神骸騎ディ・カダーベルTRPG

パーソナリティ

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◆パーソナリティ



「ですから、人の顔と名前ぐらい覚えて頂きたい!
 この世の中、あなた様に無関係な者など一人とておらぬのですぞ!」

              ――――ムライプ大臣、大いに吠える―――



 ここに紹介しているのは、このイクタリ大陸に暮らす人々の一例です。
 プレイヤーキャラクターたちの関係者や、敵、シナリオで関わる人々。
 あるいはプレイヤーキャラクターそのものにしても良いでしょう。



“遺跡の守り姫” ヒユウ・ハイト

「今日は何があったの? 魔獣? 落石? 倒木? まったく、どうせならもうちょっと遠くで起きれば良いのに」
  • 15歳 女

 中立の交易地ハイトにて〈神骸騎〉スプリガンの〈魂魄〉を務める少女です。
 金髪碧眼、常に金色の額冠(コロナ・オペルタ)をつけた華奢な姫君ですが、それは見た目だけです。
 ヒユウ自身の性格も立ち居振る舞いも言動も、ごくごく普通の明るくお転婆な女の子に過ぎません。
 イクタリ帝国時代の都市遺跡を活用した小さな集落であるハイトは、定期的に市場の立つ中立地帯です。
 四方から数多くの人々が訪れる交易地ハイトの独立を維持するには、〈神骸騎〉が離れるわけにはいきません。
 たとえその仕事が、列強国が見たら目を疑うような、野良仕事まがいのものばかりだとしても、です。
 早くに両親を亡くして役目を引き継いだヒユウは、異国の人々を見て育ち、外界への憧れを募らせています。
 一方、ヒユウは自分の故郷、小さなこの都市を愛しています。そのため、無鉄砲な行動はとれません。
 来客を積極的に招いて様々な話を聞きたがるのは、ヒユウにとって、数少ない楽しみの一つなのです。
 なお額冠は契約で埋め込まれたもので、代償としてヒユウは平地で躓くほどに運動神経が欠けています。
 そんなヒユウを補佐する〈御者〉のリフドは、ヒユウが幼い頃、異国の話を期待して買った元剣闘士の若者です。
 ですがリフドは闘技場から出たことがなく、「これじゃない!」となったヒユウは、〈御者〉として扱うことにしたのだとか。



“蛮族王” カイベ・レンカ

「おめえ、面白ェな……! 決めたぜ、俺の女になれ!!」
  • 24歳 男

 〈神骸騎〉ムシキの〈御者〉を担う、金剛猿族の王です。
 筋骨隆々とした大男で、野蛮で粗野、自らの欲望を暴力で満たす事しか考えていません。
 ですがそれは カイベ・レンカが愚か者である事を意味してはいません。
 用心深く、執念深く、自らの暴力が最も効果を発揮する時、それを揮うのに躊躇が無いだけなのです。
 カイベ・レンカは遊牧の金剛猿族を率いて、定住すること無くイクタリ大陸を放浪しています。
 そしてふらりと都市国家や集落に狙い定めては、躊躇することなくこれを襲い、略奪を繰り返します。
 身内に優しいという事もないのですが、自分の財産(つまりは民と同義です)を無駄遣いする事は避けたがります。
 彼は自らの悦びのために財宝を奪い浪費するのであって、それ以外で消費するのは大嫌いなのです。
 そのため、というわけでもないでしょうが、カイベ・レンカに付き従う金剛猿族の勢力は増すばかりです。
 少なくともこの男の下にいればイクタリ帝国の末裔共に脅かされず、おこぼれに預かれるのですから。
 なおカイベ・レンカの〈魂魄〉は、何処かの王国から攫われてきた姫君であると噂されます。
 カイベ・レンカの彼女に対する執着は凄まじく、誰にも何者にも触れさせぬと豪語しているそうです。



“小覇王” スラク・ダオ

「……それでも、私はお役に立ちたいのです。父上……」
  • 13歳 女

 近年急速に版図を拡大しているダオ帝国の第一皇女です。
 儚げで幼い少女、物静かな雰囲気の彼女は、しかし類まれなる軍才の持ち主です。
 齢3つにして盤上演習で将軍を打ち負かし、6つの時には戦場で指揮を取って帝国を勝利に導きました。
 ですが、スラクの価値はそれだけです。彼女はそれ以上に、決して誰からも評価はされていません。
 父であるビケザ皇帝が〈魂魄〉に産ませたスラクは、しかし〈魂魄〉となれるほど神の血を継げなかったのです。
 “小覇王”という異名は才能を讃えたものですが、同時に蔑称でもあり、スラクにとっては屈辱的なものです。
 彼女がどんなに緻密な軍略を立てても、強力な〈神骸騎〉は容易にそれを覆してしまうのですから。
 そして彼女の采配で勝利を得たとしても、その名誉は〈神骸騎〉と〈魂魄〉のものとなるのですから。
 父に認められたいがため、周囲の評価を覆したいがため、彼女は今日も懸命に勝利を得るべく足掻いています。
 またその小さな胸の内では徐々に徐々に〈神骸騎〉と〈魂魄〉に対する劣等感と、憎悪が育ちつつあります。
 あるいはそれこそが、父ビケザが娘に対して行っている、帝王学の教育というものなのかもしれません。



“主無き〈御者〉” エイカン・ユパ

「良いか、若き〈御者〉よ。後悔のないようにな。私のようになるのではないぞ……」
  • 47歳 男

 イクタリ大陸でも屈指の技量を持った、剣術の達人です。
 大剣士とも讃えられた偉大なる〈御者〉ですが、今のエイカンに〈魂魄〉も〈神骸騎〉もありません。
 かつてのいくさの折、唯一無二の伴侶でもあったかけがえのない〈魂魄〉を、エイカンは失いました。
 それも本来であれば〈御者〉が身を挺して守るべき存在である〈魂魄〉に、逆に庇われるという形で。
 以来エイカンは〈神骸騎〉を降りて諸国を放浪し、見どころのある若者に剣を教える道を選びました。
 エイカンをぜひ〈御者〉として迎えたいという声は跡を絶ちませんが、その全てを突っぱねています。
 もはやエイカンは戦いの場に身を置く気はないのです。彼はすでにくたびれきってしまったのです。
 それでも〈御者〉に自らの業を教え込むのは、彼らに同じ思いをしてほしくないからでしょうか。
 あるいは一人でも多くの〈魂魄〉を守ることで、自身の伴侶への償いとしたいのかもしれません。
 いずれにせよ放浪するエイカンに出会ったなら、何か一つでも学びを得るため、努力すべきでしょう。
 失ってからでは、手遅れなのですから。



“冷血王” ゲオルグ・ドウラ

「……命令は二つ。進め。そして殺せ。誰一人生かしては帰すな。見敵必殺せよ」
  • 32歳 男

 イクタリ大陸でも列強と名高い、イクタリ帝国継承国家のひとつ、ドウラ公国の若き公王です。
 威風堂々たる美丈夫といった出で立ちで、国にいるより前線に、寝室よりも〈心座〉にいることが多いとされます。
 その異名は、ゲオルグと〈神骸騎〉ノスフェラトゥの冷酷かつ残忍な戦いぶりからもたらされたものです。
 祖国を守ることに命を賭しているゲオルグは、敵を誰一人として生かして帰そうとはしないのです。
 さらにその膨大な継戦時間に耐えられる〈御者〉は少なく、ゲオルグは多くの〈御者〉を使い潰すように交代させています。
 即位前の穏やかな姿を知る者たちからは、「〈神骸騎〉に心を奪われたのでは」と噂されていますが、定かではありません。
 なにしろ〈神骸騎〉から降りてなお冷静沈着なゲオルグは、国政においても公平無私な決断を行う、名君であるからです。
 果たして彼は本当に〈神骸騎〉に心奪われたのでしょうか? あるいは何かの目的で冷酷な独裁者を演じているのでしょうか?
 いずれにせよ〈神骸騎〉ノスフェラトゥが皇帝騎に由来するという豪槍を揮えば、戦場に〈神骸騎〉の神血が降り注ぎます。
 なお幾度かの領地侵犯を受けた結果、ダオ帝国を不倶戴天の敵として、常時戦争状態にある間柄です。
 ですがダオ帝国の若き――いえ、幼き天才の出現は、ドウラ公国にとって明らかな脅威となっています。
 負担の大きい〈魂魄〉は老齢では務まりません。公王が前線で槍を揮えるのは残り十年にも満たないのです。
 そのため公国の首脳部はダオ帝国に対抗するべく、周辺国に服属や貢納を迫り圧力をかけることも度々あるようです。
 ゲオルグはそうした提案を却下することもなく承認し、そして淡々と槍を研ぎ澄まし、戦場へと赴きます。
 巨像同士の戦いに巻き込まれた近隣諸国は、常に生存戦略を迫られています。



“無敵の勇者” タラレヤ・アンダマイル

「ははは、どうやら素人らしいね! 〈神骸騎〉の差が戦力の決定的差でないことを僕が教えて――あれぇーっ!?」
  • 18歳 男

 豪商アンダマイル家の若き御曹司にして、金色の〈神骸騎〉ラードーンを操る〈魂魄〉です。
 といってもタラレヤ卿はアンダマイル氏の実子ではありません。彼はアンダマイル氏の養子なのです。
 さる亡国の王族であるタラレヤ卿は、しかし〈神骸騎〉も失われ、没落し、行き場を無くしていました。
 そこをたまさか〈神骸騎〉を発見したアンダマイル氏に誘われ、彼の養子となって〈神骸騎〉を手に入れたのです。
 〈神骸騎〉ラードーンの操手となったタラレヤ卿は、〈神骸騎〉の威を借り、各方面に圧力をかけています。
 それは大恩ある義父アンダマイル氏を一国の主とし、自らの身分を取り戻し、周囲にそれを誇示するためです。
 無論そんな棍棒外交が毎度うまく行くわけもなく、他国の〈神骸騎〉と小競り合いになり、敗北する事もしばしばです。
 ですがタラレヤ卿はその度に生き延び、自らの弁舌と財貨で身代金を払い、そしてその商才でもって再起しています。
 「お調子者で小賢しいが、けして卑怯者でも恩知らずでもない」とは、彼に助太刀された幾人かの〈魂魄〉の言うところです。
 アンダマイル氏も今ではむしろその才覚を買っている節がありますが、タラレヤ卿は〈魂魄〉である事にこだわります。
 あるいは〈魂魄〉などでなく、一介の貴族か何かであれば、きっとまた違った運命が開けていたのでしょうが……。
 なお彼の〈御者〉を勤めているのは、没落時代から傍に仕えていた侍女の少女だということです。



“〈神骸騎〉探索者” ハーン・ドーフォ

「蛇は生まれつき大嫌いでな……嫌な予感がするぜ」
  • 27歳 男

 〈神骸騎〉の捜索を専門とする遺跡探索者です。
 本人に言わせるとイクタリ帝国時代を専門に扱う学者、賢者らしいですが、その出で立ちは傭兵のそれです。
 気障っぽくて無鉄砲、礼儀作法のなっていない山師なのですが、ハーンの知識と実績は驚くべきものです。
 一柱見つければ生涯遊んで暮らせるという〈神骸騎〉を、少なくとも六柱は発見しているというのですから。
 ですがハーンの無軌道な暮らしぶりが改まった気配はありません。手にした財貨は何処に行ったのでしょう?
 博打の悪癖で全てスッてしまったとか、あるいは商家に膨大な借金があって支払うのに使ったとか言われます。
 ただ、ハーンが侵略戦争を起こすような国家に〈神骸騎〉を引き渡したという噂は、聞いたことがありません。
 反骨精神豊富なハーンは、むしろそういう手合が大嫌いで、逆に鼻を明かしてやろうと躍起になるのです。
 そしていつだって失われた〈神骸騎〉の探索や再発見は、戦火の火種となるものです。
 ハーンと関わってしまったならば、遠からずトラブルに巻き込まれることを、覚悟しておくべきでしょう。



“忍びの者” カグラ

「我らは闇に生まれ、闇に消える。それがさだめ。……だが、しかし……」
  • 18歳 女

 ノザルキ衆と呼ばれる一族、その頭領あるいは顔役として現れる娘です。
 黒髪に鋭い目つき、黒装束の異人ですが、彼女の容貌ははっきりとわかりません。
 ノザルキ衆は、いつの頃からかイクタリ大陸の歴史に現れた、闇の一族です。
 一説ではそのルーツは外洋からの漂流者だともいわれますが、真偽は不明です。
 ノザルキ衆は一見して、ただの行商人の集団に思えます。ですがその実態は違います。
 各地の情報を集めて提供し、時には暗殺といった汚れ仕事を請け負う隠密集団なのです。
 ノザルキ衆はその全員が魔獣なのではと噂されるほど、異様なまでに卓越した体術の使い手です。
 彼らは毒物や暗器に通じ、恩は倍にして返すが恨みは十倍にして返すと言われます。
 ノザルキ衆を迫害したことで、勝てるはずの戦に大敗を喫した国家さえ存在します。
 戦場で〈神骸騎〉に敵うものなど存在しませんが、平時の〈魂魄〉を殺害することは技術次第なのですから。
 そのため丸抱えしたがる国も多いですが、今の所ノザルキ衆は、どこの国にも属してません。
 どこにも属さず、それでも滅ぼされずにやっていけてるくらいに、ノザルキ衆は立ち回りがうまいのです。
 それにノザルキ衆が何を求めているのか、誰も知りません。少なくとも、金銭ではないことは確かです
 もしノザルキ衆を取りこめたら、その国は間違いなく飛躍することでしょう。
 何よりも彼らに主として認められるだけの、指導者がいるという証拠なのですから。



“彼方からの少女” ザマ・ショウコ

「だから、違うってば。私の名前は翔子で、座間は名字! 逆なの!」
  • 17歳 女

 ザマは光の柱と共に突如としてイクタリ大陸に現れた少女です。
 黒の長髪に澄んだ黒瞳、その肌はきめ細やかで、髪は艷やか、体型も見事に均整が取れています。
 見たこともない上等な衣服を身に纏ったザマは、“空の樹”なる場所からやって来たそうです。
 ですが光に包まれた瞬間、気がついたらイクタリ大陸にいたという彼女は、混乱の真っ只中です。
 右も左もわからず、知っている人もおらず、頼れるものも何もないからです。
 ですがこうした〈まれびと(ウェクトル)〉は優れた〈魂魄〉、〈御者〉になる素質を秘めている事がほとんどです。
 事実ザマはリクジョウなる武術を習っていたという事で、極めて俊敏な身のこなしをしています。
 そのため、ザマの存在を巡って戦乱が巻き起こる可能性は少なくないでしょう。
 ちなみに特技は歌で、耳慣れぬ異国の歌をよく口ずさんでいますが、素晴らしい美声の持ち主です。



“内務大臣” ムライプ・ミスターニ

「ああ、また軍費がかさむ! いっそ占領地から収奪でもすれば良いのだ!」
  • 53歳 男

 一国の大臣を務める、口ひげが印象的な恰幅の良い男性です。
 大臣や宰相という言葉を思い浮かべた時に十中八九浮かぶイメージを、そのまま形にしたような男です。
 ミスターニ家は代々要人を輩出してきた名門の家柄で、ムライプもその伝統に則って大臣となりました。
 仕事ぶりは悪くはありませんが、とかく押しが強くて口が汚く、神経質で何かと指図をしがちです。
 そのため嫌う人も多く、悪い噂も多々あります。
 賄賂を取っているだとか、政敵を失脚させるために汚い手を使ったとか、敵国と通じているだとか。
 逆になんだかんだ国が回っているのは、重鎮たる彼の地道な仕事ぶりだと評価する声もあります。
 ……どちらが彼の真実なのか、どちらも彼の真実なのか。権力というものは複雑怪奇です。



“紋章官” フィオ・サームズ

「たわけた事を仰らないでください。陛下の〈神骸騎〉であれば鎧袖一触。三手で片付けられるかと」
  • 23歳 女

 氷のような美貌と冷静な態度、そして博識で知られる紋章官の才女です。
 紋章官というのは各国の情報や〈神骸騎〉の性能を網羅し、これを分析する役職のことです。
 フィオはその恐るべき記憶力で、まるで見てきたかのようにそれらの知識をすらすらと述べる事ができます。
 また礼儀作法、各種学問、国際情勢などなど、何処かでとてつもなく高度な教育を受けたとしか思えない人物です。
 そのため亡国の姫君、遺臣、あるいは〈魂魄〉ではないかと色々噂されますが、本人は特に何も語りません。
 そしてフィオのその態度に文句を言う者はいません。そして仕官も叶いました。
 何故ならばフィオ・サームズという女性は極めて有能であるからです。
 そして過去を語りたくない者は、このイクタリ大陸では珍しくもないのです。
 親しくなれば、あるいは何かを教えてくれるかもしれません。
 ちなみに自宅で猫だか痩せた老犬だかを飼っているという噂もありますが、これも真偽は不明です。



“騎士団長” オリサ・ヤコス

「戦争とは非情なものです。故、常に二手、三手と先を読まねば……」
  • 25歳 男?

 若くして一国の騎士団長を務め、天才的な剣技の持ち主として知られる、仮面の騎士です。
 戦乱の中で火傷を負ったとしてその顔を隠していますが、仮面から覗く顔立ちは極めて整っています。
 また文武両道、物腰も穏やかで女性に優しく、自らの強さを驕ることもないため、若い娘の多くが熱を上げています。
 〈御者〉となれば一騎当千の戦働きをするとの評判で、〈御者〉の座を狙う人々からは嫉妬と羨望を集めています。
 つまり絵に描いたように完璧な理想の騎士なのですが、それ故に、オリサに不信感を抱く者もいます。
 オリサはあまりにも隙がなく、また彼(彼女?)自身が何を考えているのか、まるで表に出ないのです。
 噂ではオリサの素顔を見た者が戦場で消えたとか、その顔は無傷で亡国の王族に似ていたとかも囁かれます。
 ですが、オリサに嫉妬する者たちの囁く噂である以上、その信憑性など無いも同然でしょう。
 その心と顔を仮面の下に隠したまま、オリサはただただ、忠勇たる一の騎士として主君に仕えています。



“神官長” イズラ・サン

「神代より、我々は多くを失いました。こんな小さな部品一つさえ、私たちは満足に直すことはできないのです」
  • 46歳 男

 国の神殿と、〈神骸騎〉にまつわる数々の秘技を預かる神官長です。
 やかまし屋で、〈神骸騎〉に関わることは神殿の領分でもあるとして、時には戦争にさえ口を挟みます。
 〈神骸騎〉の技術についての噂などを聞くと、何がなんでも手に入れようと、宗教的立場から進出を訴えさえもします。
 その〈神骸騎〉を修繕する腕前と秘技の多くを秘匿する立場から、誰も表立ってイズラに強く反発することができません。
 ですが、イズラ・サンとて昔は理想と信仰心篤き、善良な神官であったはずなのです。
 彼は若かりし頃から優秀で知られ、これまで古文書からいくつかの古代技術を解読することに成功してきました。
 しかし、だからこそイズラ・サンは理解してしまいました。
 戦乱により〈神骸騎〉にまつわる技術がどれほど喪われ、その仕組みへの理解が消えた『儀式』と化したのかを。
 そしてそれ故に、この貴重な〈神骸騎〉にまつわる技術技法をこれ以上失わせるわけにはいかないという事を。
 イズラは以来、どこか変わってしまいました。人よりも〈神骸騎〉を尊重するようになってしまったのです。
 貴重な〈神骸騎〉が壊れてはいけない。そして戦になったとしても〈神骸騎〉を保護せねばならない。
 ですが「たとえ〈魂魄〉や〈御者〉が犠牲になっても」という思いがよぎる度に、イズラは自らの罪深さにおののきます。
 イズラは今日も悲しみを帯びた瞳で、〈神骸騎〉を修繕し、〈魂魄〉に対して『儀式』を執り行うでしょう。
 そしてまた、イズラは祈ります。イクタリ大陸が平和に辿り着き、再び多くの技術が蘇る日を。
 なおイズラ神官長の身辺には不穏な噂が常につきまとい、護衛が側を離れることはありません。
 〈神骸騎〉の知識は国家間のパワーバランスを動かす重大機密であり、彼の身柄を狙う勢力は多いためです。



“神官” エタタヤ・サン

「どんな〈神骸騎〉でも、物語を持つ者には歯が立ちません。物語を持っていることが、もっとも大事なのです」
  • 19歳 女

 国の歴史書、年代記編纂の役目を担っている若き女性神官です。
 イズラ・サンの娘ではあるのですが、父に似ず柔和で穏やかな人柄で、父同様に芯の強い女性です。
 普段は書庫にこもっているか神殿で奉仕活動をしているのですが、その姿に心奪われる男性も多いとか。
 また話し好きでもあるため、子どもたちに古い〈神骸騎〉に纏わる物語を聞かせるところも良く見られます。
 とはいえ、エタタヤについて特筆すべきところはその人柄や、生立ち、美しさではありません。
 彼女の持つ膨大な、各国の歴史、伝承、戦史、そして〈神骸騎〉の伝説などの知識です。
 一度見聞きしたり読んだ物語については決して忘れない彼女の頭脳は、文字通り財宝にも匹敵するでしょう。
 エタタヤは語ります。〈神骸騎〉ではなく、その物語――〈魂魄〉と〈御者〉が何を成すかこそが大事なのだと。
 そしてもしエタタヤと関わる事があれば、それは間違いなく幸運だといえます。
 あなたのことを歴史に書き記すのは、間違いなく彼女の筆先なのですから。



“鍛冶師” ラカワ・ダイ

「ぼさっとすんなァ! グズグズしてるやつァ、簀巻きにして河ァ叩き込むぞ!!」
  • 65歳 男

 この国一番の鍛冶師であり、〈神骸騎〉の武具の数々を手掛けた名工です。
 ラカワは頑固一徹、気に入った相手でなくば決して仕事を引き受けない偏屈な老人です。
 その一方で腕前と技術は天才的であり、彼を慕う徒弟や、彼を贔屓にする客は数多く存在します。
 といってもそんな相手でさえ、少しでも気に入らないところがあれば怒鳴り散らしてしまうのですが。
 ラカワが追い求めているのは究極の〈神骸騎〉とも言うべき、完成された〈神骸騎〉の物の具なのです。
 それ故にラガワには心残り、悔やんでも悔やみきれない過去の汚点があります。
 若かりし頃、ラカワは生活苦から安請け合いして、不出来な〈神骸騎〉の武具を世に出してしまいました。
 それらの〈神骸騎〉は今日では「名工ラカワの武具を持つ」として、武勲を讃えられるほどに著名です。
 ラカワにはそれが死んでしまいたくなるほどの屈辱であり、どうにかその装備を破壊したいと思っています。



“城下の少年” ペッカ・ミワナ

「なぁーなぁー! オレでも〈御者〉になれるかなぁー?」
  • 11歳 男

 城下街に暮らす、ごくごく普通の少年です。父は番兵、母は城の洗濯夫をしています。
 父がいて母がいて友達がいて、戦国乱世と言われてもピンと来ず、ペッカは〈神骸騎〉と〈御者〉にあこがれています。
 しょっちゅう両親や兵士の目を盗んでは城の中に忍び込み、〈神骸騎〉を眺めては、つまみ出されています。
 といっても別に悪さをするわけでもないので、兵士たちからも「またペッカか」と呆れられているのが実情ですが。
 そんなわけで使用人の大半と顔見知りで目端が利くペッカは、城内に流れる噂のほとんどを知っています。
 そしてもちろん〈魂魄〉や〈御者〉にあこがれているペッカのことです、聞けば知っていることは何でも教えてくれるでしょう。
 ですが、こうした変わらぬ毎日があとどれほど続くのかを、ペッカは考えた事もありません。
 いつか本当の戦争を知った時、ペッカは自分がどれだけ幸福であったかを理解する事になります。
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