とら(うしおととら)

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とら(うしおととら) - (2020/07/07 (火) 19:05:03) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/01/27(木) 01:42:51
更新日:2024/02/26 Mon 19:49:51
所要時間:約 8 分で読めます





小僧、この槍を抜きな!


とらとは、藤田和日郎が描いた漫画『うしおととら』の主人公の一人。

CV:大塚周夫(OVA)、小山力也(テレビアニメ)

かつて日本各地で暴れまわり多くの人々を殺め里を焼き、当時近隣諸国の恐怖の対象とされた残虐な妖怪。
獣の槍を持つ侍との戦いに敗れ、以降500年もの間槍とともに自然石に縫いとめられていた。
もう一人の主人公、蒼月潮(うしお)により槍が引き抜かれてからは憎い槍をふるううしおに取り憑き、喰い殺す機会を得んとして行動を供にする。
「とら」はその際うしおがつけた呼び名。


体は金色の体毛に覆われ顔にはくまどりがあり、背部全体を覆うほど伸びた朱色の毛はときおり電気を帯びる。
総じて大型の猫科動物を想わせるその身は驚くほど俊敏に動き、パワーにも優れ車や建物の壁を一撃で破壊するほどの怪力。
火炎を吐き雷を操る他に自然物を透過して動くなど特殊な技能も多く有する。
更に真っ二つにされようがトンネルの瓦礫に潰されようとも平然と動けるタフネスに加え、人間の考えを理解する高い知能を持つ強力な妖怪。

獣の槍とともにこの妖怪を監視してきた仏門光覇明宗にも数多くの記録が残され、
少なくとも2000年以上前に今の中国で発生した強力な妖怪として危険視されている。

また妖怪の間でもかつてとらが呼ばれた「長飛丸」の名は有名であり、
無敵を誇ったその強さと残虐な気性を併せ年経た妖怪の中では現代においてなお伝説となっている。
一方で封印されていた年月が長かったため、年若い妖には知られていない事も多い。
大体「じじい」とか「無名」呼ばわりされてキレる。

かつては怪しまれず獲物に近づくため人間に変化し人里に降りることもあったため、
昔気質の妖怪に似ず当時の世俗にも明るく、人間の歴史や文化などもある程度理解している。
その際他の妖怪の噂や文献も見聞きしており、うしおの学校に現れた『石喰い』や、
二代目のお役目様である日崎御門に封じられた『餓眠さま』など、物語中様々な場面でその博識ぶりを見せた。
また大陸や西洋の妖などもある程度精通している。
現代に復活してからは自分がいた時代より進んだ文明に驚きつつも次第に順応していく。


当初はうしおを喰い殺すため取り憑いていたが、生来の性分により危険なことに自分から首を突っ込むうしおを、
他の妖怪に殺されまいとして妖怪退治に協力するうち、単純だが真っ直ぐなうしおとの間に徐々に奇妙な友情のようなものが芽生えていく。

ちなみに物語序盤ではうしおを殺すため人間を食らい力を取り戻そうとした際、街でたまたま見かけたうしおの幼なじみである井上真由子に目をつけたが失敗に終わった。
このとき紆余曲折を経て真由子から手渡されたハンバーガーを大変気に入り、以降いつかうしおや真由子を喰らうことを夢見つつもハンバーガーが大好物となる。

「わし、『てれ焼き』ばっかな! 『てれ焼き』10個!」

これを境に真由子からは大変に気に入られ、度々うしおの家を訪ねては、
「とらちゃん」にハンバーガーを与える真由子の姿を見ることができるほか、封印される以前偶然助けた鳥妖や、
北海道を目指した旅で出会った女鎌鼬・かがりなど、密かに想いを寄せられることが多く、なかなかどうしてモテモテである。


が、そうしたとらに興味を抱く者も当然多く、その意図は単純な興味から訝しみ、研究目的まで様々である。
特に光覇明宗槍の伝承候補である秋葉流はとらに相当の入れ込みを見せ、戦いの中でそれを見いだそうとしたものの敗北。
決着の後も作中様々な形でとらとの接点を持った。

【以下ネタバレ】







主人公の一人である「とら」は、物語の進行役という役目以上に、
物語を語る上で避けられない「獣の槍」と「白面の者」の二つのキーワードに非常に深い関係を持つキャラクターである。

現代から2500年前のインドにシャガクシャという英雄がいた。
その勇猛な戦いぶりで幾度も国を護り、シャガクシャ一人が先頭に立つだけで敵兵は逃げ散るほど強かった。
シャガクシャの強さの源は『憎しみ』。生まれたとき家に流れ星が落ち、シャガクシャの他は皆死んだと噂され、
「呪われた子」と呼ばれ怖れられ、たった一人で生きてきた者が持つ全てに向けられた憎しみだった。

歴戦の勇者として褒め称えらるようになっても憎しみは消えず、シャガクシャを英雄に祭り上げ自らの保身を図る民衆を憎悪し続けた。

しかしある時、従者となった無垢な少年とその姉の優しさがシャガクシャの心に変化を与える。
姉弟に触れるたびシャガクシャに募っていた憎しみは薄らぎ、安らぎという感情を初めて感じていた。


だが時は戦乱の只中、シャガクシャの国が闘っていた相手は強大な国であり、
ある日敵の一斉攻撃の報を聞くとシャガクシャは姉弟たちと3人で逃げることを決意する。
が、連れていた姉は守りきれず矢に貫かれ目の前で命を落としてしまう。

最愛の者を奪った敵への怒りと憎しみはかつてないほど膨らみ続け、
血の涙を流し自らも矢の塊のような体になりながら敵を全て殺し尽くすと、肩に激しい痛みを覚えた。
シャガクシャが抑える隙もなく一瞬肩が膨らむと、まるで脱皮するように九つの尾を持つ獣が飛び出した。

■白面の者

全てはいまだ形を持たぬ白面の、直に血を味わい、恐怖を喰らうための試みだった。
赤子に憑きその中で現身を得、憎しみを食らい力をつけるため、たまたま近くにいたシャガクシャを選んだのだった。
白面の者が早速望みを叶えるべく飛び上がると、シャガクシャも消沈のまま少年を探しに国に戻った。

既に国は激しく燃えさかり動くものはなにもなく、やっと見つけた少年も瀕死だった。
少年は国民が最後まで英雄シャガクシャを信じて戦い、シャガクシャへの謝意の念を口にして倒れていったことを告げると息を引き取った。
燃えさかる街の中後悔の念に捕らわれ少年を抱きしめるシャガクシャの前に現れた白面は告げる。

「我はお前の中で身を作った。
お前はすでにヒトではなく、
もう死ぬることはない」

そう言うと次の国滅ぼすため、白面は消えていった。

シャガクシャは姉弟の復讐のため白面を求め旅に出た。
白面の噂のあるところを探しまわる長い旅の中、今の中国でとある噂を耳にする。
どんな妖怪も消滅させるという獣の槍。

それからシャガクシャは獣の槍を求め方々を探しまわり、白天山の奥深くでついに赤布に封印された獣の槍を手に入れる。
白面を世に生み出してから実に800年後のことであった。


■獣の槍

魂を喰らうかわり使い手にどんな妖怪も滅する力を与えるという最強の妖器物。
槍を使うたび使い手は獣となっていき、最期はただ妖怪を滅するだけのものになるという。

実は槍によって魂を使い果たし、人間であったことすらも忘れてしまった者の姿こそ「とら」である。
人であった頃の意識や記憶、自分の名すらも忘れた者が「字伏」となり、魂を槍の怨念に塗りつぶされ白面の者を倒すことのみを望む存在となる。
他の字伏(槍の使い手)たちと違い「とら」が自らの考えを持ち行動することが可能なのは、まさに憎むべき白面と「とら」が同じ存在であることに由来する。
※紅煉はそのための力を白面から与えられたため例外。



物語終盤、白面との決戦の中でにわかに己の記憶を取り戻したとらはうしおや他の妖怪や字伏、
人間たちと共に白面を追い詰めこれに勝利したが、同じ存在である白面が消滅したことにより自らも光に包まれ消滅した。

「バカヤロウとら、消えるんじゃねぇよぉ。お前は!! おれを食うんだろ!! とらぁぁぁ!!」

「もう……食ったさ。腹ぁ……いっぱいだ」


エピローグで雲外鏡が土に返っても生き返るのが妖怪と述べ、最後のコマでは青空をバックにうしおととらのいつものやりとり(セリフのみ)が描かれるが、これは過去の一コマなのかそれともとらが復活したのか明言されておらず、完全に読者の想像に委ねる形になっている。



「ばかな……」

「我は不死のはず、我は無敵のはず」

「我を憎むお前のある限り……Wiki篭もりィィィ!!」


「あいにくだったなァ……どういうワケだかわしはもう、お前を憎んでねえんだよ」

「憎しみは、なんにも実らせねえ」

「追記修正してやるぜ」

「スレマゲ!」

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