ナーガ(インド神話)

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&font(#6495ED){登録日}:2018/10/22 Mon 01:57:40 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 10 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #openclose(show=●目次){ #contents() } *ナーガ(竜) &font(b){『ナーガ(Nāga)』}は古代インドに起源を持つ蛇神。 水に関わる信仰を持つ河川の神でもあり、女性形の&font(b){ナーギニー(ナーギィ)}は、そのまま河川の意味としても通じるという。 古代オリエントでは生命の象徴たる水は全て母なる女神に喩えられており、[[シヴァ]]が受け止めたガンジス川の化身であるガンガー女神や、[[弁才天]]として知られるサラスヴァティー女神もナーギィと呼ばれていたと云う。 インド神話では[[ヒンドゥー>ヒンドゥー教]]と、その前身となるバラモン教に於いて言及されるが、バラモン時代とヒンドゥーでは扱いに温度差があり、アーリヤ人による階級差別の視点の変化が見てとれる。 [[仏教]]では「[[竜>龍(東洋神話)]]」として、仏法守護の為に帰依した護法善神の一つとして[[天竜八部衆]]の一氏族に組み込まれている。 本来は、同地に生息するコブラを畏怖することから生まれた毒蛇を神格、精霊として捉えた蛇神であったが、中国ではナーガを「竜」と訳し、古来より伝わる天候を自在に操る蛇身の「龍」の伝承と混同していった。 これにより、インド由来の強大な&font(b){ナーガ(蛇)・ラージャ(王)}は[[龍神>龍(東洋神話)]]又は竜王となり、中国経由で仏教が伝来した日本でも八大竜王を初めとした龍神が信仰されるようになった。 道教の龍王の特徴もインドのナーガ・ラージャと共通しており、成立までに多くの影響を受けたことを想像させる。 ただし、インド神話に於いても太陽を遮っていた強大な悪竜ヴリトラ(アスラ族)がナーガの眷属と捉えられ混同されたり、中国の龍にも天の相を操る水神としての属性があったりと、元より混同されるに足る共通点は見出だせる。 日本でも土着の蛇神の伝承が仏教の龍神と関連付けられていった経緯があり、中国での伝承をも合わせて、天候を操り、大海をも支配する水神としての属性を獲得するに至っている。 *【インド神話】 現在のインド北東部からミャンマー西部にかけての地域に由来を持つ土俗神で、バラモン教やヒンドゥーでは本来の信仰からは外れた地方神の一つである。 [[ゲーム]]『女神転生』シリーズ等では、上半身が人間の[[ギリシャ神話]]の[[ラミア>ラミア(ギリシャ神話)]]の様な姿で描かれているが、前述の様に元来はリアルな意味でコブラを神格化した概念なので、現地では普通に蛇として顕されることの方が多いという。 ただし、神の類として巨体や&font(b){七頭}で顕される等して現実のコブラとは&font(l){現在では}区別されている。 ナーガ族の王をナーガ・ラージャ(ナーガラジャ)と云い、これはコブラの幅の広い頭から連想されたと考えられている。 &font(l){[[ヒューッ!>コブラ(登場キャラクター)]]} 古代オリエントに共通するイメージにより、蛇は陰気に属する危険な生き物であると同時に、絡み合い生命を生み出す多産と、脱皮を繰り返して生まれ変わる不老不死の象徴であった。 インドでも蛇は忌避されると同時に生命の象徴であり、ヨガ修行により沸き上がる生命の本質のイメージは蛇にして女神であると喩えられている。 その蛇を「クンダリニー(螺旋を有する者の女性型)」と呼び、或いはシャクティ(性力)女神ともいう女性原理である。 再生と破壊の神[[シヴァ]]は毒蛇を首にかけたり武器としているが、シヴァは理想のヨガ修行者として、生命の本質たるクンダリニーの相手役となる男性原理であり、神話に於ける[[シヴァ神妃]]はクンダリニー=シャクティたる女性原理のシンボル化と修行者から捉えられる。 [[シヴァ]]は、元来は陰気を従える不浄と悪霊の王でもある。 そんな[[シヴァ]]が立ち現れるとされた場所は暗く、じめっとした人に不吉を予感させる場所であり、蛇(ナーガ)はそんな所に住んでいたのだ。 ヨガ修行者は[[シヴァ]]との合一を目指し、全身に灰を塗り毒蛇を巻き付けることもある。 以上がシンボルとしてのナーガの概説であり、ここからは神話に於けるナーガの姿を紹介する。 ヒンドゥーでは最下層の地下世界パーターラに棲んでいるとされ、蛇を食らう猛禽の神格化である[[ガルーダ>ガルーダ(インド神話)]]と敵対し、この対立の構図は仏教にも持ち込まれている。 パーターラは異名をナーガローカと云い、これは「ナーガの棲む所」という意味である。 また、前述の様にナーガを思わせるアスラ族のヴリトラが[[インドラ>インドラ/帝釈天]]に打破されたという神話や、ガルーダの神話にてナーガが敵対者として描かれていることからも解るように[[アスラ>阿修羅]]や[[ヤクシャ>夜叉]]と同様にアーリヤ人により追いやられた土着の古い神々であり、その信仰の大本はアスラ等と同様にインダス文明より遥か以前の文字の記録も残っていない時代からと想像されている。 その一方で、仏教が興りバラモン教がヒンドゥーに移る頃にはナーガの扱いに変化が起きており、ヒンドゥーでは二大神である[[シヴァ]]は前述の通り蛇を使い、もう一方の[[ヴィシュヌ]]も千の頭を持つナーガ・ラージャのアナンタを象徴としていることで知られている。 仏教でも修行中の[[釈尊>ブッダ]]を守ったムチャリンダ&font(l){くん}の名が伝えられ、後には釈尊が誕生した時には&font(l){調子に乗るな頭を冷やせと}竜王が甘露の雨を降らせたとする伝承が生まれている。 そもそもナーガの信仰が起きた地域にはナガを自称する様々な部族の人々が今でも棲んでおり、彼等はシャカ族とも血縁があったとも言われる。 シャカ族は日月を信仰する農耕民族で、矢張りインダス文明以前より伝わる光明神アスラを信仰していたと想像されている。 *【代表的なナーガ・ラージャ】 **カドゥルー 自らの望みにより千のナーガを生んだと言われる、ダクシャ&font(l){(シヴァの最初の妻サティーの父親で、度を過ぎたシヴァ嫌いからサティーの焼身自殺を呼んだ親父)}の娘の一人。 姿はナーガとされていないが全てのナーガの母親である一方、ナーガ族にとっては滅亡寸前となる状況を二度も呼び込んだ駄目な母ちゃん。 妹のヴィナターと、負ければ相手の奴隷にならなければならないという賭け事((乳海攪拌で生まれた太陽を牽引する神馬ウッチャイヒシュラヴァスの尾の色を当てる[[ゲーム]]で、黒と主張したカドゥルーは子であるナーガを使い、白い尾を黒に見せて勝利した))を行い、イカサマの為に子であるナーガ達を使ったが、言うことを聞かない子供が多かったことから軽い気持ちで子等に呪いをかけ、その呪いがナーガの毒を恐れた[[ブラフマー]]を喜ばせたのもあったのか後の世まで作用し続け、タクシャカの代では危うく一族が滅びかけた。 また、イカサマをして奴隷にしたヴィナターの子がガルーダであり、生まれた時より奴隷の身である己と、長きに渡り奴隷のままの母の境遇を不憫に思っていたガルーダにうっかりと真実を漏らしてしまったことにより怒りを買い、インドラなどの神々を圧倒した後に祝福を得て不死の肉体を得て奴隷から脱したガルーダにナーガを餌とすることを希望させることにもなってしまった。 **ムチャリンダ 菩提樹を根城としていたナーガ・ラージャで、やって来た釈尊が偉大な聖者であることに気付くと自主的に釈尊を守り、激しい嵐の折には自らの身体を七回巻き付け、七日間に渡り釈尊を守ったと伝えられる。 **ヴァスキ 千の頭を持つナーガ・ラージャで、地下世界パーターラの王。 ディーヴァ(神)とアスラ(悪魔)が霊薬アムリタを作る為に新たなる天地開闢の為の乳海攪拌を行った際に、その中心となった[[ヴィシュヌ]]の変化した大亀の上の大曼陀羅山に絡み付き、綱の役割を果たしたと言われる。 しかし、旧世界を消滅させ、様々な思惑も絡んだ千年を越える大仕事は荷が重く、引っ張られてる途中で苦しみの余りに毒を吐いてしまい、危うく世界を滅ぼしかけるが、気づいた[[シヴァ]]が呑み込むことにより事なきを得たと云う。 喉が青黒くなった[[シヴァ]]の図は、この時の姿を描いたものである。 **アナンタ 地下世界パーターラの最下層より世界を支えていると言われる最古のナーガ・ラージャであるアーディ・シェーシャの異名であり、千の頭を持つ大蛇である。 名は『永遠』や『無際限』を意味するとされる。 シェーシャがウロボロスの如く、自らの尾を咥えた円環の姿をしている状態がアナンタであるともいう。 [[ヴィシュヌ]]の象徴として知られ、原初の時代で宇宙より以前の宇宙が混沌の海であった頃に船替わりにした時以来、[[ヴィシュヌ]]の果てしない瞑想はアナンタに抱かれる形で行われている。 シヴァが自身と共に宇宙(世界)を破壊しほぼ全てが滅んだ終末を迎えた時、アナンタと[[ヴィシュヌ]]だけが生き残り、[[ヴィシュヌ]]の果てしない瞑想が再度始まるとされる。 **タクシャカ ナーガ・ラージャの内で最も狡猾であったと言われる。 アスラ族のヴリトラと違い、インドラの友人であるナーガ族。 古代インドの英雄アルジュナの孫であるパリークシット王を噛み殺した。 ……これは、王が神仙に対して失礼な行いをしたことにより掛けられた呪いによるものだったのだが、これを受けて、カドゥルーの呪いにより王の息子であるジャナメージャナより報復され、危うく一族毎に葬られそうになったのをインドラの許に逃げ込むことで免れている。 呪いに呪いが作用した感じで、タクシャカの意志では無かったのかもしれないが散々である。 *【仏教】 悟りを開き汎インド的運命論から解脱した[[シャカ族の聖者>釈迦如来]]=釈尊が生んだ仏教にもナーガは他の土着神と共に取り入れられた。 ムチャリンダの説話を引用するまでもなく竜(ナーガ)の仏教に於ける役割は多い。 特に有名なのが法華経に登場する&font(b){八大龍王}で、彼等は釈尊の導きにより[[観世音菩薩]]の働きに触れ、「阿耨多羅三藐三菩提(無上正等正覚)」を得て護法神となったと云う。 繰り返すが、八大龍王は元来はインド神話のナーガ・ラージャであったが、中国を経由したことにより[[龍神>龍(東洋神話)]]の姿で伝わった。 本来は龍の姿だが人型で顕されることも多く、彼等をはじめとして龍は、全能の力を持つものというイメージを定着させた。 ただし、姿こそ違えどナーガ・ラージャの時点で強大な力を持つ王達だったので、龍の姿を得たからこそ強大になったという訳でもない。 この、ナーガ・ラージャの説話を許に道教の四海龍王や五方龍王が生まれたと考えられている。 *【八大龍王】 **難陀龍王(ナンダ) **跋難陀龍王(ウパナンダ) マガタ国を守護していたと言われる兄弟龍王で、名の意味は『歓喜』『(亜)歓喜』 跋難陀龍王は、釈尊降誕の際に歓喜の雨を降らせた龍王であるという。 また、兄弟は共に協力して娑伽羅龍王と戦ったとも言われる。 **娑伽羅龍王(サーガラ) 名は『大海』を意味することから、&font(b){大海龍王}と呼ばれることもある。 よって、竜宮城の主ともされた。 空海が新たな名付け親となった清滝権現も、唐から連れてきた娑伽羅龍王の娘だという。 釈尊の教えにより悟りを開き男子となって成仏した善女龍王の父親とされる他、民間伝承に於いても竜宮城に由来する龍女の父となった。 **和修吉龍王(ヴァスキ) インド神話でも高名なナーガ・ラージャであるヴァスキのことで、インドでの活躍は前述の通り。 名の意味は『宝』で、多頭の伝承があることから、様々な伝承と関連付けられた結果&font(b){九頭竜大神}や&font(b){九頭龍王}とも呼ばれる。 インドだと千の頭を持つことから&font(b){多頭龍王}とも呼ばれる。 **徳叉迦龍王(タクシャカ) 名を『多舌』。或いは『視毒』と云い、本気で視ただけで相手を殺せる邪視の持ち主とされている。 インドでの活躍は前述の通り。 **阿那婆達多龍王(アナヴァタプタ) 名を『清涼』『無熱悩』と訳され、ヒマラヤにあると云う神話上の池である阿耨達池より四方に大河を流し、人間界を潤すと言われていた。 **摩那斯龍王(マナスヴィン) 名を『大身』『大力』と訳される巨大なナーガ・ラージャ。 [[阿修羅]]が喜見城(須弥山にある帝釈天の居城)を海水で攻めて浸した時、その巨体を翻して津波にして押し返したと云う、リヴァイアサンの様な龍王。 **優鉢羅龍王(ウッパラカ) 名を『青蓮華』と訳し、これは美しい眼の比喩である。 *【その他の龍王】 **龍女・善女(如)龍王 上記の様に、釈尊の説法により解脱に至った娑伽羅龍王の娘。 &font(b){たった八歳のロリ}が悟りを開くと共に&font(b){一瞬でちん◯が生えて}仏になったと云う物凄いエピソードで、龍女成仏として伝わる。 仏の解脱を表す説話として、法華経の中でも特に重要であり、女人でも解脱出来る(女人往生)の根拠とされて篤く信仰されており、龍にして仏であり神でもある偉大で尊大な存在といえる。 密教ではかなり有力な龍王でもあり、雨乞いを捧げられる対象としても知られる。 名前は善女だが、説話からか男の子として顕す作例も見られる。 **■俱利伽羅龍王 [[不動尊>不動明王]]が手にする利剣に炎となって絡み付いている龍王。 *【ナーガのようなアスラ】 **[[ヴリトラ>ヴリトラ(インド神話)]] 『リグ・ヴェーダ』と『マハーバーラタ』の両方でインドラに打倒されている悪竜。 名は『塞ぐ者』とされ、巨大な身体により水を塞き止めていた蛇の姿だったり巨人の姿だったり鬼神の姿だったり蜘蛛の姿をしたアスラ族。 ヴリトラ自体がナーガと呼ばれている訳ではないことに留意されたし。 追記修正はガルーダ(迦楼羅)を倒してからお願いします。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,4) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - ドラゴンボールの元ネタという話で「願いを叶える宝玉を持つ龍がいて、インドの高僧が印を結んで動きを封じ宝玉を取ろうとすると「ブッダは両手で受け取ったぞ」と言われて思わず印を解いて両手を出してしまい、飛び上がった龍が嵐を起こして僧が飛ばされ他国に仏教が伝わった」という話があると昔聞いたことがあるが本当なんだろうか -- 名無しさん (2018-10-26 23:14:51) - あるとすれば多分ヴァスキだろう -- 名無しさん (2020-10-11 18:49:59) - ナルガクルガの「ナルガ」は「ナーガ」のもじりなんだよね・・・ -- 名無しさん (2023-06-05 00:01:45) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2018/10/22 Mon 01:57:40 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 10 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #openclose(show=●目次){ #contents() } *ナーガ(竜) &font(b){『ナーガ(Nāga)』}は古代インドに起源を持つ蛇神。 水に関わる信仰を持つ河川の神でもあり、女性形の&font(b){ナーギニー(ナーギィ)}は、そのまま河川の意味としても通じるという。 古代オリエントでは生命の象徴たる水は全て母なる女神に喩えられており、[[シヴァ]]が受け止めたガンジス川の化身であるガンガー女神や、[[弁才天]]として知られるサラスヴァティー女神もナーギィと呼ばれていたと云う。 インド神話では[[ヒンドゥー>ヒンドゥー教]]と、その前身となるバラモン教に於いて言及されるが、バラモン時代とヒンドゥーでは扱いに温度差があり、アーリヤ人による階級差別の視点の変化が見てとれる。 [[仏教]]では「[[竜>龍(東洋神話)]]」として、仏法守護の為に帰依した護法善神の一つとして[[天竜八部衆]]の一氏族に組み込まれている。 本来は、同地に生息するコブラを畏怖することから生まれた毒蛇を神格、精霊として捉えた蛇神であったが、中国ではナーガを「竜」と訳し、古来より伝わる天候を自在に操る蛇身の「龍」の伝承と混同していった。 これにより、インド由来の強大な&font(b){ナーガ(蛇)・ラージャ(王)}は[[龍神>龍(東洋神話)]]又は竜王となり、中国経由で仏教が伝来した日本でも八大竜王を初めとした龍神が信仰されるようになった。 道教の龍王の特徴もインドのナーガ・ラージャと共通しており、成立までに多くの影響を受けたことを想像させる。 ただし、インド神話に於いても太陽を遮っていた強大な悪竜ヴリトラ(アスラ族)がナーガの眷属と捉えられ混同されたり、中国の龍にも天の相を操る水神としての属性があったりと、元より混同されるに足る共通点は見出だせる。 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ヒンドゥーでは最下層の地下世界パーターラに棲んでいるとされ、蛇を食らう猛禽の神格化である[[ガルーダ>ガルーダ(インド神話)]]と敵対し、この対立の構図は仏教にも持ち込まれている。 パーターラは異名をナーガローカと云い、これは「ナーガの棲む所」という意味である。 また、前述の様にナーガを思わせるアスラ族のヴリトラが[[インドラ>インドラ/帝釈天]]に打破されたという神話や、ガルーダの神話にてナーガが敵対者として描かれていることからも解るように[[アスラ>阿修羅]]や[[ヤクシャ>夜叉]]と同様にアーリヤ人により追いやられた土着の古い神々であり、その信仰の大本はアスラ等と同様にインダス文明より遥か以前の文字の記録も残っていない時代からと想像されている。 その一方で、仏教が興りバラモン教がヒンドゥーに移る頃にはナーガの扱いに変化が起きており、ヒンドゥーでは二大神である[[シヴァ]]は前述の通り蛇を使い、もう一方の[[ヴィシュヌ]]も千の頭を持つナーガ・ラージャのアナンタを象徴としていることで知られている。 仏教でも修行中の[[釈尊>ブッダ]]を守ったムチャリンダ&font(l){くん}の名が伝えられ、後には釈尊が誕生した時には&font(l){調子に乗るな頭を冷やせと}竜王が甘露の雨を降らせたとする伝承が生まれている。 そもそもナーガの信仰が起きた地域にはナガを自称する様々な部族の人々が今でも棲んでおり、彼等はシャカ族とも血縁があったとも言われる。 シャカ族は日月を信仰する農耕民族で、矢張りインダス文明以前より伝わる光明神アスラを信仰していたと想像されている。 *【代表的なナーガ・ラージャ】 **カドゥルー 自らの望みにより千のナーガを生んだと言われる、ダクシャ&font(l){(シヴァの最初の妻サティーの父親で、度を過ぎたシヴァ嫌いからサティーの焼身自殺を呼んだ親父)}の娘の一人。 姿はナーガとされていないが全てのナーガの母親である一方、ナーガ族にとっては滅亡寸前となる状況を二度も呼び込んだ駄目な母ちゃん。 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また、兄弟は共に協力して娑伽羅龍王と戦ったとも言われる。 **娑伽羅龍王(サーガラ) 名は『大海』を意味することから、&font(b){大海龍王}と呼ばれることもある。 よって、竜宮城の主ともされた。 空海が新たな名付け親となった清滝権現も、唐から連れてきた娑伽羅龍王の娘だという。 釈尊の教えにより悟りを開き男子となって成仏した善女龍王の父親とされる他、民間伝承に於いても竜宮城に由来する龍女の父となった。 **和修吉龍王(ヴァスキ) インド神話でも高名なナーガ・ラージャであるヴァスキのことで、インドでの活躍は前述の通り。 名の意味は『宝』で、多頭の伝承があることから、様々な伝承と関連付けられた結果&font(b){九頭竜大神}や&font(b){九頭龍王}とも呼ばれる。 インドだと千の頭を持つことから&font(b){多頭龍王}とも呼ばれる。 **徳叉迦龍王(タクシャカ) 名を『多舌』。或いは『視毒』と云い、本気で視ただけで相手を殺せる邪視の持ち主とされている。 インドでの活躍は前述の通り。 **阿那婆達多龍王(アナヴァタプタ) 名を『清涼』『無熱悩』と訳され、ヒマラヤにあると云う神話上の池である阿耨達池より四方に大河を流し、人間界を潤すと言われていた。 **摩那斯龍王(マナスヴィン) 名を『大身』『大力』と訳される巨大なナーガ・ラージャ。 [[阿修羅]]が喜見城(須弥山にある帝釈天の居城)を海水で攻めて浸した時、その巨体を翻して津波にして押し返したと云う、リヴァイアサンの様な龍王。 **優鉢羅龍王(ウッパラカ) 名を『青蓮華』と訳し、これは美しい眼の比喩である。 *【その他の龍王】 **龍女・善女(如)龍王 上記の様に、釈尊の説法により解脱に至った娑伽羅龍王の娘。 &font(b){たった八歳のロリ}が悟りを開くと共に&font(b){一瞬でちん◯が生えて}仏になったと云う物凄いエピソードで、龍女成仏として伝わる。 仏の解脱を表す説話として、法華経の中でも特に重要であり、女人でも解脱出来る(女人往生)の根拠とされて篤く信仰されており、龍にして仏であり神でもある偉大で尊大な存在といえる。 密教ではかなり有力な龍王でもあり、雨乞いを捧げられる対象としても知られる。 名前は善女だが、説話からか男の子として顕す作例も見られる。 **■俱利伽羅龍王 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