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第二話 揺れるリンクゲート
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ノイズ層を抜けた先、二人がたどり着いたのはリンクゲート遺構と呼ばれる旧時代のサーバー通信拠点だった。
崩壊した空間に浮かぶ橋、壊れたファイアウォール、そして未解読のコードブロックが辺りを覆っていた。
崩壊した空間に浮かぶ橋、壊れたファイアウォール、そして未解読のコードブロックが辺りを覆っていた。
ナダが足を止める。
「ここが“最短ルート”さ。昔は正規ルートだったけど、今じゃアクセス権も腐ってる。下手に触ると、巻き込まれて落ちるぞ」
「落ちたらどうなるの?」
「データの迷宮に取り込まれる。“意識だけ残る”って話も聞いた。俺は試したくないけどな」
あおいは一歩前に出て、腐敗したリンクノードの一つを調べる。
「ノイズ密度が高い……でも、通れなくはない。制御シーケンスを書き換えれば」
「任せるよ、解析屋さん」
彼女が〈スノウ=アーク〉のサブモードを起動し、浮かび上がる幾何パネルを操作する。
そのとき──
そのとき──
“警告:未登録プロセス接続。強制リンクシーケンス発生。”
あおいの視界が揺れた。
「っ──誰か、干渉してる!」
空間が軋み、リンクゲートが黒く染まり始める。
「汚染の逆流だ……っ、まずい、あれは!」
突如、ゲートから巨大な“影”が飛び出す。
それは、複数のコード断片が合成された合成型グリッチ種:デフラグメント・ベイン。
無数のコード断片が繋ぎ合わさったような不定形の身体に、
背からは粒子で構成された浮遊ノードがいくつも漂っていた。
それは、複数のコード断片が合成された合成型グリッチ種:デフラグメント・ベイン。
無数のコード断片が繋ぎ合わさったような不定形の身体に、
背からは粒子で構成された浮遊ノードがいくつも漂っていた。
「こいつ、見た目だけでヤバさが伝わるな……!」
「ナダ、戦える?」
「冗談言うなよ。こいつは一人じゃ無理だ」
ナダがライフルを構え、ドローンを飛ばす。その隣で、一ノ瀬あおいが静かに呼吸を整え、蒼い刃を構えた。
〈スノウ=アーク〉──冷気を帯びたブレード型クレンズギア
抜刀と同時に、空気が一変する。
その剣は、振るうたびに氷の粒子を纏い、軌跡に雪の結晶を描く。
抜刀と同時に、空気が一変する。
その剣は、振るうたびに氷の粒子を纏い、軌跡に雪の結晶を描く。
「ターゲット:ノード優先。私が近づく。カバーを」
「了解、剣士さん」
「じゃあ──共同戦線。記録開始」
“最短ルート”のはずだったゲートは、一転して“試練の道”と化す。
──戦闘開始:ログNo.2039-A
「でっかいな……!」
ナダがドローンを飛ばしながら距離を取る。
目の前の“それ”は、ヒトの形状をかすかに模したコードの集合体。
だが、腕に当たる部分はブレード状、背部には無数の“浮遊ノード”が存在し、
まるで電脳の竜のように空間を漂っていた。
目の前の“それ”は、ヒトの形状をかすかに模したコードの集合体。
だが、腕に当たる部分はブレード状、背部には無数の“浮遊ノード”が存在し、
まるで電脳の竜のように空間を漂っていた。
「デフラグメント・ベイン。リンクノード周辺にだけ出現する。
バグの集合体にして、知性の兆しがある個体……危険度:高」
バグの集合体にして、知性の兆しがある個体……危険度:高」
あおいが冷静に分析するも、その眼差しは真剣だった。
「おい、観察は後にしろよ、来るぞ!」
赤い線が走る。
敵の背部ノードから、収束されたパルスレーザーが発射され、ナダを狙う。
敵の背部ノードから、収束されたパルスレーザーが発射され、ナダを狙う。
「……っ!」
ナダは即座に回避。だが、一撃が足元をかすめ、崩れた床が大きく崩落する。
「そっち、動ける?」
「問題ない。カバーを取る」
なぎさが左手のサークルから〈スノウ=アーク〉を拡張。空間の一部に氷結バリアを張る。
パルスの軌道が逸れ、ナダの着地が成功する。
パルスの軌道が逸れ、ナダの着地が成功する。
「……助かった。お前、思ったよりやるな」
「思ったより、じゃない」
小さく、淡い声で返すあおい。白銀の残像を残しながら、一気に敵の懐へと踏み込む。
ヒュゥッ!
刃がうなりを上げ、敵の“腕”を模したコードの束を断ち切る。
零れたノイズが雪のように舞い、空間の温度がさらに下がっていく。
敵の動きが鈍ったその瞬間──
刃がうなりを上げ、敵の“腕”を模したコードの束を断ち切る。
零れたノイズが雪のように舞い、空間の温度がさらに下がっていく。
敵の動きが鈍ったその瞬間──
「今だな!」
ナダが叫ぶと同時に、彼の背中のドローンが展開。
自動照準で敵のノードへと集中攻撃を開始。
自動照準で敵のノードへと集中攻撃を開始。
「ドローン弾倉、散弾モード。……吹き飛べ!」
ナダのライフルが吠えた。
──“トライバースト・コード”
炸裂するエネルギー弾が、敵の浮遊ノードを一部破壊。
それによりデフラグメント・ベインはバランスを崩し、片膝をつく。
それによりデフラグメント・ベインはバランスを崩し、片膝をつく。
「あおい、決めろ!」
「凍結開始──エリア・サブゼロ」
あおいの足元に円形の文様が展開され、敵の動きを封じる凍結領域が生まれる。
だが──
だが──
「っ──ノード反応、急上昇……!」
敵が吠える。
その声に反応するように、背後のノードが一斉にビームを生成。
狙いはあおい──!
その声に反応するように、背後のノードが一斉にビームを生成。
狙いはあおい──!
「──避けろ、あおい!」
ナダの叫びとともに、彼のドローンが滑り込むように盾を展開。
衝撃がドローンを吹き飛ばすが、その一瞬であおいは姿勢を低くし回避。
衝撃がドローンを吹き飛ばすが、その一瞬であおいは姿勢を低くし回避。
「……ありがとう」
「お礼はいい。さっさとぶった斬ってくれ」
「──了解。浄化プロトコル、フェイズ2。ホワイトアウト──」
あおいの刃が再び蒼白く輝く。
上段から振り下ろされた一閃は、敵の中心部に届いた。
上段から振り下ろされた一閃は、敵の中心部に届いた。
キィイイイ……ギ、ガァ……──ッ
コードが軋み、デフラグメント・ベインが崩れ始める。
蒼白の粒子が空間に舞い、その存在は、雪のように静かに消滅した。
蒼白の粒子が空間に舞い、その存在は、雪のように静かに消滅した。
──静寂。
あおいは剣を鞘に納め、ゆっくりと呼吸を整える。
「戦闘、終了。ログを保存……」
「……っふう。なかなかの初共闘じゃないか」
ナダが肩を落としながら笑う。
あおいはデータ解析に移りつつ、ほんの一瞬だけ、彼に視線を送る。
「……悪くない。動きは単調だけど、判断は速かった」
「褒めてんのかそれ?」
「……多分、そう」
思わず苦笑するナダ。
「……相棒?」
「言ってみただけさ」
ナダは冗談めかして笑った。
あおいは小さく息を吐き、再び歩き出す。
あおいは小さく息を吐き、再び歩き出す。
「次のリンクノードへ向かう。ここは不安定すぎる」
「おう、了解。相棒」
「……好きに呼んで」
小さな変化──
冷気と銃火が交差した最初の共闘が、少しずつ信頼を育み始めていた。
冷気と銃火が交差した最初の共闘が、少しずつ信頼を育み始めていた。
「次のリンクを探す。その間に、回収したログの解析を行う」
「了解。……けど、これからもっとヤバいのが来るんだろ? だったらさ」
彼は軽くライフルを掲げる。
「その時は、もっと俺を頼ってくれ」
あおいは返事をしなかった。ただ小さく頷くと、壊れたゲートの奥へと静かに歩き出した。
──二人の戦いは、まだ始まったばかり。