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オストメイト

登録日:2026/07/05 Sun 06:28:58
更新日:2026/08/03 Mon 19:38:53
所要時間:約 3 分で読めます




※ご自身の健康問題については、専門の医療機関に相談してください。

オストメイト とは、病気や事故などで消化管や尿路の機能が損なわれ、腹部に人工的に造設した排泄口(ストーマ)を介して生活を送る人々のことである。
医学的にはストーマを造設しても日常生活を送ることは十分に可能とされている。
しかしながら、その実態は「見えない障害」としての苦労と隣り合わせである。

概要

「ストーマ(stoma)」はギリシャ語で「口」を意味する単語。
そこから転じて、医学用語として人工的に造設した排泄口を「ストーマ」と呼ぶようになった。
通常とは異なる場所(主に腹部)に新たな排泄ルートを設けるストーマ増設手術(造孔術)のことは「ostomy(オストミー)」と呼ぶ。
ここに「人」を表す“-mate”を合成し、ストーマを管理し維持する当事者を指すようにしたのが「オストメイト」という単語である。
見た目から、ギャグを含めて俗に梅干しとも呼ぶ人もいる。

なお、ストーマは大別すると便を排出するための「消化管ストーマ」と、尿を排出するための「尿路ストーマ」に分けられる。
また、手術後の縫合不全を防ぐ等の目的で一時的にストーマが作成されることもある。
以降は、基本的に永久的に増設した消化管ストーマについて扱うこととする。

『オストメイト対応トイレ』

オストメイトのための汚物流しや洗浄設備を備えたトイレのこと。
多機能トイレ*1の機能の一つとして備えられていることが多い。
設備の詳細は施設等によって異なるが、シャワーノズル付きのデカい洗面台のような洗浄台+汚物入れというものが基本。
また、体に十字線が描かれたピクトグラムはオストメイト対応を示すサインである。


主な患者

日本におけるオストメイトは、圧倒的に高齢者が多いのが特徴である。
  • 平均年齢 :おおよそ60代後半~70代。
  • 年齢分布 :65歳以上が全体の約75%を占めており、50歳以上で見れば全体の9割以上に達する。
  • 若年層の割合 :60歳未満の割合は2割以下となっており、10代や20代で見るとさらに希少な存在となる。
  • 補足 :これはがんなどの加齢に伴う疾患が主な原因であるためであり、若年層のオストメイトは炎症性腸疾患や事故・先天性疾患などが原因となるケースが多い。

人工肛門を造設している(いた)著名な人物では、
  • 渡哲也(俳優)
  • 板東英二(元プロ野球選手)
  • 田村亮(お笑いコンビ「ロンブー」のメンバー)
  • 松本人志(芸能人)
など。

ストーマを造設する主な原因

「なぜお腹に新たな出口を作る必要があるのか?」その理由は、単なる機能不全だけではなく、致命的な疾患への対処として文字通り断腸の思いで決断するケースが多い。

消化器系の悪性腫瘍(ガン)

  • 直腸がん・肛門管がん
病変部が肛門のすぐ近くにある場合、根治を目指すためには肛門を含めた直腸切除が必要となる。
この際、肛門がなくなれば排泄が不可能になるため、人工肛門(コロストミー)の造設が不可欠となる。

  • 炎症性腸疾患(IBD)
潰瘍性大腸炎・クローン病:これらは原因不明の慢性的な炎症を引き起こす難病。
内科的治療で改善しない重症例や、腸に穴が開く穿孔、大量出血、腸閉塞などの「命に関わる緊急事態」が発生した場合、緊急手術でストーマを造設することがある。

外傷やその他の物理的損傷

交通事故・災害:腹部への強烈な衝撃により、腸管や膀胱が物理的に断裂・損傷した場合の緊急措置。

先天性疾患・その他

生まれつき腸の出口や神経に異常がある場合や、加齢による重度の便失禁など、生活の質を維持するためにやむを得ず造設されることもある。


ストーマがもたらす「恩恵」

  • QOL(生活の質)の劇的な改善
病気による腸の激痛、頻回な下痢、便失禁、あるいは排泄困難といった「コントロール不能な苦痛」から解放される。
ストーマは苦痛の原因を体外へ切り離すことで、人間らしい生活を取り戻すための「救済措置」とも言える。

  • 活動範囲の維持・回復
重篤な疾患を抱えたままでは外出もままならない
しかし、ストーマを造設して管理を覚えることで、再び旅行や趣味、仕事といった社会参加が可能になる。
また障害者手帳を所持できる場合が多いため、各種施設・交通機関の利用料減免措置が受けられるため外出のハードルも下がる。

  • 命の維持
最大のメリットは言うまでもなく「命が助かること」。
患部を切除し、安全な排泄ルートを確保することで、根治や寛解を目指すためのスタート地点に立てる。


暮らしの裏側

一見すると普通に生活できそうに見えるが、当事者が抱える切実かつ終わりのない負担も存在する。

  • 排泄管理というプレッシャー
ストーマには本来肛門にあるべき括約筋がないため、排泄を自力で止めることができない。
腹部に貼り付けた「パウチ(専用袋)」が全てであり、密着が甘ければ漏れや皮膚のかぶれ、尊厳の破壊に直結する。
この「いつ漏れるか分からない」という不安は、常に精神的な緊張を強いる。
特に夏場は汗と湿気によってかぶれやすく、体温管理も徹底する必要がある。

  • 外出における物理的・心理的制約
万が一外出中にパウチがはがれてしまった場合、ただの個室では装具交換が困難な場合が多い。
そのため上述の「オストメイト用トイレ」がある場所を、事前にリサーチしておくことが必須のルーチンとなる。
しかし、多機能トイレとは名ばかりのただ広いだけのトイレという残念な事態に遭遇することもしばしば。
また、周囲に臭気が漏れていないか、衣服の上からパウチが目立っていないか……といった心配から、対人関係や公共の場での振る舞いに配慮を要する。

  • トイレの利用をめぐる視線
多機能トイレを利用できたとしても、周囲から「なぜ健康そうな人が使っているのか?」という無言の圧力や、指摘をなされてしまうことがある。
オストメイトマークが普及しつつあるとはいえ、依然として認知度は低く、当事者は常に「事情を説明しなければならないのでは」という心理的ストレスを抱えがちである。

  • 銭湯やプールでの忌避感
気付かれにくい地味なデメリット。
当然といえば当然なのだが、世の中は人工肛門についての知識がない人が大半な為、排泄物の詰まった袋が体からぶら下がっている様子を見て「不衛生なのでは」「すぐに漏れてしまうのでは」という誤った知識から、現場判断で入浴を断られるというトラブルが少なくない。
実際には、パウチでおおわれている分むしろ一般的な肛門より清潔な上、しっかり貼り付けてあれば専用の液を使わない限りはがれないため、基本的には杞憂。
厚生労働省はこれを問題視しており拒否しないよう通達を出しているが、残念ながら徹底されているとはいいがたい。*2


余談

アニヲタwiki(仮)的には少々重いテーマだが、当事者の中にはこの状況を「慣れればなんてことない」と笑い飛ばす猛者も多い。
最近では装具を隠すためのオシャレなカバーやベルトなども流通しており、「どうせ付き合うならカッコよく付き合おうぜ」という姿勢の当事者も増えている。
もし街中でオストメイトマークを見かけたら、「あ、専用の設備が必要な人なんだな」と心の中でスルーしてあげるのが、社会における最大の優しさと言えるかもしれない。


参考文献

公益財団法人がん研究会
https://www.jfcr.or.jp/hospital/conference/total_care/woc/artificial_anus.html
アストラゼネカ公式サイト「がんになっても」
https://www.az-oncology.jp/cancer_treatment/appearance_care/stoma/

追記・修正は腸が煮えくり返らないようにお願いします。腸はないけどね


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最終更新:2026年08月03日 19:38

*1 かつては多目的トイレという名前が一般的だったが、健常者の不適切利用が問題になったことから現在この呼称が公的に使われることは減っている。

*2 初版作成者は近所の銭湯でこれをやられてから、二度と行かなくなってしまった。