+ | ひびの卓 |
ひびの卓
|
+ | あさみ卓 |
あさみ卓
|
+ | きしべ卓 |
きしべ卓
|
+ | 一覧 |
|
+ | 一覧 |
|
+ | 一覧 |
|
+ | 2話後(古賀・レルム) |
レルム「(古賀さんの携帯から聞きなれない着信音がなる)こんにちは、無事に生きているようね?」(携帯の画面から手を振る
古賀「…!(僅かに目を見開き驚いて携帯を手放しそうになる) び、ビックリしたぁ?……。君だったのか…何が起こったのかと思ったよ」
レルム「あら、見た目通り気が小さいところがあるのね。それとも、今だからこそ、そんなに驚いたのかしら?」(首を傾げる
古賀「そちらから事件以外の時に接触をしてくるとは考えてなかったからだよ。
…賢司さんの方も無事かい?君がこうして来てるという事はただの杞憂だけれどもね」
レルム「そう?……まぁ、一応そちらの進捗を把握しに来たのよ。こちらにない情報を手に入れている可能性を考慮してね。
……ちなみに、あの男なら何度殺しても死ななそうだから、心配するだけ無駄よ?」
古賀「あはははは……心配無用って事は、賢司さんは信頼されてるんだなぁ?
それにそうだね……オーヴァードは想像以上に丈夫みたいだからね…(感触を確かめる様に両掌を握ったり開いたりする) ……やっぱり中々死ねないや」(小声でぽつりと溢す)
レルム「……(その言葉を聞いて、少し目を細める)………あなた、死にたいの?」
古賀「……M-66事件の後、自殺を食い止める為に奔走していく中で感じたんだ。確かに死ぬのはいい事ではない。
それはわかってる………けれども、心の奥底でどこか羨ましいって気持ちがあるんだ。俺も家族に会いに行きたい…死にたい、ってね」
レルム「………。(目を薄く見開く。少し苦しそうな表情をする)
そうね、会えるものなら死ねばいいわ。でも、今のこの状況を見てそう思うのなら、大間違いよ。…………死に縋りつけば、変わってしまう。 死んだ事で、生きている者を変えてしまう。……それは、恐ろしい事よ」
古賀「生きている者を…変えてしまう……?」
レルム「…死んだ人にすがりついて、超えてはいけないものを超えてしまうからよ。……あの人も、私が知っていた頃のあの人ではなくなってしまったもの。
……会いたかったのに、変わってしまった事が、変えてしまった事が怖くて………」(怯えながらも少し寂しそうな表情をする
古賀「…レ、ルム………?(携帯を握り締める)…………っ……、レルム!」
レルム「……あ(目を大きく見開いて硬直する)……………まただわ。今、私は何を……」
古賀「レルム、大丈夫かい…?君が取り乱すなんて珍しい。でも…俺のせいだね。ごめん…(申し訳無さそうに目を伏せる)
超えてはいけないもの……以前も怒鳴られた事があるよ。人間の倫理を無視しているって」
レルム「別に、あなたのせいではないわ。変な勘違いしないでちょうだい……(眉を潜める)
……人間の倫理…………。ふふ、人ですらない私がそんな事を言うなんて、おかしな事ね。 でも、二度も言われるなんて、あなた、学習能力がないのかしら?その人の苦労も報われないわね」
古賀「俺にとってレルムは人間と変わりない様に見えるよ。こうして話してるのもまるで人と話してるみたいだから。(少し笑う)
…学習能力はわからないけれど、俺は諦めが悪いだけだよ」
レルム「その諦めの悪さは、ただ単に弱い事の言い訳に聞こえるわね。……人と変わりない。そう。(目を伏せる)
ねぇ、私を少しここから出してくれないかしら?」
古賀「強くなるのは難しいな…」(困った様に笑い、ワーディングをはる)
レルム「(携帯からするりと抜けて降り立ち、正面から古賀さんに腕を回し緩く抱きしめる。体温がなく、ひやりとした感覚が伝わる)」
古賀「…!(回された腕を軽く掴んでみる)……冷たい」
レルム「そう。みんなそう言うわ。自分ではわからないけれど。……あなたは暖かいのかしら?冷たいのかしら?
それもわからないわ。切られても、殴られても、痛いとも感じないわ。……私の事、幽霊だって言う人もいたわね」
古賀「レルムには感覚がないの…?でもこの冷たさは人間の冷たさな気がする。いつも職場で触れてるものに近い様な…。幽霊についてはわからないけどね」
レルム「そう?ふふ……ただ、私はやっぱりあなた達とは違うわ。もし、仮にかつて人であったとしても、今は違う。
あなた達と違って、ここに存在しているだけで、生きてはいないのよ。そういう点では、最近の事件で蘇った彼らと私は似ていると感じるわ」
古賀「レルムもあの蘇った人達と同じ…?(僅かに目を見開く) こんな事を聞くのは可笑しな事かもしれないけれど、レルムは普段は何をしているの?
この事件だけではなく、様々な事件を追っているの?」
レルム「(ゆっくりと離れる)
今回の事件を追っているのは、たまたまよ。私には、下された命令があるわ。その命令を果たすために、必要だと感じたから追っているだけ。 私は、そのためだけに存在しているのよ」(にっこりと笑みを浮かべる
古賀「君に下された命令……それはどんなものなのかな…?それはレルム、君を生み出した人物が下した命令なのかい?」
レルム「最強のオーヴァードになれる者を探して、育てること。それが私に下された命令よ。
私が誰に生み出されたのか、誰の命令なのか、それはわからないわ。そして、知る必要もない。それは、許可されていない事なのだから」
古賀「最強のオーヴァードを育てる…(複雑そうな顔をする) ………そうか、とても難しい命令だね」
レルム「そうね。(どこかへと視線を向ける)…………生き返った彼らには、何か意味があるのかしら?
人間でなくなって……生きている者を、変えてしまってまで、あるかどうかすらわからない死後の世界へ行こうとする意味は?」
古賀「……俺は、死んでしまった自分のかけがえのない人達が生き返ったら嬉しいよ。一度だけだけど、考えた事があるぐらいだ。
レネゲイドを用いれば、死者を蘇らせることも不可能ではない気がしたから……(掌から小さな水晶を生み出す) …魂も作れるんじゃないかって」
レルム「……作れる?(作られた水晶を跳ね除ける)………それは、あなたのエゴだわ。(表情を歪める)
そうして、出来たものが生きていた頃と同じになれるの?………あなたの都合で、目が覚めて、人でないものになっていたとしたら? そうして、救われるのはあなた一人だわ」
古賀「わかってる…。だから、もう蘇生の研究には関わらない。俺がやるべき事は蘇らせる事じゃなく、弔う事だから。(意志の強い目をする)
……君はあのモニターに映っている死者達にコンタクトを取る事は出来ないの?」
レルム「そう……。その、通りなのよ。ふふ、少しはましな顔もできるじゃない?
……わからないわ。こちら側に人が増えた気配もないし、出くわすこともないの。彼らがなんなのか、どこから生まれているのか………私にもわからない。 でも、その引き金がODIN、なのでしょうね」
古賀「今まで出会って来たロボット達……AIとは思えないぐらい人間味が増している気がする。
ODINの力と村井博士の研究の成果が、ロボット達に思考能力と学習能力を与えているんだろう。 …嫌な予感がする。もしロボット達が感情まで理解し始めたら、どうなるのか…」
レルム「…………(何かを思い出すように、ゆっくりと瞳を閉じる)
狂うしかないわ。……………何故かしら、確証はないのに、そう、思うのよ。(震えを抑えるように、自分で自分の肩を抱く。) ……あなたも、そう思うのかしら」(古賀さんの目を見る
古賀「俺は……(言葉に詰まり、息を呑む)……その時は、もう手遅れだ。感情があるモノには手が出せなくなってしまう…。
彼らも人間と等しい存在になっているから。………レルム、君はもしかして怖いの…?震えてるけれど、大丈夫…?」(心配そうに見る)
レルム「…………等しい存在に、なってしまったからこそよ。……怖い??さぁ??(手に力を込める)
あなたができなくても、私はやるわよ。止めたとしても、やるわ。 ……私も、そう、それを望むから」
古賀「(コクリと重々しく頷く)……君がそうするなら、俺も……腹をくくらないといけない。君だけに全て任せる訳にはいかないから。
……新しい情報と言えば、死者の中には15年から8年前の人物以外のイレギュラーがいるらしいって事だけだ。グングニルの妹がそれに当たる」
レルム「…イレギュラーが?どういうことかしら……。でも、そうね、そこからまた何か手がかりが見つかるかもしれないわ……。
こちらも、ODINに関する手がかりを知っている者を見つけたから、情報を洗いざらい吐かせたら持ってきてあげる。あなたの、その言葉を信じてね」
古賀「(意外そうな表情で眼を見開く)…あ、ありがとう。君からそんな事を言われるのは何だか予想外だ」(頬を掻いて笑う)
レルム「ふふ、私にここまで言わせたのよ?この対価は高くつくわよ?(不敵な笑みを浮かべる)精々、首を洗って待っていることね。
さてと、私はそろそろ戻るわ。イレギュラーの件も調査しないと……。それじゃあね、雅也」(手を振ったのちに、携帯の中へと姿を消す
古賀「ああ、頼んだよレルム」
|
+ | 2話後(古賀・オリヴィア) |
古賀「失礼します。今回の任務の報告をしに来ました。ただ今お時間はありますでしょうか?」
(モニターの電源を切ろうとするが、止める)
オリヴィア『ああ、頼む。』
古賀「御子柴研究所から逃走したロボットを追跡、捕獲に入ろうとしましたが黒須左京とアリサ・トツカによる妨害に遭遇し、戦闘になりました。
しかしロボットはその後、第三者による上空からの攻撃により破壊され、回収できませんでした…」(暗い表情をする)
オリヴィア『そうか…。今回は、なんとしてもODINの情報を掴みたかったが…。
しかし、情報は掴めなかったにしろ、FHが動いていて、それも複数のセルだということがわかった。蜘蛛の糸のように細い情報だがな。』
古賀「セルの関連性はわかりませんが………。……黒須左京は個人の意志で動いていた様な気がします」
オリヴィア『グングニルは、オーヴァードを殺すために動くことが多いが、今回もそうだったのか?』
古賀「今回の逃走したロボットは……どうやら黒須左京の実妹が蘇り、本人に話し掛けていたようです。
今までの事例通りですが…グングニルの気に障ったのだと思います」
オリヴィア『姫宮が言っていたな。「イレギュラー」と。15年前から8年前の死者とは外れている存在…。』
古賀「その15年前から8年前というのは何を基準に判断されているのですか…?」
オリヴィア『姫宮からの報告だ。モニターに映った人々の死亡時期と死亡原因を一人一人調べた結果、15年前から8年前と断定している。
そして、死亡原因がすべて、直接的、間接的にFHが引き起こした事件が原因だということも。…どうかしたのか?』
古賀「(僅かに息を呑む)……いえ、何でもありません。FHが引き起こした事件、ですか…?」(眉を潜める)
オリヴィア『ああ。FHが引き起こした事件…としか、まだわからないが。現在は事件の共通項を調べさせているところだ。…何か心当たりは?』
古賀「(やや俯く)………特にありま、せん。こちらも見つけ次第、即時報告します。………オリヴィアさん、一つ宜しいでしょうか?」
オリヴィア『なんだ?』
古賀「オリヴィアさんは……この事件、犯人は死者を蘇らせて何をするつもりなのか推測はされておられるのでしょうか?」
オリヴィア『似たような事例が一つあるな。…面影島のオモイデ様だ。』
古賀「面影島の黄泉還り事件の事ですか?その事件に関しては存じ上げております」
オリヴィア『あれは、巨大なRBであるオモイデ様が、大切な人を亡くした人達に同情し、悲しまないようにと死者を蘇らせたという。
UGNエージェントが事態を終息させたが…。もしかしたら、今回も、悪意でやっているのではないかもしれん。』
古賀「………そうですね。……俺には死者を弄んでいる様には見えないんです。
心中に誘う事も……もし仮に悪意が少しでも見えたら、親しい間柄の人物ならその悪意に必ず気づくはずですから…」
オリヴィア『犯人の…犯人がいたとすればだが、動機は現時点で妄想に近い推測しかできないのが現状だ。我々は地道に事件を追うしかない。』
古賀「次のロボットの出現を俺達は待つしかないんですね…。こちらからロボット出現を予測する事はまだできないのですか?」
オリヴィア『(首を振る)予測シミュレーターのプログラムを作ってはいるが、まだ精度が低い。日本に絞られているという事が救いだ。
支部への手続きもスムーズに行える。』
古賀「日本だけ…。被害が国境を越えて拡大しないといいのですが…。電子世界の中での死者の蘇り現象です。
早めに対処しないと取り返しのつかない事になりそうですね…」
オリヴィア『…ネットという国境がない空間に干渉しておきながら、国境を越えないのは不思議ではあるが、な。
一番の問題はFHが動いているということだ。グングニルのような破壊を目的にする者はまだいい。 この事件を利用しようとする輩への対策もしていかなければならない。』
古賀「悪用…ですか……。(目を伏せる)……させません。そんな事は。俺が食い止めます」
オリヴィア『…そうだな。姫宮も徹夜で解析を行っている。私も、他の仕事はあるが、出来る限りこちらの事件を最優先で動きたいと思っている。
お前たちも頑張ってくれ。』
古賀「はい…。オリヴィアさんの期待に応えて見せます」
|
+ | 3話前編後(古賀・レルム) |
レルム「……全く、まさか、正式に協力を要請されるだなんて、思ってもみなかったわね。気は確かなのかしら?」
古賀「それはオリヴィアさんに直接聞いて欲しいな。
でも今まで通り行き当たりばったりで情報交換してるよりも、協力体制になった方が君達にとっても有益な事だと俺は思う」
レルム「分かっているわ。だからこうして隣に立っているのよ。
ODINに……何としてでも、辿り着かなければいけないわ。この目で、確かめる必要があるもの……」(少し戸惑う様に視線を落とす
古賀「レルム…、何を戸惑っているんだい?いつもの君らしくない。………。………何かあったの?」
レルム「え?(顔を上げて少し驚いた表情をする)……らしくないだなんて、私が一番分かっているわよ。(溜息をつく)……あの部屋で、ODINを見たわ」
古賀「あの部屋…?」
レルム「USBのあるはずだったあの部屋よ。……あの部屋に入った瞬間、私とナイだけ、ODINの遺した残留思念の空間の中に、招かれたわ。
……現実の時間にしては数秒だったから、あなた達は気がつかなかったでしょうけど」
古賀「(息を呑む) ODINの残留思念の空間…レルムと无ちゃんだけが……?もう一度、その空間に行く事はできないのか?」
レルム「……(首を振る)恐らくは、無理でしょうね。……ただ、私が見たものを再生する事はできるわ。……試してみる?」
古賀「!(暫く考える)………ODINの残留思念が生み出した空間を、俺も知っておきたい…。いや、知りたい。だからレルム、お願いだ。
俺に君の見たものを見せて欲しい」
レルム「……分かったわ。少し目眩がするかもしれないけれど、我慢して。
行くわよ?(周囲に青白い光が表れ円形の空間が広がる。と共に、古賀さんの手を取り、そのまま背後へとすり抜けるようにしてレルムの姿が消える。 レルムの体験した出来事を追体験する形で映像が流れる)」
古賀「………こ、れは……(目を見開き、言葉に詰まる) ………っ…、………」(眉をひそめ、少し気怠げに頭を抱える)
レルム「……(領域を消し去り、目の前に姿を現す)
言ったでしょう?目眩がするかもって…………。一応確認しておくけれど、平気かしら?」
古賀「……へ、いき…(僅かにへらりと笑って見せる) ……電子世界を見たのは初めてだよ。レルム……君の方こそ、大丈夫?」
レルム「……大丈夫ですって?それはこちらの台詞よ……そんな顔をしておいて、よく言うわ。(眉をひそめ、溜息をつく)
…………あなた、以前私が人の冷たさをしていると言ったわね?…………どうして、そう思ったの?」
古賀「職業柄、亡くなった人の肌に触れる事が多いから……。一番最初に触れた時の感触に驚いたんだ。だから、記憶にある。
眠っている様に見えるのに……意外と冷たかったから」(自分の掌を見る)
レルム「(少し目を見開く)………そう。……私の事を幽霊だという人達の事が分かった気がするわ。
(古賀さんの手に触れる)自分の身体が冷たいという事も分からない。触れられて暖かいと感じる事もない。 ……人じゃないはずなのに、おかしな事ばかり頭に浮かぶわ」
古賀「幽霊は…触れられないと俺は思っているけどね。(触れられた手をそっと取る) 頭に浮かぶおかしな事って……どんな事…?」
レルム「(手を取られた瞬間に、表情を少し歪める)
……あの時、触れられて、暖かいと感じた時、懐かしいと思ったり…………それに、覚えのないはずの光景が、たくさん……。 男の人の影と、小さな舞台と……病院………私の手を取って、泣いてる誰か……」(悲しげに目を伏せる
古賀「それは……君の記憶じゃなくて…?」(優しくレルムの手を握る)
レルム「……分からないわ。………でも、そうだとすれば、私は一体、何なのかしら」(不安そうな表情で、手をぎゅっと握り返す)
古賀「レルムのその知らない記憶は、レルム自身がただ忘れているだけの記憶かもしれない……。
自分の理解の範疇を超えているから、それは恐怖になっているだけだから……。君は君だよ、レルム。そんな不安な顔をしないで」
レルム「……あなたにこんな事を言われるだなんて、どうかしてるわね。(苦笑する)
忘れているだけ……ODINと自殺者達……そして、あなたを見ていて、引っかかっていた事があるの。 ……やっと、それが分かった……思い出せた気がするわ」(顔を上げる
古賀「……良かった。(微笑む) その記憶が何なのかわかったら、君の事がもっとわかるようになるのかなぁ…。
君にはたくさん助けられているから、俺も君の手助けができるぐらいにはなりたいよ」
レルム「……(にっこり笑った後に、デコピンする)
調子に乗らないでちょうだい。私の事より、今はODINの事よ?それに、助けてもらわなくても構わないわ。 それより、他の自殺者達と同じ末路を辿らないようにして欲しいものね。……それだけで十分よ」(目を伏せる
古賀「いててっ(額を軽く抑える) ………残された者が変わってしまうかもしれないのなら、死なないように……するよ」(消え入りそうな声で言う)
レルム「……頼りないわね。でも、信じてるわよ、その言葉。
……さ、引き続きUSBの情報を探すわよ?何が何でも、吐かせてやるんだから。 その辛気臭い顔をさっさと直して、行くわよ」
古賀「……いつものレルムになった。(少しだけ嬉しそうにする) 捕縛は任せて。USBの情報を持っているエージェントは必ず俺が捕まえてやる」
レルム「当然よ?協力関係に正式になったのだから、思う存分働いて貰うわよ(にっこりと笑う)
さ、次のターゲットへ向かいましょう」 |
+ | 3話後編後(古賀・賢司) |
古賀「……………」(携帯の画面を無表情で何度も見つめる)
賢司「よぉ、どうした。…昨日から携帯気にしてるみたいだが、何かあったか。」
古賀「(携帯をしまう)………いえ…、……何でもないです。……賢司さん、1つ聞きたいです。今の俺は冷静さを欠いていると思いますか?」
賢司「ん?……(顎に手を当て暫し考え、やがてその手を離し、古賀を指差す)そうだな、欠いている。それも、俺の察する処なら、恐怖だ。
逃げたくなるような恐怖に直面して、それと同時に足跡を見つけて必死にそれを追跡している。 …昨日今日のお前さんからはそう取れるぜ。」
古賀「(目だけが見開かれる)………恐怖。確かに…、そうかもしれません。足手まといになると指摘されても可笑しくないと自分でもわかってるんです。
でも俺はODINがしてる事を止めないといけないんです。だからついてくるなと言われても行きます」
賢司「成程な。
HAHAHA,俺は止めんさ。この事態に対処できるのは俺達、お前さんも含めてだ。足手まといなんてそう卑下するんじゃない。 但し。(笑ってた目が途端、鋭くなる)死に急ぐのと、先走るのはナンセンスだ。それは、やっちゃあいけねぇぜ。」
古賀「(軽く唇を噛み、口を開く)……わかってます。皆さんに迷惑は掛けません。
しかし、俺はやる事が増えたんです。ODINを止める事と同じぐらい重要な……」
賢司「んー。…、っそおい。(暫く聞いていたが、徐に被っていたテンガロンハットを古賀さんの頭に目深に被せ、帽子のつばを指で弾く。)」
古賀「…っ!(驚き、テンガロンハットに手をかける) ………どうしたんですか、急に…」
賢司「よしよし、こっち向いたな。そりゃおめーさん、自分の殻ん中で一人で話して、こっちの話聞いちゃあいねぇからな。
こうしたら、嫌でもこっちに気を取られるだろ?」
古賀「!(僅かにハッとする)……………すみません」
賢司「まったく、本当に謝らないといかんのは俺にじゃなくて、連れてる医者の坊主と嬢ちゃんだと思うぞ?
やる事が増えたのは判る。けどな、今のお前さんは、どっちも一人で解決しようとしている。そう見えるぜ? それも個人の理由だから迷惑をかけたくないとか理由をつけてな。」
古賀「そう、ですね…。賢司さんの言う通りだと思います。海丸くんやナイちゃんに申し訳ない…」(テンガロンハットを目深に被る)
賢司「…込み入った話で人を近づけたくないのかもしれん、ってのも判るがな。
それでもだ。事の大きさを考えりゃ一人で抱えるには大きすぎるぜ。…自分の手には余るとしたら、そういう時は如何したらいいか判るか?」
古賀「……………わかります。でも、これはわかってるつもりだったなのかもしれません。海丸くんや誰かに話すと、未練が残ると思っていたからです。
賢司さん。教えて下さい。本当はどうすればいいんですか……?」
賢司「…そうだな。だったら、仲間を頼る事だ。仲間と協力して困難に立ち向かい、お前さんが本当にやらなきゃいけない事をやり遂げるんだ。
その為にはお前さんがだんまりじゃ何も伝わらない。言いたくない事まで話す必要は無い。 たった一言、「手伝ってくれ」、でいいのさ。」
古賀「……。……そんな簡単な事だったんですね。(苦笑する) 賢司さん、ありがとう御座います。ははは……人を励ますの、上手いですね…」
賢司「HAHA,ちょっと小言が誰かさんから写っちまったかもな。
それでも、辛気臭い事言っても元気にはなれんさ。だったら多少強引でも引っ張って一旦集束させりゃいい。悩むのは後からだ。 俺に出来る事は、そんな事と武を振るう事ぐらいさ。(両手を広げて肩をすくめる)」
古賀「俺はその誰かさんはわからないので、今の言葉は賢司さんの言葉として受け止めましたよ。悩むのは後から……。
(やや視線を下に向ける)………賢司さん」
賢司「お、おう。…ん、どうした?」
古賀「賢司さんは、自分がオーヴァードになった日の事、覚えてますか…?」
賢司「………、そうだな。覚えているさ。…それがどうした?」
古賀「やっぱり、忘れられないですよね…。(目を閉じる)……俺がオーヴァードになったその日。飛行機が墜落したんです。
蒸し暑い夏の日に火の手が上がって、皮膚が溶けるぐらい熱かった…」(そっと首元の包帯に触れる)
賢司「…飛行機。…、まさか。」
古賀「俺の日常はあの日、俺と一緒に死にました。(テンガロンハットを取り、賢司さんに渡す)
俺は飛行機を墜落させた奴……ジ・エンド、あいつには聞きたい事が山程ある。……これが俺のやる事です」(いつもと違い鋭い目をする)
賢司「…………。(テンガロンハットを受け取り、目深に被る)
…お前の意思、確かに聞いたぜ。 …奴は明日、現れる。ジ・エンドにODINに、何が起こるか判らんが。…、露払いは必要だろう、友よ?(帽子のつばを上げる)」
古賀「(深呼吸をしてから頷く) 勿論だ。……多少、乱暴な事になるかもしれませんがそれでも俺についてこれますか?」
賢司「(にぃ、っと笑う)おいおい、荒事に耐えられない程弱く見えるか?」
古賀「いいえ。(首を振る) 覚悟の問題ですので。……調べたい事があります。支部に戻りましょう」
賢司「判ったぜ。じゃあ、行くか。」
|
+ | 4話後(古賀・レルム) |
レルム「(携帯の画面に現れる)……雅也?起きてるかしら」
古賀「(手にしていた携帯を握り締める) ………起きてる。ずっと。ここから出たいから起きてる。
…………?…その声………レ、ルム…?」(携帯に視線をやる)
レルム「……想像した通りの、酷い顔ね。……そんな調子じゃ、いつまで経ってもここから出れないわよ」
古賀「酷い顔か…。今の俺は惨めな顔をしているんだろうな。(溜息を吐く)
どうしてここにいないといけないんだ……俺はどこか可笑しくなってしまったのか…?レルム、俺は前と何が違うんだ。教えてくれないか…?」
レルム「……今のあなたを、惨めだなんて思わないわ。(穏やかな表情をする)
……あなたは、変わってはいない。変わったんじゃなくて、隠していたものが出てきただけ。私には、そう見える」
古賀「(目を見開く) ………俺は……、……俺は変わらない……。8年前、飛行機が墜落した日から……何一つ変わっていないんだ…。
でも、生きてる限り変わらないといけないって思って……隠してただけなのかもしれない。隠せば変われると思ってたのかもしれない…」
レルム「……記憶なんて、隠せるものではないわよ。それに、隠して変われる訳もないわ。
あなた……8年間、ずっと、そうしてきたの?誰にも頼らずに隠す事しかしなかったの?」
古賀「(膝に顔を埋める)………絶対に死んでやる。そう思ってた。だから、誰かを頼っても仕方無い……そう思ってた」
レルム「……馬鹿じゃないの。一人よがりにも程があるわ。
(画面に両手をつき、額を当てる。少し諦めたような表情をした後、意志の強い瞳をする) ……顔を上げて、こっちを見なさい」
古賀「……」(少しだけ顔を上げてレルムを見る)
レルム「(穏やかな笑みを浮かべる)
やっと、顔を上げたわね。ねぇ、雅也。一つ聞かせてくれないかしら。……あなたにとって、生きてるってどういう事?」
古賀「俺にとっての生きる事……、それは誰かの幸せや日常を守る為。
今の俺はUGNエージェントで、俺と同じ思いをしない様に…誰かの日常を守りたいんだ。そう考えてる」
レルム「……誰か、なんて曖昧で一方的ね。自分と同じ思いをさせないためだけに、守っているのなら、長続きする訳ないわ。
あなた自身が幸福も、日常も諦めているのに、どうして他人の事は守れるのかしら?それを立派な事だとは思えない。私には、偽善にしか思えないわよ。」
古賀「俺が諦めてるのに、か。確かにそうかもしれない…。俺ってやっぱり生きている意味あるのかな………」
レルム「さぁ。分からないわね……。でも……意味なんて、いくらでも作れるんじゃないかしら」(画面についた手に少し力を込める
古賀「君の言葉を聞いていると、生きる意味を探すよりも、死ねない理由を作る方が簡単そうだ。(僅かに苦笑する) でも…………。
……今は怖い。生きるのが…怖い…」(画面に指を添える)
レルム「……怖いなら、みっともなく縋ればいいのよ。……あなたは、独りじゃない。
あなたが見ようとしなかっただけで、あなたが手を伸ばせば、触れられる人が周りにいる。 死者の冷たさだけじゃなくて、生きている人のぬくもりを、あなた自身が知るべきだわ」(表情を歪める
古賀「!本当……学習しないな、俺は…!(強く両頬を叩く) 最近、同じ事を別の人に言われた。言葉は違うけど。
『手伝ってくれ』その一言だけで良いって。……君の体温は死人の様に冷たい。君も俺が頼めばついてきてくれるのかい?」
レルム「(少し目を見開いた後、安心したように笑みを浮かべる)……私??
…………あなたが頼まなくとも、私は私で、ODINには用があるもの。今更よ。でも、そうね、あなたに協力するなら、条件があるわ」
古賀「条件?(きょとんとした顔をする) 君の提示する条件は難しそうだ。俺に可能な事ならいくらでもやるよ」
レルム「しばらくはゆっくりと休みなさい。……こんな部屋で、休むのが苦痛でもよ」(少し嫌悪感の混じった表情で病室を見た後、目を伏せる
古賀「……病室が嫌い?レルム、君も少し休んだ方が良いんじゃ……」
レルム「……そうね、嫌いよ。ここには、何もなさすぎるから。それより……あなたは、人の心配をしている場合ではないわ。(少し呆れた口調になる)
……私は眠らなくても平気よ。疲労を感じる事もないのだから」
古賀「あ…そっか。そうだったね…ははは…。
身体の疲労は感じていなくても、やっぱりあの後、どうしても何か思うところがあると思ったから、つい……(俯く) 賢司さんとは話した…?」
レルム「……そうね。………お陰で、色々とやる事が増えたわ。
……賢司とは、あれから話せてないわ。……あの男にも、これからの話をしなければいけないけれど……。今はその時ではないもの」
古賀「賢司さんに会ったら伝えて欲しい。『すぐに戻ります』と。……そう言えば、まだちゃんと聞いていなかった気がする。
レルムは何故ODINを追っているんだ?」
レルム「……そうね。伝えておくわ。
……私が、ODINを追っているのは……『最強のオーヴァードを育てる』……その命令を遂行するのに、好都合だと思ったからよ。 だから、ここまで追ってきた。…………その筈だったわ」
古賀「その筈だったって事は、………今は?」
レルム「ODINを追っていて、少しずつ、自分が何なのか分かってきたの。私は、自分の事がもっと知りたい。
……それに、この事態を収拾させなければいけないわ。死んだ人達が、生きている人を連れて行く事を望んでいるとは思えないもの」
古賀「レルム自身の事……あの記憶について、になるのかな。
俺に出来る事があれば手伝いたいけど……、今はこの事態の収拾が最優先だから決着がついたら探すよ。君自身の事について」
レルム「……私の事は自分でなんとかできるわ。
とにかく、この事態に決着をつける事が先決よ。私の事より、決着がついた後、自分がどうしたいかを考えておきなさい。ここが、終わりではないのだから」
古賀「(一瞬だけ目を見開いてから微笑む) いつも思うけど……、君って意外と面倒見が良いよね。時折、連絡も無しに話に来てくれるし」
レルム「面倒見がいい?(顔を画面から背ける)………勘違いしないで頂戴。ただ、気が向いたから来ただけよ」
古賀「わかった。これは俺の勘違いだね。機嫌を直して。(申し訳なさそうにする) 後、今日のその気を他の人達にも向けてあげてくれないかな…?
俺はここから出られない。だから直接会って話すのは当分先になると思う。電子空間を泳ぐ君にしかできない事だから頼むよ」
レルム「あなたに頼まれなくても、話はするつもりよ。それに……あなたが出れなくても、きっと向こうから来るんじゃないかしら。
その時に今と同じ無様な顔をしていたら、許さないわよ。だから、余計な事を気にしてないで、さっさと寝なさい。今すぐに」
古賀「あはは…、わかったよ。(目蓋を抑えて欠伸をする)……おやすみ、レルム。話せて、良かった…。会いにきてくれて…、ありが…とう……。…zzz」
レルム「……。」(眠ったのを確認してから、姿を消す
|
+ | 5話後(古賀・レルム) |
レルム「……大丈夫?あの時、少し様子がおかしかったみたいだけれど」
古賀「大丈夫……。少しだけ気が狂いそうだけど…。君たちにもあの瞬間、同じ光景が見えたんだろうか……」
レルム「……あの光景??一体何を見たっていうの?」
古賀「ガラスの球体を撃ち抜いた瞬間、とても美しい光景が見えたんだ。青い空…花畑……幸せそうな人……。
あれはきっとODINが作り出した死者達の楽園……」(眉を潜めて悔しそうに俯く)
レルム「死者達の楽園……。……ねぇ、本当は、あなたもあの世界へ行きたいと思ってるんじゃない?」
古賀「それは…っ………!……そう考えていた時期は8年以上も昔の事で……、今の自分は『あの世界に行きたいと思わない』と決心を固めた……。
入院中に君にもそう言われて…。だから、俺はあの世界に行く必要はない…」(拳を握り締める)
レルム「決心を固めたってことは、そう思う心もまだあるって事じゃない。(複雑そうな表情をする)
……ねぇ、一つ聞いてもいいかしら?」
古賀「………いいよ」
レルム「妹さんが亡くなる前って、どんな風だったの?」
古賀「どんな、風……?妹の静香は、明るく元気で友達が沢山いて、テニスが上手な活発な女の子だった。
家族は仲が良くて……8年前、飛行機さえ墜落しなければ今も……」
レルム「本当に、大切だったのね……。あなたを8年間ずっと過去の中で生かすくらいに。……」
(そっと携帯の画面に触れて、何かをいいあぐねる様に黙りこむ)
古賀「レルム……。(黙ったレルムの姿を見て、思い切った表情でゆっくり口を開く)……あの時、あの楽園の中に静香が見えたんだ。
俺に向かって手を伸ばしているのが見えた。ホンモノのように。だから俺は、妹を撃ち殺したと…震えた」(両手の平を見つめる)
レルム「!(目を見開く)それで……あの時……。今まであなたに、ODINのやっている事は間違いだと言ってきたわ。
けど、間違っていても、心はそれを認めてくれない。人は思い出には勝てないという事を、ODINはよく知ってるわ……でも」(画面越しに真っ直ぐ見る
古賀「……………」(その言葉に画面から視線が反らせなくなる)
レルム「私は、あなたに生きて幸せになって欲しい。妹さんに代わる物なんて、これから先もない。
それでも、私はあなたを過去の中から引きずりだすわ。あなたを必要としているのは、過去の思い出だけじゃないって事を思い知らせてやるんだから」
古賀「(思いも寄らない表情で目を見開く)……っ…、レルム……」(ワーディングを張り、画面に手を差し出す)
レルム「……!」(驚いた表情をした後、画面から出てきて手を取る)
古賀「(両手を取って一呼吸する) …俺が過去に呑み込まれて行く先を見失ったら、君のその言葉を思い出すよ。
俺はレルムの声を聞き逃しはしない。名前を呼ばれれば、俺はここに帰ってくる。…必ず」
レルム「……あなたを信じてるわよ、雅也」(安心した様に微笑む)
古賀「(うなづく)………君のお陰が大きいよ。ありがとう。………。(少し考える)…ODINは人を守ろうとしているだけ。
それは誰しもが思う当たり前の感情で…。ODINの感情を否定せずに仮想世界に人間を移す行為を止める手段はないんだろうか…?」
レルム「……わからないわ。話して通じる相手ならそうすればいいとは思うのだけれど……。ODINは、自分の出した答えが絶対だと信じてる。
衝突は、避けられないでしょうね……」
古賀「ODINが人間を学習しているなら、説得の可能性はあると考えたんだけど…。力ずくで止めるしか方法はないって事か…。
レルム、電子世界で見えた樋浦彼方、村井博士、そして建造物…わかる範囲でいい。あそこから手掛かりを掴めそうかな?」
レルム「村井博士といえば……確か、UGNで軟禁されていたのよね?あの時見えた建造物と、その施設……調べて見れば、何か出てきそうね。
ふふ、機密情報だろうがなんだろうが、全部炙り出してやるわ」
古賀「(頼もしそうに少し笑う) そうなると情報は意外と近くに落ちていそうだ。ザッとした情報の洗い出しはプロの君に任せる事にする。
すぐに无ちゃんとケルカンさんに共有しよう!」
レルム「そうね。そうと決まれば、二人のところへ行きましょう」(古賀さんの手を引いて歩き始める
古賀「ちょ、レルム…!携帯に戻らずにこのまま行くの!?」(手を引かれつつ驚く)
レルム「あら?あなたが外に出したっていうのに、そんなに戻ってほしいの??」(悪戯っぽい笑みを浮かべて振り返る
古賀「(バツの悪そうな顔をする) うっ……。わかったわかった!ほら!俺が先に行く」(ややムッとしながらレルムの手を引いて足早に前を歩く)
レルム「!(少し驚きながらも、手を引かれたまま後をついていく)
……はいはい。ちゃんと連れてって頂戴ね」(クスクスと笑みを浮かべる |