函館異人館ホテル 新たなる殺人(金田一37歳の事件簿)

登録日:2020/04/01 (水) 06:30:30
更新日:2020/05/31 Sun 02:48:56
所要時間:約 23 分で読めます





事故なのか?それとも…

異人館ホテルの悪夢が再び…!?


『函館異人館ホテル 新たなる殺人』とは『金田一37歳の事件簿』のエピソードの1つで、金田一一が解決した事件の名称である。
単行本第5巻~第7巻に収録予定。全14話。
登場する怪人は「碧血鬼」。


※以下ネタバレが含まれますのでご注意ください。


【ストーリー】
京都でのイベントが連続殺人により中止となり、フリーとなった一とまりん。
そこで今度は舞台劇のPRイベントを任される事となったが、その会場は20年前に「赤髭のサンタクロース事件」があった函館異人館ホテルであった。
まりんと共に異人館ホテルを訪れた一は、同じく仕事で来ていたいつきや佐木と再会する。
そしてある事件を捜査中の幸村真之助と出会うが、彼のひっかかる物言いについ嫌な顔をした。

翌日。箱館戦争をベースに創作された舞台劇「箱館ウォーズ」が舞台初日を迎える。
「箱館ウォーズ」にはアイドルグループ「デスペラード」のメンバーや元「スカイウォーカー」所属のトップスター・岡倉純等が出演しており、謎の天才覆面作家・三田村匠が台本を手掛けていた事もあり、話題性は抜群であった。
だが何者かによって小道具のモデルガンが本物の拳銃にすり替えられており、そうとは知らずに引き金を引いた水島颯太が赤座光輝と綾野木ルカを舞台上で射殺してしまう。
幸村は、舞台そのものを潰すために仕組まれた無差別殺人の可能性と、水島を陥れる為にモデルガンが本物とすり替えられた可能性を考えて捜査を進める。
だが幸村は今回の事件に一が関わっていると思い込んでおり、その珍説を面と向かって一に言い放った。
これにカチンときた一は、幸村の思い込みを正すために進んで事件の捜査協力を申し出るが、その直後に新たな事件が起きしまう。
果たして一連の事件は、箱館戦争を題材にした舞台をやると祟ると言われている「碧血鬼」の仕業なのか?


【事件関係者】

  • 岡倉純(おかくら じゅん)
元スカイウォーカー所属で土方歳三役。30歳。
人気ナンバー1のアイドルで、ファンからは「オカジュン」の愛称で呼ばれている。
今回の演劇の座長も務めているが、座長の自分の力でもっていたため誰も彼には逆らえないようである。
デスペラードのメンバーは後輩だが、赤座には快く思われていない。
ゲネプロの後に日本丸テレビのプロデューサーと会う事となり、檀と一緒に函館空港近くのホテルへ行く。
だが後に悪質なイタズラだと判明し、本番ギリギリのところで異人館ホテルへ戻ってきた。
赤座が撃たれた後で水島の拳銃を取り上げて試し撃ちをし、これにより本物の拳銃だと判明し驚愕していた。

  • 中神聖也(なかがみ せいや)
元スカイウォーカー所属で榎本武揚役。28歳。
普段は標準語だが時々関西弁が出ていた。
榎本武揚は史実では箱館戦争のリーダーで蝦夷共和国の総裁だったが、「箱館ウォーズ」では土方の下でお笑いキャラとなっている。
人気はデスペラードに押され気味であり、岡倉の代役の話になった時に檀が「2番手のデスペラードに頑張ってもらう」と言い思わず突っ込んでいた。
ゲネプロが終わった後でいつきから取材を受けており、着替える暇もなく衣装のままイベントに出演している。

  • 水島颯太(みずしま そうた)
デスペラードのリーダーで伊庭八郎役。26歳。
爽やかそうな青年で、ファンからは「ソータ」の愛称で呼ばれている。
彼を含むデスペラードのメンバーは虎視眈々と岡倉の地位を狙っており、トップスター下克上も今回の舞台の見どころとなっている。
舞台がクライマックスに差し掛かった頃、拳銃で赤座とルカを撃つ演技をする。だがモデルガンが本物とすり替えられていたせいで赤座達が死亡する事となり、自分が彼らを射殺したと思い詰め顔が青ざめていた。
4人目の死亡者。舞台上で宙吊り状態のまま手首を切り死亡している状態で発見される。
今回の事件が起こる理由に心当たりがあり、殺害される直前『誰かが…、あの女の復讐のために…?』と呟いていた。
関係者のスマホに遺書めいたメールを送っていたので、幸村は彼が事件の犯人だと考え、自らの命を絶つ事で事件の幕を下ろしたと推理した。
ゲネプロの後で海枝に「白い衣装から普通の衣装に変えてほしい」と衣装変更を頼んでいたが、死亡時には白い衣装を着ていた。

  • 赤座光輝(あかざ こうき)
デスペラード所属で黒沢正隆役。26歳。
少し不良っぽい風貌の青年で、ファンからは「コーキィ」の愛称で呼ばれている。
度々自分達にマウントを取ってくる岡倉の事を疎ましく思っている。
3人目の死亡者。舞台で水島演じる伊庭八郎と戦っていた時に、彼の拳銃で心臓を撃たれ死亡する。

  • 五代玄一郎(ごだい げんいちろう)
デスペラード所属で大鳥圭介役。24歳。
子供っぽい笑顔が印象的な青年で、ファンからは「ゲンちゃん」の愛称で呼ばれている。
ゲネプロの後はすぐにイベントの前半に参加するが、その後の行動ははっきりしないのでアリバイがない。

  • 綾野木ルカ(あやのぎ -)
女優で加賀屋葵役。25歳。
どこか陰のありそうな雰囲気の女性。
主役の岡倉が抜けたらイベントが盛り下がるのではないかと心配していた。
劇中での彼女のセリフが少なく空気かと思われたが…
2人目の死亡者。城壁の上でセリフを言っていた時に、水島の拳銃で心臓を撃たれ死亡。
撃たれた後は後ろの滑り台に倒れ込み、舞台袖のマットまで滑り落ちた。

  • 最上翔太(もがみ しょうた)
俳優で山田顕義役。32歳。
眼鏡をかけた男性。若く見えるが出演者では年齢が上から2番目だったので、取材の時にはそれを笑いのネタにしていた。
舞台では出番が少ないので、まりんが台本修正を担当する事となった時には自分の出番は消さないでほしいと冗談交じりで言っていた。
イベントには前半の少ししか出番がなく、その後のアリバイもない。

  • 刈谷ユダ(かりや -)
俳優でジュール・ブリュネ役。40歳。
最上が取材で自分の年齢をネタにしていた時には「翔太がジジイなら上から1番目のオレはどーなんの」と突っ込んでいた。
まりんが台本修正を担当する事となった時には、自分の出番を増やしてくれてもいいと冗談で言っていた。
イベント前半に出ていたがその後のアリバイはない。

  • 海枝博貴(かいえだ ひろき)
演出家兼舞台監督。52歳。
演劇の有名なヒットメーカーで、今回の舞台の演出と監督を手掛けている。
温厚な性格だが、人の話を聞かない幸村にイラっとする場面も。
岡倉が抜けた事でイベント用台本が大幅に書き換えられる事となったので、急遽一に可愛い顔で頼んでいた。
赤座達が殺害されたので、チケットの払い戻し等で経費がかかる事となり頭を悩ます。
ゲネプロの後で水島から衣装変更の相談を受け、普通の衣装を着る事を許可していた。

  • 檀はるみ(だん -)
デスペラードマネージャー。32歳。
岡倉の表の顔しか知らないので、岡倉を驕らない良い人だと思っている。
ゲネプロの後は岡倉と行動を共にしていたのでアリバイがあった。
水島が死亡した後で一達が楽屋にやって来た時には、舞台の台本を渡す等して協力している。

  • 小野寺隆司(おのでら りゅうじ)
ミュージシャン。27歳。
かつては「リュウ小野寺」の名前でデスペラードに所属していたが、脱退してからはソロで音楽活動をしている。
だがあまり売れていないようあり、とあるネタで水島と赤座に金をせびっていた。
最初の死亡者。東京の自宅マンションで毒入りワインを飲み中毒死する。
現場は密室だったが、密室トリックを暴いた幸村は他殺の線で捜査を進めている。

  • 三田村匠(みたむら たくみ)
脚本家。
数年前に突如現れた天才作家で、今回の舞台の台本も書いている。
しかし覆面作家として活動しているので、誰も三田村の顔を知らない。


【レギュラー陣】

ご存知主人公で万年主任。
仕事で因縁深き函館異人館ホテルを訪れる事となり、到着する前から不吉な予感がしていた。
舞台の最中にある事に気づき慌ててそちらに向かうも、殺人事件が起きてそれどころではなくなってしまう。
幸村に高遠と同類だと思われていると知ると「ホンマもんのアホがここにおる」と呆れ果てるが、直後に幸村がジッチャンを過去の人扱いすると、つい勢いで今回の事件を解決してみせると言ってしまった。
ちなみに幸村の事はずっと「幸村刑事と呼んでいたが、彼が「警視」であると知った時には「このトンチンカンが!?」と驚いていた。

  • 葉山まりん
一の部下。
一の過去を知っている佐木等に会うたびに興味津々となっていた。
学生時代には演劇サークルにいたらしく、イベントの進行台本の修正を急遽担当する事に。
事件では関係者のアリバイ表を作る等して一をサポートする。

一の高校時代の後輩。
今回は仕事で函館異人館ホテルを訪れている。
かつてここで兄の竜太が殺されている事は知っていたが、もう20年前の話という事であまり気にしておらず、一やいつきと再会できたのは死んだ竜太のお導きではないかと笑っていた。
事件では久々にビデオカメラの映像で一の推理の手助けをした。

一の知り合いのフリーライター。現在は週刊近代でライターをやっている。
少々老けたものの容姿は20年前と殆ど変わっていない。久々に一と再会し、「いっそ探偵にリクルートすれば?」と冗談っぽく言っていた。
ちなみにいつきの養子である瑞穂は今年で30歳になり、結婚して子供もいるらしい。
舞台劇の取材で函館異人館ホテルを訪れており、ゲネプロの後で中神にインタビューをしている。
事件では一の頼みで小野寺の事件を調べる。

イヤミ警視長。
幸村が「一の正体は驚異的連続殺人犯」だと思い込んでいる事は知っていたが、面白そうという理由でそのままにしている。

  • 幸村真之助
警視庁捜査一課警視。
前回のラストではトンデモ理論を披露していたが、今回は小野寺の事件の密室トリックを見破る等有能な部分も見せている。
小野寺の持ち物から「箱館ウォーズ」のチケットが発見されたので、捜査のために函館に赴く。
一の正体は驚異的連続殺人犯だと誤解したままなので、今回の事件も一が裏で手を引いていると推測している。
またその理由は「有名すぎた金田一耕助の名前を守るため、そして「名探偵の孫」という肩書を守るために、高遠のように事件をプロデュースして事件を解決していった」と考えている。
この珍説を一の前で堂々と披露し、一から「ネジの足りんエリート刑事」と思われるようになった。他の人の前でこんな事を言ったら名誉棄損で訴えられそう。
そのため、一に嫌味として同じ警視階級の人間が犯人とバレる前に事件を引っ掻き回したことがあると語る部分もある。

  • 内神田洋
  • メグ、ハル、チカ
終盤に登場。

一の高校時代のパートナー。
今回も狙ったようなタイミングで一にライソを送る。


【その他の人物】

  • 徳さん
いつきの昔の記者仲間。
3年前にある事件を追っていた。


以下、事件の真相。さらなるネタバレにご注意ください

























トップアイドル10年張ってる
俺とあんたらを一緒にすんなよ?

元々“格”が違うんだよ“格”が!


  • 岡倉純
今回の事件の犯人「碧血鬼」。
覆面作家の三田村匠の正体でもあり、2年前からアイドルと脚本家の二足の草鞋で活動していた。

水島の事件は彼の自殺でもない限り彼の手首を切る事は不可能のように見えるが、舞台のセリを使えば犯行は可能である。
水島に薬をかがせて気絶させた後、白いステージ衣装に着替えさせて舞台まで運ぶ。
そこで水島の身体をワイヤーアクションの仕掛けに固定させ、奈落に下げたセリのギリギリの縁まで連れて行く。
その後は奈落に向かって腕を伸ばさせ手首を切り、遺書メールを水島のスマホから一斉送信してからスマホとナイフを奈落の底に投げ落とす。
そして水島が絶命し出血が収まったのを確認すると、ワイヤーで彼を舞台天井に向けて吊り上げるのと同時に奈落から舞台上にセリをあげた。
仕上げにセリの外に血を少し飛ばし、犯行当時にセリを下げていた事を誤魔化そうとした。
だが奈落の底に残っていたごく少量の血しぶきを見逃してしまい、これに気づいた一にトリックを見破られる事となった。

赤座達が殺害された事件では、実は小道具置き場でのすり替えは行われておらず、水島が舞台上で持っていた銃はただのモデルガンであった。
岡倉は水島が銃を撃つタイミングに合わせ、左側に寄せられた幕と書割の間から赤座を狙撃したのである。
狙撃する際には拳銃にサイレンサーをつけていたので、大きな効果音と音楽によって銃声は殆どかき消されていた。
しかし幕の近くで狙撃をした事で、幕に強い火薬の匂いが残ってしまう事となった。

ルカ殺害の方法はもっと単純で、彼女が撃たれた演技をして滑り台を下りた直後に彼女を射殺した。
この際に雑誌越しに拳銃を撃ち、彼女の体内に銃弾が残るようにしていた。

赤座達を射殺した後は、水島から銃を取り上げた後で素早く本物の銃とすり替えてから試し撃ちをする。
こうする事で、舞台が始まる前から銃が本物とすり替えられていたと関係者に思い込ませようとした。
例のイタズラ電話も彼の仕業であり、ゲネプロの後で異人館ホテルからいなくなる事で自分には銃のすり替えは出来なかったという鉄壁のアリバイを手に入れようとしたのだった。

しかし、外出していた時に水島が衣装の変更を海枝に頼んだ事で遺書メールに矛盾が生じてしまい、関係者で唯一衣装変更の件を知らなかった自分が犯人だと一に確信されてしまう。
また、舞台上では右手だけで銃を撃っていたはずなのに、利き手ではない左手からも硝煙反応が検出される。
これはターゲットの心臓を正確に撃ち抜くために両手で銃を構えていた証拠であり、皆を納得させられるような言い訳が思いつかず犯行を認め、小野寺殺害も認めた。

小野寺を殺害した動機は、昔の事をネタに強請ってきてうざく思ったから。
赤座と水島を殺害した動機は、彼らが影で自分の事を「中古品」「ジジイ」等と散々言っていた事に
気づいていたので、いつかしめてやろうと思っていたから。
ルカについては、昔自分に色目を使ってきた事があったので少し遊んだが、今頃になってその時の写真をチラつかせしつこくつきまとい始めたから殺害した。

動機を話した後で水島達をどうしようもねぇクズ共と罵り、自分のプロデュースする舞台上で彼らに死んでもらおうと思ったと発言する。
その後で幸村に「死刑は免れんぞ!」と言われてもどうとでもしてほしいと言うが、手錠をかけられるとようやく終わったか…!と呟きどこか哀しげな表情を見せていた。
そして一にチンケな会社なんかやめて探偵にでもなったら?そっちの方があってんじゃん?と言って北海道警に連行されていった。

こうして事件は終わったかに見えたが、一達は彼の態度に違和感を覚え、誰かを庇って隠し事をしているのではないかと推測していた。
その後一はいつきに岡倉の周囲の調査と、舞台で事件が起きた時に客席にいたある人物を探してほしいと頼んだ。



金田一くん…?

ごめんね 待たせちゃった?

かつての国民的アイドルで一の友人。一と会うのはかなり久しぶりの事である。
現在は芸能界を引退してフラワーショップを開いており、たまに東京に出張してアレンジメントなどを行っている。
もうじき高校を卒業する予定の息子がおり*1、一と会う前に息子と食事をしていた。
かつて“息子の父親”*2に何かがあったらしく、その事に一が関係している様子である。
一が事件に関わらないようにしている理由を知っているが、当時と変わらず一の事を好きでい続けている。

舞台を見に来ていたところを一に見つかり、いつきから話を聞いて久々に一と会った。
話もそこそこに一にボックスフラワーとショップカードを渡した後で美雪の事を聞くが、一には言葉を濁されてしまいそのまま別れた。



まぁ――この時点であいつらの“死”は

確定したんだよ!


“碧の血”で書かれたシナリオであいつら(・・・・)を皆殺しにする――

“殺人劇”の大筋(アウトライン)がな!

  • 岡倉の本当の動機と黒幕
岡倉の本当の動機は、将来を約束していた女性・矢吹碧の復讐であり、碧こそが「三田村匠」の正体であった

今から3年ほど前。当時新人女優だった碧は、マンションの非常階段で頭から血を流して倒れているところをマンションの住人に発見される。
意識不明のまま病院に担ぎ込まれた後で血液から大量の違法薬物が検出され、付近に争った形跡がなかった事から警察は薬物中毒による転落事故と判断した。
碧が売れる前の新人だった事もあり、この件はたいして騒がれもせずに世間に忘れ去られる事となる。
だが碧は監禁集団レイプの被害者であり、彼女を薬漬けにしてレイプをしていたのが水島達3人だったのである

当時岡倉と碧は人前で堂々と付き合える仲ではなかったが、順調に愛を育んでいた。
しかし岡倉がアイドルとして売れすぎていたので、なかなか事務所の社長を説得できず結婚が伸びていく事となった。
そんなある日、彼女から舞台劇用の台本「箱館ウォーズ」を見せてもらい、彼女の脚本家の夢を応援する。
そして程なくして碧から子供を妊娠している事を知らされると、もうじき社長と約束した1年になる事もあり、これでようやく碧と一緒になれると心から喜んだ。
だがその1ヵ月後に碧が突然姿を消してしまい、さらにその2週間後に碧が薬物中毒の末に非常階段から転落し意識不明の重体に陥っているという記事を見つける。
すぐに緑の入院する病院に駆けつけるが、周囲には芸能記者がうろついていたので公衆電話で直接病院に電話をして事実を確認する。

その際に、碧が落下の衝撃で脳に損傷を負い、お腹にいた子供も流産してしまった事を知った。
それから子供の亡骸をこっそり引き取って郊外の墓地に弔い、碧を長野県の病院へ転院させる。
そして碧がこれまで書き溜めていたシナリオを「三田村匠」の名で賞に応募。碧のシナリオは5年ぶりに出た大賞に輝き、その事を病床の碧に報告した。

その後は芸能の仕事に没頭する事でギリギリ自分を保つ日々を送る。
真相を知るきっかけとなったのは、番組打ち上げの二次会の席で徳さんと会った時だった。
徳さんは当時の警察の見解に納得がいっておらず、この件を監禁集団レイプの末に起きた事故だと睨んでいた。
というのも現場となったマンションの住人が当時水島と噂のあったルカであり、ルカと同じプロダクションの後輩が碧だったからである。
当然警察もその線でルカを聴取していたが、彼女は当時水島の部屋に同棲しており、事故の日にもアリバイがあった。
空き部屋となっていたルカの部屋がデスペラードのヤリ部屋になっていたと考えた徳さんは、住人への聞き込みで「フードを被った若い奴ら3人組がヘロヘロに酔っ払った女をちょくちょく連れ込んでいた」という目撃証言を得ていた。
また彼らがいつも降りていた3階にはルカの部屋もあり、碧が転落したのも2-3階の踊り場だった。
これらの事から徳さんは、監禁部屋から逃げ出した碧はふらつく足で非常階段を降りようとして転落、ヤリ部屋の発覚を恐れた水島達は重傷の彼女をほったらかして自分達のアリバイ作りに走ったという仮説を立てていた。

この事を聞いた岡倉は、真相を確かめるために小野寺に接触。小野寺にカマをかけて多額の金を渡し、本当の事を聞き出した。
元々は水島と赤座がルカを例の部屋で薬漬けにして遊んでいた。
だが飽きた水島達は次の獲物を持って来いとルカに命令し、ルカは後輩の碧を連れてくる。
すぐに碧は水島達に薬漬けにされ彼らのオモチャとなるが、彼らの隙を突いて部屋から逃走。身重の身体で何とか彼らから逃げようとするが、腕を掴まれた時に非常階段で足を滑らせ転落してしまった。
この真相を知った岡倉は、碧の未来と自分達の子供を奪った水島達への復讐を決意。
碧が書き溜めていた原稿で「三田村匠」となり、「箱館ウォーズ」を舞台にした殺人計画で水島達を皆殺しにする事に決めたのだった。

真っ先に疑われるのを防ぐために、最初に情報源の小野寺を毒殺。
函館では前述のトリックで赤座とルカを射殺し、最後のターゲットである水島の手首を切った後で、彼に自分が碧の婚約者だった事を教えた。
その時の水島は岡倉の嗅がせた薬と出血で意識が朦朧としており、岡倉の正体を知って驚愕の表情となった後は彼の高笑いを聞きながら死んでいった。

一が面会に来た時に碧の話を持ち出されてもシラを切り続ける。
だがいつきの電話に病院から連絡が入り、昨夜碧が息を引き取ったと知ると、碧の汚名を晴らすために全てを話す事にする。
その代わりに身寄りのいない碧を娘と同じ墓に弔ってほしいと一に頼み、本当の動機を明かした。

動機を語った後、岡倉は一に「本当にこの犯罪計画を全て1人でこなしてきたのか」と尋ねられる。
彼の犯行の手口は鮮やか過ぎたので、一はあの男の事をつい思い出したのである。
一に尋ねられた後、“その男”を含む12名からなる犯罪組織「十二神」の1人「アルテミス」が、捜査員に彼の事をペラペラ話した後で始末されたという話を聞く。
そしてその男「高遠遙一」の事を知っているかと聞かれるが、「全然…」とだけ答えてそのまま面会を終えた。
その際に明智を呼び止め、「俺が死刑になったら碧と一緒の墓に入るってのは可能かな?」と尋ねる。
そして明智が「ケースによりますが出来る限り配慮しましょう」と約束すると「ありがとう」とお礼を言い、独房へと戻っていった。


ごめん…碧――

最期の時も一緒にいてやれなくて

せめて墓ぐらいは―――と思ったけど

死んだ後もお前とは一緒にいられそうもないよ


お前は天国に行けても

俺は――

地獄行きだからな――

面会を終えた一は明智に今回の件について意見を求める。
明智は、銃の練習で何度も海外へ行く手配をしたり、多忙なアイドルが覆面作家として犯行の舞台を指示する事は1人では到底出来ないと考えており、9割がた高遠が関わっていると確信していた。
岡倉が残る10人の1人だとすれば、「地獄の十二神」がそれぞれサポートを行っている可能性もあるが、全てが憶測の域を出ていない以上、高遠を詰問するわけにはいかなかった。

  • 水島颯太
  • 赤座光輝
アイドルと言う名の化けの皮を被った最低最悪の下衆集団。
水島と赤座は大人気アイドルとして多くの女性ファンを獲得していたが、その素顔は女性を薬漬けにしてはオモチャにしていたレイプ魔集団であった。
当時ルカと付き合っていた水島は、彼女を薬漬けにして赤座や小野寺とマワしていた。
ルカに飽きると彼女に次の獲物を持って来いと命令し、彼女が連れてきた碧を薬漬けにして犯し続けた。
だが碧が逃走して非常階段から転落すると、ヤリ部屋の発覚を恐れた水島達は重症の彼女を助けもせずに自分達のアリバイ作りに走った。

  • 小野寺隆司
彼も集団レイプに関与していたが、鳴かず飛ばずのミュージシャンとなった後はこの件で水島達を恐喝していたようである。

  • 綾野木ルカ
水島達によって薬漬けにされてマワされていたのである種被害者と言えなくもないが、隣人の証言からすると彼らに飽きられた後は碧など何人もの女性を獲物として差し出していたようなのでやはり同情の余地はない。

ここまで読んで解るが、彼等は2020年4月現在、金田一37歳シリーズの被害者の中でどうしようもない外道な被害者達。

この事が世間に知られていたら芸能生命は勿論人生も終わっていただろうが、碧の復讐に燃える岡倉の手によって次々と殺害される事となった。

  • 矢吹碧(やぶき みどり)
ルカと同じ事務所に所属していた新人女優。事件当時24歳。
岡倉とは相思相愛の仲であり、お腹には彼の子供を身ごもっていた。
脚本家になる事を夢見ており、その才能は岡倉にも認められるほどであった。
だがルカに騙されて水島達のヤリ部屋に連れてこられ、薬漬けにされてから集団レイプされてしまう。
水島達の隙を突いて逃げようとするが、非常階段で足を踏み外し頭を強く打ち、その際にお腹の中にいた子供も流産してしまった。
だが血液から違法薬物が検出され事で、ドラッグ中毒のレッテルを貼られ業界からも世間からも抹消される事となる。
事故の後はずっと意識不明で入院していたが、意識回復の見込みはほぼない状態であり、一が岡倉と面会をする前日に息を引き取った。
彼女の死を知った岡倉は絶望の表情を浮かべたが、岡倉の自供によって彼女の汚名は晴れたものと思われる。

  • 刈谷ユダ
事件の後、ファンからと思われるプレゼントを受け取る。
それにはヘラより 親愛なるユダへというメッセージカードが添えられていたので、人目を忍んでプレゼントの中を確認した。
中身はボックスフラワーであったが、すごい額の札束も同梱されていたので思わず「ワォ…」と声を出して驚いていた。
それと同時にヘラを名乗る人物から電話が掛かってくる。
ユダは事件の顛末を「ヘラ」に教えており、ボックスフラワーに入れられていた札束はその謝礼だったのである。
ユダは「ヘラ」の目的が何なのか知らずに協力していたようだが、「ヘラ」に「そのことは気になさらないほうがよろしいと思います。あなた自身のためにもと言われるとこれ以上の詮索は危険と判断し電話を切った。
その後はこの札束がヤバい代物だと感じつつ、パーっと使ってしまったようである。

  • 五代玄一郎
デスペラードのメンバーの中で唯一集団レイプには関与していなかったようだが、今回の事件でメンバーを2人も失ってしまったため、これからどうすればいいのか思い悩んでいた。
また岡倉の自供によって水島達の醜悪な素顔が世間に知られる事となったので、デスペラード関連の楽曲や出演作品は全て封印作品となり、彼の芸能生活はこれから困難を極める可能性がある。
最悪、世間から謂れのない誹謗中傷を受ける事になるかもしれないが、事務所に守られ理解あるファンの支えがあれば再起は可能と思われる。
おそらく今回の事件で最も被害を被った人かもしれない。

  • 檀はるみ
外出から帰った後衣装係から水島が海枝に衣装の変更のお願いをしたことを聞いていて、水島の遺書の内容に違和感を感じていた。
その件を一に伝えたことが事件解決のヒントとなり真犯人の特定につながっている。
そういった点ではおそらく今回の事件解決の功労者と言っていいだろう。

協力者から差し入れされた本によって、岡倉ことアポロンが一の手で逮捕されたと知る。
岡倉には芸術犯罪の素質が十分あったので、彼の逮捕を知り残念がっていたが、捨てる分の本に細工をして協力者に新たな指示を送っていた。


【エピローグ】
今回の仕事も連続殺人によって中止となり、後始末をしてから東京に戻ってきた一とまりん。
だが担当する仕事が殺人事件で立て続けに中止となっていたので、遂に会社で「疫病神」扱いされる事となってしまう。

翌日、内神田から新しいリゾートホテルのモニターイベントを任される事となった一だったが、今回は下請けの仕事だったので事前に「電報堂」の担当者に挨拶へ行く事となる。
担当者の名前は「白鳥麗桜」と言い、名前を見た一は「相手はきっと若い女の子」とついにやける。
だが事件続きで一と組みたがる人がいなかったので、今回もまりんと組んで仕事をする事に。
まりんは「名コンビ再びですね」と嬉しそうにしていたが、一は悪い予感しかしていなかった。
そして「今回は何も起きないで欲しいんですけどぉ~!!」と願うが、次の仕事で彼らを待ち受けるものとは一体…?


【前作との共通点について】
今回のエピソードには前作『異人館ホテル殺人事件』と共通する点が多数挙げられる。
共通点 前作 今作
事件の舞台で演劇が執り行われる ナルシスの魔鏡&fottnote 箱館ウォーズ
怪人の名前に色が付く 髭のサンタクロース 血鬼
舞台の小道具が本物にすり替えられる 小道具の剣がトリカブトの毒を塗った本物の剣に モデルガンが本物の銃に
最初の被害者はワインに盛られた毒で殺害される 万代鈴江 小野寺隆司
演劇の最中に事件が起こる ワインに盛られた毒で万代が毒殺される すり替えられた本物の銃でルカと赤座が射殺される
真犯人が知らなかった事実 光を反射するものは舞台には置かないという劇団関係者の常識 水島がゲネプロの後衣装変更のお願いをした件
事件の元凶として薬物が関係しており、女性が薬物中毒にされる 北見蓮子 矢吹碧
一が犯人と面会時に明らかになる真実 花江が二重生活を送っていたこと 岡倉が隠していた真の動機



許してくれ…葵!トシ…!

この追記・修正を終わらせるには… これしかなかった…!


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