ある日のこと。並みの暮らしより余程豪華な個室――『大海蛇の毒弾』たるメイド専用の棟、その中でも地位のひときわ高いメリーザ専用の部屋である場所にて。
珍しく普段より遅く起きたメリーザは、起きてそのままの乱れた長髪のまま。妹達が机に置いていてくれた朝食を軽く魔法で温めなおし(主人であるリリアーナは魔法の才能がからっきしなので残念ながら出来ない)、それをサッと食べる。
えんどう豆とニンジンや玉葱のスープ(しれっとブイヨンが使われている)、柔らかいパン、多少厚く切られたベーコン、そして目玉焼き。
珍しく普段より遅く起きたメリーザは、起きてそのままの乱れた長髪のまま。妹達が机に置いていてくれた朝食を軽く魔法で温めなおし(主人であるリリアーナは魔法の才能がからっきしなので残念ながら出来ない)、それをサッと食べる。
えんどう豆とニンジンや玉葱のスープ(しれっとブイヨンが使われている)、柔らかいパン、多少厚く切られたベーコン、そして目玉焼き。
貧乏な農村の産まれであったことを思えば、ハレの日と言っても過言ではなさそうなものを毎日食べられる――ふと、脳裏にそのような考えがよぎるが、黙って完食する。
食器類は部屋の前に盆ごと出しておけば誰かしらが片付けてくれるのでそうしておき、歯木(しぼく、古代から使われる歯のケア道具)と歯磨き粉(文字通り粉)、楊枝で歯のケアをする。
食器類は部屋の前に盆ごと出しておけば誰かしらが片付けてくれるのでそうしておき、歯木(しぼく、古代から使われる歯のケア道具)と歯磨き粉(文字通り粉)、楊枝で歯のケアをする。
それが終わると、私服一式である如何にも「私は庶民の娘です」と言いたげな、上品な雰囲気のロングスカートのワンピースを着て、髪を整え、軽めの化粧を済ませる。
正直、主人のリリアーナ含めて化粧がいらない程に美しい容姿ではあるのだが、ここでちゃんと行うことで維持の努力をしていると表現するということでもある。
正直、主人のリリアーナ含めて化粧がいらない程に美しい容姿ではあるのだが、ここでちゃんと行うことで維持の努力をしていると表現するということでもある。
これらを終えると、本日の予定が書かれた手帳、護身用の魔法銃、財布、そして幾らかの荷物が入った鞄を持って、屋敷を出る。守衛がメリーザの姿を確認すると敬礼し、送り出してれる。
「……たまの休日ですから、しかと羽を伸ばさねば。まあ私達に羽はなくとも、翼はあるのです。
尤も、お嬢様には羽も翼もないのですが」
尤も、お嬢様には羽も翼もないのですが」
と、リリアーナ本人の聞こえぬところで呟きながら、メリーザは進む。
いくら主人が気を遣ってくれようと多少は貯まるストレスを解消し、より良い奉仕を主人に出すために。
いくら主人が気を遣ってくれようと多少は貯まるストレスを解消し、より良い奉仕を主人に出すために。