Blair's 16 Million Reserve

「Blair's 16 Million Reserve」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

Blair's 16 Million Reserve - (2019/05/30 (木) 22:52:34) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2009/06/01(月) 14:04:47
更新日:2024/01/05 Fri 09:46:16
所要時間:約 21 分で読めます




◆概要

Blair's 16 Million Reserve(ブレアの1,600万の蓄え)』とは、この世界で一番い調味料である。*1

アメリカのニュージャージー州にあるガードナー・リソーシーズ社。
そのブレア・ライザーさんという畜が、たった999本だけ世に送り出したお洒落な小瓶。
小瓶の中にはしっかりとしたキャップの薬品ボトルが入っており、その中に白くサラサラとした結晶が封入されている。

さの数値を表す『スコヴィル値』というのがあるのだが、普通のタバスコソースのスコヴィル値は2,500~5,000。
しかしこの『16M Reserve』のスコヴィル値は、

16,000,000

つまり普通のタバスコソースの3,200~6,400倍のさを持っている。サイヤ人と戦う悪の帝王かコイツは。
このスコヴィル値16,000,000がどれくらいいかというと、
  • 素手で触っただけで 皮膚がけただれて全身に灼熱感を感じる (辛すぎて)
  • その手で顔を触ると 激痛で目を開けなくなる (辛すぎて)
  • 念入りに 洗った手でもダメ (辛すぎて)
  • というかゴーグルを着用しないと 失明の危険がある (辛すぎて)
  • ゴーグルをつけても 目に入る汗が激痛 を生じる(辛すぎて)
  • ピンセットひとつまみで 大鍋いっぱいのスープが台無しになる(辛すぎて)
  • それを一口飲ませた 妻が しゃべれなくなった(辛すぎて)
  • しゃべれるようになったら 離婚を切り出された (辛すぎて)
  • 25mプールに 一欠片 落とすと味が変わる(辛すぎて)*2
  • そのまま口にすると の危険がある (辛すぎて)
  • 購入には 誓約書 への同意が必要(辛すぎて)
etc.

また、ブレア氏ご自身も結晶を一粒だけ試食してみたところ、

まるで 舌をハンマーでぶん殴られたような

私はこれまで舌に ピアス を入れたことはなかったが、間違いなくそれだった

舌の火傷は何日も消えなかった。あれはお勧めしない。 絶対にお勧めしない。
(中略)
――お勧めしない。試してはいけない。ブラザー、あれは 本物

という、およそ食品に対するものではない感想を残している。

ぶっちゃけ、この製品はカプサイシン(み成分)を純化して取り出しただけの代物。
スコヴィル値というのは原義的にはカプサイシンの割合を示し、カプサイシン単体でのスコヴィル値こそが16,000,000。
つまりこれ以上のさは化学的に(基本的には)存在しない。
催涙ガスだって原液500万スコヴィルを百倍近く薄めるんだからその威力たるや推して知るべし。
そして、それほどのさを「わい尽くせる」感覚器官が人間に存在するかも怪しい。

理論上の最高値を名前に冠するこの製品には、激辛ソース愛好家から日々
「もっといソースを!」
と突き上げを食らい続けたブレア氏の、
「ほらよ! 後にも先にもこれがこれが世界一いソースだ!」
という自棄っぱちなアンサーが籠められているのかもしれない。


◆これ食品じゃないですよね?

『Blair's 16 Million Reserveは実験的なディスプレイなので絶対に食べないで下さい』
としっかり書かれている。
購入にあたっても誓約書の署名が必要で、
  • 直接は食べません。添加物としてだけ使用します。
  • 取り扱うときには手袋・ゴーグルを必ずします。
  • 実験的な使用に限定します。
  • 18歳未満には取り扱わせません。
という項目にきちんと同意しなければならない。

事実、これや『A.M. Reserve』シリーズはコレクターズアイテムとしての性質が強い。
999本ないし99本限定な上、それぞれの瓶にナンバーとサインが入っている。
実際に使用する人も多くはなく、オークションなどでは数万円から数十万円で取引されるようだ。

調味料としてちょっとした刺激が欲しい方は、
『Blair's 6 A.M. Reserve(ブレアの午前六時の蓄え)』
をどうぞ。
スコヴィル値1,030万~1,600万程度の刺激が味わえます。
こちらは結晶などではなくきちんとソースしてるとのこと。
16M Reserveに調味料を足しただけとか言うなよ!

ちなみに、カプサイシンの半数致量は50~60mg/kg。
体重20kgの子供なら、16M Reserveを1,200mg与えると半数が死亡するということである。
さて、ここで厚生労働省発行『毒物劇物の判定基準(H29)』を見てみよう。
毒物:LD 50 が 50mg/kg 以下のもの
劇物:LD 50 が 50mg/kg を越え 300mg/kg 以下のもの
えっと……あの、劇物……。


◆余談

ブレア氏と激辛ソース

ブレア氏は1989年、ニュージャージー州にてバーテンダーを勤めていた。
彼の店の閉店時間は午前2時。
しかし、客の中にはそれを過ぎてもまだ帰ろうとしないものがおり、ブレア氏がそんな彼らに居座る条件として出したのが、

『Blair's Wings of Death(ブレアの死の翼)』

――彼のオリジナルレシピによる、激辛ソース付きの手羽を完食することだった。
そう、これこそが『Blair's 2 A.M. Reserve』であり、『6 A.M.』まで続くA.M.シリーズの由来。
そしてロングセラー激辛調味料『デスソース』シリーズ誕生のきっかけなのである。

さの頂点

さて、スコヴィル値とは前述したようにカプサイシンに対する尺度である。
故にその頂点は16,000,000スコヴィル――しかし、この世にはカプサイシンの類似体というものが存在する。
彼らの辛さはスコヴィル値換算で純カプサイシンに匹敵、あるいは上回ることがあるのだ。


このカプサイシンは変身をするたびにパワーがはるかに増す…
その変身をあと2回もオレは残している…
その意味がわかるな?

3位:『ジヒドロカプサイシン』 (16,000,000 スコヴィル)
1600万スコヴィル。
唐辛子などにカプサイシン同様に含まれており、さはカプサイシンと同等だが、風味は少しだけ異なるという。
まぁ概ねカプサイシン同等の物質と思って差し支えない。
さてお次は……。


わたしのスコヴィル値は53億です

2位:『チニアトキシン』 (5,300,000,000 スコヴィル)
53 「億」 スコヴィル。
……え?
と、思わず思考停止するほどのさのインフレ。
否、もはやそんなレベルではない。化学熱傷を引き起こす立派な 神経毒 である。まぁToxin(毒)って言ってるしね。
そのさ、カプサイシンの300倍以上
チニアトキシンに比べれば、16M Reserveですら雑魚同然。
フリーザを前にしたヤムチャ、それも栽培マンに殺された頃のヤムチャなのだ。
まったく、この世にこれほどい物質があるだろうか?


待たせたな……
こいつがお望みのフルパワー

1位:『レシニフェラトキシン』 (16,000,000,000 スコヴィル)
あった。
160億スコヴィル。この世ならぬ地獄へようこそ!
16M Reserveを桁区切りの彼方へ置いてきぼりにする、 辛さの頂点。
もはや意味のない比較だが、タバスコソース換算にして 320万倍~640万倍 さである。
恐ろしいことにこの物質、天然に存在するいわゆる自然毒で、「ハッカクキリン」という植物が高濃度に含有する。
ハッカクキリンはサボテンによく似た、モロッコ原産の多肉植物であり、もし野生動物がこれを口にしようものなら……
その先の説明は必要ないだろう。

また、あまりに的な効果から、末期ガン患者への鎮痛剤としての効用が期待されているという。
患部に注射されたレシニフェラトキシンは、みを感じる神経細胞をさによって徹底的に 「破壊」 する。
破壊された神経細胞はもはや何も感じず、患者は末期ガンの苦痛から解放されるのだ。
この手法のよいところは、医療用麻薬と違って高揚感や依存性がなく、しかも効果が半年以上も持続する点。
しかもみはみを感じる神経にのみ働くため、他の感覚神経に影響はない。
もっとも、レシニフェラトキシン自体も激痛を伴うので、予め麻酔をしておく必要はあるのだが。
……調味料の話に始まり、先端医療の話に到るとは、世の中わからないものである。



追記・修正は舌に白い結晶を乗せてからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/