暴走機関車の巻(こち亀)

登録日:2020/01/13 Mon 22:09:15
更新日:2020/01/16 Thu 17:59:51
所要時間:約 8 分で読めます





こち亀のエピソードのひとつ。単行本第70巻に収録されている。


◆ストーリー


冒頭、いつもは自転車に乗って派出所に向かうはずの両さんだが、今話ではなぜか走って派出所へ到着した。


中川「あれ? 自転車は?」

両津「チェーンが切れて修理に出てる」


派出所に部長の姿がないことを不思議がる両さんだったが、中川から「今日は『星と宇宙の博覧会』の開会式に出席してますよ」と教えられる。


両津「そうだった! くそ! あわててくることなかった!」


悔しがる両さんだが、そんな両さんに麗子が「両ちゃんあてにDM(ダイレクトメール)がきてたわよ」と手紙を差し出す。
中を開いてみると、そこには蒸気機関車の写真とともに「シーイレブン」「本日開店」「ビール祭り」の字が踊っていた。


両津「あっ 丸山のやつ店出したのか」

中川「知り合いですか!」

両津「模型仲間だ。個人で実物の機関車を買いやがった大バカ野郎だ」

両津「わしは中古の戦車を買った方がいいぞとすすめたんだが…」
バカさ加減はどっちも変わらんような気がする


そして両さんは封筒の中からビール無料券を見つけ、多いに色めき立った。
「昼から営業してるぞ! 中川! すぐ飲みに行こう!」と中川を誘うが、「勤務中はまずいですよ!」と断られる。
続いて麗子を誘い始めるが、「昼間からそんなバカなことしないわよ」と当然のように断られ、両さんは怒った。


両津「きさまら頭がかたい! だから日本人はなめられるんだ!」

両津「イタリア人を見ならえ! 朝からワインをガブガブ飲んでるぞ!!」


声高に主張する両さんだが、「それはお国柄のちがいよ」「日本じゃまだそういう風習はありません」と冷静な言葉で否定されてしまい、
「いいよわし一人でいくから!」と拗ねた両さんは派出所を飛び出し、いつものクセで自転車に乗ろうとして無様にコケてしまった。



この話では両さんはほとんど悪事は働いておらず、この勤務のサボりが唯一の悪事らしい悪事である。
しかし、このたった一回のサボりの末に待ち受ける両さんの運命は、悲惨なものであった…。




シーイレブンの店にやってきた両さんは、屋外に飾ってあるC11の機関車に感嘆。


丸山「よう両さん! きてくれたかい!」

両津「タダ券につられてきた!」



店主の丸山は、かつては田舎の庭でこのC11を走らせていたほどの機関車好き。
しかし、東京のこの店にはこんな大きな機関車を走らせるスペースはない。
だが、このC11はただ展示品として飾っているだけではなかった。


丸山「いいかおどろくな! 吸水加熱器からビールが出るんだ!」

両津「なんと!」


そう、この機関車はビール機関車として改造されていたのだった。
本来蒸気機関車とは火室に石炭をいれ、水タンクの水を熱しその蒸気でピストンを動かす仕組みなのだが、
丸山は石炭の代わりにドライアイスを火室に入れ、水タンクの場所に入れたビールを冷やし、
給水加熱器からその冷えたビールを取り出せるようにしたのだ。


丸山「炭庫のスペースに生ビールの貯蔵庫をもうけた。500リットル入る」

両津「大丈夫か? 相当なガス圧があるぞ!」


ギシギシ…


丸山「いちおうビール機関車用にすべてチェックしたからな」


バン!

シュゥゥゥ


両津「今何か音が聞こえなかったか?」

丸山「いやべつに」


シュゥゥゥ

シュゥゥ

ギギ


両津「客が増えてきたな。取材も結構きてるぞ」

丸山「雑誌で宣伝されれば店の前に列ができるよ」


ギシッ


両津「ん!? 今 たしか動輪が動いたぞ」

丸山「まさか! もう酔ったのか?」



しかし、両さんは決して酔っていた訳でなかった。



客「機関車が無人で動いた!」

客「きゃあ!」

客「うわあ!!」


そう、なんとビール機関車がなぜか少しずつ動き始めたのだ。
両津や丸山が慌てて止めにかかるが、坂道でもないのにだんだん力強くなってきて、両さん達に限界が訪れる。


両津「あぶない! どけ! 外へ出るぞ!!」


ド ガ ッ

シュオオ!

ガシュ ガシュ ガシュ ガシュ ガシュ


両津「完全に自走してるぞ!」

丸山「そんなバカな!」


道路を走り始めたビール機関車に辛うじてしがみつく両さんと丸山。
一体どうしてこんなことになってしまったのか、両さんが推測を立てる。


両津「生ガスが蒸気管の中に流れたんじゃないのか!
元々水を熱し蒸気の圧力でピストンを動かすわけだろ! 炭酸で空気を圧縮すりゃ同じ原理だぞ!」

丸山「まさか? ビールで!?」


そう、本来機関車は水を熱したことで生まれる蒸気でピストンを動かす。
両さんは、炭酸のビールから生まれた炭酸ガスが蒸気管に漏れることで、空気が圧縮されてピストンを動かしていると考えた。



丸山「しかしそれでこんな大きいのが動くなんて信じられん!!」

両津「信じるも信じないも実際走ってるんだ!どうするんだよ!?」



そうして走っている機関車の目の前には模型店が。「丸山! ハンドル切れぶつかる!」と両さんが叫ぶが、
当然機関車にハンドルなんてついている訳もなく、模型店へ真っ向から突撃して突き破っていく。
しかしまだ機関車は止まらず、破壊を続けながらひたすらに突き進む。


警官「暴走機関車です!! 商店街の店をこわし、なおも爆走中!!」






一方、『星と宇宙の博覧会』の会場では、何も知らない人々が平和に開会式に参加していた。


部長「天気がよくて本当によかったですね署長!」

署長「いい開会日になったな」





しかし両さん達がしがみついている機関車は、踏切などを壊してなおも真っ直ぐに突き進んでいた。
ブレーキも壊れている機関車を止めるため、両さん達はボイラー内部の蒸気を逃がす安全弁を開けたりしているが一向に効果はなく、
振動でますますガス圧が強くなって止まる様子がない。

そして前方を確認した両さんは、その先に部長や署長が来ている宇宙博の会場があることを発見し、驚愕。
蒸気をシリンダーに送り込む蒸気ドームを破壊しようとするも、もう間に合わない!



署長「やけにさわがしいな」

キャー!ワー!キャー!

部長「うわっ 機関車が!?」


両津「間に合わん わしは離脱する!」

丸山「オレも逃げよう!」



流石にもう限界だと察した両さんは機関車から離脱し、それに続いて丸山も逃走を開始。



ド ガ ッ
ガシュ ガシュ ガシュ ガシュ ガシュ

主催者「ひええパビリオンが!!」



そして大音響と共に機関車はパビリオンへ突入。会場の全てを破壊しながら宇宙博の巨大な建物に激突。
そこまで来てようやく機関車は沈黙した。
「なぜ機関車が!?」「信じられん…」と呆然とする部長と署長。だが部長達は決定的な人物を目撃してしまった。
そう、パビリオンから背を向けて逃げ出す部下の姿が…。


署長「両津か? あんな所になぜ?」

部長「答はひとつですよ!!」ダッ



部長「こら!両津! 犯人はお前だな!」

両津「あっ しまった!」


無事に逃げられたらしい丸山とは違い、呆気なく捕まってしまった両さん。
部長は両津を会場まで連れて行き、「この男です! 機関車で会場へつっこんだやつは!」と晒しあげる。

人々が怒りにざわめくなか、両さんは
「ちがうんですよ部長! はなしてください! ちゃんと理由があるんですこれには!」と申し開きを始める。




両津「これこそ星と宇宙にあわせて夢をのせて走ってきた『銀河鉄道』なんです!おどろいたでしょ!」

両津「多少登場の仕方が荒っぽかったけれども、私も宇宙博に協力しているのです!」




なぜか本当のことを話さず、妙なごまかし方をする両さん。
もちろん、機関車でパビリオンを破壊し尽くした後の言い訳がこんなんで済むはずもなかった…。










麗子「あら両ちゃんは?」

部長「種子島宇宙センターにいってる。宇宙博のイベントでな。日本人で最初に宇宙へとぶことになったんだ。
無酸素で気象衛星に縛りつけてな!



誰もいない両さんの机には、花瓶に活けられた一輪の花が置いてあったとさ。





追記・修正は、勤務を1回サボったせいで宇宙に打ち上げられた人にお願いします。
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