SSログ-後日談-



ひびの卓



きしべ卓

◆水中都市
+ 第1話/夜/樹海(レグナ・ベアトリクス)
レグナ「…ベアトリクス」

ベアトリクス「!!(ビクッとなって後ずさりする)く、るな……!」

レグナ「大丈夫だ!俺だ、レグナだ!って言っても、会ったのは昨日の今日だがよ。ベアトリクス、大丈夫…じゃねえな…。自分の名前、言えるか?」

ベアトリクス「……な、なまえ、……べあと、ベアトリクス……」

レグナ「よし、言えたな。…ほら、俺がわかるか?」(しゃがんで顔をのぞく)

ベアトリクス「(警戒しながらも顔を見て、知っている顔だとうなづく)」

レグナ「よしよし。(にかっと笑う)…立てるか?」(立って手を差し伸べる)

ベアトリクス「う…(立とうとするが抱えているタワーシールドがつっかえてうまく立てない)」

レグナ「ん、外すぞ。もうここは安全だしな…。(盾をゆっくりのける)いけるか?」

ベアトリクス「(立ち上がって深く深呼吸をする)……すまない、とりみだして、しまった。」

レグナ「構わねえよ。…にしても、弱いところもあんだなあ。ま、短い時間だが、お前のことが少しはわかったぜ。」(にやにやしながらベアトリクスの頭をがしがしする)

ベアトリクス「(手を跳ね除けて)人間というものは完璧にはできておらんのだから、私にも弱いところなどいくらでもある……」(尻すぼみになりになる)

レグナ「おっと。(手をひらひらさせる)…安心しろ。今はお前一人じゃない。だろ?」

ベアトリクス「そうだな……いまは、ユリスカロア神の加護もあるからな。(強がって笑う)」

レグナ「ああ、そうだな。そのユリなんとかって神様が見守ってくれてるさ。…よしっ!寝るか!明日は早いぞ!」

ベアトリクス「そうだな。……レグナ、ありがとう。助かった。」

レグナ「テント張っといたからな。…あの水色の髪の女の子を中に寝かせてある。隣で寝てくれ。」

ベアトリクス「頼りないかもしれんが、護衛は任された。夜間の見張りは必要だろうか?」

レグナ「いや。俺がやるよ。夜目、利くしな。お嬢さんは美容のためにゆっくり寝な。」

ベアトリクス「む……確かに夜目は効かん。美容というのはよくわからんが、よろしく頼む。」

レグナ「神官は大事な生命線だから休んどけってことだ!そら、寝た寝た!」

ベアトリクス「なるほど、理解した。では休ませてもらう。」(一礼してテントに入っていく)

+ 第2話/昼/洞窟後(レグナ・ミコト)
レグナ「ふーっ。なんとか脱出できたな…。大丈夫か?ミコト。」(抱えてるミコトを下ろす)

ミコト「(地に足が着いたので安心して深呼吸をする)……ふ、う……。大丈夫、です…。あっ……ありがとう御座いました……。その………重く…なかったですか…?」(俯き加減によそよそしく聞く)

レグナ「軽い軽い!抱え慣れてたからな。それに大人しくしてくれてたから運びやすかったぜ。」

ミコト「最初は、突然抱え上げられて…驚きました……。ですが、私も……走るのが苦手なので……助かりました…。レグナさま…(ハッとしてすぐに言直す) レグナさんはとても力持ち…なのですね」

レグナ「ま、男だしな。それに、こいつを振り回してたら、嫌でも力が付くぜ。」(デスサイズの柄を見せる)

ミコト「(デスサイズをやや伏し目がちに見つめる)………レグナさんは、確かヒューレの神官だと…おっしゃられていましたね……。ヒューレとは、どの様な神様なのですか……?」

レグナ「ん?興味あるのか?うーん…ヒューレは、剣神…剣の神様だな。『力を持つ者は力を持たざる者を守る責務がある』…こういう教えだ。」

ミコト「剣神ヒューレ、ですね…覚えました。………レグナさんは、ヒューレの教義を体現されておられるのですね…。信者の方も、レグナさんの様な……敏腕冒険者の方が多いのでしょうか…?」

レグナ「体現してるかどうかわからねえが…そう言ってくれるのは嬉しいもんだなあ。
信者もそうだといいんだが…」

ミコト「何か………その……ご心配事でも……?」(首を傾げる)

レグナ「いや、村を出てから、ヒューレの信者と会ったことがほとんどねえんだよな。まあ、小神だからなあ。ベアトリクスの信仰してる神様も聞いたことねえし、やっぱり信仰してる神様が名前も知られてねえとがっかりするな。」

ミコト「! あの…………、申し訳ございません……。私も知識不足で……。神官ならば、やはり…存じ上げておくべきですし……。その…………がっかり……ですよね…」(肩をますます小さくさせる)

レグナ「(大きく笑う)いいって!神学者くらいしか知らねえような神様なんだから!
ま、布教活動ってほどでもないが、少しでも覚えてもらえるように頑張るさ。」

ミコト「! ……そう、ですね…。……レグナさんのお話は……聞いていて、とても勉強になります…。(ほんの少しだけ表情が柔らかくなる) ルミエリアは、比較的大きな都市です…。レグナさんの様な……温かく、明るい人が多いです…。お話にきっと耳を傾けてくれます…」

レグナ「へえ~!ルミエリアの名物ってなんなんだ?」

ミコト「塩とオレンジです…。温暖な気候なので…多くのオレンジ畑が街の外にあります……。ジュースの他に甘いオレンジタルトが絶品です…。家庭料理の一つで…肉の塩漬けなども……あります」

レグナ「へー!旨そうだなあ!町についたら、旨いオレンジタルトの店調べて、一緒に食いに行くか!」

ミコト「えっ…(意外そうにぱちくりと瞬きして目を丸くする)私と………、一緒に……ですか……?」

レグナ「甘いものは嫌いか?」

ミコト「(ぶんぶんと首を横に振る) 嫌いじゃ………ない、です…っ……!」

レグナ「よし、じゃ、行くか!」(にかっと笑う)

ミコト「! は、はいっ……!」

+ 第2話/昼/洞窟後(レグナ・ベアトリクス)
ベアトリクス「少し聞きたいのだが、いいだろうか。」

レグナ「ん?」

ベアトリクス「その、防寒着のことで少し思ったのだが、……私は旅をするには準備が不足しすぎているのだろうか?」

レグナ「そう…だなあ。最初見たときは、士官学校を卒業したばかりの学士だと思ってたぞ。ま、実力は想像以上だったけどな。」(にかっと笑う)

ベアトリクス「今までの旅が恵まれていたのだろう。同行してくれた皆に感謝せねばな。無知は情けないが、その分腕で貢献できているのは私としてはうれしいことだ。」

レグナ「ベアトリクスは今まで町をめぐってたのか?だったらそんな装備で充分なんだがよ。」

ベアトリクス「ああ。街を回って、魔物退治の手伝いをしながら来ていた。旅の目的は布教活動だからな。」

レグナ「あ~なるほどなあ。ま、俺は町以外にもいろいろ行ってたから、荷物が多いわけで、街を回るだけだったらその装備で十分だと思うぞ。それに、その鎧と盾は重いだろ。」

ベアトリクス「鎧と盾は確かに重さはあるが、これ以上何も持てんというほどではない。それを言うならばレグナも相当の重量ではないのか?(武器や防具を見ながら)」

レグナ「ん?いや、見た目ほどじゃねえさ。防具は…ほら、これ、骨でできてんだ。だから金属よりもずっと軽い。その分柔かったりするけどな。
こいつも…まあ、見た目はおっかねえが、意外と軽いぞ?」(デスサイズを軽々と振りかざす)

ベアトリクス「おそらくそれだけ鍛えているから軽々と持ちあがるのだろう。私ではきっと無理だろうな。」

レグナ「ま、これが仕事だからな。当たり前っちゃア当たり前だ。ベアトリクスは布教活動が主な目的ってところなんだろ?えっと…ユリスカロアだったっけか?」

ベアトリクス「そうだ。ただユリスカロアの教えは戦いの中にこそ生きるものだからな。比較的平和になった今、果たして共感してくれる者がいるだろうか……」

レグナ「そうだなあ…。世界中を見て回ったわけじゃねえが、武器を持つ人間は一部だけだし、戦いに赴く人間はそれよりさらに少ないからな。街中での布教より、戦地での布教の方がいいんじゃねえか?お前さん、回復できるんだしよ。」

ベアトリクス「戦地での布教か…… 確かにそうだな。戦で受けた傷を癒すことも、味方を鼓舞することも、私の得意とする分野だ。うむ、この旅がひと段落すればそうするのも良いのかもしれんな。」

レグナ「ま、布教以外の道っていうのもあるかもしれねえけどよ!色々見て回ってもいいかもしれねえぞ?人生長いんだしな。」

ベアトリクス「長いといっても、エルフのような長寿の種に比べれば一瞬だろうがな。……そういえばレグナはいくつくらいなんだ?」

レグナ「えっと、俺は~~~(少し目を泳がせる)…何歳ぐらいに見える?」

ベアトリクス「?そうだな……少なくとも私よりは上だろうし、……長く旅をしているし、ずいぶんと物をよく知っているようだから、30くらいだろうか……」

レグナ「(実際はその3倍近く生きてるけどな…)まあ…そんくらい。」(歯切れの悪い返答をする)

ベアトリクス「(歯切れの悪さに少し首をかしげつつ)10年以上も各地を回っていたのであればそれは色んなところに足を運んだのであろうなあ…… 確かレグナはヒューレ神を信仰しているのであったか。旅で出会った者がヒューレ神の教えに賛同してくれた経験はあるのか?」

レグナ「(少し笑う)布教活動なんてしてねえからなあ。少し話すぐらいだ。それでも、賛同してくれた奴はちょくちょくいるな。」

ベアトリクス「そうか!やはり時間をかけて根気よく話をすることが一番なのだな。」

レグナ「ん?まあ…うーん…」(首をかしげる)

ベアトリクス「勉強になった。ありがとう。」(頭を下げる)

レグナ「いや…ああ、どういたしまして。(なんか腑に落ちねえなあ…)
ま、あんま無理すんなよ。」

+ 第2話/昼/洞窟後(フロスト・フラウ)
フラウ「ふあ~っ…………よく寝たわ…。あら、無事だったのね。おはよう」(あくびをしてゆっくり姿を現わす)

フロスト「…起きたか、馬鹿者。その物言いは無事で済むとは思ってなかった、という意味か?」

フラウ「そんな訳ないわよ?この程度の危機でくたばられては私の主人を選ぶ目が腐っていたという事になってしまうわ。ふふっ…」(宙をゆったりと漂う)

フロスト「…、お前の品定めに出くわした先人は不幸だった、だろうな。(呆れたように言い、目の光が細くなる)

フラウ「特別深い意味はないわ。ただ退屈しなさそうだからついてきただけよ。……そろそろこの洞窟も飽きてきたしね。あなたは旅をしているのでしょう?あなたについていけば色んな所に行けそうだもの」(寄り添い腕を絡める)

フロスト「…妖精は好奇心の塊だと常々思っているが、お前のそれは飽き性の類ではないのか。
旅話を好む妖精は多かったが旅をしたいと言い出すなど………、…。
…それと、何のつもりだ、これは。(フラウの絡んでる腕を差す)」

フラウ「旅をする妖精がいても何ら可笑しくないわよ。妖精も一概にみな同じ性格をしているとは限らない訳ですし。(ぴっとりとくっつく) それとこれは愛情表現よ」

フロスト「……動き難い。離れろ。(絡んでる腕と反対の手でぐいと押しやる)
…旅をしたいと言い始めたのはお前が初ではないのだがな。…奴もそうだ、大人しく住処を離れなければ良かったものを。でなければ…。(言い掛けて目を細め、言葉を切る)」

フラウ「別に氷漬けなんてしないわよ…仕方ないわね〜(しょうがなく離れて宙を漂う) 私の他にも旅をしたいと言った子がいた……?その口振りだと……」(面白くなさそうな顔をする)

フロスト「…もし仮に氷漬けにでもしようものなら、先に石塚に埋めてやる。
…そうだ。…そして、この有様だ。(宝石入れを開いて見せる)
…俺の不注意だ、先に下がらせておけば防げただろう。…だからこそ、連れ戻しに行く。今はその手掛かりを追ってる処だ。」

フラウ「………なにこれ(濁った宝石を手に取り、険しい表情で見つめる) 一体どうすればこんな事になるの…。連れ戻しにって……こんな状態で無事である確証はあるのかしら……」

フロスト「…俺にも判る事の方が少ない。ただ言える事は、俺達と遭遇したエビルという男は妖精を閉じ込める術を持っている。契約とはまた違う、だが異質で歪だ。…判らん。だからこそ悠長な事も出来ん。」

フラウ「………はあ、可笑しいと思ったわ。私よりも先客がいた訳ね……(口を尖らせ、宝石を見つめてじと目になる) それであなたは、赤髪の鎌男と三つ編みの盾女と根暗な鱗女の4人で一緒にエビルって奴の手掛かりを探してるのね…」

フロスト「(やや呆れたように帽子を抑える)…えらく雑把な区分やらが聞こえた気がするが、大体その認識でいい。
聞けば聞くほど、面白い旅に成るとは到底思えんだろう。(帽子を直し、細い目でフラウを見遣る)」

フラウ「……どうしてそこまでこの子にこだわるの?(宝石を宝石ケースに静かに戻す)あなた達からしたら妖精なんて結局みんな同じなのではなくって……?シルフはシルフだし、ノームはノーム…この子だって別の同じ妖精を探せば良いじゃない…」

フロスト「…先程と言ってる事が真逆だぞ。個性を謳う者が個性を否定してどうする。
…少なくとも妖精と口を利けば自ずと判る事だ。一つとして同じ存在など有り得ん、とな。
…これ以上の解答は必要か?」

フラウ「(目を見開き、フロストを見つめて首を振る) ……初めてまともな妖精使いに会えた気がするわ。…………ふふっ」(嬉しそうに微笑む)

フロスト「そもそも妖精使いそのものが変わり者、とも言うがな。……マトモじゃない妖精使い、か。
…ともあれ、解答に満足したなら結構だ。」

フラウ「(背後から腕を回して抱きつく) ねえ……私、例え面白く無くともあなたと一緒に行くわよ。あなたと私の2人なら、そのエビルとかいう男に負ける気はしないもの。それに……」

フロスト「…だからくっ付くなと。…それに、何だ。」

フラウ「……一目惚れしたんだから仕方ないじゃない。ねえ?ふふふふふっ」(囁くように言うと、面白がって頬にキスして霞のように消える)

フロスト「・・・・・・。

・・・馬鹿者め。」(呆れた、と言わんばかりの仕草で帽子に手を遣る)

+ 第3話/昼/ルミエリア(ベアトリクス・クロード)
役人の青年「…………それ以上奥へ進むと裏路地だぞ」

ベアトリクス「!すまない、こういった大都市は珍しく、……お恥ずかしい……」

役人の青年「……はあ。(腰に手を当ててため息をつく) あの赤髪の大男と同じく変に騒がれると面倒だ。あっちが大通りだ」(顎で指す)

ベアトリクス「丁寧に感謝する、ええと…… すまない、名をうかがっていいだろうか?」

役人の青年「名前…?(顔を少し顰める)………クロード・サリヴァンだ。お前は確か冒険者の店にいた……」

ベアトリクス「ベアトリクス・フィエルという。」(ぺこりと頭を下げる)

クロード「ベアトリクス…。……大都市ではない。全国にはルミエリア以上の大都市がある。ここで迷子になるなら他所へ行っても同じだ。地方出身か?」

ベアトリクス「……ユーレリア地方から来た。確かに私は田舎者だ。私の故郷は……娯楽がほとんどないようなところだったからな……」

クロード「ユーレリア地方出身者か…あそこは廃れた村や城塞都市もあるな。娯楽よりも軍事力に力を注いでいる印象を受ける」

ベアトリクス「詳しいんだな。驚いた。……いや、私が無知すぎるだけかもしれんが…… 軍事施設だらけの城塞都市から来たんだ。施設と言えば軍事学校くらいのものだろうか。もしかすると、ユーレリア地方に来たことがあるのか?」

クロード「行ったことがある。あの地方は大破局以降まだ完全に復興しきっていない。小規模国家の集合体で成り立っている。地方全体が戦の事が頭の片隅にあり、軍人の育成にも重きを置いている。……城塞都市か」

ベアトリクス「大きな盾のごとき壁に囲まれたところでな。随分と西のはずれにあるところだ。……」(少し故郷を思い出して懐かしむような顔をする)

クロード「壁に囲まれた……エクスドか?」

ベアトリクス「!!まさか、知っているとは……」(目をぱちくりさせる)

クロード「……そんなに驚く事か?(僅かに呆れた表情でベアトリクスを見る) 名は知っているが実際に赴いたことはない」

ベアトリクス「いや、故郷ながら名の知られているような街だとは思っていなかっただけだ…… いや、私が無知なだけか?」

クロード「名を知っている人間はこの街でも僅かな数だろう。……俺が知っているのはエクスドには軍士学校があるという情報だけだ」

ベアトリクス「私はその学校の出身者なんだ。ずっと限られたところにいたせいか、随分と不勉強なようだ。
そうだ、クロードは今から少し、時間はあるだろうか。よければこのルミエリアのことについてご教授願いたい。」

クロード「出身者という事は、随分と優秀な軍士官と見受けられるな。(品定めする様にベアトリクスをじっと見る)…………ご教授と言われるほど街について教える事なんてないぞ。……ついて来い」(勝手に歩き出す)

ベアトリクス「ありがとう。」(少し遅れて歩き出す)

(中央区まで移動する)
クロード「ここに都市全体の地図を設置している。中央区は役所の他に図書館がある。魔動機に関する文献が比較的多い方だ。(地図を指差し説明する) こっちは神殿がある区。買い物ならこっちの区だ。ただ裏路地は物騒なので近寄らない方がいい」

ベアトリクス「先ほども思ったが、そんなに裏路地は危険なのか?蛮族の侵入は考えにくいしだろうし……」

クロード「正直に言うが危険ではない。裏路地が物騒な理由は、穢れを嫌う者が街に住まうコボルドに対して理不尽な罵倒や攻撃が行われているからだ。……その様な光景、見てみたいのか?」(帽子を深く被り視線を投げる)

ベアトリクス「(複雑そうな顔をする)いや。すまなかった。」

クロード「何故お前が謝る。こちらも謝られる理由がわからない」

ベアトリクス「確かに。 ……だが、穢れを憎むのであれば、相応の力をつけてこの街の作物を荒らす蛮族を討ちにいけば良いものを…… ああいう弱いものいじめのようなことは、私は好かんな…… コボルド達は、人と共存を望んでいるのだろう?何を虐げる必要がある。」

クロード「共存を望んでいると言えども、一時はドレイクなど支配者層の蛮族と行動を共にいた者もいる。街全てのコボルドが名誉人族の証を取得してはいない。一見人族と良好に見えるがコボルドが反逆的思想を持つ可能性を捨てきれない者もいるという事だ。……灯台下暗しという奴さ」

+ 第3話/昼/ルミエリア(レグナ・フロスト)
レグナ「…。」(ポーンと人差し指でピアノの鍵盤を叩いている)

フロスト「意外だな。音楽を嗜んでいたのか?」(指でピアノの側面に触れ、調べる。)

レグナ「んー、まあ、な。意外だろ?よく言われる。」(少し苦笑いする)

フロスト「あぁ、意外だ。武闘派のお前からは想像が付かん。何処で習ったのだ。」

レグナ「…嫁さん。ピアノ弾きだったんだ。」

フロスト「何?…既婚者だったのか。」

レグナ「これも以外か?まあ、もう亡くなっちまったけどな。…ずいぶん前の話だ。」

フロスト「…そうか。既婚者が旅をするのは余程の理由が無ければしないだろう、と思ってな。
…余計な事を聞いたな。すまぬ。」

レグナ「謝る必要なんてねえよ。…そういえばフロスト、お前、楽器とか弾けるか?」

フロスト「楽器か。音楽に関しては全くの門外漢、だ。何分知識はあっても使う事が無いと伸びんのでな。
それに、俺は音楽を奏でるより、奏でられた音楽を聴きながら本を読む方が性に合っている。」

レグナ「そうか。なーんかお前らしいっつうかなんつうか…。」

フロスト「…ある意味俺は他者から見たそのままかもしれんな。
音楽を聴く事は良い。人の奏でる音楽も、妖精の奏でる音楽も。分化や発展の仕方によってまた姿を変える。
…それも旅の楽しみの1つなのかもしれんな。」

レグナ「そうだなあ…(何かを思い出すように目を細める)…よしっ、ちょっくら祭壇作り再開してくるわ!」

フロスト「…そうか、神官だったな。…邪魔した、続けてくれ。」

レグナ「おう!何だったら手伝ってくれてもいいんだぜ?カウンターの後ろに作るだけだしよ。」

フロスト「…。余り店の妨害にならんように作るべきだと思うぞ。
それはそうと、神官の仕事か。俺も興味はある、手伝おう。」

レグナ「大丈夫大丈夫。後で了承取るからよ。じゃ、とりあえず、組み木から始めるか!」(小さい木材を持っていく)

フロスト「・・・・・・果たしてそう事は上手くいくか。…一波乱ありそうだな、やれやれ。」(少し呆れた手振りをする)

+ 第3話/昼/ルミエリア(レグナ・ミコト)
ミコト「……~~~♪、…~~♪」

レグナ「…………。」(黙って歌に聞き入る)

ミコト「~♪、……。…ふう」(歌い終わるといつになく清々しく、嬉しそうな表情を見せる)

レグナ「(拍手をする)」

ミコト「!(拍手に少し驚く)………いらっしゃったんですね。いつから……?」

レグナ「ちょっと前からな。はじめて通しで聞いたが、良い歌だな。」

ミコト「レグナさん達のお陰です……。本当は……ティル・ナ・ノーグの外に出る前、この歌が嫌いになっていました……。しかし、ある方が仰ってくれた事を思い出して……」(思い出す様に目を伏せる)

レグナ「ある方?」

ミコト「はい。…『私達を救ってくれる人達に聴こえるように歌い続けなさい。伝承のマーマンも歌い続けたのだから、きっと伝わるはず』と言われました…。その方も捕まっていて……今はどうなってしまったのか……」(顔に影が差す)

レグナ「…道のりはまだ始まったばかりだが、俺達が助けに行くさ。だから、そんな顔すんな。な?」(背中をぽんと叩く)

ミコト「(顔を上げる)……そう、ですね。…あの方が仰っていた通りでした。頼りになる方々と出会えて…私は歌う事をやめなくて良かったと思いましたから……。……ありがとう御座います」(微笑む)

レグナ「礼はティル・ナ・ノーグを救ってからだぜ。それまで宜しくな。」

ミコト「はいっ…。長い道のりになりますが…、不束者の私も精一杯助力させて頂きます……!」

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最終更新:2016年03月08日 22:36