SCP-3125

「SCP-3125」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

SCP-3125 - (2024/02/25 (日) 21:45:36) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/06/02 (金) 21:27:02
更新日:2024/04/20 Sat 23:05:15
所要時間:約 5 分で読めます





これは戦争ではありません。
我々は既に敗北しています。
世界にはもう私達しか残っていない。
その後には、誰もいない。


反ミーム部門は存在しない。



SCP-3125とは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は『The Escapee(逃亡者)』。
オブジェクトクラスは堂々の「Keter」。

特別収容プロトコル

さて、実はこの報告書、概要部分が秘匿され、ヒントなしのパスワードロックがかけられている。
普通にアクセスした場合に見られるのは、特別収容プロトコルの部分のみである。

それによれば、このオブジェクトはサイト-41にある認識災害収容ユニット-3125の内部に保管されているという。
この収容場所は鉛、防音壁、テレパシー遮断壁によって三重に囲われている。
アクセス方法も非常に限られており、ユニットの一角にあるエアロックを介して行われる。
加えてこのエアロック、ユニット内には一度に一人しか存在できないようブログラムされており、誰かが中にいて、退出しない限りロックされる。

そして、如何なる状況でも一貫性のある情報を収容ユニットから持ち出してはならない。
この「一貫性のある情報」とは、手書きおよび電子的なメモ、写真、音声および動画の記録、物音、電磁気および粒子に基づく信号、そしてPSI放射=テレパシーが含まれている。そして退出サイクルにおいては、エアロックに装備された浄化システムを介して記憶処理ガスをエアロック内に3分間流し込み、内部に入った職員の記憶を処理する。
要するに「収容ユニット内部の情報を外に出すな!」ということである。

ミーム部門の上級スタッフメンバーは、SCP-3125を42日ごとに訪れなければならない、とされている。




厳重ではあるが、かみ砕けば単純なプロトコル。要はとにかく、情報の伝達を防げ、ということである。
つまり、これはミーマチックエフェクトを持った何かであることが伺える。

これにアクセスできる唯一の端末は収容ユニット内部に存在するのだが、パスワードについてはヒントがない。
というわけで総当たりである。


























承認










上記の特別収容プロトコルは事実だが、オブジェクトそのものにかかわる部分が意図的に省かれている。
掻い摘むと、収容ユニットの内部はSCP-3125の影響力を排除することに成功した、知られている限り唯一の空間*1である。そしてこのSCP-3125は、基底現実のあらゆる場所に遍在する概念のようなものであるとされる。

これらの情報を拡散しないため、「SCP-3125」のエントリには別の文書を割り当て、そこにはSCP-3125の収容ユニットの機械的構造と、収容維持のために財団職員が何をせねばならないか、という部分のみを記すことになっている。

そこまでして情報を隠さねばならないSCP-3125とは何なのか?
それを、これから説明する。


概要

コイツが何かというと、
  • 基底現実の外部からやってきて
  • 既に部分的に基底現実に入り込んでいる
  • 非常に大規模で
  • 極めて攻撃的かつ侵略的で
  • 異常な転移力をもち
  • 反ミーム的性質*2によって隠蔽された
ミーム複合体である。
……「ぼくのかんがえた最強のミーム」かな?と思ったあなた、その感想は正しい。
なぜなら、このオブジェクトこそSCP財団やGOIの、否、全世界の反ミーム研究グループと長年にわたって 戦争 を繰り広げ、あろうことかその全てに


勝利


しつつあるという、 史上最悪 にして 空前規模 のミーム災害だからである……。

そもそも反ミームという部門が創立された経緯からして、このオブジェクトによるアウトブレイクが大きく関係している。一連のTalesは 「反ミーム部門ハブ」 としてまとめられているが、このハブはまさに、SCP-3125との闘いの歴史と言ってよい。
ここまで読ませておいて何だが、SCP-3125の記事の前に、第一章である 「私たちは反ミーム部門などという部門は有していない」 を読んでおいたほうがより楽しめるだろう。


さて、それを踏まえて、以降はSCP-3125単体の記事について述べていきたい。

ミームとしての内容がどんなものかは具体的には語れない。それを知ることは即ちコイツの餌食になるということだからである。
一つだけ言えるのは、SCP-3125とナンバリングされたこのミームは、我々の知る既存のいずれのそれよりも 積極的な「アイデア」 である。
このミームは、人間の頭の中にある、人間が持っている、あるいは生物学的に持つことが可能なあらゆる着想の集まり……要するに基底現実における通常のミームよりも、極めて敵対的・暴力的な観念的生態系*3での生存に適応している。
加えて外見的な変化がないにも関わらず、曝露者は外部からは人間と認識できなくなる。

わからないのであれば、こう理解してもらいたい。
このミームが本来存在した世界においては、ミーム同士の関係性……つまり服や言葉の流行り廃りだとか、あっちよりこっちのほうが快いだとか、そういった観念同士の生存競争が極めて激しかった。
もちろん、我々が想像する程度の激しさではない。ミーム自体が思考能力と攻撃手段を持って敵を排除するような、いっそ自我があるかのように見えるレベルである。
SCP-3125はそういった競争を勝ち抜いてきたひとつであるので、 我々の既知のものとは比べものにならないほど、強力なミーム的性質を持っている。

そして我々(と我々の世界のミーム)は、SCP-3125の世界の住人と異なり、それに抵抗力を持たないため、一旦感染するともはや他のことを考えられず、 SCP-3125を広めるためだけに生きる奴隷 となってしまうのだ。


え? もっとわかりやすく?
要するに、
  • 蠱毒みたいな環境で育った激ヤバ情報ウィルスがやってきた。
  • 軟弱な環境で育った我々は、根本的に抵抗力を持たないので滅茶苦茶ヤバい。
ということである。

{
つまりSCP-3125の起源である=このミームの出所であるどこかの世界(だろうと思われる、多分)は、我々の社会よりも、人の関係性がきわめて敵対的・暴力的なのだ。どっかの世紀末救世主の活躍の舞台から、救世主だけ取っ払ったような世界なのだ、多分、きっと、恐らく。
そんな社会の通念となっているミームが、基底現実に入り込んでいる、というわけである。当然、こんなアイデアに適応するような進化は基底現実では行われていないため、基底現実の人間はSCP-3125への精神的耐性が全くない。


さて、問題なのはこのミーム複合体が持つ影響である。財団世界的な意味でのミームとは、人から人へ、心から心へと伝わり、移り変わっていく情報同士の結びつき、そこから生じる概念のことである。
伝染性を持つ情報は多かれ少なかれミーマチックエフェクトを含んでいると言えるが、コイツの場合はミームそのものである上に、構築している概念が非常に積極的、かつ攻撃的でしかも敵対的である。当然、拡散能力は他のオブジェクトの比ではない。

もしも、コイツに人間が曝露してしまった場合、既存のアイデアを楽しむことが出来なくなり、代わりにSCP-3125に従属、その中枢概念を広めようとし始めるのだ。まるでどっかのねこのようですよろしくおねがいしてる場合じゃない。

当然、拡散能力は他のオブジェクトの比ではない。
そればかりか、財団の保有する数多くの対抗手段すらもやすやすと突破してくる。当然だろう、SCP-3125の元の世界ではその程度のことは日常茶飯事だったのだから。

物理的な手段ですら干渉を可能とし、SCP-3125に不都合な 観測者 は、SCP-3125の正確な有様を認識した瞬間に殺害される。そればかりか、殺害された観測者と 似た考え方をする人物 ……つまり近親者や、研究メンバーまでもが殺害される。
かろうじて、即座の記憶処置によって生き残れる 場合もある が……緋色の鳥も真っ青になるような根絶やしっぷりである。緋色の鳥なのに真っ青になるとはこれいかに。

オマケとばかりに、その攻撃とSCP-3125に関する 知識も消去 される。従って、不用意に近付いた研究グループは一瞬で壊滅し、 なぜグループが少人数なのか、今まで何をしていたのかすらもわからなくなる。

ここまでくれば、SCP-3125の進出を阻むことが、あまりにも困難であるということがわかるだろう。冒頭で述べたように、このオブジェクトは強力なミームでありながら、「反ミーム的性質」をも自在に使いこなすのだ。


不幸中の幸い……というには幸いの割合が低すぎるが、SCP-3125は基底現実に完全に表れているわけではない。
しかし、仮に基底現実に完全に到達してしまった場合、人間の知識交換システムの構造から考えて、要はミームが伝わる経路を考えると、 4時間 足らずで全人類の思考を侵食、包括、支配、置換してしまう。
こうなると、概念としての「人類」は、それに付随する全ての概念と共に存在しなくなる。MK-クラス:世界終焉シナリオである。


なお、故人であるバーソロミュー・ヒューズ博士の提唱した「非現実増幅装置」なるデバイスを使えば、このミーム複合体は 完全に無力化することが可能 だということが判明している。
「やった!」……そう喜ぶのはまだ早い。既に述べたように、財団は今もなお敗北しつつあるのだから。

実はこの装置、 未完成 なのである。
記事冒頭を思い出して欲しい。この報告書はSCP-3125収容ユニットである小部屋でしか読むことができず、退出するときには記憶処理によって 忘れてしまう 。さらに言えば、もし覚えたまま退出すればSCP-3125に 殺されてしまう だろう。
こんな状態で、果たして装置を構築できるだろうか?
さらに条件がある。「非現実増幅装置」は膨大な資源を必要とする。Talesによれば、 世界中の財 が必要らしい。もちろん室内の資源だけで構築することはできず、加えて、何故構築する必要があるのかを 関係者が理解しなければならない。
ダメだこりゃ。


来歴と影響

既に述べたように、このオブジェクトは自身を理解した人間を殺して情報を消すという反ミーム的特性まで備えた問題児である。
こんな特性を持っているもんだから、財団がどうやってこれらの情報を確認し、収容ユニットを建造したのかは財団自身にも全くわかっていない。

収容ユニット内部の情報は外部から持ち込まれたものだが、オブジェクトの特性上直接的に結びつく情報はない。
その上で、入れ代わり立ち代わりやって来る研究者たちの調査と推測によってこんな仮説が立てられている。

まず、このミーム複合体はまだ完全に顕現していない。設備の整ったミーム研究部門ならば、前兆となるオブジェクトを捕捉・確認すること自体は容易である。

次に、ミーム学という研究部門は、現在かなり 衰退 している。最盛期にはアマチュア、要注意団体を含め 400以上の団体が存在した が、現在ではSCP財団の 反ミーム部門しか 存在しない。これらの団体は全てSCP-3125の餌食となったであろうことが伺える。

さらに、反ミーム部門もどんどん縮小しており、わずか125人を残すばかり。このままでは2015年末に 部門のスタッフがいなくなる 、という結論が出ている。
おまけにサイト-167にあったはずの部門の本部は、SCP-3125の攻撃を食らって 消滅 してしまっている。


冷静に数字を眺めている場合ではない。
もし反ミーム部門が完全に消滅すれば、いったい誰がこの不可視の化物と戦えるのだろうか?
要注意団体? 残念ながら、彼らは既に敗北している。
どこか他の部署? 彼らは破滅のその瞬間まで、SCP-3125を知ることすらないだろう。

……そう、反ミーム部門の敗北はすなわち、 人類の敗北 に直結するのだ。
単純計算で99%以上負けている現状、暗い未来(K-クラス)はすぐそこまで忍び寄っている。
こんなトンデモミームを生み出した社会というのは、一体どんなところだったのだろうか?



補遺

ところで、実はもう一つ、特筆すべき事項がある。
この収容ユニットと同一の構造であり、規模だけが大きく上回るユニットがサイト-41の地下に存在していることが、内部のデータで判明している。
建造にかかわるデータは全て意図的に排除されており、ユニットそのものも封印されたままになっている。

だが、その来歴はわかっている。
このもう一つのユニットは、ヒューズ博士の提唱した 「非現実増幅装置」を建造するために作られた のだ。当然そのための職員が配置されている。
その長期的プロジェクトのため、反ミーム部門の研究者たちは、時間を稼ぐために可能な限りゆっくりと負け続けた。

そこまでやってもなお、彼らが稼いだ時間では足りなかった。ユニット内部の職員たちがまだ誰もユニットの封印を解いていないということは、 考えうる最悪の事態が起きた ということになる。

これらの情報を残した反ミーム部門の主任、マリオン・ホイーラー博士は、エアロックを超えて情報を持ち出し、第二ユニットの装置を起動させようとしている(Tales「CASE COLOURLESS GREEN」)。

しかし、問題なのはこの文書が確認されている状況。
ホイーラー博士のメッセージの後半はこうなっている。

しかし、これを生きて読むことができるあなたが何者であるにせよ、私には肯定的な印象が持てません。このシナリオでは装置は存在せず、ヒューズは失踪し、私は死亡し、サイトは破壊されているというのに、あなたは一体どうやってここまで辿り着いたんです? あなたが財団職員という可能性はあるでしょうか? あなたに意識はありますか? この文書の一単語でも理解できていますか?

あなたはSCP-3125が浸透してしまった世界で生きている。その状況は制御不能です。私には存在しない人を救うことはできません。

ホイーラー博士が失敗したということは、最悪の事態が起きたこととほぼ同義である。既に打つ手は失われている。
ならば、サイト-41にたどり着き、この文書を見ているのは 果たして人間なのか?


そしてさらに、その文書が閲覧された後にシェルターを訪れた、彼女の夫と思しき、「侵入者アダム・ホイーラー」なる人物による補遺がある。
彼の得た証拠から推測されるのは、サイト-41は 「唯一の」反ミーム部門ではなかった 、ということである。
物理的に不可視となっているだけで、恐らくはまだそこに存在している。

サイト-41の地上と地下に存在するユニットと同じ構造、かつ地下ユニットと同等の規模を持った情報遮断シェルターは、サイト-167にも存在している。SCP-3125による情報攻撃(物理)を食らったおかげで廃墟と化した上に実在性があいまいになっているため、恐らくホイーラー博士はこれを見逃してしまったのだろう、とアダムは推察している。

変わりつつある世界の中、また自身が無駄死にするかもしれないという可能性を示唆し、その上でこれを読んでいるのが、対抗策の立てられる誰かであってくれ、というメッセージを最後に、アダムによる補遺は終わっている。



結論

お分かりだろうか?
上記には「2015年末には反ミーム部門のスタッフはいなくなる」と記していたが、ホイーラー博士のメッセージはまさにその時期である2015年11月末に記されたものである。

さらに侵入者アダムのメッセージは、2017年5月4日のものだ。
この時点で、既にSCP-3125は完全に顕現しつつある。我々の世界という概念は崩壊しつつあったのだ。
ならば、このメッセージを財団世界で読んでいるのは誰だろうか?


財団の明日は真っ暗だ。



余談

このオブジェクトの元記事は、Talesハブの一つ「反ミーム部門」の新しい章「ファイブ・ファイブ・ファイブ・ファイブ・ファイブ」*4の第一部である。
「反ミーム部門」は、反ミームの古典たるSCP-055とどこかコミカルなオリエンテーションに始まり、そしてSCP-3125との長きにわたる闘争を描き続ける作品群。
戦いの様相は、あの守護者たちの登場によって目を離せない状況へと移っており、以降の執筆と翻訳が切に待たれるところである。



追記・修正は収容ユニット3125の外でお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/