グスタフ・カール(MS)

登録日:2025/09/18 Thu 19:54:32
更新日:2025/10/04 Sat 08:53:09
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グスタフ・カールとは、ガンダムシリーズに登場するモビルスーツ(MS)である。カール・グスタフだと実在する無反動砲になるので注意。






【性能諸元】

グスタフ・カール
(Gustav Karl)
型式番号 FD-03
開発 アナハイム・エレクトロニクス社
所属 地球連邦軍
EARM
頭頂高 22.0m
本体重量 29.0t
全備重量 60.0t
装甲材質 ガンダリウム合金
出力 3,425kW
総帥力 79,500kg
センサー有効半径 21,300m
武装 ビームライフル
ビームサーベル
グレネードランチャー
頭部バルカン砲 ×1~2
90mmショートマシンガン
バズーカ
フレキシブルシールド
主なパイロット レイ・ラゴイド
ホセ・アドルノ
エイレン
ゲイツ
デューク
オクト
地球連邦軍一般兵
EARM構成員




【概要】

ジムタイプやジェガンタイプなどのRGMシリーズのハイエンドモデルとして開発されたMS。
同時期に開発されたジェスタがUC計画に付随するものだったのに対して、グスタフ・カールは一般部隊向けの普及型。


地上戦を重視した調整が加えられているが、あらゆる環境で運用出来る汎用性を維持しつつ大型化・重装甲化が図られていて、量産機としてはかなりの巨体であるのが特徴。
当然そうなれば重量増加も激しくなったものの、それを補う為に大出力ジェネレーターを採用。全身にスラスターと姿勢制御バーニアを増設して一定以上の運動性・機動性を確保したことで基本性能はジェガンを凌駕、「ガンダムタイプにも匹敵する」と評されるハイスペック機として完成を見た。
それでいて固定兵装を極力排除し、武装もジェガンから流用することで運用性並びに生産性も高くなっている。


U.C.0096年には開発が完了していたようで、一部地域での稼働試験を兼ねた先行配備を経て翌0097年に制式採用。
採用後は主にキルケー部隊(キンバレー部隊)のような地上の治安部隊に優先的に配備され、サブ・フライト・システム「ケッサリア」との連携運用によって「マフティー」等の反連邦組織との戦闘に投入された。

連邦軍以外だと反地球連邦組織EARM(地球回復運動)が運用していた例が見られるが、最新鋭のグスタフ・カールをどうやって入手したかについては謎が多い。


だが、まもなく巨大化の一途を辿るMSに対して小型MSの開発が叫ばれるようになり、実際にヘビーガンのような小型量産機が台頭してくると大型量産機の極みとも言えるグスタフ・カールのニーズは失われてしまい、後継機を残すこともなく歴史から消えていった。


ちなみに「グスタフ・カール」は指揮官機で、一般機として「ドーラ・カール」が存在するという資料もある。この場合、両者は通信機器の性能差以外に違いはないらしい。
ただドーラというのはあくまで愛称なのか、大雑把に「グスタフ・カール」とする際は隊長機・一般機の両方が含まれる。



【デザインについて】

初出の小説版『閃光のハサウェイ』とゲーム参戦にあたってリデザインされた『GジェネF』以降では殆どデザインが違う。
共通してメインカメラがバイザーであること以外はジムにもジェガンにも似ていない。

  • 『閃光のハサウェイ』原作小説版
文庫本のMS解説のページに記載されていたもの。
デザインはΞガンダムペーネロペーと同じ森木靖泰氏。

ジェガンをベースにΞガンダム及びペーネロペーのデザインラインを取り入れたようなシャープかつヒロイックな外見。
しっかりとV字アンテナも備わっていて、カメラがバイザータイプでなければガンダムといっても違和感は無かっただろう。

正史ではGジェネ版が基準となった為に今のところ存在が確認出来ないが、資料などで度々言及される「軽装型」がこの小説版に近いデザインなのではとまことしやかに囁かれている。*1


『GジェネレーションF』参戦にあたって藤田一己氏によってリデザインされたもの。カラーリングは派手目な水色。
これ以降はこのGジェネ版デザインがスタンダードとなる。

ヒロイックな小説版に比べて大変マッシブなデザインとなり、コックピット周りの構造とシールドに名残があるものの、それ以外はほぼ別物。
これを並べて同じ機体だと気付ける人間などまずいるまい。

V字アンテナは残っているが左側が極端に短い左右非対称なものとなり、このV字アンテナ型を指揮官機と位置付けられた。
一般機はV字アンテナではなく左後頭部にロッドアンテナ。


  • 『UC』版
カトキハジメ氏によりリデザイン。
ほぼGジェネ版そのままだが、ところどころにアレンジが加えられている。

後に制式採用機の「00型」が登場したことで本デザインは先行配備機の「13型」ということになった。


  • 『閃光のハサウェイ』劇場アニメ版
制式配備機として「00型」が登場。
旧来の13型に比べてマッシブ感は削がれたものの、それでも従来の量産機に比べればまだまだ厳つい。

元々は小説版寄りにデザインがされていたが、『UC』版の存在を踏まえて現在の形になったという。


  • 『閃光のハサウェイ』コミカライズ版
さびしうろあき氏のコミカライズ版に登場。
原作小説版準拠のデザインだが、Gジェネ版の要素も「脚部の増加装甲」という形で組み込まれている。


  • 『クロスボーン・ガンダム LOVE&PIECE』版
『機動戦士クロスボーン・ガンダム LOVE&PIECE』にはどのタイプにも合致しないデザインのグスタフ・カールが登場。
本作のものは特に独自色が強く、00型以上にゴツさがないスリムなデザインでサイズもそれほど大きく見えない。
よく見るとパーツの構造自体は確かにGジェネ版と変わらないのだが、作画の違いの為か脚以外はあまり同じに見えない。特に頭部と両腕、バックパックに至っては完全に別物。
全体的にジェガンみがあるというかRGM系統の延長線上というのがわかりやすい見た目である。

武装もジェガン用ライフルは同じだがフレキシブルシールドではなくジェガン用の携行式シールドを装備、固定兵装はビームサーベルのみで旧式ジムタイプと同じくバックパックに1本装備しているだけという従来のジムに近い構成。



【武装】

  • 頭部60mmバルカン砲
連邦軍MS伝統の頭部機関砲。
ジェガン系のバルカンポッド方式から内装式に戻された。
装備箇所は13型では左側頭部に縦列2門、Gジェネ版と00型は左側頭部に1門とまちまち。

  • ビームサーベル
ジェガンのものと同型を装備。
小説版では脚部側面に直接セット、Gジェネ版や13型、00型ではサイドアーマーのラックに収納される。

  • ビームライフル
これもジェガンと同じもの。
本機が持つと小型に見えるのがグスタフ・カールのサイズ感を表している。

  • グレネードランチャー
左前腕部に装備。
ジェガンタイプの腰部から腕部に移設したことで射角が広がった。
Ζガンダムのようにマガジン式弾倉を採用しており、予備をセットすれば連射も可能。

  • バズーカ
U.C.0096年頃から連邦軍で広く用いられている汎用バズーカ砲。
弾倉が2つあるが、前部の方は予備。

  • フレキシブルシールド
従来のような携行または前腕部にセットするタイプではなく、ジェスタと同じフレキシブルアームを介して接続する方式。
アームの接続箇所はGジェネ版が左肩、小説版と13型と00型はバックパック左側と異なる。

  • 90mmショートマシンガン
ジム・マシンガンの派生となる実体弾式マシンガン。
ジェガンD型護衛隊仕様と同じくマーサ・ビスト・カーバインの護送隊が装備していた。

  • シールド
『クロボンLOVE&PIECE』で装備。
ジェガン用の携行型シールドとほぼ同型だがミサイルランチャーが無く、表面に連邦軍の十字マークが取り付けられているなど通常と仕様が異なる。



【バリエーション】

ドーラ・カール

グスタフ・カールを指揮官用として、ドーラ・カールは一般仕様。
違いはアンテナの形状だけでグスタフが額に歪なV字アンテナなのに対してドーラは後頭部にロッドアンテナとなっている。

初出は書籍『GUNDAM WEAPONS ニュージェネレーション編』。
元々デザイン画の時点で一般機と指揮官機の頭部が分けられていたが、本書によって一般機を「ドーラ・カール」として差別化された。


グスタフ・カール13型

型式番号 FD-03(FD-03-13)

『UC』、『NT』その他に登場。
見た目はGジェネ版を踏襲しているが、頭部バルカンが2門に変更。
カラーリングも今までの派手な水色からグレー基調の落ち着いたものになった。

稼働試験の名目で北米シャイアン基地に2機が先行配備されていて、当初は特定の名前がなく「UC版」とか「先行配備機」と呼ばれていたが、劇場アニメ版『閃光のハサウェイ』で00型が設定されたことに伴って「13型」と名付けられた。

後継となる00型の登場が割と近年だったので、U.C.0110年代~120年代が舞台の作品でもこちらが登場していることが多い。


グスタフ・カール00型

型式番号 FD-03-00

劇場アニメ版『閃光のハサウェイ』に登場。
時期に応じてアップデートを繰り返していた中でもU.C.0105年に運用されていた制式量産モデルで、13型に比べてフレーム構造レベルで設計の見直しを図った為に構造は同じでもやや細身に見える等、かなり印象が異なる姿となった。
装備類はこれまでとほぼ同様だがバルカン砲が1門に戻り、バックパック右側面にライフルやバズーカを懸架するウェポンラックが追加された。

設定にドーラ・カールの要素が組み込まれており、頭部もそちら準拠のロッドアンテナ。
グスタフヘッドの方もいるようだが、第1章の時点では「(指揮官機なので)数が少ない」、「(小隊長の)レーン・エイムがペーネロペーに乗っている」ということで作中には登場していない。


ヴェルダン

機動戦士クロスボーン・ガンダムDUST』に登場したミキシングビルドMS。
バリエーションというにはちょっと怪しいが、腕部にグスタフ・カールの脚部装甲が用いられている。



【劇中での活躍】

上記のように「ガンダムタイプに匹敵する」という触れ込みで有名な本機だが、残念ながら活躍の場に恵まれておらず、ほぼやられ役と化してしまっている。


  • 『閃光のハサウェイ』
無い。
それどころか功を焦ったキンバレー・ヘイマン大佐の指示でオエンベリの私設軍隊を民間人ごと虐殺する汚れ役であった。

しかし劇場アニメ版では新たに00型が登場。
こちらもやられ役ではあるが、ダバオでメッサーと激戦を繰り広げるシーンなど見せ場が与えられた。
まあエンドロール後に晒し首にされていたのだが…


  • 『ガンダムUC』
episode 7に登場。本作がアニメデビュー作となる。
密かにコロニーレーザーの管制施設「カフカスの森」が設けられていたシャイアン基地に運用試験という体で先行配備されていたが、余程することがなかったのかパイロットはコックピットに大量の菓子やジュースを持ち込んで暇そうに飲食をしているだけであった。
そんな有様なのでロンド・ベルが強制査察の名目で奇襲を仕掛けてきても何も出来ず、トライスター隊のジェスタによってあっという間に無力化される無様を晒すだけに終わってしまった。


  • 『ガンダムNT』
マーサの護送隊に1機が配備されていた。
しかしルオ商会の送り込んだディジェ部隊の襲撃を受け、今回も見せ場なく退場。

コミカライズ版では2機に増えた他、ちょっと善戦する。


  • 『クロスボーン・ガンダムLOVE&PIECE』
第1片に登場。
秘密研究所から逃げ出したアプリコット・スキーマらNT研究の素体として連れてこられた子供達が乗ったスペースランチを9機掛かりで追撃するが、若き日のカラス先生が駆る大型作業用ポッド・モナーム(ノーティラスの原型機)によって僅か1分48秒でバラバラに切り刻まれて全滅させられた。


第1章(U.C.0112年)に登場。『閃ハサ』劇場版公開前なので先行配備の13型。
F90 2号機を担当するBチームに所属。第1話でアグレッサー役を務めたリゼル隊のゲイツ中尉、デューク、オクトが第2話以降本機に乗り換える形でF90の護衛機として活動した。
しかし、第9話にて傭兵部隊GBGとの戦闘で全滅してしまった。



【ゲームでの性能】

『F』から参戦。
先述のように本作で今に繋がるデザインが決定された。
良くも悪くも「量産機」といった感じで性能的に目を引くものはないが、開発先がペーネロペーなので作っておく価値はある。
作品によってはNPC限定でケッサリアとセットになっていることも。

余談だが、「グスタフ・カール」といいつつ実は『F』から『オーバーワールド』まで頭部がドーラの方になっており、『ジェネシス』で初めてグスタフの頭部で描かれた。*2


『アクシズの脅威V』に参戦。連邦系における最終量産機である。
性能はまさに圧倒的であり、下手な単機編成の機体が相手なら、そいつにパイロットが乗っていても余裕で勝ててしまう程。
前述の通り設定上では、地上での運用を想定して設計された機体なのだが、本作では宇宙でも問題無く使用出来る。

だがしかし、普通にゲームを進めていると、本機の開発プランが提案される頃にはゲーム終了間近というケースが殆どであり、活躍させる機会はほとんど無い。
本機をまともに運用しようと思ったら、わざと攻略をチンタラ進めるか、滅亡寸前の相手をなぶり殺しにするようなプレイングが必要になってしまうだろう。
さらに生産コストも量産機としては高額で、生産に2ターンかかってしまうのも問題。
性能自体はまさに「ガンダムタイプに匹敵する」という触れ込みに相応しいのだが…こんな所でも不遇の名機だった。せめてマフティー編でもあれば…。

なお本作ではサブフライトシステムがケッサリアではなく、何故かベースジャバーになっている。


  • ガンダムバトルオペレーション2
高コスト帯である650コスト汎用機。実質900コスト相当とも言われる耐久性能と能動的に防御態勢が取れるアクティブガードが持ち味。
とにかくタフな上に即よろけ武装を3つ持つ等タイマン性能も高め、相手をすると面倒なことこの上ない。
汎用機としては緊急回避を持っていないと言う明確な欠点があるものの、余りある耐久力でそれが欠点として目立たない程。
むしろそれ以上の欠点は、射撃火力の低さとこのコスト帯では絶望的とも言えるレベルの蓄積よろけの取れなさ。
同コスト帯の強襲機は単発よろけじゃ止まらない奴らが殆どなのだが、実質蓄積よろけ兵装を持たない事から相手が足を止めてから≒守るべき支援機が殴られてからじゃないと止める術がない。
敵チームからすると「相手するのは面倒だけど相手しなきゃいい機体」と言える。いかに敵方が無視し難い立ち回りができるかと言う意味で上級者向けの機体。



【立体化】

HGUCより発売。

◎HGUC 1/144 グスタフ・カール (ユニコーンVer.)
2019年2月発売。価格は税込み2,640円。
付属品はビームライフルとシールドだけのシンプルなキットだが、とにかくデカいしゴツい。
それでいて関節の引き出し、跳ね上げやスライドギミックにより可動域も十分確保されている。
色分けも脚部のラインやアンテナの先端、センサー類がシールなくらいで優秀な良キットである。

◎HGUC 1/144 グスタフ・カール (ギレンの野望Ver.)
ユニコーンVerをベースにしたカラバリキット。プレミアムバンダイ限定品。
2019年7月発売。
『ギレンの野望Ver.』と銘打ちつついつものGジェネ版。
頭部バルカンが1門に、フレキシブルシールドの接続が左肩になったくらいであとはほぼカラバリ。

「GジェネVer」ではなく「ギレンの野望Ver」名義なのはGジェネだとSD体型だからだろうか?

◎HGUC 1/144 グスタフ・カール00型
2026年2月に発売予定の劇場版『閃ハサ』版。
現在公開されている情報から、外装はほぼ新規パーツによる構成と思われ、バックパックのウェポンラックも再現されている。
昨今の物価高騰の影響か、価格は税込み3,850円とユニコーンVer.に比べてかなり高め。



【余談】

  • 名称は旧ドイツ軍が第二次世界大戦時に開発・運用したカール自走臼砲と80cm列車砲(1号車が「グスタフ」、2号車が「ドーラ」)またはスウェーデン製の無反動砲カールグスタフだと思われる。




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最終更新:2025年10月04日 08:53

*1 直接デザインは提示されていないが、書籍『週刊ガンダム・パーフェクトファイル』で挙げられた軽装型の特徴がこれと一致する。

*2 「グスタフ・カール」は隊長機・一般機の総称なので間違いではない。