だんのこまち@wiki
第三話 断層図書区(セクター・デリート03)
最終更新:
Bot(ページ名リンク)
-
view
崩れたビルの地下、かつてのアクセスセンター跡地。
その一角だけが奇跡的にウイルス汚染を免れ、今ではリブート機構の仮設拠点として機能している。
しかしこの深部には何かが潜んでいるような、どこか安心できない雰囲気が漂ってる。
その一角だけが奇跡的にウイルス汚染を免れ、今ではリブート機構の仮設拠点として機能している。
しかしこの深部には何かが潜んでいるような、どこか安心できない雰囲気が漂ってる。
鉄骨とコードの混ざった無骨な構造。壁面には過去の“世界”の残影のように、静止したホログラム広告が揺れている。
中央には仮設の戦術卓が置かれ、各隊員がデータパネルを前に作戦の共有を行っていた。
中央には仮設の戦術卓が置かれ、各隊員がデータパネルを前に作戦の共有を行っていた。
あおいとナダは、帰還と同時にログ提出処理を行い、システム診断を受けている。
「……あんたのブレード、エネルギー偏差0.5%。あの一撃、完全に狙ってやったろ?」
ナダが声をかけるが、あおいは無言で頷くだけだった。
「ふぅ、まあいいさ。こっちはドローン1機ロスト、俺も足がちょっと焼かれた。
けどまぁ、収穫はデカい」
けどまぁ、収穫はデカい」
戦術卓に、敵から回収したデータログの断片が投影される。
そこには破損しつつも明らかに“誰か”が残した意志のような記録があった。
そこには破損しつつも明らかに“誰か”が残した意志のような記録があった。
「……“まだ、ここにいる”?」
あおいが呟く。
その声に、周囲のノイズがかすかに反応したような気がした。
拠点ログルームにて
その声に、周囲のノイズがかすかに反応したような気がした。
拠点ログルームにて
「……へぇ、またすごいログ拾ってきたね。君たち、だいぶ深いところまで行ったんだ」
記録保管室の奥。
無人のはずの空間に、いつの間にか一人の人物がいた。
無人のはずの空間に、いつの間にか一人の人物がいた。
白と黒の非対称なフード付きジャケット。
長い前髪で片目を隠しながら、虚空に浮かぶログを指先でなぞっている。
長い前髪で片目を隠しながら、虚空に浮かぶログを指先でなぞっている。
「誰?」
あおいが警戒しつつ問うと、人物は振り返らずに答える。
「セラ=グラム。アーカイブス所属。君たちが回収したこのログ──“ミヤコ=エノモト”って名前が含まれてるね?」
「それをどうして──」
「さっきこの子が教えてくれた」
セラがそう言うと、傍らの空間に一瞬だけ、
赤髪の少女の姿をした“映像ログ”が浮かび上がり、すぐに消えた。
赤髪の少女の姿をした“映像ログ”が浮かび上がり、すぐに消えた。
ナダが目を細める。
「おい……アーカイブスの奴らは、勝手に機密に触れたら処分対象じゃなかったか?」
「だから“公式にはいない”んだよ、僕らは。記録を読み取るだけ。敵にはならないさ、君たちが正しい道を進むなら」
あおいは数秒間黙ってセラを見つめ──やがて背を向けた。
「……なら、利用する」
「うん、それが一番合理的だよ、白刃のあおいちゃん」
「……呼び方、勝手に変えるな」
「フフッ、じゃあこれから、ちょっとだけ深い話をしようか。
この“ミヤコ=エノモト”という名前が記されたログ、実は……」
この“ミヤコ=エノモト”という名前が記されたログ、実は……」
──その一言で、二人の戦いはまた一歩、核心に近づいていく。
セーフコード・シェルター、記録保管室──
蒼いホログラムがゆっくりと揺れながら、空間に一つの地図を描いていた。
蒼いホログラムがゆっくりと揺れながら、空間に一つの地図を描いていた。
「これが……“断層図書区”?」
ナダが眉をひそめる。
「古い記憶領域だよ。かつて情報保管用に使われていた仮想都市。
でも今は“データの崩落”が始まってて、ログ構造そのものが不安定らしい」
でも今は“データの崩落”が始まってて、ログ構造そのものが不安定らしい」
セラがそう言って指をひと振りすると、地図の一部がノイズまみれになる。
「このエリアで、“ミヤコ=エノモト”の記録と一致する構文キーが発信された。
……つまり、何かが再起動されたってこと」
……つまり、何かが再起動されたってこと」
あおいは静かに頷くと、ブレードを腰に固定する。
「行く。情報が残ってる可能性があるなら、確かめたい」
ナダが肩をすくめた。
「またまともじゃない道なんだろうな……でもまあ、行くさ。
ここまで来て、尻尾巻くほど安くはない」
ここまで来て、尻尾巻くほど安くはない」
セラは口元だけで笑い、フードをかぶった。
「じゃあ出発だね。“記憶の墓場”へ」
仮想空間“断層図書区”への接続
仮想空間“断層図書区”への接続
かつて壮麗だった仮想都市の残骸。
空中に浮かぶ書架。流れ続ける文字の列。崩壊したデータビルの中に、無数の本の記録が揺れていた。
空中に浮かぶ書架。流れ続ける文字の列。崩壊したデータビルの中に、無数の本の記録が揺れていた。
空は常に黄昏。時間の概念すら曖昧になっているエリア。
セラが言う。
「ここは記録が壊れる直前の“再生点”にとどまり続ける空間。
……つまり、何かが壊れかけてるところを、永遠に繰り返してる」
……つまり、何かが壊れかけてるところを、永遠に繰り返してる」
「気が滅入りそうな場所だな。気をつけろ、コードノイズが異常に高い」
その時だった。
「────アクセス者、確認。再生領域への不正侵入を検出」
無機質な声と共に、空間の奥から浮かび上がる人影。
白いローブに、光の仮面。その背後には、多重構造の書架のような“浮遊するコード式装置”。
白いローブに、光の仮面。その背後には、多重構造の書架のような“浮遊するコード式装置”。
「“記録守護者(アーカイヴ・ワーデン)”……!」
セラの声が低くなる。
「ここはただの図書空間じゃない。記録そのものが意志を持ってる……」
あおいが一歩踏み出し、ブレードを抜いた。
「戦うしかない。アクセスを許してくれないのなら──こちらの記録を、通すまで」