アットウィキロゴ

DYNAMIC CHORD(アニメ版)

登録日:2026/03/12 Thu 16:08:39
更新日:2026/08/09 Sun 01:29:08
所要時間:約 15 分で読めます




DYNAMIC CHORD(ダイナミック・コード)とは、2017年に放送された全十二話のアニメーション作品である。
ファンに使われる略称は「ダイコー」。

概要


ロックバンドをテーマにした作品であり、主人公の香椎玲音が所属する「rêve parfait(レーヴパッフェ)」(通称「レヴァフェ」)を中心として、同じ事務所「DYNAMIC CHORD」に所属する4つのバンドが、それぞれの思いを胸に「新曲を披露するクリスマスライブ」に至るまでの一年間を描いた物語である。

原作は乙女ゲーなのだが、アニメ版のストーリーは原作と全く関係ないため、ここでは触れない。
一応軽く説明しとくと、ゲーム版は計4作で1セットとなる変則的作品で、作品ごとにそのバージョンの主役バンドに対応する異なるヒロイン(プレイヤーポジション、声無し)がいる。
なお、原作は原作で、ヤンデレやレイプ犯がぞろぞろいるなかなかやべー作品である。
また乙女ゲー原作でありながら、アニメ版には原作の主人公達に相当する女性のレギュラーキャラは一切登場せず、恋愛要素も全く無い。
このため、男性視聴者でも比較的抵抗感なく見れるストーリーになっている。


さて、本作がネット上で話題になる際、まず語られるのは「作画崩壊アニメ」という点である。
実際、本作はの全ての回において作画がおかしいシーンが頻発する。
特に車や道路・交通関係の作画は壊滅的であり、「ロクに日本の道路事情を知らない人たちが作っているのでは?」と言われたほど。

例:歩道にカフェテラスがはみ出している、(通称『違法建築カフェ』)、Y字路に必須の路面表示が無い(通称『Why字路』)、横断歩道前に点状ブロックがない(通称『殺人点字ブロック』)、どこから出ているのか分からないシートベルト

それ以外にも、人体が物体をすり抜けたり(通称すり抜けバグ)、縮尺がおかしすぎてホテルのロビーにいる主人公たちが小人にしか見えなかったり、おかしなシーンは枚挙に暇がない。
そのくせして鳥の作画は異常によかったりする(通称ダイナミックバード)。

しかし、このアニメにおいては、はっきり言って作画崩壊というのは本作の独特の魅力を構成するほんの一要素に過ぎない
本作は脚本・演出・構成・作画の全てが奇跡的にかみ合った結果生まれた、日本アニメ史上に類例を見ない極めて独特の完成度を誇る作品であり、おそらく今後二度と同じようなアニメを作ることは不可能である。


本作の特異さを示す例として、2話のとあるシーンをとりあげよう。

ヨリトの失踪が波紋を広げる中、気になる行動を取る道明寺を追ってきた玲音たちレヴァフェメンバー。
そしてたどり着いたのは誰かの墓石であり、そこには火のついたままの線香が供えられていた。
果たしてここに道明寺がいたのかといぶかしむメンバーたちに向かって、玲音は言う。

「あいつがさっきまでここにいたって証拠はあるぜ!」

彼の指さす先には、芝生の上にくっきり残った足跡が……

……いやいや、ちょっと待ってほしい。
この場面、地面はどう見ても芝生であり、ぬかるんでいるわけでもない。
普通に歩くだけで足跡など残るわけがないし、そもそもなんでその一か所だけ足跡が残ってるんだ?
それに、なんで足跡だけで「道明寺がさっきまでいた」と断言できるんだ?

普通に考えれば、あまりにも無理のあるシーンである。
が、このアニメのスタッフたちはこの脚本を通し、大真面目に映像化した
誰一人として何かがおかしいと指摘しなかったのかどうか、今となっては永遠の謎であるが、このような「通常の制作過程であれば、到底そのまま映像化されるとは思えない」シーンが、この作品では全編にわたって見られる。

それが本作の独特の魅力を生み出したのだ。

結果的に本作はカルト的な人気を博し、現在に至るまで根強いファンを獲得した。
ほとんど全編にわたってツッコミどころが存在するのに加え、いわゆるクソアニメにありがちな不快感はほとんどないこともあって、「落ち込んだ時に見ると元気が出るアニメ」「見る抗鬱薬」などと呼ばれている。

以下、いくつか本作全体を貫く特徴を挙げてみよう。


  • 説明不足の国
このアニメ、とにかく説明が足りない
登場人物が多いにも関わらず、彼らが最初に登場する時に、どんな人物で主人公たちとどんな関係にあるのか、という説明がほとんどなされないままに話が進む。
本来キャラや世界の説明をすべきである第一話でもメンバーの演奏や練習風景が続き、最初にまともに自己紹介したのはアニオリキャラのパパラッチ(後述)である。
それでも見ていればなんとなくキャラの区別がつくのは良くできているというかなんというか……
それ以外にもキャラクターの心情や、現在の状況などについては、あたかも「わざわざ説明しなくてもわかりますよね」と言わんばかりのノリで話が進んでいく。
「作中の人物にとって自明なことはわざわざ視聴者に向けて改めて説明しない、という斬新な作劇手法なのでは」と評されることもある。


  • 初手失踪
キャラクターが何らかの問題を抱えた場合、とりあえず失踪する
4話の予告で玲音が言った
「今度はLiar-Sが全員いなくなってしまった」は語り草。


  • クセの強すぎる演出
作画も脚本もおかしければ演出もおかしいのが本作の特徴。
それを象徴するのが1話ラストの
「追いピアノ」である。
ヨリトの失踪を報じる週刊誌の記事を見て愕然とするレヴァフェメンバーたちに被せて、彼らの受けたショックを表現するようなピアノの重低音が流れるのだが、不協和音な上、これがくどいことに三回も連続で流れる
ちなみに、これはSEでなく前衛的な曲調のBGMであり、本作の楽曲を収録したアルバム『TVアニメ「DYNAMIC CHORD」The four SEASONS』にも「DYNAMIC PIANO」として収録されている。
文章では伝わりにくいかもしれないが、実際に見てもらうと相当にシュールなシーンである。
このような意図のよくわからない演出が全編を覆っている。

その他、いちいち画面映えだけを意識したような無駄の多い動きをする登場人物たち、出てくる猫とかぬいぐるみとかが揃いも揃って絶妙にかわいくない、登場人物が揃いも揃って車の停め方が違法駐車レベルで非常識、果てはエンディングのテロップにまで誤記がある等々、本当におかしなところを挙げるとすればキリがない。

とはいえ、基本的にストーリー自体はバンドマンたちの成長物語としてちゃんと成り立っており、本格的に悪意ある人物・不快な人物がほとんど登場しないこともあって、前述したように見ていて不快感は全くと言っていいほどない作品である。
また声優陣がちゃんとゲームと同じなことは評価できる。
気になる人は是非視聴してみてほしい。


ロックバンド&登場人物


rêve parfait(レーヴパッフェ)

香椎玲音(かしいれおん)月野原久遠(つきのはらくおん)百瀬(ももせ)つむぎ・香椎亜貴(かしいあき)の4人。通称「レヴァフェ」。
主人公であり、4章は彼らがメインの物語となる。
玲音は主人公であることもあって他の章でもストーリーに首を突っ込んでくるのだが、正直あまり役には立っていない。
なお、苗字からも分かるように玲音と亜貴は兄弟なのだが一緒に住んでいない上に、玲音は久遠とルームシェアしているため、普通に見ていたら基本的な家族構成や人間関係すら終盤まで分からない。

  • 五十嵐八雲(いがらしやくも)
レヴァフェのマネージャーであり、本作最大の苦労人。通称「八雲ママ」。
自由奔放なメンバーの世話に神経をすり減らされた結果、ついに4章で失踪した

  • ニャン吉
八雲の飼い猫。原作にもいるのだが今作では作画のせいで見事にブサカワ猫に。
あまりにも太りすぎている上に、ハムやパスタも食べるため(塩分を含むので猫に与えてはいけない。)化け猫扱いされている。


KYOHSO(キョーソー)

城坂依都(きさかよりと)英時明(はなぶさときはる)黒谷優(くろやゆう)諏宮篠宗(すみやしのむね)の4人。第一章は彼らがメイン。
事務所の稼ぎ頭であり、4章では世界ツアーを行う(ピラミッドや凱旋門の真横でライブする)など国際的にも評価されている。
まあ正直言って依都以外は空気気味。
なお、依都は原作ゲームではとんでもないクズなのだが、アニメ版ではファン思いかつ後輩の面倒見も良いキャラになっており、アニメ化で得をした一人。多分。


Liar-S(ライアーズ)

檜山朔良(ひのやまさくら)珠洲乃千哉(すずのちや)結崎芹(ゆいさきせり)榛名宗太郎(はるなそうたろう)の4人。第二章は彼らがメインだが、4話はレヴァフェメインの日常回なので、当番回が減ってしまった不遇なバンド。
「困ったら失踪」というこのアニメの流れを決定づけたバンド
他人が制作した楽曲だけを演奏させられるという、今の事務所の方針に不満を貯めており、それが失踪に繋がった。
宗太郎はオネエキャラなのだが、その美貌に加えて常識人で善良な性格から特に人気が高く、「ネキニキ」の愛称で親しまれている。


apple-polisher(アップルポリッシャー)

天城成海(あまぎなるみ)音石夕星(おといしゆうせい)青井有紀(あおいゆき)黒沢忍(くろさわしのぶ)の4人。通称「アッポリ」。第三章のメイン。
レヴァフェとは年齢もキャリアも近いためか仲が良く、かつ互いに切磋琢磨する関係。
ちなみに成海は香椎兄弟と幼馴染なのだが、肝心な過去は断片的にしか語られない。

  • 相模原龍雄(さがみはらたつお)
アッポリのマネージャー。八雲の後輩で彼もやはり苦労人。
成海たちメンバーのことを溺愛しており、3章でアッポリの魅力について早口で語るその姿はオタクそのものであった。


道明寺辰哉(どうみょうじたつや)

アニオリキャラ。レヴァフェたちを追っているパパラッチ(死語)の大学生。
もっとも、ただの興味本位で追っているわけではなく、その音楽性は正しく評価している。
本作の狂言回し的ポジション。

アニオリキャラのクセにやたらストーリーに絡んできたり、盗撮というバンドメンバーから見れば迷惑行為を行なったりと、本来であればヘイトを向けられかねないポジションのキャラなのだが、
本作においては作中で屈指のまともな感性をしている人物であり、視聴者が疑問に思っている部分をしっかり説明してくれるという役割も担っているため、
この手のキャラでは珍しく視聴者からの好感度が高いキャラ。


ストーリー


第一章・春(1話~3話)

クリスマスライブに向けての曲作りになかなか身が入らない玲音。
そんな折、KYOHSOの依都が失踪したというニュースが飛び込んでくる。

実は依都には難病の少女のファンがいたのだが、彼女が自分たちの渾身のライブを見れないままに亡くなったことを知り、ショックを受けたのが失踪の原因であった。
しかし、道明寺のおかげで希望を取り戻し、依都は亡き少女への鎮魂歌を歌って彼女に別れを告げる。

……と、プロットだけをみれば、(主人公の玲音が空気過ぎるという難点はあるが)バンドアニメとして王道と言えるストーリーである。
が、数々の珍妙な演出と構成のせいでこのプロット自体が分かりにくい上、普通の丘の上にいきなり現れる古代地中海風建築の病院、まるでかわいくないウサギのぬいぐるみ(通称ヒアリ)、
「なんとかって難病」という情報量ゼロのセリフなどのおかげで珍妙なアニメになってしまっている。「治療不可能な難病」とかいろいろ表現はあっただろうに。


二章・夏(4話~6話)

作曲のために合宿することにしたレヴァフェだが、玲音が倒れてしまう。
結局ただの夏バテだったのだが、ここで往診に来たのがどう見ても20世紀初頭の西欧風のいでだちで、世界名作劇場みたいなキャラデザをした医師(通称異世界ドクター。ご丁寧に車も年代物)。
玲音の体力回復も兼ねて、気分転換のために遊ぶことにしたレヴァフェだが、偶然失踪中のLiar-Sとばったり出会う。
Liar-Sは事務所から望まない売り出し方をされることを不満に思い、避暑地に姿をくらましたのであった。
そこで知り合った村の人々から、近く村がダムの底に沈むと聞いたLiar-Sたちは、彼らのために夏祭りの会場でライブをすることを決意する。

……と、やはりプロットは『問題に直面したバンドがそれを解決するヒントを手にする』という王道なものだが、例によってこの村が無くなる話が視聴者からするとあまりに唐突に出てくるため、村にもLiar-Sにも感情移入できないまま話が進む。
そして村の人たちが手作りで作ったステージは、どう見ても照明までついたプロ仕様のガチなもの

このあたりからリアルタイムで見ていた視聴者たちは、このアニメは尋常ではないことに気づき始める。


三章・秋(7話~9話)

この章で本作屈指のゲストキャラ、
土壌おじさんが登場。

やはり音楽性に行き詰っていたapple-polisherは、ワイナリーを訪問し、そこでブドウ農家のおじさんに
「ブドウは土壌と環境で味が変わる」という話を聞かされた後で、

「色んな土壌と環境で、あなた達だけの音楽が生み出されてるんでしょ」

と、「自分たちの音楽に自信を持て」というメッセージを投げかけられ、奮起してライブに望む。

……この流れ自体はまあ分からないわけでもないのだが、客観的に見たら
『バンドと全然関係ないぽっと出のおっさんに、無理やりワインとバンドを関連付けたようなことを言われてなんか立ち直った』
ようにしか見えないのがなんとも。

加えてこの章、特に9話で顕著なのが
『怒涛の回想』
マジで話全体の3分の1近くを回想シーンが占めている上に、ついに回想ネタが足りなくなって同じ9話内のシーンまで回想し始める(通称回想切れ)。


四章・冬(10話~12話)

本作の真骨頂
遂に回ってきたレヴァフェメインの章だが、冬になったというのにまだ新曲は完成せず、apple-polisherに差をつけられていた。
現状に焦りを覚えたリーダーの久遠は、八雲ママに八つ当たり気味に不満をぶつけ(このシーンは本作では珍しく「本気で不快になったシーン」と言われがち)、同じ理由から他メンバーも八雲に素っ気ない態度を取る。
結果、八雲は山寺に失踪。
探しに出かけたレヴァフェメンバーは雪の中で立ち往生し、車を降りて雪山を歩いていたところ、音楽を始めた頃の無邪気な気持ちを思い出して雪合戦に耽る。
そこに相模原から知らせを受け、メンバーの下に駆けつけた八雲ママ。久遠たちは
「勝手にいなくなってんじゃねーよ!」と言いながら笑顔で駆け寄って和解した。誰の所為だと思ってる。

……おわかりいただけただろうか。
1~3章では、話が「バンドメンバーが問題に直面する→音楽の力を再度思い出してその問題を解決する」という形になっており、バンドアニメとしては一応成り立っていたのだが、この4章ではもはやそんなもんすらも投げ出してしまっているのだ。
10話の久遠にヘイトを貯めていたリアルタイム勢も、11話のあまりの異次元っぷりに「これはすごいアニメだわ」と認めざるを得なかった。

極めつけは最終話(12話)。
あれだけ苦労していた新曲をたった一日で書き上げたレヴァフェメンバーは、意味もなく滝行とかしたあと、ギリギリでクリスマスライブ会場に駆けつけ、一度も練習していない新曲を完璧に披露した。
……こいつら、実はとんでもない天才っていう設定だったのだろうか?

なお、ラストシーンでつむぎがバースデーケーキのろうそくの火を消すシーンが唐突に挿入される。
これはつむぎの誕生日がクリスマスなので、ライブの後でメンバーでバースデーパーティーを開いたわけなのだが、もちろんここに至るまで一言もそんな台詞も説明も無いため、所見では全く意味が分からないシーンになっていた。


以上の解説から、本当に最後の最後まで説明不足のアニメだと理解しただろう。
ちなみにアニメ版を元にしたコミカライズが発売されているが、こちらは視聴者からツッコまれがちだったセリフ回しや演出が修正されている為、違和感なく読むことができる。


「俺、wiki籠り。追記・修正のファンでさ~」

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2026年08月09日 01:29