タイヤ(モータースポーツ)

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タイヤ(モータースポーツ) - (2024/01/13 (土) 17:59:39) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2021/10/24 (日曜日) 1:01:30
更新日:2024/04/28 Sun 21:17:00
所要時間:約 42 分で読めます




タイヤ。
それは自動車や自転車、バイクなどで動力を地面に伝える車輪のことである。
何も知らない一般人にとっては、単なる部品のひとつに過ぎないだろう。

しかし、これがモータースポーツの話となると一変する。
千分の一秒を争う音速の世界を駆け抜けるモータースポーツにおいて、タイヤというのは特に走りに直結する、重要なファクターとなる。
今回はそんなモータースポーツ専用のタイヤについて触れていこうと思う。


ラリーもモータースポーツなのに触れないのか?と思った人もいるだろうが、ラリー用のタイヤは普通に購入しようと思えば購入できる
一般の人がラリーに参加する機会があるため、そのためにタイヤメーカーも販売している。(知りたい人は「ラリー タイヤ 購入」で検索するといいだろう。結構値段はするが、それでも買う人は買う。)
後は「Sタイヤ」と呼ばれる一般公道を走れるようには出来てるけど、実質的には溝掘っただけのレース用タイヤも一般人が購入可能。
ここではこれらは除外して2輪、4輪の競技用に作られた舗装路レース用のタイヤに限って述べていく。


●目次



《一般的なタイヤとの違い》

まず、タイヤといっても一般のものとモータースポーツのものとどう違うのか、ぴんと来ない人も多いだろう。
その違いについて述べる。

一般的なタイヤは先ほども述べたとおり、エンジンなどの動力から発生したエネルギーを伝える部品である。ただ伝えるだけならぶっちゃけ素材は何でもいいのだが、やわらかく、調整の利くゴムを主成分としたものが普通だろう。
ゴムといってもその構造は複雑で、カーボンブラックを混ぜたゴムを主成分とし、

  • 地面に接する「トレッド
  • タイヤの構造を保持する「カーカス
  • ホイールに取り付ける部分を保持し、空気を逃さない役割を持つ「ビードワイヤー
  • カーカスを保護し、伸びを防いだりタイヤから発生する熱を分散させる「サイドウォール」や「ショルダー

などなど、今あげた一例以外にもさまざまなもので構成されている。これらの基本構成はどんなタイヤでも大きく変わることはないが、構成物の素材や形状、頑丈さはタイヤにどんな性能が求められるのかで変わってくる。

一般のタイヤに求められるのは用途により振れ幅はあるものの「耐久性と全天候性」である。
つまり、夏の暑い日でも冬の寒い日でも、晴れても雨であっても、数年単位の長い年月と数千~1万キロを超える長距離を走ってもトラブルを起こすことなく走れることが求められるのだ。そのため、トレッドには排水用の溝が切られ、カーカスやビードワイヤーなどタイヤの「骨格」に当たる部分もある程度の耐久性の高いものが用いられている。

しかし、モータースポーツ専用となると役割はガラッと変わる。
それは「無駄なく動力のパワーを地面に伝え、なおかつ常に最適な速度でサーキットを周回するため」である。
まず、タイヤの質から変わる。一般だと耐久用に固めに作られることが多いが、1レースを走りきれる程度の寿命があれば耐久性は十分と見なされるモータースポーツ用はとにかくやわらかい。どのくらい違うかというと、ものによってはタイヤの表面に手を置くと吸い付くくらいにやわらかい
なぜここまでやわらかくするのかというと、レースにおける重要なファクター「グリップ」に一番直結するからである。
グリップとは単純にいうと「粘り」であるが、これは強ければ強いほどクルマのタイヤは滑りにくくなり「走る(加速)」「止まる(減速)」「曲がる(旋回)」の自動車に必要な3大性能を全て向上させてくれる。
高いグリップを持つタイヤは、地面を蹴る力が強くなり、ホイールスピン(タイヤの空回り)によるパワーロスが発生しにくくなる。ゆえレーシングカーの高性能なエンジンから発生する大きなパワーに負けることなく、加速力としてそのスペックを十分に発揮できるようになるのである。*1
また、サーキットの直線でスピードが出たレーシングカーは、直線後のコーナーを通過できるように、マシンを適切なスピードまで減速させなければいけない。しかし、速く走るためにはできるだけ直線でアクセルを踏み続け、ブレーキを踏んで減速を始めるタイミングは可能な限り遅くしたい。
しかし、自動車はブレーキを踏むことで発生する制動力がタイヤの限界を超えると、後述する「ロックアップ」という現象が発生してしまう。ロックアップはマシンを減速させる上で障害となるだけでなく、マシンそのものを壊してしまうこともあるため、避けなけばならない。
グリップが強いタイヤほどロックアップは起こりにくく、それゆえブレーキを強く踏むことができる。これは言い換えれば直線でアクセルを踏む距離をそれだけ伸ばせるということであり、減速の性能がレーシングカーにとって重要であり、そこにタイヤが深くかかわっていることがよくわかるだろう。

モータースポーツのタイヤは桁違いの走行速度ゆえ要求される摩擦力が桁違いに大きい。そのため、走行中の摩擦熱でタイヤの表面を溶かして舗装路に粘着させることにより強力なグリップを発生させる仕組みになっている。低速では摩擦熱が足りないためタイヤの温度が上がらず、本来の性能が発揮できなくなり、タイヤが空転して加速できなかったり、コーナーを曲がる際にグリップ不足でコースアウトする可能性ができてしまうほど。
そこでカテゴリーによってはタイヤウォーマーなるタイヤ専用の電気毛布があり、レースで使用する前に暖めておく*2等して、少しでも性能を発揮しやすくするよう気を配る。*3
また、F1などでフォーメーションラップ(レース開始直前にグリッドと呼ばれるスタート位置に着くために参加マシンが隊列を組んでコースを一周すること)中にマシンを蛇行させたり頻繁に加減速するのも摩擦でタイヤの温度を上げるためであり、文字通りタイヤのウォーミングアップである。
このように、モータースポーツにおいてタイヤの性能やそれを引きだすための管理は、エンジンや空力などと並んで重要なものになっており、勝敗に直結することも珍しくないのだ。

《モータースポーツでのタイヤの扱われ方》

モータースポーツ用のタイヤは使い捨てが基本である。いかに高性能であっても、いや高性能だからこそ、先述した通り耐久性はほとんどないことが多い。
例えるなら、一般的な疲れにくい靴と陸上用の極端に軽く薄い靴の違いである。
なので、走行距離だと100数十キロ、時間でいえば1時間も走ればタイヤの性能はレースでは話にならないほどに落ちてしまう。
耐久レース用であれば400km程度グリップを保ち続ける物もあるが、逆に1戦が120km(約45分)しかないmotoGPなんかは70-80kmでグリップは落ちてくる。
一番極端のだと「賞味期限は300m」である。300kmではない、300mである。これは、NHRAという1本の直線路のスタートからゴールまでのタイムを競うレースで使うトップフューエル・ドラッグスターとトップフューエル・ファニーカークラスのタイヤが該当する。
直線路の長さが1000feet(304.8m)なので、その距離だけ走り切れれば、性能が落ちようが壊れようが問題ないと割り切っているのだ。

そのため、ほとんどのレースカテゴリーではレース途中のタイヤ交換が必須であり、またそれを強制するところもある。
有名なところではやはりF1だろうか。タイヤがむき出しな上に高速で走り続けるフォーミュラーカーでは特にタイヤへの負担が厳しく、晴れの日の場合は2種類のタイヤを使うよう交換義務を設けている。(一度無交換を義務化していたが、タイヤトラブルを頻発させたことや、後述の事件もあり一年で取りやめになった)
さらにその晴用タイヤもドライバーごとに使用できる本数をレース前から公式に発表されている。
このためどのチームのどのドライバーがどのタイヤを何本用意しているのかは全てのチームが把握しており、そこからライバルチームのピットインのタイミングや回数、使用するタイヤの種類といった戦略を予測できるのかも、レースを勝つうえで重要となってくる。

交換義務は下記にもある「固さの違いでラップタイムと連続周回数に差を出して、ピットインのタイミングや速度差で駆け引きをさせよう」という意図もあるが、結局トップチームはほぼ同じ戦略に落ち着くことが多く、機能を果たさないケースも少なくない。
一応雨が降った場合は交換義務がなくなり、無交換ギャンブルに出るチームも存在する。
SUPER GTでもタイヤ交換はあるが、上位カテゴリーのGT500クラスにはタイヤ交換義務はなく、下位カテゴリーのGT300には交換義務が2021年から義務付けられた。
と、どのレースカテゴリーでもタイヤのレギュレーションは厳しく細かく設定されており、
いかに重要な立ち位置かを少しでも理解していただけるとうれしい。



《モータースポーツ内でのタイヤの違い》


では、ここからはより深く、より細かいタイヤの違いを説明する。
先ほども述べたとおり、タイヤには晴れ用のタイヤでも種類があり、さらには雨用のタイヤすら存在する。
各状況において常に最高の状態で走るためだが、マシンセッティング、天気や相手との駆け引き、そして何より自分のレーシングテクニックでタイヤはどのようにも変わり、
時にタイヤに救われ、時にタイヤに裏切られることがある。
さすがに比較対象が多すぎるので、多く使われているタイヤの種類を述べる。

・ドライタイヤ

その名の通り、晴れ用のタイヤ。市販車やチューニングカーを使ったレースであれば、公道も走れる市販のタイヤのみ使用を許可している場合も多い。
しかし先述の通り、サーキットを走るために1から設計された生粋のレーシングカーは、使用するタイヤも公道で使えない専用設計の場合がほとんど。その場合のドライタイヤは多くの場合、下記のスリックタイヤが使用される。

・スリックタイヤ

現在多くのレースカテゴリーで使用されているタイヤ。スリックとは「滑らかな、ツルツルした」という意味の英語なのだが、その名の通り表面に一切溝がなく、新品の場合は滑らかでツルツルしているのが特徴。*4一般的にイメージするレーシングカー用のタイヤの多くがこれであり、イベントや写真、ニュースなどでも溝がなくつるつるしたタイヤが見えていると思う。

これは接地面積を少しでも稼ぐためのものであり、特に高速で走る上で一番必要なグリップがあるのがこのタイヤである。
表面に溝が彫られていないため、通常の市販タイヤだと性能の限界=タイヤ交換のタイミングを示すスリップサインに相当するものは表面の凹みの有無で判別する。
中継などで遠くから見るとツルツルに見えるが、実は新品スリックタイヤは定間隔で表面に小さな凹みが彫られている。
走行により表面が削られていくことで凹みはだんだん浅くなり、最終的にこれがなくなると性能の限界の指標となるのだ。

・グルーブドタイヤ

1990年代の終わりから、2000年代の終わりまでF1で使用されていたドライタイヤ。
スリックタイヤと異なり、縦方向に4本(1年だけだが前輪のみ3本の時期もあった。)の溝が入っている。想像しにくいが、一本のゴムのベルトに細いタイヤが何本も連なってくっついているような感じだと想像してもらえればいい。
1990年代、F1マシンのスピードがあまりに速くなってしまったため、スリックタイヤの幅を狭めて意図的に接地面積を減らしてスピードダウンを図る規則が作られた。しかし、接地面積が減る一方で空気抵抗まで減ったために直線での最高速度が上がってしまい、望んだほどのスピードダウンができなかった。
おまけに、当時グッドイヤーのワンメイクタイヤだったF1タイヤは、ブリヂストンのF1参入によって2メーカー間で熾烈な開発競争が起き、落ちたはずのタイヤの性能を、あっという間に取り戻してしまった。
そこで、タイヤの幅を狭めずに接地面積を減らす策としてグルーブドタイヤがやむを得ず導入された。その後、グッドイヤーの撤退で一時的にタイヤがワンメイクに戻ったことも重なり、ラップタイムが低下。マシンのスピードアップにブレーキをかける効果は確実にあったと言えるだろう。

しかし、グッドイヤーに代わりミシュランがF1に参戦したことで開発競争が再度勃発。あっという間に以前のスリックタイヤを超える性能に達してしまったが、スリックタイヤを野放しにしていればマシンは更に速くなっていただろうことを考えると、決して無意味な策ではなかったはずである。
2007年以降は、F1にタイヤを供給するメーカーがブリヂストン(現在はピレリ社製)一社のみになり、ようやく「タイヤ戦争」が終焉した。
しかし、タイヤのワンメイク化によって、グルーブドタイヤの存在意義が薄れ、スリックタイヤ復活にF1は舵を切り始めることになった。
実は、グルーブドタイヤは導入された当時から「スリックタイヤと違い他のカテゴリーで使用されていないため、F1で培ったタイヤのノウハウが他のレースではあまり役に立たない」という問題を抱えており、長年F1を支えてきたグッドイヤーがF1から撤退してしまった理由の一つもコレであった。
それでも、タイヤ戦争による性能向上を抑える目的から使用が続けられていたが、既にブリヂストンは、ライバルに勝つため高性能なタイヤを作る必要がない状態。それでもグルーブドタイヤを使用し続けていた理由は、スリックタイヤの供給体制が整っていないことと、タイヤを新しくすると、何年も先のマシン開発を進めることが当り前であるF1チームの業務に支障をきたしてしまうことだけ。
言い換えれば供給体制を整えつつ、チームの開発業務に支障が出ない時期に復活させれば大きな問題はなく、上記のデメリットを受け入れてまで、グルーブドタイヤをこの先も使い続ける理由はなくなっていたのだ。
そして、2009年。上記の事柄に加え、安全基準やエアロパーツ、エンジンといったタイヤ以外の部分の規則にメスが入り、スピードダウンとマシンの安全性確保がある程度できるようになったことなどから、スリックタイヤが復活し、グルーブドタイヤは廃止された。

グルーブドタイヤは溝付きだからウェットでもそれなりのペースで走れるのではないかと考える人もいるのかもしれないが、溝はあくまで性能抑制のものであって、排水性を考えて彫られたものではないことや、コンパウンドが晴れ用のものでそれなりに硬く、性能を維持できる温度も高いので、結局雨が降ると使用温度範囲から外れてしまってグリップしないことから、やはレインタイヤを別に用意すつ必要があった。
それが視聴者にはわかりにくいという理由からスリックに戻ったという事情もある。

・レインタイヤ

別名ウェットタイヤとも。近年ではこちらのほうが通用する。

先述のように、スリックタイヤは乾いた路面で抜群の性能を発揮するよう作られている。しかし、雨が降ると、スリックタイヤは途端に使い物にならなくなる
まず、グリップの件で話したとおり、タイヤの温度が低下するとグリップが低下する。
低下の度合いも極端で、コースを走るのもままならないレベルまで性能が落ちる。
また雨の道路を高速で走ると路面とタイヤの間に薄い水膜ができる「ハイドロプレーニング現象」が発生することがある。これが発生すると、路面とタイヤに発生する摩擦力がほぼゼロになるため、氷の上で滑っているような状態になってしまい、ドライバーが車両をコントロールすることは不可能になってしまう。
ハイドロプレーニング現象自体は普通のタイヤを使用する一般車でも起こるのだが、一般車用タイヤにはある排水用の溝が存在しないスリックタイヤは、この現象が非常に起こりやすい。


そのため、雨の中スリックタイヤでの走行は遅くて話にならないどころか、いつクラッシュしてもおかしくない危険な行為という言い方すらできる。


そこで、雨が降ったときに交換するのが、このレインタイヤである。文字通り雨用のタイヤであり、ドライタイヤとは違い溝があり、雨天でも走ることができる(下記のインターミディエイトスリック除く)。
え?それなら一般車のタイヤをつけても変わらない?そうではない。
このタイヤ、低温でも作動できるよう、ドライタイヤよりもかなり柔らかいゴムが使用されているのだ。
しかし、今度は雨が上がり晴れてくると負荷が強すぎてオーバーヒートを起こし、あっという間に傷んでグリップがなくなってしまう。なので、雨が止んで路面が乾いてきたら、状況を見極めてドライタイヤに交換する必要がある。
コースの路面が乾き出したときに濡れた部分を走っているのは、レインタイヤを冷やし少しでもまともに走れるようにするためである。
一般車でも真夏にスタッドレスタイヤを付けて走るのが推奨されないのと同じだ。
乾いた路面でレインタイヤを使い続けるとどうなるかと言うと、内部構造が露出するくらいにまですり減ってしまう(もちろんこれは極端すぎるわけだが)。こうなってしまうと加速はおろか、曲がることすら出来なくなってしまい、ハイドロプレーニング程ではないにはしろ、制御不能となってしまう。
近年だと2007年中国グランプリでのルイス・ハミルトンが最たる例で、様々な要因が重なった結果、路面が乾ききって完全にドライタイヤのコンディションの中でボロボロになるまでレインタイヤを履き続けてしまい、ピットに向かおうとするもグラベルに捕まってしまいリタイアに陥ってしまった。

このレインタイヤとドライタイヤの間のタイヤ(インターミディエイトとも呼ばれたりする)があることもあり、小雨程度ならそちらを使って対応する。
だいたいのカテゴリーでは溝が浅かったりレインよりちょっと固めのコンパウンドを使っている他、レインタイヤと識別が付きやすいよう、溝のパターンが違う場合もある。*5

基本的にレインタイヤには溝が掘られているは先述の通りだが、実は例外も存在する。ミシュランが世界耐久選手権で使用していた「魔法のスリック」とも呼ばれる「インターミディエイトスリック」は、構造がスポンジ的になっていて、水を吸い込みながら走るので、溝がないのにちょっとした雨の中でも走れたりする。
ただドライ用のスーパーソフトタイヤ以上の柔らかさとなっているため、各種Gでタイヤ自体が動いてしまうらしく、雨が降っていない時でもドライ並のペースで走れるという訳では無い。
コース全長が長いフランスのル・マンのサルトサーキットや、ベルギーのスパ・フランコルシャンで頻発する「コースの一部だけ濡れている」というシチュエーションでは抜群に強く、ドライ部分での数秒のロスをウェット部分で余裕で帳消しにする速度で走行可能。
見た目は面白かったが、上の溝タイヤ同様に分かりにくいというのもあったのに加え、経費削減の一貫で今まで3スペック*6使えたウェットタイヤが1スペックに制限されたという理由もあり、2023年シーズンより廃止されてしまった。

天候が変わりやすいレースでは、スリックとレインをどう使い分けるのかが、結果を左右することも少なくない。
雨が降った際、通り雨や弱い雨などであまり影響がないと読んでドライのまま走るか、それとも早くレインタイヤに交換しておくか、交換するにしても、この先の雨が強を予想して、インターミディエイトと通常のレインタイヤのどちらを選ぶのか、チームによって駆け引きが生まれるため突然の天候変化はレースが荒れる一因になりやすい。
逆に雨が上がった時も好天が一時的なものか(また天気が崩れる)、完全に晴れるかを読んでレインタイヤをドライタイヤへ交換する/しないの駆け引きが生まれることになる。

余談だが、F1においては冬のシーズンで新車を開発、シェイクダウンをする時に、晴天であるにも関わらずレインタイヤを履いている場合がある。
これは、厳しいテスト走行量の制限がされているF1において、マシンやチームの撮影・プロモーションを目的として特別に許される「フィルミングデー」という走行機会を利用しているため。
フィルミングデーを利用して実戦的なレースでのデーターを取ることは存在意義に反するため*7、プロモーション用の走行タイヤとして、レインタイヤを使用してマシンを走らせなければならないことが、レギュレーションで義務付けられている。

・ドライタイヤの種類

そして、ドライタイヤでもタイヤの固さの違いがあり、それによって走りに違いが出てくる。
ちなみにミシュランは伝統的に固さではなく「低温(ソフト)~高温(ハード)」という言い方をしているが、言いたいことはだいたい同じ。

・ソフトタイヤ
いわゆる柔らかめのタイヤ。すぐに適正温度になりやすいほか、グリップが強くキレのある走りを可能にする。
しかし、それゆえに耐久面で劣り、ものによっては急激にグリップが落ち、ペースが遅くなってしまうので長く走るには不向き。予選など一発の速さを求められるときや、きびきびと直角に曲がるコーナーの多いテクニカルコース向けのタイヤである。
・ハードタイヤ
固めのタイヤ。ソフトに比べるとグリップが弱く、攻めた走りをするには向かない。
しかし、逆を言えば安定したグリップを得られるため、長期戦にはもってこい。
特に高速コースでの走りではトップスピードを生かしやすく、加速しながらの高速コーナリングにも耐えれるので総じて高速向け。
・ミディアムタイヤ
カテゴリーによっては扱ってないところもあるが、一応記載。
ソフトとハードの中間の性能で、基本どのコースでも一定の性能を発揮する「かもしれない」。
正直な話、ミディアムこそ一番難しく、コースによってソフトよりの性能になるか、ハードよりの性能になるか微妙である。
2種類以上のドライタイヤの使用義務があるカテゴリーでは、たいていこのタイヤが2番目に使われることが多いが、このミディアムがしっかり生かせるかで勝敗が分かれることがある


・カテゴリーによるハードとソフトの取り扱い

レースカテゴリーによってソフト~ハードの差がかなり異なるのも特筆すべき点であろう。
・F1では
現在のF1では、供給メーカーであるピレリがC1-C5の5種類のタイヤを製造している。数字が小さいほど硬い(性能が低い代わりに長持ちする)タイヤである事を意味している。
ただし、サーキットに持ち込まれるのは、その中から3種類のみ。そのうち硬いタイヤから順にハードミディアムソフトと名称を分けている。*8
そのため、タイヤへの負荷が小さく、最も柔らかいタイヤの組み合わせが使われるモナコではC3〜C5が持ち込まれ、C3はそのうちで一番硬いのでハードタイヤとして扱われているが、イギリスGPを開催するシルバーストーンはモナコよりも平均速度が高いためタイヤへの負荷が大きく、最も硬いC1〜C3のタイヤが割り当てられるのでC2はソフトタイヤとして使われている。

この割当ルールの採用前は6種類以上のタイヤを製造していたうえ、コンパウンド1つに1つの名称が割り当てられていて、硬い順に「ハード、ミディアム、ソフト、スーパーソフト、ウルトラソフト」と名称が割り振られていた。
そのため、レースによっては「ミディアム、ソフト、スーパーソフト」のようにソフトが2種類が割り当てられることもあった。しかも、その後ピレリがハードタイヤより更に硬い「スーパーハード」とウルトラソフトより柔らかい「ハイパーソフト」のタイヤを開発。タイヤの負荷が低いコースで使用される最も柔らかい組み合わせが「スーパーソフト、ウルトラソフト、ハイパーソフト」となったことで、もはや名称だけでは、どのタイヤが一番柔らかいのかわからず、非常に紛らわしい状態になってしまった。
一応、固さごとにサイドウォールのロゴを色分けして分かりやすくしていたが、余りにも色分けが多すぎたためどのタイヤがどの色か覚える苦労は今の方式より遥かに大きかった上に、先述した「どの名前のタイヤが一番柔らかいかわかりにくい」という問題に対しては何ら効果がなかった。

これでは視聴者も混乱してしまうという事で、そのサーキットに持ち込まれるタイヤの中で「ハード、ミディアム、ソフト」という言い分ける現在の方式に改められた。
コンパウンド固有の名称か、割当のどちらが分かりやすいかは微妙なところだが、そもそもタイヤへの負荷や1周の距離も異なるサーキット別でコンパウンドを比較する必要はないので、サーキットに持ち込まれたタイヤの中で柔らかさを簡単に比較ができる後者の割当式の方が概ね好評である。

・WEC(FIA世界耐久選手権)では
WEC用だとタイヤの固さは「路面の温度によって使い分ける」物であり、適正温度であればどれも大体同じタイムが出て、同じ距離を走れるようになっている。
2023シーズンのハイパーカー用はドライが2スペック(ルマンのみ3スペック)、ウェットは1スペック用意され、レース時間によって使用本数は決められている。
ただし「プラクティスで◯本、予選と決勝全体で合計◯本」という指定なので、例えば予選以降で18本((4セット+2本、予選で1セット使うので実質的には決勝3セット+パンク時の交換用2本。))使える。
また、「違うコンパウンド同士を一緒に履かせる」というF1や後述のインディカーでは禁止されている使い方も許されているのが特徴。例えば、コースが右回りで左側のタイヤへの負荷が大きい富士6hであれば「左サイドはハードタイヤ、右サイドはミディアムタイヤ」というコンビネーションで履くことも問題ない。
大体どのタイヤもピットイン2回に1回の交換ペースとなるが、気温が下がってダウンフォースが上がり摩耗が少なくなる夜に3回連続走行で新品のタイヤを温存し、最後に連続で新品タイヤに交換して追いかけるなんて作戦もある。
ただルマン専用の追加1スペックであるソフトに関しては1チームに対する供給本数が限られているようで、記録的に寒かった年は「夕方から本来夜用のソフトを使わされてしまい、明け方にソフトタイヤを使い切ってペースを上げられなかった」なんてトラブルもあったり。

・SUPER GTでは
SUPERGTは他のシリーズと違い「タイヤメーカーが1社ではない」事から、タイヤにの開発競争がが非常に激しく、1レースのために1つのメーカーが何種類ものタイヤを開発・製造している。
SUPERGTにおいて、サーキットに持ち込めるタイヤは、ソフトタイヤとハードタイヤ2種類を合計6セット、そのうち使用可能は5セットとなっている。
プラスしてウェットが6セット。こちらは3種類持ち込みも可能。
しかし、同じメーカーを使用していても「AチームのソフトとBチームのソフトが異なるタイヤ」という、非常にややこしいケースが起きることがある。
これは、タイヤメーカーが先述のように多種多様なタイヤを開発していて、各チームがその中から2種類を選んで持ち込んでいるためである。
これを先程上げたF1のC1-C5式に当てはめると、F1の場合は「このサーキットではC2-C4を使うよ」とタイヤメーカーが決定するが、SGTの場合はチームが「うちはC2とC4にする」と決めている…というように説明できる。
そのため2セットのうち相対的に柔らかい方をソフト、硬い方をハードと呼んでいるが、実はソフトが他のチームのハードと同じという事も制度上起こり得るのだ。
基本的には事前情報や経験値、天気予報から「片方をメイン、片方を保険」として3セット2セットといった感じで持ち込むチームが多いとか。

・インディカー・シリーズでは
インディカーのロードコースやストリートコースのレースでは、ソフトとハードの2種類、ソフトタイヤはタイヤウォールが赤く塗られている事から「レッドタイヤ」、ハードタイヤはゴムそのものの色なので「ブラックタイヤ」とも呼ばれる。
決勝中に両方のタイヤを履く必要があるが、レッドはブラックに比べ供給される本数が少ない事から、「新品レッド→新品ブラック→予選で使った中古レッド」という繋ぎ方が多い。
予選上位が見込めないチームは予選をブラックで走って新品レッドを決勝で2度使うギャンブルに走る事もある。
ただしオーバル戦ではペースに大きな差が出ると危ないのでブラックタイヤのみ。
その一方でロードコース用のタイヤと明確に異なる特徴があり、右のタイヤの直径が左のタイヤより大きくなっている。これは、「スタッガー」と呼ばれるもので、左コーナーしかないオーバルコースにおいて外側である右側のタイヤの方が、走る距離が長いうえに負荷が大きいため。
タイヤ径の違いゆえにステアリングをセンターにしても勝手にマシンが左方向に走っていくため、左コーナーを曲がりやすくなるメリットがある一方で、直線では右にステアリングを切らなければいけないという特殊なドライビングが乗り手には求められる。*9

・motoGPでは
バイクだが、motoGP用のタイヤは他と違って強烈な特性があり、なんと「タイヤの左右でコンパウンドが1段階違う」。
これはサーキットの構造上コーナー数が左右異なるための処置。
コーナーが少ない方が冷えやすい→グリップしづらい→滑ってコケる→ドライバーの生命に直結する。
という安全上の問題でこうなっている。
このタイヤをもってしても右コーナーが5つ続いた後の左コーナーとなるミサノのターン15や、左→長いストレート→左左→右コーナーとなるバレンシアのターン3等、転倒のメッカとなっている箇所が存在する。
上記のWECで左右でコンパウンドの違うタイヤを履くケースと理屈は同じなのだが、2輪の場合はそれが不可能なので、このような対処をしているということである。
コンパウンド的にはハードミディアムソフトの3種類。割当はフリー走行からリアがソフト6本、ミディアム4本、ハード3本から任意12本。フロントは各5本の計15本を使える。
レインタイヤはハード(実質インターミディエイト)とソフトの2種類で、両者の間で溝形状は共通というのがユニークポイント。
他カテではコンパウンドの混合装着は認められない場合が多いが、motoGPの場合フロントとリアで異なるコンパウンドを履く事が認められているため、各選手が様々な組み合わせで出走する事も珍しくない。


《主なレーシングタイヤメーカー》

現在、多くのタイヤメーカーが様々なレースにタイヤを供給している。
一度は聴いたことのあるメーカーばかりなので、知っているメーカーや今自分の車に履いているタイヤがそのメーカだったりすることもあるだろう。
もちろん広告も兼ねてはいるが、それ以上にメーカーによって性能が異なっていたりするので、それによってマシンの性格や作戦を変えたりする。
ここでは、代表的なタイヤメーカーを紹介する。

・ブリヂストン(BRIDGESTONE)
日本産タイヤの中ではトップシェアを誇るタイヤメーカー。
スポーツタイヤにも使われている「ポテンザ」がレースでは使われている。
1997年からF1にもタイヤを提供し、翌年は供給先のマクラーレンがダブルタイトルを獲得。その後は短いワンメイク期間を経て後述のミシュランと開発競争を繰り広げ、2000年代初頭のフェラーリ黄金期を支えた。ミシュラン撤退後もワンメイクのサプライヤーとして全チームにタイヤを供給し続けたが、F1がピレリタイヤへの転向を機に2010年限りで撤退した。
海外子会社であるファイアストンも同じくレーシングタイヤを製造しており、インディカーシリーズにタイヤを供給している。
2007~08年でグルーブドタイヤでワンメイクを提供していた際に、ソフトタイヤの目印として車体側から二番目の溝を白いラインで塗りつぶしていたのだが、実は開幕からではなく、第2戦マレーシアグランプリから。*10
その際、自社でプリント印刷をするつもりでいたのだが、既にタイヤを空輸してしまったマレーシアのレースだけはそうといかず、わざわざ三菱鉛筆からタイヤの溝に合わせた白マーカーを用意してもらい、現地でペイントしたことも。

現在では海外でのモータースポーツ活動は縮小傾向にあり、日本国内のSUPER GTや全日本ロードバイク選手権へタイヤを供給が中心。
しかし、ピレリがF1に2025年から3年間ワンメイクタイヤを供給する契約を締結した際、ブリヂストンも同じ時期にタイヤを供給するためにF1と交渉を進めていたことが明らかになっている。結局ピレリが選ばれたことでこの交渉は失敗に終わったが、この一件でピレリの契約が終了した後にブリヂストンがF1に復帰するのはないかとう噂が根強くなっている。
また、フォーミュラEでは2026~2027年シーズン*11からブリヂストンがワンメイクタイヤを供給することが正式に決定しており、この先は海外でのレース活動に積極的に関わろうという動きが活発になっている。


・グッドイヤー(GOOD YEAR)
アメリカでのトップタイヤメーカー。
社名の由来は合成ゴムの製造に世界で初めて成功したとされる発明家のチャールズ・グッドイヤーから。
1964年からF1にタイヤを供給し始め、1965年にタイヤの供給先だったホンダに乗るリッチー・ギンサーがメキシコGPを制し、グッドイヤータイヤの初優勝を上げる。*12
その後も長きに渡ってF1にタイヤを供給。ワンメイクタイヤを供給してF1の地盤を支えた時期もあれば、マルチメイクの時期にピレリやブリヂストンと鎬を削った時期もあった。1998年に撤退するまでに368勝をあげ、これはF1におけるタイヤメーカーの最多勝記録である。
現在は主にNASCARが大きな供給元で、そのほかではWECの下位カテゴリーにも提供している。

・ミシュラン(MICHELIN)
フランスが誇る最大級のタイヤメーカー。実は世界で始めてラジアルタイヤを作ったのもミシュランで、ミシュランマン(ビバンダム)というマスコットで有名でもある。
かつてF1にもタイヤを供給しており、参戦初年度の1977年は、バイアスタイヤ主流だったF1に初めてラジアルタイヤを持ち込んだことでも注目を浴びた。1979年には供給先のフェラーリがダブルタイトルを獲得し、1984年にもマクラーレンのダブルタイトルに貢献すると、その年限りで撤退。
2001年に復帰し、2005年には供給先のルノーが、当時連戦連勝を重ねていたブリヂストンとフェラーリの牙城を崩しダブルタイトルを獲得した。
しかし、同年に起こしたとある事件を機に2年後に予定されていたタイヤメーカーワンメイク化の選考から外れてしまい、翌年に再び撤退した。
それでもSUPER GTのほかにWRC、WEC、フォーミュラE、motoGPなど、現在もタイヤを供給しているレースは多岐に渡る。

・ピレリ(PIRELLI)
イタリアのタイヤメーカー。
現在のF1タイヤメーカーで、最初期にも供給していたが、撤退と復帰を繰り返していた。
F1用のタイヤはエンターテイメントを上げるということで、使い続けると突然グリップが極端に落ちる「崖(クリフ)」があり、各チームはこの崖がいつ起きるかをフリー走行で把握する必要がある。
そのほかにF1の下位カテゴリーであるF2、F3にも提供しており、現状F1への登竜門には必ずピレリを使うことになっている。
GTワールドカップもピレリが担当していて、GT3車両のハンデはピレリタイヤ前提で制作しているので日本だと合わないと悲喜こもごも。

・ヨコハマタイヤ(YOKOHAMA)
現在は「ADVAN(アドバン)」でも知られているが、昔いたキャラクターが謎に怖かった事で有名な会社。
現在はスーパーフォーミュラにワンメイクタイヤを提供、SUPERGTにもGT500へ2チーム、GT300へ15チーム提供。
GT300の方は他メーカーを押さえ最大勢力になっている。
以前はWTCCにも提供していた。

・ハンコックタイヤ(HANKOOK)
韓国のタイヤメーカー。
市販品はともかくレース用としてはそれなりのタイヤを作るメーカー。
SUPER GTでもタイトルスポンサーにして供給先であったハンコックポルシェが活躍していたので日本での知名度も意外と高い。
2020年までDTMのワンメイクタイヤを提供していた他、2021-2023の途中までスーパー耐久でワンメイクタイヤを供給((2024年からBSに切り替わる予定だったが、第1戦と第2戦の間に工場が火災に見舞われ、一歩早くBSにスイッチすることとなった。))。2023年からは電気自動車のフォーミュラマシンのカテゴリーであるフォーミュラEでミシュランに代わりワンメイクタイヤを供給する。

・ダンロップタイヤ/ファルケンタイヤ(DUNLOP/FALKEN)
住友ゴム工業が保持する2種のブランド。
ダンロップは2輪向けと日本向け、ファルケンはメインは海外向けだが日本でも購入は可能。
motoGPの下部レースであるmoto2、moto3用への提供がメイン。
他にはニュル24hのチームスポンサーや、SUPERGTへの提供もやっている。


《タイヤに関するトラブル》

そして、タイヤは地面に接するがゆえにいろいろなトラブルが起こりやすい。
走りによるものだったり、クラッシュによるもの、果てはタイヤ自体のトラブルなど種類はさまざま。そしてそれが勝敗に直結することは間違いない。
ここでは代表的なタイヤに関するトラブルを上げていく。

・パンク
一番わかりやすく、そして頻発するトラブル。
タイヤの内圧が抜けてしまい、それによって走行が安定しなくなってしまう
ひどいものだとタイヤ自体が破裂し、その破裂したゴムが鞭のようにマシンを傷つけてしまうことがあり、そうなってしまうと被害は甚大。
ウィングなどの空力パーツめちゃくちゃになる上に、サスペンションなど重要な部品を壊してしまうなど、場合によってはリタイアになるトラブルである。
無茶なドライビングによるタイヤの限界、またはマシン同士の接触やそれにより飛散したパーツを踏んだりして、が主な原因である。
現在でもそういった事態を避けるべく改良が重ねられてはいるが、ゴムや繊維でできたタイヤを鋭利なカーボンや金属の破片より頑丈に作ることはまず不可能なので、起きるときは起きる。
タイヤが原型をとどめたままエアが抜ける場合はパンク、タイヤが破裂した場合バースト、針状の物が刺さってゆっくり抜けていく場合はスローパンクチャーと分類されるが、
いずれもエアによるトラブルでまともに走れなくなるという事には変わりない。

・グレイニング
ささくれ磨耗ともいう。これは路面温度やタイヤの温度が低いまま走り続ける、もしくは高速コーナーでスライドさせるような走りを続けると発生し、
表面のゴムだけが溶ける→カスのようにまとまる→でも路面が冷えててすぐに固まる→また摩擦でそこが溶ける→…を繰り返すと、タイヤの表面が荒れていき、サメ肌のように荒れてしまう現象である。
表面積が減ってしまうためグリップが低下し、加速やコーナリングに著しく悪影響が出る
原因としてはセッティングが合わず、オーバーステア(曲がりすぎる)やアンダーステア(曲がらなさすぎる)だと発生しやすい。タイヤの温度が上がれば基本的には解決するが、ドライバーによってはなかなか解決しないこともある。

・ブリスター
高い路面温度によってタイヤがオーバーヒートし、タイヤの内部の成分が気化し、表面に穴が開いてしまう現象。発生した箇所は気泡が発生するほか、その発生するときに表面が膨張し、変形したまま走ることになってしまう。
こうなってしまうとタイヤの性能がガクッと落ちてしまい、本来の性能を取り戻すことは不可能。どれだけがんばっても性能は低いままだ。
当然こんな状況でソフトタイヤなんて使えないが、これがハードタイヤでも発生するようならばそれだけ路面が厳しいか、セッティングがタイヤに厳しすぎるかの2択である。
またチームのマシン設計自体がそうなる傾向にあることもあるため、その場合はあきらめて走るしかない。*13

・ロックアップ
これはタイヤのトラブルかというよりはドライバーのミスではあるが、一応記載。
ドライバーがハードブレーキングをした際にタイヤががっちりと止まってしまい、そのまま惰性で走ってタイヤの表面を傷つけてしまうことだ。
一見たいしたことがないように感じるが、実はとてもやばいことになりかねない。
ロックアップした部分は当然平らになっており、真円のはずのタイヤに角(フラットスポット)ができてしまう。
そうなると走る際に振動が発生し、マシンががたがたと震えてしまう。
さらに一度ロックアップすると再度その箇所で発生しやすくなるため、どんどんひどくなっていき、最終的にはサスペンションが振動を吸収しきれずに破損、リタイアということにつながってしまう。
これ自体はセッティングやドライバーの腕次第で何とかできる問題のため、これをしないドライバーはそれだけ技量が高い証である。

・デグラデーション
これもトラブルではないが、正直、タイヤにとって一番悩ましいのがこのデグラデーション、磨耗である。
当然だが地面に接する以上磨耗し、ペースが落ちていく。しかもパンクやブリスターのように明確にペースダウンにならないので、タイヤの余力を推し量った上で、どこでタイヤ交換するか、どれだけタイヤを使って相手との差を広げるか、という駆け引きの材料になる。
同じ距離を走るにもかかわらず相手のほうがまだグリップが残っていたり、走れなかったりするという事態が起きるため、レースにおいての見えないタイヤのトラブルであるといえる。
また、デグラデーションはセッティングによってある程度調節出来る。サスペンションの固さ、マシンに積むバラストの数や位置、ダウンフォースのかけ具合でタイヤを使わずに曲がりやすくすることも出来る他、上級者ともなるとアクセルワークやコーナリングのテクニックによって軽減させることも可能になる。

・ピットストップでのミスやトラブル
これもタイヤのトラブルというよりはタイヤを管理する際のエラーだが、大きくかかわることなので記載する。
そして、ドライバーにとって一番あってはいけないことでもある。
ピットに戻ってタイヤ交換するのはいいが、その際にホイールナットが締まらずタイヤの取り付けに手間取ったり、ホイールナットが外れなかったりということが起きると、当然大幅なタイムロスとなる。酷いときには、ホイールガンがホイールナットを舐めてしまいタイヤを取り外せなくなってしまうことや、ホイールナットの固定が甘いせいでコースに戻ったあとにタイヤが外れてしまうこともあり、ここまで酷いとあきらめてリタイアせざるを得なくなってしまう。原因は単純なヒューマンエラーの場合もあれば、ホイールガンなど工具の不具合によっても起きる。
せっかくドライバーががんばって走っているというのに、味方であるピットのミスで台無しにされてはたまったものではない。
そんなことがないようにピットクルーは何度も訓練をし、工具の点検を欠かさない。近年ではホイールガンに使用される空気圧が改良され、取り外しに苦労しにくくなっている他、ホイールナットも外した際に脱落しないように、ホイールに埋め込むタイプに変更されているカテゴリーもある。
それでも起きてしまうときは起きてしまうが。

・ピックアップ
自動車レースの中継とかを見た事がある人なら見た事があるだろうが、摩耗したタイヤのカスはコース場に飛び散っていてレース終了近くではコース上はカスだらけになっている。
カスといってもレース用タイヤから発生するタイヤカスはもはや「塊」といっていい程大きいものになる。
よってこれを踏んでしまうとタイヤにくっついてしまい、グレイニングと同じような現象が起こる。
特に追い抜きの時に踏みやすく、いかに踏まずに抜くか、もし踏んだらうまいこと運転してカスを削り飛ばすかがポイント。
直接のピックアップでは無いが、このタイヤカスはいろいろ悪さをする。
緊急用の電気系統シャットダウンスイッチ(通称キルスイッチ)にタイヤカスが直撃して、いきなり全電源が落ちてリタイヤとか、
タイヤカスがブレーキの冷却ダクトに飛び込んでしまってブレーキがオーバーヒート、止まりきれずにクラッシュということもある。
逆に、タイヤカスが無い、少ない箇所はマシンがよく通るということで、その箇所には溶けたタイヤが路面に乗り、必然的にグリップが高くなる。
そのため基本的にはスケジュールの後半(要は予選や決勝)になればなるほどタイムが出やすくなる傾向がある。何故かラバーが乗らずにグリップが最初から最後まで出ないターンもある。
これがいわゆる「レコードライン」であり、ドライバーはそれを目安に走ることで速く走ることができる。*14
しかしこのラバー、雨が降るとラバーの上に水の膜ができやすくて逆に危険になったり、強い雨が降ると剥がれて昨日と路面コンディションが全然違うって事になったり、
メーカーが違うタイヤだとラバーが上手くくっつかずに、両者の間でグリップが全然違うという謎の事態が起こる*15など、やっぱり悪さをしたりする。
ちなみにこのピックアップだがレース終了後の重量計測のために、クーリングラップでわざとタイヤに付くように走り、重量規定違反にかからないように少しでも稼いでいる。

《タイヤがもたらすレースへの駆け引き》

タイヤの違い、トラブル、そしてそれらをカバーするためのドライビングにより、レースは大きく白熱する。
最後に、タイヤによってでるレースへの影響、駆け引きを大まかに記載する。

・同じタイヤでの我慢比べ
スタートでほかのマシンと同じタイヤを選んだ場合、その条件は言わずもがなイーブンとなり、セッティングやマシン特性、ドライビングスタイルでどれだけタイヤを持たせ、ハイペースを維持できるかによってレースの有利不利が決まる。
タイヤを持たせられる=ピット回数を減らすことにつながるため、その分タイムロスをなくすことになり、セッティングを含め最適な状態をフリー走行で確認する。
近年ではフリー走行に当てられる時間が減少させられていく傾向にあり、最適なセッティングをいかに素早く見つけられるかがレース勝利への鍵である。

・アウトラップでの立ち回り
タイヤウォーマーがあってもなくても、タイヤ交換をしてすぐの周ではタイヤは作動温度領域に達してないことが多く、ピットを出てすぐでは本来のペースに戻せないことがある。
これがアウトラップと呼ばれ、特にハードタイヤだと顕著に出る。
そうなると磨耗してはいるが暖まってパフォーマンスで分のある自分のタイヤを使って少しでもタイムを縮め、ピット勝負で逆転を狙うことも可能になる。予定ピットよりも遅らせることをオーバーカットという。
また、逆に早めにピットを行うことでタイヤがしっかりと機能した状態を作り、むしろ相手のアウトラップで逆転を狙うことをアンダーカットといい、技術の向上によって相手のピット戦略やアウトラップを推測し、それに合わせた作戦を読みあうことも駆け引きにつながる。

・相手の意表をつく作戦変更
とはいえ、レースでは予想外の状態も起こりやすい。
突然の雨やクラッシュにより予定外のピットを余儀なくされたり、セーフティーカー*16により強制的に前後のマシンとの差をリセットさせられたりと、たとえ先ほどまで自分に有利な展開だったとしても、一瞬で相手が有利になりかねない事態に陥ってしまうことだってありえる。
しかし、逆も然り。セーフティーカーが入ったタイミングでピットに入り、新品のタイヤに交換すれば競技再開時に有利に立つことができ、
雨でもぱらつく程度でまだ路面が完全に濡れる前ならば、
我慢してすこしでもペースの速いうちに相手との差を広げる、
もしくはその逆で雨が激しくなると予想してすばやくレインタイヤに交換して雨に備えるなど、ピットが非常に慌しくなる。
普段トップチーム勢が勝つことが多くても、誰も予想しなかったドライバーやチームが上位に食い込むことがあるため、タイミング、運が絡むが、レースの展開が読みにくくなりファンにとっては白熱する要素となる。


《タイヤによって起きたモータースポーツの事件》


・2005年F1世界選手権アメリカGP

通称インディゲート。先述したミシュランがF1を去るきっかけとなった事件である。
2005年、F1において大きなタイヤの規則変更があった。それは「金曜日の練習走行から、日曜日の決勝レースまで、1セットのみのタイヤを使用する」というものだった。それまで練習走行と予選と決勝で異なるセットのタイヤを使用し、決勝でも2回以上のタイヤ交換が当たり前だったF1において、レース中も含めてタイヤ交換を原則禁止するという、異例とも言えるレギュレーションの改革だった。

これは、当時F1にタイヤを供給していたメーカーの一つだったミシュランの提案によるもので、タイヤの使用本数を減らすことで、製造や運用のコストを下げ、タイヤメーカーの負担を減らすことと、タイヤ開発時に設計を耐久寄りにすることで、タイヤの絶対的な性能(主にグリップ)を下げてマシンのスピードを落とそうという狙いがあった。
シーズンが開幕する前は、「それだけの耐久性があるレーシングタイヤを本当に作れるのか?」という疑念が関係者やファンの間では少なからず囁かれていたが、シーズンが始まると、提案したミシュランは無論、当時F1用タイヤを製造供給していたもう一つのタイヤメーカーであるブリヂストンもこの規則に順応した安全なタイヤを供給し続けていた。そう、このレースが開催されるまでは…

迎えた第9戦アメリカGP。インディアナポリスモータースピードウェイ(IMS)で開催されたこのレース。金曜日の練習走行で事件は起きた。
セッション中、トヨタのラルフ・シューマッハが最終コーナーで突然スピンし、コース外側の壁に激突(実はラルフがクラッシュしたのは二年連続。前年はウィリアムズBMWだったが、最終コーナーでクラッシュ。自力での脱出も叶わない重傷を負うなど、まるで去年のデジャヴを見ているかのような光景だった。本人にも悪夢以外何物でもなかっただろう)。これで負傷したシューマッハもその後の予選と決勝を欠場せざるをえなくなってしまった。
このクラッシュの被害があまりに重大だったことと、クラッシュしたマシンのタイヤが完全に壊れていたことから、タイヤの提供元であるミシュランによって事故の原因調査がおこなわれた。その結果、マシンに使われたタイヤが、IMSの最終コーナーを全開走行する負荷に耐えられず、破裂してしまったことが事故原因だったと発覚。さらに、ミシュランを使用している他のマシンのタイヤにも、同様の事故が起きる兆候が見られた。なお、ブリヂストンを使用するマシンのタイヤには問題の症状が全く出ておらず、この時点でこのコースや特定のマシンではなく、ミシュランのタイヤそのものに大きな欠陥があることが明らかになった。
ミシュランはこのことをFIA*17に報告。ミシュランのタイヤは10周以上使用すると負荷に耐えられなくなるため、60周以上の決勝を走り切ることは当然不可能であるとし、安全のためにも今回使用しているものとは異なるスペックのタイヤを翌日から使用させてほしいと訴えた。FIAは先述した「1レースウィークで使用できるタイヤは1セット」の規則に抵触することから、最初はこの訴えを認めることに難色を示したが、規則違反によって課されるペナルティをミシュランが受け入れることを条件に最後は承諾する。

しかし、問題が解決することはなかった。翌日ミシュランが新たに持ち込んだタイヤも、事故を起こしたタイヤと同じ問題が残っていたのだ。確かに、ミシュランはタイヤに問題があること自体は把握できたものの、改善までするにはたった一晩の間に問題が起きる原因とその対応策を究明し、その上で改良型を新製して翌日のサーキットに間に合わせるという到底無茶振りなスケジュールになってしまう。
ミシュランにはとてもそこまでする時間は残されておらず、やむを得ず改良できないタイヤを用意するしかなかった。しかし、FIAとしても危険性が分かっているタイヤをそのままレースで使わせる訳にはいかない。

そこで、ミシュランはFIAに、最終コーナー手前で速度を落とすようシケインを設置することを提案した。しかし、この提案は拒否されてしまう。FIAが拒否した理由は大きく分けて3つ。

①ミシュランの都合でコースを変えるのは、本来のコースを想定して安全なタイヤを用意したブリヂストンに対して不公平である。

②シケインを設けた場合、IMSはFIAの規則に沿って承認されたコースレイアウトではなくなり、FIAが認めたレースを開催することができない。

③チームやドライバーはIMSのコースにシケインが設けられることを想定した準備はしておらず、却って混乱と危険を招くことになりかねない。

FIAは、天候変化やタイヤのトラブル*18など、安全を理由としたレース中のタイヤ交換は例外的に認めていることから、ミシュランに10周ごとのタイヤ交換をするように提案。他にも、最終コーナーでミシュランのタイヤを使用しているマシンのみ安全な速度までスピードを落とすこと*19、制限速度が存在するピットレーンを通ることで最終コーナーを避けることなどの対応策を提案した。

しかし、いずれかの提案を飲んだ場合、ミシュランが勝機を失ってしまうことは明らかであり、ミシュランはそれらを受け入れることはできなかった。

そして、いよいよ決勝レース。ミシュランタイヤを履くマシン14台と、ブリヂストンタイヤを履く6台のマシン、計20台がフォーメーションラップを始めた。本来なら、1周後に全車スターティンググリッドにつき、レースがスタートする…はずだった。

しかし、フォーメーションラップ終了直前に観客たちが目にしたのは、ミシュランタイヤを履く14台のマシンが全てガレージインしそのまま出走せず、ブリヂストンタイヤを履いたフェラーリ、ジョーダン、ミナルディの6台のマシンだけが、スターティンググリッドにつき、そのままレースがスタートするという異様というほかない光景だった。

ミシュランとそれを使用するチームが最後に選択したのは、レースのボイコットだった。FIAが自分たちの要求を飲まず、かといって自分たちがFIAの指示通りレースをすることもできない。彼らが選んだのはレースへの出走そのものを拒否することだったのだ。

たった6台のレースに、多くのファンはファンは怒りを抑えることができなかった*20。観客席からはブーイングの嵐がコース上に降り注ぎ、FIAの会長であるマックス・モズレーを非難、侮辱する横断幕が掲げられた他、観客が抗議としてサーキットにペットボトルを投げ入れる事態まで起きた*21

レースは結局、6台全車が無事完走。ブリヂストンタイヤを使用した6台は一度たりともタイヤのトラブルに見舞われることはなかった。優勝したのはフェラーリのミハエル・シューマッハ。何の因縁か、練習走行でクラッシュし、一連の騒動の発端となったラルフの兄だった。2位にシューマッハのチームメイトのルーベンス・バリチェロが入り、3位には初表彰台となるジョーダンのティアゴ・モンテイロが入った。シューマッハとバリチェロがシャンパンファイトもやらずに早々にポディウムを後にしたのに対し、モンテイロは嬉しさから一人で大はしゃぎしていたのが慰めだった。
ちなみに、このレースで5位と6位に入賞したミナルディチームは来季よりレッドブルに売却されトロ・ロッソと改称したため、これが最後の入賞となった。

ミシュランはレース後にプレスリリースを発表、ボイコットに関して観客やファンに謝罪する一方で「我々は安全を第一に考えたが、シケイン設置を拒まれたことからボイコットするしかなかった」とFIAを批判。しかし、ミシュラン自身も「安全を第一に考えるのなら、なぜ安全なタイヤを最初から用意できなかったのか?」という批判を浴びることになった。
実はその直前のヨーロッパGPにおいても、ミシュランを使用するマクラーレンのキミ・ライコネンがフラットスポットを原因とするサスペンションの破損が原因で大きなクラッシュを喫しており*22、このレースを受けたFIAはブリヂストンとミシュランの双方に「タイヤはあらゆる状況において安全に使用できるものを用意するように」という書簡を送っていたという。このことも上記にあるミシュランへの批判を助長した。

FIAがミシュランの要請に応じなかったことがレースを台無しにする要因となったことから、FIAにも少なからず批判が集中した。モズレーはそれに対して、上記にあるシケインの要請を拒否した理由やミシュラン側に代替えとして提案した内容を説明した上で、レースに安全に出走する方法があったにもかかわらず、それを拒んだミシュランを批判した*23。また、ミシュランの提案を受け入れてレースをしたことが原因で重大な事故が起きた場合、誰もFIAを擁護できなかったはずだと自らの正当性を主張した*24

結局、ミシュランはレースを走るために必要なタイヤを用意できなかったことや、不当にレースへの出走を拒否したことが、FIAやF1関係者の間で結ばれてばれている協定に違反するとして有罪判決を受けることとなった。また、協定違反を審議する中で、ミシュランやその使用チームはFIAにボイコットすることを事前申告していなかったことが発覚している。これはつまり、ボイコットはFIAにとっても想定外の出来事であり、事前にファンやメディアに対してもボイコットのリスクを説明することが不可能であったことを意味する。

その決定を受けてか、ミシュランは翌年のアメリカGPのチケットを自費で購入し、このレースの観客に配布することで事件の補償をおこなうことを決めた。

ミシュランはこの年開催された19レースのうち、このアメリカGPを除く18レースで勝利を上げることになるが、唯一敗北したこのレースの一連の出来事により、F1での信用を大きく失墜。2007年から予定されていたワンメイクタイヤにも、ブリヂストンが選ばれることとなった。

そして、このレースの影響を受けたのか、FIAは「1レース1セット」のタイヤ仕様レギュレーションはこの年限りで廃止し、翌年からはレース中のタイヤ交換も復活することを決定。一方で、事件の当事者となったミシュランはコスト増加とこの年の開発ノウハウをこの先活かせばいこと、規則を以前のものに戻すことはF1にとって後退であるという理由から、反対の名声を発表。
しかし、FIAは翌年のタイヤの規則が、前年のものに内容を戻しただけにすぎない点は認めつつも、この規則を決めるに当たって、チームの代表やレースの主催者などで構成された委員会の多数決投票において圧倒的な支持を得て可決された(≒ミシュランが指摘している規則を戻すことに対するデメリットより、現在の規則にある問題点のほうが深刻だと多くの関係者が考えている)こと、そして前年のミシュランタイヤはIMSのコースを問題なく走れる性能だったことを根拠として、タイヤ交換の復活は正当な変更であると反論している。

ちなみにこのIMS、超高速な割にバンクが浅いことからタイヤへの負荷がかなり厳しいトラックの一つで、NASCARでもバーストが耐えない。特に2008年にこのコースで開催されたAllstate 400 at the Brickyardでは、タイヤの摩耗が酷すぎて長距離を走るのは危険ということで、12周ごとにを運営がフルコースコーションを出してそのたびにタイヤ交換をおこなうという規則のもとで開催された。インディゲートから3年程度しか経っていなかったためレースが成立するか不安になったファンもいたが、幸いなことにNASCARはグッドイヤーのワンメイクだったため、このルール変更で不利を受けるチームが存在せずF1の例と違って大きな揉め事にはならなかった。しかし、摩耗の激しいタイヤしか用意できなかったグッドイヤーが批判の的になってしまったのは言うまでもない。



以上がモータースポーツのタイヤである。
このほかにも調べるともっと奥深いことが書かれているサイトや本が多数存在するので、気になる人はそちらを熟読することをお勧めする。
少しでもモータースポーツの世界に興味を持ってくれたなら幸いだ。

追記・修正はタイヤのグリップを維持しながらお願いします。


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