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SCP-2113-JP

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&font(#6495ED){登録日}:2021/07/20 Tue 17:51:26 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 9 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&bold(){次元間に咲く紅い卒塔婆。}} SCP-2113-JPはシェアード・ワールド『[[SCP Foundation]]』に投稿された作品のひとつである。 収容等級はEuclidだったが、後に&font(b){収容が無期限に放棄されたオブジェクト}に適用されるKušumに変更された。 項目名は「そして目を閉じた」。 *特別収容手順 収容が放棄されたため、収容手順というものも現在は存在しないが、旧バージョンが記載されている。 その内容は極めて簡潔であり、以下の2文が全て。 ・PoI-8291はクラスE監視対象に指定し、2020/12/24に収容を行う。 ・PoI-8291は死後に臨床解剖を行い、PoI-8291に関する情報は1981年の多財団連盟協定に基づき、他タイムラインの財団組織に提供する。 「多財団連盟協定」という聞き慣れないワードが出てきたが、大雑把に解説すると、&bold(){[[各カノン>カノンハブ(SCP Foundation)]]の財団やそれに相当する組織が、タイムラインの垣根を越えて結んだ同盟}のこと。 この記事が初出ではなく、元を辿れば、2022年前後からENで進む大型プロジェクト「メタファウンデーション (Metafoundation) 」に関する概念。 複数のカノンやシリーズを相互にクロスオーバーさせ、より大きな「メガカノン」を作る試みなのだが、ここでは単に&u(){「このオブジェクトとPoI-8291という人物が、複数の世界・次元に関わっている」とだけ認識してもらえれば十分}である。 *概要 SCP-2113-JPは、あるタイムラインにおける[[Are We Cool Yet?>Are We Cool Yet?(SCP Foundation)]]の構成員、&ruby(どうぞの){堂薗} &ruby(りょう){了}氏(SCP-2113-JP-A-PRIME)が自殺に用いた1発の銃弾である。 その異常性を端的に説明すると「減速することなく移動し続ける」というもの。減速しないということは威力も保たれているということであり、銃弾は進路上のものを破壊しながら移動する。 宇宙にでも飛んで行ったら厄介だが、それだけで収容を無期限に放棄するほど、財団は甘くない。手の届かない場所に飛んで行ったとしても[[監視や警戒はする。>SCP-2872]] ではどういった要因が財団に収容を放棄させたのか。 既に説明したように、この銃弾は複数の世界・次元に関わる品である。 実はこの銃弾が移動しているのは大量に存在する堂薗氏の多次元同位体の中、正確に言えば&font(b){平行次元の堂薗氏にあたる全ての人物の脳組織内}なのである。 銃弾はどこかのタイムラインの堂薗氏の右脳に出現し、左側頭骨に到達すると、最も近接したタイムラインの堂薗氏の右脳に転移し、その堂薗氏を殺害する。これを繰り返すことで、平行次元の堂薗氏は将来的に全員死亡する。 このオブジェクトは言うなれば、&font(b,#ff0000){次元を越えて稼働する堂薗了自動鏖殺システム}なのである。 *堂薗氏の自殺 この壮大な無理心中とも言える事案のきっかけとなった自殺が起きたのは2020/12/18。場所はこの報告書が作成されたタイムラインにおける鳥取県米子市にあたる、北陽県弓ヶ浜市。 市内で起きた現実性低下事象を調査していた財団が堂薗氏の遺体を発見し、臨床解剖にて拳銃自殺したことが断定された。 その後、このオブジェクトの存在と自殺した堂薗氏の異常性が判明し、他タイムラインの財団に情報共有が行われた。 その異常性について説明する前に、堂薗氏たち(まとめてSCP-2113-JP-Aに分類されている)が共通して有する異常性を説明する必要がある。 全ての堂薗氏の後頭葉((人間の脳のうち、視覚や色彩の認識をつかさどる箇所。))には空間異常が発生しており、最も近接した次元の堂薗氏のものと重複していた。 そして自殺した堂薗氏はこれに加えて、この空間異常を利用してか、目を逸らすことで平行次元の自分の視覚情報を入手できる異常性を有していたらしい。 以下は自殺した堂薗氏の住居から回収された文書である。 >&font(b){タイトル:} このくそったれからの解脱 > >&font(b){必要素材:} >拳銃 1丁 (なんでもいい バーに行けば誰かから買えるだろ) >俺 > >&font(b){要旨:} 全ては一瞬で終わる。こめかみに銃を当てて引き金を引く。ただそれだけだ。 > >&font(b){意図:} これは全ての俺の終焉だ。そして銃砲で幕を上げる俺のいないcoolな世界だ。 > >俺は子供のころから目を逸らすと別の世界が見えた。重宝したよ、まっ暗な廃屋に閉じ込められた時とかな(目を逸らした先では殴られたりと結局散々な目に遭っていたが)。 > >俺はこの目を使ってそこそこいい大学に入った。だが駄目だった。退学した後、目を逸らした先で見た絵を見よう見まねで描いて売って暮らしていた。元々ゲージュツに興味がないせいか、目を逸らした先の俺はロクに絵を見ない。だからもっと目を逸らして新しい絵をパクった。 > >目を逸らして目を逸らして目を逸らした。そのたびにクソみてぇな自分の人生を思い知らされた。それでも目を逸らし続けた。売った絵はそれなりの値が付いた。だが目を逸らした先で見たホンモノとは比べものにならないくらい低い評価だった。もう三十路を越えた自分にも誰にも慕われない自分にも画家としてクソみてぇな自分にも目を逸らした。もうどこが元々いた世界なのか分からなくなるくらい目を逸らし続けた。目を逸らして目を逸らして目を逸らした。 > >そしてある日俺は気付いた。気付いてしまった。どこの俺もクソみてぇな生活しかしてないことを。他の俺はこの目を持っていないようで、だいたいが周りに迷惑をかけながら死んだほうがマシな暮らしをしていた。大したおつむを持っていないからアタリマエだ。 > >それでも最初は嘘だと思った。少しは希望もあった。だから目を逸らし続けた。そして目を閉じた。開いた時には現実を見ていた。もう1つしか道はなかった。 > >この最高にcoolじゃない”俺”を殺せば世界は少しcoolになる。 > >Are We Cool Yet? なんてとても言えねぇな。 堂薗氏は子供のころから、その異常性を使って現実から目を背けることがあった。大学を去ってからは、生活費を稼ぐために別次元の絵を模倣した。 受け取れるのは視覚情報に限定されていたが、目を逸らす度に「クソみてぇな生活」を送っていると嫌でも悟るような光景が視界に映った。 堂薗氏はどの世界が自分の存在する現実なのかもわからなくなるほど目を逸らし続けた。生きていけるだけの金は稼げたようだが、目で見た完成品を模倣しただけでしかないそれは、オリジナルよりも高い評価を得ることはなかった。 そうして平行次元を観測する堂薗氏自身も齢を重ね、遂にはその自分からも目を逸らし始める。やがて堂薗氏は、観測したどの次元においても、自分は心から満足できることのない「死んだほうがマシな暮らし」をしていることに気付いてしまう。 それでも諦めず、どこかの次元には成功した自分もいるはずだという僅かばかりの希望を抱いて目を逸らし続けたが、結果は散々だった。 途中で心が折れてしまったのか、それとも全ての次元の自分を観測して希望を失ってしまったのか。 いずれにせよ自分に絶望し、目を閉じて現実に帰ってきた堂薗氏は、別のタイムラインに生きる全ての自分を巻き込んでの自殺を決行するに至ったのだ。 *PoI-8291 堂薗氏はどの次元においてもcoolでない自分を消すために自殺した。そしてこの報告書が書かれたタイムラインにも、堂薗氏の多次元同位体は存在していた。PoI-8291に指定されている日本人男性の&ruby(ほそみ){細見} &ruby(けいご){恵吾}氏である。 後頭葉の空間異常を除けば、細見氏にはAWCY?を含む超常団体や異常存在との接点は一切ない。プロフィールもごく普通で、千葉県舟橋市唐品町8に住み、市役所に勤め、妻と二人の息子の四人で共に暮らしている。 だが、平行次元の自分であるというだけで、堂薗氏に殺されることが決まっていた。 その死亡予測時刻は2020/12/24の20時12分。細見氏は最も警戒度の低いクラスE監視対象としてマークされ、予測時刻の6時間前に財団に収容された。 そして迎えた20時12分、細見氏は予測通りに死亡した。家族などの関係者には記憶処理が施され、カバーストーリー「轢き逃げ」が適用された。 平行次元の堂薗氏を殺害するという役目を果たした銃弾は、二度とこの次元に現れることはない。二度と現れないものを収容する必要も、警戒する必要もない。 後のことはまだ堂薗氏の同位体が生きている次元に任せればいい。というわけで、2020/12/25をもってSCP-2113-JPはKušumに再分類された。 *嘘のコンテスト ここで報告書は終わりだが、1つ伏せていたことがある。タグにも目を通していたなら既にお気づきかと思うが、この作品は&bold(){「嘘のコンテスト2020」}の参加作品である。 「嘘という漢字が含有するありとあらゆる嘘」をテーマとした作品が多数投稿されており、有名なものとしては[[SCP-2144-JP]]や[[SCP-2616-JP]]が挙げられる。 ではこの報告書のどこに「嘘」要素があるのか。 財団は適切な資格を持たない職員に偽の報告書を見せる(=これが事実だと嘘をつく)こともあるし、細見氏の関係者にそうしたように、カバーストーリーという嘘を拡散して事実を隠蔽することもある。 また、この記事の著者は「千葉県舟橋市唐品町」という、我々の知る千葉県船橋市とは異なる架空の地名を登場させている。一方、それより先に言及された鳥取県米子市はこの次元にも存在している。 非常に強引で乱暴な言い方だが、これは著者(および著者により執筆された財団)が読者に「『この報告書は我々の住むこの次元で書かれたものである』と勘違いさせた(≒嘘をついた)」とも言えなくもない。 しかし、報告書では「アイテム番号」「[[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(SCP Foundation)]]」「特別収容プロトコル」という見慣れた用語の代わりに「異常指定」「収容等級」「特別収容手順」といった独自の用語が初っ端から用いられており、この説はいささか無理があるだろう。 だがこの作品にはもう一人、嘘をついている可能性がある人物がいる。&bold(){自殺した堂薗氏である。} 既に説明したように、堂薗氏はあらゆる平行次元に目を逸らし、どの次元でも自分がcoolになれず「クソみてぇな生活」を送っていると知り自殺した。 しかし、この報告書が作成された次元の堂薗氏にあたる細見氏は、結婚して二人の息子を授かった公務員である。 堂薗氏の価値観や細見氏の生活などについては報告書に書かれていないため知る術はないが、&bold(){これは本当に堂薗氏にとって「クソみてぇな生活」だったのだろうか。} 細見氏という一例だけ見て決めつけるのは危ういが、そう考えると、堂薗氏がついたかもしれない嘘の内容が見えてくる。 それは、自殺の動機が&font(b){「coolでない自分という存在への絶望」ではなく「平行次元の恵まれた自分への嫉妬」という可能性}である。 堂薗氏は自分が置かれた現実から目を逸らし続けた。しかし目を逸らした先の自分が見ていた光景は、幸せを感じさせるものだった。それでも自尊心を保とうと、自分より惨めな自分がいるはずだと「希望」を持って更に目を逸らした。 しかし、求める光景は見えなかった。30代の孤独な贋作絵師である自分よりも惨めな自分はいなかった。 その事実に耐えられなくなった堂薗氏はこれ以上幸せな自分を見ないように目を閉じ、この現実から永遠に逃れるため、そして自分にはない幸福を享受している平行次元の自分を皆殺しにするために銃弾を生み出した…と考えることもできる。 あるいは、財団が発見した時点で堂薗氏が死亡していた(=財団に堂薗氏の異常性を検証する術がなかった)ことに着目してもいい。 堂薗氏が平行次元を観測できていたのは間違いないが、そこには「観測できるのは同位体が自分よりも惨めな生活を送っている次元のみ」といった&bold(){何らかの条件が存在していた可能性}もある。 現実から目を逸らせばこうなってしまうという教訓か、はたまた下を見て悦に入るためか。 理不尽・不条理が基本の異常性、それも先天的なものに明確な意図を求めるのもおかしな話だが、堂薗氏は最期までその正確な性質を把握できていなかったのかもしれない。 無論、これは絶対的な答えではなく、解釈の一つに過ぎない。この項目を読んだ方々も、よければこの作品の嘘について考えてみてほしい。 追記・修正は目を逸らすことなくお願いします。 ---- #right(){CC BY-SA 3.0に基づく表示 SCP-2113-JP - そして目を閉じた by sendoh-oroka http://ja.scp-wiki.net/scp-2113-jp 嘘のコンテスト2020 by 嘘のコンテスト運営委員会 http://scp-jp.wikidot.com/usocontest2020-hub この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。 } #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,16) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 一つだけ言えることは、オリジナル堂薗氏許すまじということだ(--# -- 名無しさん (2021-07-20 18:18:47) - 許しても許さなくても本人は死んでしまったのだから関係ないだろう。ただやるせなさが残るのみ。 -- 名無しさん (2021-07-20 19:13:20) - タスクact4みたいな能力してるな。同じ銃弾を逆回転でぶつけたら相殺できたりしない? -- 名無しさん (2021-07-20 22:51:27) - まぁ自己完結してくれるだけマシな部類 -- 名無しさん (2021-07-21 06:36:29) - 「売った絵はそれなりの値が付いた。だが目を逸らした先で見たホンモノとは比べものにならないくらい低い評価だった」ってことは、本物を書いた堂薗氏は画家としてそれなりに評価されてたことになる。他次元の自分に嫉妬したって線はあると思う -- 名無しさん (2021-07-21 07:11:44) - 公務員やってたりロクに絵を見ないとか書かれているあたり、平行世界で画家やってる堂園氏は居ないんじゃないか。あと平行世界の堂園氏で自分の能力に気付いている人はいたのかな? -- 名無しさん (2021-07-21 12:18:22) - クリスマスイブに父親が「交通事故」で死んだ家族が辛いだろうな。きっと普段と違うモノやケーキを食べ、翌朝までにサンタの仕込みをして、子供達の笑顔と歓声で朝を迎えるかもしれなかったんだ。でもそうはならなかった。あるのは数日後の葬式だけ。 -- 名無しさん (2021-07-22 01:53:19) - さて、俺らがこいつの平行存在でないことをどのように証明するのかな? -- 名無しさん (2021-07-22 10:00:54) - 並行存在はすでに名前が違うのがいるし年齢も性別すらもあてにならないのかね -- 名無しさん (2021-07-22 19:32:00) - ↑そういう意味では 「嘘」みたいな生活をしている別の自分…って解釈もできるなぁこれ。 -- 名無しさん (2025-05-18 16:02:35) - アイテム番号が「異常指定」、オブジェクトクラスが「収容等級」、特別収容プロトコルが「特別収容手順」など用語が他の多くの報告書と異なるので並行世界で書かれた報告書である可能性は否定できない -- 名無しさん (2025-08-12 15:47:22) - 改稿を反映しました -- 名無しさん (2025-11-23 14:06:57) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2021/07/20 Tue 17:51:26 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 9 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&bold(){次元間に咲く紅い卒塔婆。}} SCP-2113-JPはシェアード・ワールド『[[SCP Foundation]]』に投稿された作品のひとつである。 収容等級はEuclidだったが、後に&font(b){収容が無期限に放棄されたオブジェクト}に適用されるKušumに変更された。 項目名は「そして目を閉じた」。 *特別収容手順 収容が放棄されたため、収容手順というものも現在は存在しないが、旧バージョンが記載されている。 その内容は極めて簡潔であり、以下の2文が全て。 ・PoI-8291はクラスE監視対象に指定し、2020/12/24に収容を行う。 ・PoI-8291は死後に臨床解剖を行い、PoI-8291に関する情報は1981年の多財団連盟協定に基づき、他タイムラインの財団組織に提供する。 「多財団連盟協定」という聞き慣れないワードが出てきたが、大雑把に解説すると、&bold(){[[各カノン>カノンハブ(SCP Foundation)]]の財団やそれに相当する組織が、タイムラインの垣根を越えて結んだ同盟}のこと。 この記事が初出ではなく、元を辿れば、2022年前後からENで進む大型プロジェクト「メタファウンデーション (Metafoundation) 」に関する概念。 複数のカノンやシリーズを相互にクロスオーバーさせ、より大きな「メガカノン」を作る試みなのだが、ここでは単に&u(){「このオブジェクトとPoI-8291という人物が、複数の世界・次元に関わっている」とだけ認識してもらえれば十分}である。 *概要 SCP-2113-JPは、あるタイムラインにおける[[Are We Cool Yet?>Are We Cool Yet?(SCP Foundation)]]の構成員、&ruby(どうぞの){堂薗} &ruby(りょう){了}氏(SCP-2113-JP-A-PRIME)が自殺に用いた1発の銃弾である。 その異常性を端的に説明すると「減速することなく移動し続ける」というもの。減速しないということは威力も保たれているということであり、銃弾は進路上のものを破壊しながら移動する。 宇宙にでも飛んで行ったら厄介だが、それだけで収容を無期限に放棄するほど、財団は甘くない。手の届かない場所に飛んで行ったとしても[[監視や警戒はする。>SCP-2872]] ではどういった要因が財団に収容を放棄させたのか。 既に説明したように、この銃弾は複数の世界・次元に関わる品である。 実はこの銃弾が移動しているのは大量に存在する堂薗氏の多次元同位体の中、正確に言えば&font(b){平行次元の堂薗氏にあたる全ての人物の脳組織内}なのである。 銃弾はどこかのタイムラインの堂薗氏の右脳に出現し、左側頭骨に到達すると、最も近接したタイムラインの堂薗氏の右脳に転移し、その堂薗氏を殺害する。これを繰り返すことで、平行次元の堂薗氏は将来的に全員死亡する。 このオブジェクトは言うなれば、&font(b,#ff0000){次元を越えて稼働する堂薗了自動鏖殺システム}なのである。 *堂薗氏の自殺 この壮大な無理心中とも言える事案のきっかけとなった自殺が起きたのは2020/12/18。場所はこの報告書が作成されたタイムラインにおける鳥取県米子市にあたる、北陽県弓ヶ浜市。 市内で起きた現実性低下事象を調査していた財団が堂薗氏の遺体を発見し、臨床解剖にて拳銃自殺したことが断定された。 その後、このオブジェクトの存在と自殺した堂薗氏の異常性が判明し、他タイムラインの財団に情報共有が行われた。 その異常性について説明する前に、堂薗氏たち(まとめてSCP-2113-JP-Aに分類されている)が共通して有する異常性を説明する必要がある。 全ての堂薗氏の後頭葉((人間の脳のうち、視覚や色彩の認識をつかさどる箇所。))には空間異常が発生しており、最も近接した次元の堂薗氏のものと重複していた。 そして自殺した堂薗氏はこれに加えて、この空間異常を利用してか、目を逸らすことで平行次元の自分の視覚情報を入手できる異常性を有していたらしい。 以下は自殺した堂薗氏の住居から回収された文書である。 >&font(b){タイトル:} このくそったれからの解脱 > >&font(b){必要素材:} >拳銃 1丁 (なんでもいい バーに行けば誰かから買えるだろ) >俺 > >&font(b){要旨:} 全ては一瞬で終わる。こめかみに銃を当てて引き金を引く。ただそれだけだ。 > >&font(b){意図:} これは全ての俺の終焉だ。そして銃砲で幕を上げる俺のいないcoolな世界だ。 > >俺は子供のころから目を逸らすと別の世界が見えた。重宝したよ、まっ暗な廃屋に閉じ込められた時とかな(目を逸らした先では殴られたりと結局散々な目に遭っていたが)。 > >俺はこの目を使ってそこそこいい大学に入った。だが駄目だった。退学した後、目を逸らした先で見た絵を見よう見まねで描いて売って暮らしていた。元々ゲージュツに興味がないせいか、目を逸らした先の俺はロクに絵を見ない。だからもっと目を逸らして新しい絵をパクった。 > >目を逸らして目を逸らして目を逸らした。そのたびにクソみてぇな自分の人生を思い知らされた。それでも目を逸らし続けた。売った絵はそれなりの値が付いた。だが目を逸らした先で見たホンモノとは比べものにならないくらい低い評価だった。もう三十路を越えた自分にも誰にも慕われない自分にも画家としてクソみてぇな自分にも目を逸らした。もうどこが元々いた世界なのか分からなくなるくらい目を逸らし続けた。目を逸らして目を逸らして目を逸らした。 > >そしてある日俺は気付いた。気付いてしまった。どこの俺もクソみてぇな生活しかしてないことを。他の俺はこの目を持っていないようで、だいたいが周りに迷惑をかけながら死んだほうがマシな暮らしをしていた。大したおつむを持っていないからアタリマエだ。 > >それでも最初は嘘だと思った。少しは希望もあった。だから目を逸らし続けた。そして目を閉じた。開いた時には現実を見ていた。もう1つしか道はなかった。 > >この最高にcoolじゃない”俺”を殺せば世界は少しcoolになる。 > >Are We Cool Yet? なんてとても言えねぇな。 堂薗氏は子供のころから、その異常性を使って現実から目を背けることがあった。大学を去ってからは、生活費を稼ぐために別次元の絵を模倣した。 受け取れるのは視覚情報に限定されていたが、目を逸らす度に「クソみてぇな生活」を送っていると嫌でも悟るような光景が視界に映った。 堂薗氏はどの世界が自分の存在する現実なのかもわからなくなるほど目を逸らし続けた。生きていけるだけの金は稼げたようだが、目で見た完成品を模倣しただけでしかないそれは、オリジナルよりも高い評価を得ることはなかった。 そうして平行次元を観測する堂薗氏自身も齢を重ね、遂にはその自分からも目を逸らし始める。やがて堂薗氏は、観測したどの次元においても、自分は心から満足できることのない「死んだほうがマシな暮らし」をしていることに気付いてしまう。 それでも諦めず、どこかの次元には成功した自分もいるはずだという僅かばかりの希望を抱いて目を逸らし続けたが、結果は散々だった。 途中で心が折れてしまったのか、それとも全ての次元の自分を観測して希望を失ってしまったのか。 いずれにせよ自分に絶望し、目を閉じて現実に帰ってきた堂薗氏は、別のタイムラインに生きる全ての自分を巻き込んでの自殺を決行するに至ったのだ。 *PoI-8291 堂薗氏はどの次元においてもcoolでない自分を消すために自殺した。そしてこの報告書が書かれたタイムラインにも、堂薗氏の多次元同位体は存在していた。PoI-8291に指定されている日本人男性の&ruby(ほそみ){細見} &ruby(けいご){恵吾}氏である。 後頭葉の空間異常を除けば、細見氏にはAWCY?を含む超常団体や異常存在との接点は一切ない。プロフィールもごく普通で、千葉県舟橋市唐品町8に住み、市役所に勤め、妻と二人の息子の四人で共に暮らしている。 だが、平行次元の自分であるというだけで、堂薗氏に殺されることが決まっていた。 その死亡予測時刻は2020/12/24の20時12分。細見氏は最も警戒度の低いクラスE監視対象としてマークされ、予測時刻の6時間前に財団に収容された。 そして迎えた20時12分、細見氏は予測通りに死亡した。家族などの関係者には記憶処理が施され、カバーストーリー「轢き逃げ」が適用された。 平行次元の堂薗氏を殺害するという役目を果たした銃弾は、二度とこの次元に現れることはない。二度と現れないものを収容する必要も、警戒する必要もない。 後のことはまだ堂薗氏の同位体が生きている次元に任せればいい。というわけで、2020/12/25をもってSCP-2113-JPはKušumに再分類された。 *嘘のコンテスト ここで報告書は終わりだが、1つ伏せていたことがある。タグにも目を通していたなら既にお気づきかと思うが、この作品は&bold(){「嘘のコンテスト2020」}の参加作品である。 「嘘という漢字が含有するありとあらゆる嘘」をテーマとした作品が多数投稿されており、有名なものとしては[[SCP-2144-JP]]や[[SCP-2616-JP]]が挙げられる。 ではこの報告書のどこに「嘘」要素があるのか。 財団は適切な資格を持たない職員に偽の報告書を見せる(=これが事実だと嘘をつく)こともあるし、細見氏の関係者にそうしたように、カバーストーリーという嘘を拡散して事実を隠蔽することもある。 また、この記事の著者は「千葉県舟橋市唐品町」という、我々の知る千葉県船橋市とは異なる架空の地名を登場させている。一方、それより先に言及された鳥取県米子市はこの次元にも存在している。 非常に強引で乱暴な言い方だが、これは著者(および著者により執筆された財団)が読者に「『この報告書は我々の住むこの次元で書かれたものである』と勘違いさせた(≒嘘をついた)」とも言えなくもない。 しかし、報告書では「アイテム番号」「[[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(SCP Foundation)]]」「特別収容プロトコル」という見慣れた用語の代わりに「異常指定」「収容等級」「特別収容手順」といった独自の用語が初っ端から用いられており、この説はいささか無理があるだろう。 だがこの作品にはもう一人、嘘をついている可能性がある人物がいる。&bold(){自殺した堂薗氏である。} 既に説明したように、堂薗氏はあらゆる平行次元に目を逸らし、どの次元でも自分がcoolになれず「クソみてぇな生活」を送っていると知り自殺した。 しかし、この報告書が作成された次元の堂薗氏にあたる細見氏は、結婚して二人の息子を授かった公務員である。 堂薗氏の価値観や細見氏の生活などについては報告書に書かれていないため知る術はないが、&bold(){これは本当に堂薗氏にとって「クソみてぇな生活」だったのだろうか。} 細見氏という一例だけ見て決めつけるのは危ういが、そう考えると、堂薗氏がついたかもしれない嘘の内容が見えてくる。 それは、自殺の動機が&font(b){「coolでない自分という存在への絶望」ではなく「平行次元の恵まれた自分への嫉妬」という可能性}である。 堂薗氏は自分が置かれた現実から目を逸らし続けた。しかし目を逸らした先の自分が見ていた光景は、幸せを感じさせるものだった。それでも自尊心を保とうと、自分より惨めな自分がいるはずだと「希望」を持って更に目を逸らした。 しかし、求める光景は見えなかった。30代の孤独な贋作絵師である自分よりも惨めな自分はいなかった。 その事実に耐えられなくなった堂薗氏はこれ以上幸せな自分を見ないように目を閉じ、この現実から永遠に逃れるため、そして自分にはない幸福を享受している平行次元の自分を皆殺しにするために銃弾を生み出した…と考えることもできる。 あるいは、財団が発見した時点で堂薗氏が死亡していた(=財団に堂薗氏の異常性を検証する術がなかった)ことに着目してもいい。 堂薗氏が平行次元を観測できていたのは間違いないが、そこには「観測できるのは同位体が自分よりも惨めな生活を送っている次元のみ」といった&bold(){何らかの条件が存在していた可能性}もある。 現実から目を逸らせばこうなってしまうという教訓か、はたまた下を見て悦に入るためか。 理不尽・不条理が基本の異常性、それも先天的なものに明確な意図を求めるのもおかしな話だが、堂薗氏は最期までその正確な性質を把握できていなかったのかもしれない。 無論、これは絶対的な答えではなく、解釈の一つに過ぎない。この項目を読んだ方々も、よければこの作品の嘘について考えてみてほしい。 追記・修正は目を逸らすことなくお願いします。 ---- #right(){CC BY-SA 3.0に基づく表示 SCP-2113-JP - そして目を閉じた by sendoh-oroka http://ja.scp-wiki.net/scp-2113-jp 嘘のコンテスト2020 by 嘘のコンテスト運営委員会 http://scp-jp.wikidot.com/usocontest2020-hub この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。 } #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,16) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 一つだけ言えることは、オリジナル堂薗氏許すまじということだ(--# -- 名無しさん (2021-07-20 18:18:47) - 許しても許さなくても本人は死んでしまったのだから関係ないだろう。ただやるせなさが残るのみ。 -- 名無しさん (2021-07-20 19:13:20) - タスクact4みたいな能力してるな。同じ銃弾を逆回転でぶつけたら相殺できたりしない? -- 名無しさん (2021-07-20 22:51:27) - まぁ自己完結してくれるだけマシな部類 -- 名無しさん (2021-07-21 06:36:29) - 「売った絵はそれなりの値が付いた。だが目を逸らした先で見たホンモノとは比べものにならないくらい低い評価だった」ってことは、本物を書いた堂薗氏は画家としてそれなりに評価されてたことになる。他次元の自分に嫉妬したって線はあると思う -- 名無しさん (2021-07-21 07:11:44) - 公務員やってたりロクに絵を見ないとか書かれているあたり、平行世界で画家やってる堂園氏は居ないんじゃないか。あと平行世界の堂園氏で自分の能力に気付いている人はいたのかな? -- 名無しさん (2021-07-21 12:18:22) - クリスマスイブに父親が「交通事故」で死んだ家族が辛いだろうな。きっと普段と違うモノやケーキを食べ、翌朝までにサンタの仕込みをして、子供達の笑顔と歓声で朝を迎えるかもしれなかったんだ。でもそうはならなかった。あるのは数日後の葬式だけ。 -- 名無しさん (2021-07-22 01:53:19) - さて、俺らがこいつの平行存在でないことをどのように証明するのかな? -- 名無しさん (2021-07-22 10:00:54) - 並行存在はすでに名前が違うのがいるし年齢も性別すらもあてにならないのかね -- 名無しさん (2021-07-22 19:32:00) - ↑そういう意味では 「嘘」みたいな生活をしている別の自分…って解釈もできるなぁこれ。 -- 名無しさん (2025-05-18 16:02:35) - アイテム番号が「異常指定」、オブジェクトクラスが「収容等級」、特別収容プロトコルが「特別収容手順」など用語が他の多くの報告書と異なるので並行世界で書かれた報告書である可能性は否定できない -- 名無しさん (2025-08-12 15:47:22) - 改稿を反映しました -- 名無しさん (2025-11-23 14:06:57) - clear all 堂薗了 -- 名無しさん (2026-09-21 16:41:18) #comment #areaedit(end) }

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