富、名声、力、この世の全てを産まれながらにして手にした女、リリアーナ・ディ・ガスペリ。
そんな女にも手に入らないものがある。
そんな女にも手に入らないものがある。
それは――
「……身長をいい感じに伸ばすポーションだとか、体型を少し豊満にする果実であるとか。そういうものは」
「仮にこの世にあったとしたら、お嬢様の耳には絶対入っているでしょう」
「わかっている、わかっているけれども……」
「仮にこの世にあったとしたら、お嬢様の耳には絶対入っているでしょう」
「わかっている、わかっているけれども……」
さも当然のように主従で漫才やってる二人。
リリアーナにとっては割と本気の悩みであるが、それを茶化せる間柄だからこその会話である。
リリアーナにとっては割と本気の悩みであるが、それを茶化せる間柄だからこその会話である。
「それでも、魔王教団のような『最も悪い選択肢』以外であるのならば、私は……」
と、真面目な顔で凄まじく俗なことを考えているリリアーナであるが。
それを見た上で無視してか、メリーザが追撃する。
それを見た上で無視してか、メリーザが追撃する。
「しかし、お嬢様」
「……何かしら」
「身長は兎も角。体型などというものは、無駄に豊満にありすぎても厄介なものです」
「……」
「お嬢様?」
「……つ、続けなさい」
「……何かしら」
「身長は兎も角。体型などというものは、無駄に豊満にありすぎても厄介なものです」
「……」
「お嬢様?」
「……つ、続けなさい」
声色が震えるリリアーナ、それを明確に聞き取りながらも命令遵守のメリーザ。
「お嬢様については文字通り全て存じていますので、お嬢様の理想は理解しております。古代の像のような肉体美、出るところは出ていながらも引っ込むところは引っ込む身体、両手に収まらぬくらいの胸と摘まめる肉のない腰と子を為すにしても不安にならぬ下半身、誰もが羨むボディライン……」
「よくもまあつらつらと……」
「そして、お嬢様になくとも私めが持ち合わせているものでもあります」
「メリーザ。いくら貴女でも、流石に越えてはならないものがあるわ」
「よくもまあつらつらと……」
「そして、お嬢様になくとも私めが持ち合わせているものでもあります」
「メリーザ。いくら貴女でも、流石に越えてはならないものがあるわ」
うっすら苛立っているようにも見えるリリアーナ、それを受け流すメリーザ。
「私もお嬢様に遣える身。可能であるならばお譲りしたいものではありますが、世の中はそのような都合の良いものはないので」
「……だからってまあ、よくも、よくも!じっとしてなさい!」
「……だからってまあ、よくも、よくも!じっとしてなさい!」
そう言うが早いか、嫉妬かまた別の何かに突き動かされ、自分の側近に襲いかかるリリアーナ。
――それを眺めた、メイド姉妹の下二人の反応は。
「またやっていますね、お嬢様とメリーザ御姉様」
「……無視。全ては口実でしかないので」
「はぁい、カロリーナ御姉様も大変ですね」
「……無視。全ては口実でしかないので」
「はぁい、カロリーナ御姉様も大変ですね」
以下略。