を教えてくれ

ダブルクロスThe 3rd Edition 『Unhappy Rebirthday』
ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉。

+ マスターシーン
【マスターシーン】

黒塗りの車が路肩に停車している。車内から遠くの様子を見ている男女がいた。
藍色の短い髪にマスクをした運転席の女性――不破葵は、虚ろな瞳で後部座席の男に話しかける。

「……………終わったようですか?」
「ああ…、見えている。増援要請は不要に終わった」

明るい髪色、夕日を閉じ込めた様な緋色の眼をレンズの奥に持つ男がそう話す。
少し下がった眼鏡を元の位置に右手で直す。そして再びウィンドウを下げ、外を見やる。彼の緋色の眼は大きく見開かれた。
彼の視線の先には、彼によく似た明るい髪色と夕日を閉じ込めた様な緋色の眼を持つ青年。
青年は黒い霧を周囲に散布し、その周りには複数人のオーヴァードと彼の良く見知った同僚達の姿もあった。
この車内から数キロメートルは離れているが、彼の眼にはハッキリとその光景が捉えられた。

「何故……。生きているんだ……」

彼は重く低く声を絞り出した。それは否定と疑問の声。だが、その声は運転席の葵には聞こえていない。
彼女も彼に倣い、外を見やるが、彼女からは現場にいる者達は米粒程度にしか目視できない。
男は眼鏡を外し、手の平で顔を覆い、両目を抑える。眉間に深く皺が刻まれる。

「御堂さん…?具合でも…………悪いのですか……?」

葵は男に無表情で静かに尋ねる。無機質なその声だが、御堂と呼ばれた男には微かに心配が孕まれている事が理解できた。

「…問題ない。心配を掛けてすまない」

葵はバックミラー越しの御堂に向かって小さく頷く。そして再び静かに告げる。

「…………次の会議の時間が押しています。」
「……わかった。不破、車を出せ。遅れてはいけない。社長の顔に泥を塗る事は許されない」

葵は御堂の返事を皮切りに、サイドブレーキを上げ、アクセルを踏む。
車は発進する。御堂はウィンドウを閉じ、眼鏡を掛け直した。
夏はとっくに昔に過ぎ去り、肌寒くなっている季節であるのにも関わらず、御堂の額には微かに汗が生じていた。



用語集


◆13年前のUGN支部襲撃事件
~未開示情報~
鷹宮壱子の過去のトラウマ。

◆抗レネゲイド物質クラウストルム
+ 説明
開発者:化野秋彦
  • 化野秋彦自身が持つ対抗種ウイルスを利用して開発された物質である
  • 物質は「レネゲイドの抑制、機能阻害」の効力を持つ
  • 物質に接触していると《リザレクト》ですら機能阻害の対象となり得る
  • 名称はLOCKやCLOSEの語源となったラテン語から由来
  • 『13年前のUGN支部襲撃事件』の際、初めて使用する

→試験的にバベルに物質の提供を行っており、データを収集、改良されている
→金庫、首輪など形状を変えて利用されており、耐久実験も行われている

◆人材派遣・紹介会社ストレイハウンズ
~未開示情報~
帷やら葵やらジンやらがいる会社。割と有名。

◆レムレース
+ 説明
とある人物が裏社会へと消えたオーヴァードを称した言葉
  • UGNや護人会設立以前に表社会から死んで、裏社会でしか生きる事を余儀なくされたオーヴァードの総称
  • レムレースはFHなど様々な裏社会組織に吸収されていったらしい
  • 社会から死んで、彷徨っている者達を「亡霊」と例えたラテン語が由来
  • ストレイハウンズの社員に対して呼ばれている




キャンペーン時系列

時系列 出来事
22年前 レネゲイド事件が世界各地で徐々に増加
FHが秘密裏に活動を行うが、その全貌と目的は未だに知られていない
FHのαトランスを利用した実験に不破夫妻が加担し、裏社会にαトランスが横流しされる
御堂清明、相模智哉、ジン、スカウトされる
『人材紹介・派遣会社ストレイハウンズ』を設立
21年前 不破葵、スカウトされる
19年前 錦戸帷、スカウトされる
コードウェル博士、ガーディアンズと共に北米FHを統括する巨大セルの本拠を壊滅させる
18年前 コードウェル博士がレネゲイドの基礎論文を発表。UGN設立
春日部博士が人為的にオーヴァードの兵士を作る研究を開始
17年前 常盤縁、スカウトされる
16年前 鷹宮壱子(15)、母・撫子が殺害されるのを庇えずオーヴァードに覚醒。犯人は覚えていない
その後、父に人材として行けと命令されUGNエージェントに。親子の縁を切る
犯人への復讐を誓い、教育係となった化野秋彦とコンビを結成する
13年前 『プロジェクト・アダムカドモン』実行、UGN側責任者は霧谷雄吾
ニュージーランドの研究所で、コードウェル博士他数名が事故で消息不明に
『UGN支部襲撃事件』主犯・鷹宮壱子(18)、反逆理由は約1年近い記憶喪失の為に不明。UGNから追放
化野秋彦、UGN支部襲撃事件に巻き込まれ死亡、または行方不明
FHの研究開発セル『バベル』設立、エリュシオンの元になる薬品の開発がされる
9年前 鷹宮壱子(22)、記憶の謎と犯人を追い、キャリア組として捜査一課に就任。階級は警部補
その後、捜査一課で問題を起す。警視庁編纂室へ左遷される
8年前 鷹宮壱子(23)、古賀雅也(18)を優秀なUGNエージェントとする事を条件に交渉をし、UGNイリーガルとなる
『レムの揺篭』設立
7年前 嘉南怜が研究成功例としてオーヴァードに覚醒
5年前 メルダーが捕獲される。所持していたタグの中の薬品分析により、エリュシオンが完成する
4年前 プロジェクト・アダムカドモン破綻、轟木源十郎、引責辞任
霧谷雄吾監査部局長が第3代UGN日本支部長に就任
2年前 アルフレッド・J・コードウェルの帰還
全世界の電波メディアをジャックし、FH幹部エージェントとしてUGNの破壊を宣言した
UGN各支部を襲撃し始める。UGN構成員の多くがFHに転向する大事件が起きる
面影島事件、都築京香がFHを離脱。ゼノス設立、RBが活性化する
1年前 春日部博士が置物卓で死亡
現在
8月15日 ニヒツ氏が再び黄泉還り事件を引き起こす。霧、誕生
8月4週3日目 レムレース編「1.Hope in the Dark」
9月2週4日目 レムレース編「2.The Claustrum to Memory」
9月3週1日目 レムレース編「3.Poison Lady」
10月1週1日目 レムレース編「4.Unhappy Rebirthday」

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最終更新:2016年02月06日 20:40