「本日はお忙しい所、交渉に応じてくださりまして誠にありがとうございます。略式ながら感謝を」
「そんなことはいいよ。司祭様が僕のような人間にそこまで丁寧にしていただかなくても……」
「そんなことはいいよ。司祭様が僕のような人間にそこまで丁寧にしていただかなくても……」
神聖イルニクス帝国冒険者ギルド内の来賓室にて勇者を自称するアストラムと冒険者組合付司祭ソフィア=サーキュレットは向かい合っていた。
「貴方のお噂はかねがね伺っております。司祭に就いている者として雑な対応をするわけにはいきませんので」
「……だったら猶更そんな風にしてもらう理由がないよ。知っているでしょう? 僕が周りからどういわれているのか」
『変人』『凶星』『愚か者』、アストラムが周囲から受けている評価はいずれも良い物ではなかった。そのような評価をされている人間に良い噂等流れるはずがない。
「ええ、伺っております。『魔物の脅威に晒されている人々に無償で手を差し伸べる素晴らしき人』であると」
「……そんなことを言ってくれる物好きがいるんだね」
「ええ、貴方が救った地域の方々からお聞きしましたので」
笑顔を浮かべたままアストラムに向かってソフィアはそう告げる。ソフィアはアストラムが救ったとされる地域に赴き、そこで彼の活躍をその場所の住民から聞いていたのだと言う。
「わざわざ出向いたというの?」
「ええ、今日貴方と交渉するために必要なことだと考えましたので」
そう言って穏やかな笑顔から真剣な表情へ切り替えるのを見てアストラムも背筋を正し引き締める。今回アストラムが冒険者ギルドにいるのは目の前の女生と談話をするためではない。冒険者ギルドとアストラムの間に起きた問題を解決するためだ。
彼は報酬が支払えない、うまみがないなどという理由から冒険者ギルドの手が回らない地域に赴き魔物の被害に無償で対処を行っていた。被害地域の住民は当然彼に感謝をしていたが冒険者ギルドとしては非常に面白くない事態であった。その結果、冒険者ギルドとアストラムの間で一悶着が起きたのだ。詳細は割愛するが様々な経緯をたどった末にアルカナ教団の司祭であるソフィアが仲裁に入り冒険者ギルドとアストラムの交渉を受け持つこととなったのだ。
「まず冒険者ギルドとしてはアストラム様に冒険者として登録していただきたいとのことです。そして冒険者ギルドからの依頼を受けた上で行動してほしい。これがギルドからの意向です」
「話にならない。それだとギルドに登録している冒険者の手が回らない地域を放置することになるんじゃないの?」
「ギルドとしては勝手な行動をとってほしくないということです」
「それは困っている人がいても放置しろと言うことかな? そんなことはできないよ」
「貴方のお噂はかねがね伺っております。司祭に就いている者として雑な対応をするわけにはいきませんので」
「……だったら猶更そんな風にしてもらう理由がないよ。知っているでしょう? 僕が周りからどういわれているのか」
『変人』『凶星』『愚か者』、アストラムが周囲から受けている評価はいずれも良い物ではなかった。そのような評価をされている人間に良い噂等流れるはずがない。
「ええ、伺っております。『魔物の脅威に晒されている人々に無償で手を差し伸べる素晴らしき人』であると」
「……そんなことを言ってくれる物好きがいるんだね」
「ええ、貴方が救った地域の方々からお聞きしましたので」
笑顔を浮かべたままアストラムに向かってソフィアはそう告げる。ソフィアはアストラムが救ったとされる地域に赴き、そこで彼の活躍をその場所の住民から聞いていたのだと言う。
「わざわざ出向いたというの?」
「ええ、今日貴方と交渉するために必要なことだと考えましたので」
そう言って穏やかな笑顔から真剣な表情へ切り替えるのを見てアストラムも背筋を正し引き締める。今回アストラムが冒険者ギルドにいるのは目の前の女生と談話をするためではない。冒険者ギルドとアストラムの間に起きた問題を解決するためだ。
彼は報酬が支払えない、うまみがないなどという理由から冒険者ギルドの手が回らない地域に赴き魔物の被害に無償で対処を行っていた。被害地域の住民は当然彼に感謝をしていたが冒険者ギルドとしては非常に面白くない事態であった。その結果、冒険者ギルドとアストラムの間で一悶着が起きたのだ。詳細は割愛するが様々な経緯をたどった末にアルカナ教団の司祭であるソフィアが仲裁に入り冒険者ギルドとアストラムの交渉を受け持つこととなったのだ。
「まず冒険者ギルドとしてはアストラム様に冒険者として登録していただきたいとのことです。そして冒険者ギルドからの依頼を受けた上で行動してほしい。これがギルドからの意向です」
「話にならない。それだとギルドに登録している冒険者の手が回らない地域を放置することになるんじゃないの?」
「ギルドとしては勝手な行動をとってほしくないということです」
「それは困っている人がいても放置しろと言うことかな? そんなことはできないよ」
その後も交渉はなかなかまとまることはなかった。アストラムはどうにも一歩も引くことはなく、ソフィアも冒険者ギルド側についている立場として簡単に引くことはできない。そのため押し問答に終始することとなった。結局その日の交渉はまとまることはなく、お開きとなるのであった。
「本日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。今回の事をギルドと話し合ってきますのでまた交渉に応じて頂けますか?」
「……引く気はない。そう言うことだね。まあ僕が納得出来るような案が出てくることを期待しているよ」
そう言ってアストラムは席を立とうとする。その時だった。
「私はアストラム様の行動を好ましいものと思っています」
ソフィアのその言葉にアストラムの行動が止まる。
「ですので個人的にはアストラム様の行いを制限するようなことはしたくありませんね。貴方の行いは正しいものであるはずです」
自身の胸に手を当ててソフィアは本心を話す。アストラムの一件を耳にした時から、彼が無償で手を差し伸べた地域に話を聞きに行った時もずっと、素晴らしい行いだと感じていたのだ。そしてそれはアストラムへの好感に繋がっていた。
「今日は貴方とお話ができて良かった。またお話をする機会が合って欲しいと思っています」
交渉の最後にソフィアはアストラムに対し、笑顔で自らの本心を告げるのであった。
「本日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。今回の事をギルドと話し合ってきますのでまた交渉に応じて頂けますか?」
「……引く気はない。そう言うことだね。まあ僕が納得出来るような案が出てくることを期待しているよ」
そう言ってアストラムは席を立とうとする。その時だった。
「私はアストラム様の行動を好ましいものと思っています」
ソフィアのその言葉にアストラムの行動が止まる。
「ですので個人的にはアストラム様の行いを制限するようなことはしたくありませんね。貴方の行いは正しいものであるはずです」
自身の胸に手を当ててソフィアは本心を話す。アストラムの一件を耳にした時から、彼が無償で手を差し伸べた地域に話を聞きに行った時もずっと、素晴らしい行いだと感じていたのだ。そしてそれはアストラムへの好感に繋がっていた。
「今日は貴方とお話ができて良かった。またお話をする機会が合って欲しいと思っています」
交渉の最後にソフィアはアストラムに対し、笑顔で自らの本心を告げるのであった。