SCP-903-JP

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SCP-903-JP - (2019/04/12 (金) 23:07:24) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/04/26 (水) 13:29:08
更新日:2024/04/12 Fri 11:50:33
所要時間:約 3 分で読めます






SCP-903-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつである。
オブジェクトクラスはEuclid。

項目名は「Mr.コジロウ feat.愉快なダンサー」。



概要

コイツが何かというと、認識災害のベクターであるメスのホンドタヌキである。
個体としては、同種の他のタヌキよりも首の関節が柔軟に動く程度。

コイツの引き起こす認識災害だが、ただコイツを見ただけでは発生しない。
このタヌキ、時折いわゆる「土下座」の体勢を取ることがあるのだ。知覚能力を持った生物がこれを見ると、「踊ることは素晴らしい」というミーム災害に曝露し、その場で踊り始める。
これは記憶処理によっても影響を消すことが出来ない。こうなった生物はSCP-903-JP-1と分類されている。
で、このタヌキ=SCP-903-JPだが、メスにも関わらずSCP-903-JP-1達から「Mr.コジロウ」と呼ばれているのが特徴である。

暴露した生物はその場で踊り出すが、肉体の構造としてダンスに向いていない動物は多い。
そういう場合、体の一部に強化が施され、問題なく踊れるようになるのである。
現在、曝露した生物は財団が確保している限りで125個体だが、この中には収容時に曝露してしまった人間や、生物型のSCPオブジェクトまで含まれている。
範囲広過ぎる。


こうして認識災害を受けた「ダンサー」達は、その場でひとしきり踊った後、別の曝露者を探してグループを作る。
構成人数は少なくて12個体、多ければ69個体と結構大規模であり、現在4つのグループが確認されている。

ちなみにこの「ダンサー」、四六時中踊っているわけだが強制されているわけではなく自意識によるもので、疲れれば休んで寝るし、空腹になれば食事もする。
要するに、日常における空いた時間を全部踊りに費やすわけである。


愉快なダンサーたち

SCP-903-JPに曝露した「ダンサー」たちの例がこちら。付記しておくと、これらの個体は認識災害のベクターとしての能力はない。

  • SCP-903-JP-1-1
四本の脚が強化されたイエネコ。立ち上がってフラダンスを踊っている。

  • SCP-903-JP-1-2
体幹が発達したイエネコ。棒のない状態での、いわばエア・ポールダンスを踊っている。
元記事の写真はこの個体を撮った物である。

  • SCP-903-JP-1-6と7
下半身が発達した二頭のブタ。創作ダンスを踊っている。

  • SCP-903-JP-1-25
初期収容時に曝露してしまった人間。体幹が強化され、非常に高度な器械体操を行っている。曝露以前はこんなことは出来なかったらしい。

  • SCP-903-JP-1-58
ヒレと肺が異常に発達し、陸上活動が可能となったキハダマグロ。陸・水問わずシンクロナイズドスイミングが可能。

  • SCP-903-JP-1-79
アシダカグモ。強化されたところは特にない。ブレイクダンスを勢い良く踊っているが、足が多すぎるためかたまーに絡まってコケる。

  • SCP-903-JP-1-94
下半身を中心に全身が強化されたアミメキリン。二足歩行でロボットダンスを踊っている。ちなみに元々は動物園から脱走した個体。

  • SCP-XXX-JP
既存の生物の特徴を持たない軟体生物。生物系のオブジェクトで、自身の肉体の変化を、周囲30m以内の人間に反映させる異常性を持つ。財団が発見した時点で既にSCP-903-JPに曝露しており、全身をねじり続けるという独特のダンス(?)を行っていた。


こんな感じである。
オブジェクトですら逃げられない認識災害とは……。

発見経緯

このタヌキだが、何と国内のあるテレビ局で、曝露した他の「ダンサー」を引き連れて現れたことがきっかけで発見されている。
財団が到着するまでに新たな曝露者を出しており、エージェントから2名の曝露者を出しつつもどうにか収容に成功。このほか、「ダンサー」の中にいたSCP-XXX-JPも、コイツ自体の異常性によってDクラス2名、エージェント6名という結構な数の死亡者を出しつつも収容に成功。なお、エージェントは8名が曝露したが、SCP-903-JP-1となっていた2名は生存した。踊りのための強化により、体をねじられてもそれに対応して「踊る」ことで死を免れたのだろう。

……タヌキを先頭に踊る人間と動物と謎の軟体生物の集団。実にシュールである。

こんないきさつで収容されたわけだが、認識災害である上に影響が取り除けない、さらに収容時のゴタゴタで異常性がはっきりしている、ということから実験は行われていない。

収容プロトコルは、それぞれの生物種に対応した収容室に個体ごとに隔離して入れること、さらに許可なくSCP-903-JPを目視しないこと、「ダンサー」が3個体以下にならないようにすること、必要個体数が下回った場合は出来るだけ寿命の長い生物を曝露させること、である。

これは、SCP-903-JPが生物であるため、不測の事態によってSCP-903-JPというオブジェクトがなくならないように、という処置である。
……そんなことをしても「ダンサー」が増えるだけではないか、という疑問には、次の補遺を以て回答としよう。


補遺

SCP-903-JPと指定されていたタヌキだが、彼女は2000年代に寿命で死んでしまった。
それは仕方のないことなのだが、問題はこの後。

何と、「ダンサー」のうちSCP-903-JP-1、6と7、25、SCP-XXX-JPが、それぞれヒトの言葉によって「自分こそがMr.コジロウの後継者である」と主張し始めたのである。
その後、これらの個体は順番に踊り始めた。一通りのダンスが終わった後、それぞれのSCP-903-JP-1個体らは、隔離状態にもかかわらずそれぞれのダンスについて評論を始め、最終的にSCP-XXX-JPを選出。

この後の調査により、SCP-XXX-JPは元々持っていた異常な特性がなくなり、代わりにSCP-903-JPの持っていた認識災害のベクターとしての能力が発現したことが判明。
これに伴い、SCP-XXX-JPはナンバーを取り消され、新たにSCP-903-JPのナンバーが振り分けられた。



あのホンドタヌキがメスにも関わらず「Mr.コジロウ」と呼ばれていた理由と、収容プロトコルの理由がこれ。
「Mr.コジロウ」は個体の名ではなく、素晴らしいダンスを踊った者に与えられる襲名制の称号だったのである。つまり、あのホンドタヌキも元々は「ダンサー」であり、先代のコジロウがなくなった後に「ダンサー」の中から選ばれた、という背景が読み取れる。

現在のコジロウは短くとも三代目だが、これは財団にとっては不測の事態である。何せ、オブジェクトそのものは残っているとはいえ、異常な特性が上書きされてしまっている。
SCP財団はごく一部を除けば、基本的にオブジェクトを特性も含めてそのまま「保護」するのが使命である。SCP-903-JPは知覚能力を持った生物でさえあれば、オブジェクトであっても暴露させてしまい、その後そのオブジェクトが「Mr.コジロウ」を襲名すれば元の特性がなくなる。

この調子でオブジェクトがどんどん無力化されてはお話にならないため、出来るだけ寿命の長い生物を曝露させて、後継者候補の「ダンサー」の数を確保、もしもの時にSCPオブジェクトが四代目のコジロウにならないように取り計らう、というのがプロトコルの理由である。

同時に、曝露した個体が全て確保されており、かつ手順が確立しているにもかかわらずEuclidなのは、ベクターとなる「Mr.コジロウ」も、曝露した「ダンサー」も全て生物である=いつかは必ず死ぬため、後継者がいなくなってコジロウの襲名が途絶える=Neutralizedになる危険性が常に付きまとうからである。



確保、収容、保護。
言葉にすれば簡単だが、ぶっ飛んだ個性派揃いのSCPオブジェクトが相手では、それすらままならないのが財団世界である。このSCP-903-JPにしたところで、比較的に無害な例にも拘らずこの手間のかかりよう。
頑張れSCP財団、オブジェクトはまだまだあるぞ。



追記・修正はMr.コジロウを襲名してからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-903-JP - Mr.コジロウ feat.愉快なダンサー
by blamish
http://ja.scp-wiki.net/scp-903-jp

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