神骸騎ディ・カダーベルTRPG

ノスフェラトゥ戦記第二話:リアピオンの嵐

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◆第二話:リアピオンの嵐


 著:凪ノ香


 本シナリオのリプレイはウェブ、同人誌、動画等々にて公開して構いません。
 その際は二次創作についてのガイドラインに従ってください。



○シナリオ概要

 ゲオルグ公の死を端緒に激化したダオ帝国とドウラ公国の戦は、突然の休戦を迎えた。
 四年に一度のリアピオン大祭による三ヶ月の平和期間、エケテイリアの宣言が為されたためだ。
 権威ある大陸列強国として、ドウラ公国もダオ帝国も、この休戦勧告を無視することはできなかった。

 公国の首脳部が立て直しに奔走する中、一行はリアピオン大祭に出場することになる。
 ドウラ公国の象徴たる〈神骸騎〉ノスフェラトゥが大打撃を受けたことは、もはや周知の事実である。
 休戦に助けられたとはいえ、公国の影響下にある国々の動揺は続いている。
 新たな公王はイクタリ大陸の諸国に向け、〈神骸騎〉ノスフェラトゥの健在を示さねばならない。

 ――不死の伝説を継ぐ〈神骸騎〉たちが、いま大祭に嵐を呼ぶ。





○GM向けガイド

 今話は〈神骸騎〉を用いた戦争ではなく、奉納の競技試合に出場するシナリオである。
 パーティに対し、とくに騎士道精神にのっとった誉れある振る舞いが推奨されることを強調しよう。

 またクライマックスシーンでは、多数の〈神骸騎〉が敵として登場する。
《一騎当千》や《掃射》など、範囲攻撃戦技を取得している〈神骸騎〉がいると有利だろうと助言すること。




○PC1~3オープニングフェイズ:エケテイリア


 ドウラ公国、首都エポリナの公城。
 その大会議室には、伝説的な〈邪神騎〉の胸部装甲を槍で貫く〈皇帝騎〉の大絵画が飾られている。

 ダオ帝国の軍勢を打ち破ってより、半月後のこと。
 会議室には、公国の重鎮が居並んでいた。
 前話で捕らえた捕虜などがいればその身代金の支払いなどの交渉も上手く進み、現在、公国と帝国は休戦状態にある。

 そして現在の議題は、リアピオン闘技場の領有国である、アイオーリア=トロヤ連合王国より宣告された競技会の開催。
 それに伴う三ヶ月の平和休戦期間、エケテイリアについてだ。

※アイオーリア=トロヤ連合王国について
 サンプルシナリオ「亡命の戦火」に登場したPC所属国が手を携えて発展した四年後の姿という設定である。
 プレイ経験があるプレイヤーがいれば、当時のキャラクターの名前などを出してみるのも良いだろう。

(GM、全員に非搭乗状態での登場を促す)

“紋章官”フィオ・サームズ
「――と、以上のように停戦処理は進行中です」
「しかしゲオルグ公の死に伴う服属国の動揺は続いており……」

“内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「ぐむむ! 我々は勝ったではないか! 帝国の侵攻を押し留め、休戦期間まで粘り――」

“神官長”イズラ・サン
「そう、粘りきりました。それも奇跡的に……それによって怖れていた離反は起こりませんでした」
「しかし得難くはあれ、一度の勝利。周囲から見れば、幸運か実力かは判然としますまい」

“内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「神殿長! 公王の御前で、不敬であるぞ!」

 パーティの面前では公国の首脳部が議論をしてる。
 争点は服属国の動揺が続いており、立ち位置を決めかねた国々が、貢納や兵力の供出を理由をつけて渋っている点だ。
 それに対して――

“紋章官”フィオ・サームズ
「ダオ帝国は、長年の敵対国であったマヌ=カーセ連邦との国境沿いに物資を集積している様子」
「恐らく平和休戦が終わり次第、ユジン皇子の〈神骸騎〉アイオーンを総大将として、決定的な攻勢を企図している模様です」

“内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「戦線を整理するつもりか!? マヌ=カーセ連邦は近年、政情不安が著しい!」
「ゲオルグ公すら討ち取ったアイオーンが乗り込んできては、おそらくはひとたまりも……!」

“神官長”イズラ・サン
「そうして連邦が瓦解すれば、帝国はマヌ=カーセ側に多数の〈神骸騎〉を貼り付けておく必要がなくなり……」
「返す刀で斬られるのは、我々というわけですな」

“内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「神殿長! もう少し歯に絹を着せられよ!」

 首脳部の面々がざわめき、あれこれと議論をしているが、決着の様子は見えない。
 公国の危機は続いている――

“紋章官”フィオ・サームズ
「――公王陛下、いかが致しましょう?」

 そんな中、フィオ・サームズはPCたちに冷徹な視線を向けてくる。

 今回のシナリオは「パーティが大祭に出場し、ドウラ公国の健在を喧伝する」というものだ。
 大祭は極めて多くの国々から、雑多な人々が押し寄せる一大行事であるから、
「在野の強力な〈神骸騎〉乗りと面識を得られる」「諸国の情勢を集めることができる」
 といった利点も存在することを、GMはパーティに対して説明しよう。

 その上で、誰がそれを提案し、どのような流れで首脳部に受け入れられるのか。
 現在のドウラ公国がどのような国であるのか、それを決めるのはゲームをプレイしているあなたたちだ。


 以下にパーティが大祭への出場を提案した場合のNPCの反応例を記載する。
 この通りにする必要はないが、GMは描写の参考にして良い。

“内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「なんと無茶な!? リアピオン大祭は、無数の策謀と在野の強者が入り乱れる混沌のるつぼ!」
「もし在野の〈神骸騎〉に遅れを取るようなことあらば、名誉の失墜は確実ですぞ!?」

“神官長”イズラ・サン
「しかし、賭けの一つにも打って出ねば、もはや公国に待つのは順当な破滅」
「大祭への出場は、確かに妙手やもしれませぬ……」

“紋章官”フィオ・サームズ
「それでは、アイオーリア=トロヤ連合王国に急ぎの書簡を」
「今年の出場〈神骸騎〉は、ノスフェラトゥである、と――――」


 首脳部は議論の末にパーティの提案を承認し、PC1~3は大祭の出場選手として登録される。
 国威の象徴であるノスフェラトゥを駆るPC1は個人戦および団体戦、PC2と3は団体戦への出場予定だ。

 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン1:アイオーリアの宿所


 列強ドウラ公国から訪問してきた一行のために、アイオーリア=トロヤ連合王国はみごとな宿所を割り振った。
 部屋の窓を開けば潮風が吹き抜け、大祭に賑わう街並みと、色とりどりの帆をかけて行き交う船が見える。

(GM、全員に非搭乗状態での登場を促す)

“神官”エタタヤ・サン
「そもそもリアピオン大祭については、どこまでご存知でしょうか?」

 使用人たちが宿で荷解きをする間、随員のエタタヤが、リアピオン大祭について解説を行う。
 GMはパーティに「◆シナリオフック」のリアピオン大祭についての項目を参照するよう要請しよう。

「……といった由来から殺生は禁じられ、武装も非殺傷用のものの使用が徹底されます。争いごともご法度ですね」
「しかし建前がそうあるとはいえ、国家の要人が多数集まるのです。刺客などが放たれる事件もままあります」

「主催であるアイオーリア=トロヤ連合王国もこれには警戒し、争いごとには厳罰を以って対応しておりますが――」
「なにぶんこのようなお祭り騒ぎです、対応に限度があるのは致し方のないことでしょう」

「ただ幸いにして、陛下はお顔をあまり知られておりません。改修されたノスフェラトゥの姿もです」
「〈神骸騎〉競技の開催までには数日の間があります。あちこち見て回り、見聞を広めるのも良いことでしょうが――」
「ドウラ公国の公王であるなどとは、むやみに名乗られませんよう」

 GMはここから個別行動が増えるため、パーティ間の会話があれば今のうちに行うよう促すこと。
 パーティの会話が一段落つき次第、シーンを終了する。

 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン2:運命の出会い


※このシナリオでは、スラク皇女とPC1(〈御者〉あるいは〈魂魄〉、両方でもよい)は互いの正体を知らぬまま出会い、親交を深める。
 そのような話であると説明をした上で、GMはPC1と、希望の展開についてよく話し合おう。
 以下に示すのは展開の一例であり、PC1の設定に応じてGMは自由に状況を調整して良い。


 リアピオン大祭の〈神骸騎〉競技への出場に備え、人々は〈神骸騎〉の整備や最終点検に余念がない。
 騒ぎを起こさぬように機体各所を布で覆ったノスフェラトゥもまた、あなたの点検をうけている途中だ――
 そんなときだ、あなたに声をかけてくる少女が現れたのは。

(GM、PC1に非搭乗状態での登場を促す)

  • 謎の少女
「はぁっ、はぁっ……! っ、ねえ、あなた! どこかの国の〈魂魄〉よねっ?」
「ごめんなさい、追われてるの! ちょっと匿って頂戴――!」

 息を切らせてPC1の腕をつかんだのは、儚げで聡明そうな雰囲気の、明らかに高貴な身分の少女だ。
 少女を機体の影や〈心座〉などに隠すと、「姫さま!?」「姫さま!? 殿下!? どちらに!」などと叫びつつ、幾人かが駆けてゆく。
 どうやら刺客騒ぎなどではないようだ。

  • 謎の少女
「はぁっ、はぁっ……もう、兄さまったらいい加減な! なーにが『脱走なら慣れている』よ、まったくもう!」
「……あ、ごめんなさいね。どこの国の方かは存じませんけど、〈神骸騎〉の整備中に匿ってもらうなんて、本当に不躾なことを」
「もちろん私も、〈神骸騎〉に機密が多いことは存じています。機体や部品はなるべく見ないようにしますし、誓って覚えません」

「ただ……ええ、はい。 はい、だいたい聞いた通りの事情でして」
「もう少しの間だけ匿ってもらえるとありがたいのですけれど……」

「いいんですか? ご親切に、ありがとうございます――」
「あ、お互い、名乗ったり詮索したりはやめておきましょうか……ひょっとすると、国同士の怨恨があるかもしれません」
「もし親兄弟の仇だったりしたら、気まずいなんてものじゃないですしね」

「ええと、そうですね。それじゃあ私は……ハオ! ハオちゃんでどうでしょう? もちろん偽名です!」
「それとも貴族っぽく、“リボンの君”とかでも良いですよ?」
「あなたのことは、なんて呼んだらいいですか?」

 PC1が名乗り返したところで、シーンを終了する。
 GMはPC1のプレイヤーには、「謎の少女」と過ごす楽しい一日のプランを考えてもらおう。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。


○ミドルフェイズ シーン3:望まぬ再会


 腕に絡む刺青も鮮やかな、蛮族と思しき風体の女がいる。
 かと思えば凛々しいマントを羽織った〈御者〉らしき男もいる。
 フードを目深に被った人々は、いずこの国の貴族だろうか。
 遍歴の〈魂魄〉や〈御者〉が集まるという、アイオーリアの酒場。
 情報収集のためにそこを訪れた貴方は、目を見張ることになる。

(GM、PC2に非搭乗状態での登場を促す)

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「ああ、では段取りはそのように。後日、迎えを差し向けよう……では」
「…………ん? なんと。これは驚いたな、PC2殿ではないか」

 PC2が見つけたのは、テーブルの一つで〈御者〉らしき男と何らかの交渉を行っていた、ユジン・ダオだ。
 彼の〈魂魄〉である、瞳を隠した物静かな女、ラルヴァも、その傍に寄り添っている。
 なにやら因縁があるとみた精強な〈御者〉らしき男は、目礼するとすぐにその場を立ち去った。

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「……いやはや、まずい居合わせ方をしてしまったな。私に斬られる理由がありすぎる」
「他の場で遭遇したのであれば、仇討ちの決闘でもなんでも受けて立てたのだが――」

  • “腕輪の君”ラルヴァ
「ユジンさま。エケテイリアの休戦を蔑ろにするような真似はおやめください」
「PC2さまも……アイオーリア王の顔を立て、どうかこの場ではご堪忍を」

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「無論、そのような蛮行はしないさ、我が君」
「……どうだろう、PC2殿。よろしければ一献、付き合っていただけないか?」
「ゲオルグ公は偉大な敵手であった。彼の話を聞かせて頂きたい」

 PC2はこの申し出にどのように対応しても良い。
 ユジン・ダオの申し出に応じて席につくのであれば、ユジン皇子は嬉しげに笑い、ゲオルグ公を称えて杯を掲げる。
 主君の仇と同席はできないと断る場合、ユジン皇子はPC2のその忠節を称賛する。

 いずれにせよ両者の会話が一段落ついたあたりで……ふと、PC2は不審な気配に気づく。
 先程見かけたフードを目深に被った集団が、ユジン・ダオとラルヴァに剣呑な視線を向け――そして、刃を抜き放った!
 ここでシーンを終了する。

 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン4:選択の時


 シーン3の直後からのシーンとなる。
 突然の抜刀に酒場は騒然とし、人々は慌てて逃げたり壁際に避難をはじめる。

 フードを目深に被った刺客たちは、主にラルヴァを狙うようにして剣や小型の弩を構えている。
 ユジン皇子も腰の剣を抜き、ラルヴァを守るように身構えた。

(GM、PC2に非搭乗状態での登場を促す)

 PC2はこの状況に対し、自由に行動を考えることができる。
 想定されるいくつかの行動を列挙するため、GMはこれに応じて対応しよう。

1.刺客たちに加担してユジン皇子を襲う
 競技会を汚されたアイオーリア王が激怒し、出場資格を取り消される公算が高い。
 列強の臣下として行ってはならない行為だと断言しよう。

2.状況を無視して戦闘から離脱する
 ユジン皇子は当然のようにこれを責めない。
 刺客たちもこれを追わないため、自由に離脱できる。

3.ユジン皇子に助太刀し、刺客と相対する
 末尾掲載の「エネミーデータ:【刺客の群れ】」ひとつと「生身戦」を行うこと。
 ユジン皇子と背中合わせに戦い、刺客を退ける形になる。
 この戦闘に勝利した場合、PC2は【応援ポイント】(※詳細後述)を1つ獲得する。
 敗北した場合、ユジン皇子が敵を倒すため命の危険はないが、【応援ポイント】は得られない。

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「くっ!」

  • “腕輪の君”ラルヴァ
「ユジンさま! ……っ!」

 ラルヴァが刺客の気を引くように走り出す。
 幾つもの太矢が、その身に突き立つように見え……次の瞬間、その体にノイズが走り、掻き消えた。
〈神骸騎〉に縛られた魂魄が時折使用する、立体映像装置だ。
 驚きに目を見張る刺客たちに向け、怒りに燃えたユジンが斬りかかる。

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「貴様ら……ッ!」

 刺客の多くが斬り伏せられたところで、呼子笛を慣らしつつアイオーリアの衛兵たちが駆けてくる。
 PC2がユジンに加勢していた場合、以下のセリフを追加しよう。

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ

「我が君……ラルヴァは、〈神骸騎〉に縛られている身なのだ」
「“腕輪の君”というのは、そのままの意味でね」
「彼女に町の賑わいを、見せてやりたかったのだが……」

 そう言ってユジンは、気落ちしたように左手の腕輪に触れる。
 古代の機械装置と思しきそれが、ラルヴァの映像を投影しているのだろう。

「そしてPC2殿。仇の身でありながら、命を助けられてしまったな」
「……助太刀、心より感謝する。此度の一件、公国には累が及ばぬように処理することを、我が名に誓おう」

 刺客の正体を探る場合、どうやらマヌ=カーセ連邦の手の者のようだと分かる。
 エケテイリア後のアイオーンの襲来を怖れ、ラルヴァあるいはユジンの暗殺によってそれを回避しようとしたのだと推察できる。

 PC2とユジンの会話が一段落したところで、シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン5:忍法シチホウデ


 大祭に賑わう露天市場には、様々な商人が商品を広げ店を開いている。
 そんな中、目立たぬ隅の一角に、占いの看板を掲げる店があった。
 ……あなたの目当ては、そこだ。

(GM、PC3に非搭乗状態での登場を促す)

 店に入ると、ヴェールを被った黒装束の若い女がいる。
 “忍びの者”カグラだ。GMはPC3と相談し、なぜ知己なのかを決定すること。

  • “忍びの者”カグラ
「ほう……PC3か。久しぶりだな」
「今はドウラ公国に仕えているのだったか? 物好きなことだ」

「何の情報が欲しい、〈神骸騎〉競技か? 有力な優勝候補の〈神骸騎〉は何柱かいるぞ」
「ああそうだ。優勝候補にはないが、あの“無敵の勇者”も参戦している」
「……予想屋によればヤツが大穴だそうだぞ、賭けてみるか? ククっ」

 カグラがその言葉を冗談めかして語るのか、刺々しく語るのかはPC3との関係次第だ。
 しかし、PC3が報酬を提示すれば、カグラは多くの情報を語る。

「マヌ=カーセ連邦は、相当に追い込まれているようだな」
「ユジン皇子と、〈魂魄〉ラルヴァの暗殺を計画しているようだ」
「我々の側にも、奴らを殺してくれぬものかと依頼がきた」

「ああ、その依頼は断ったさ」
「我々とて、リアピオン大祭で殺生に及ぶほど向こう見ずではない」

「しかし……ユジン・ダオ皇子、あれはどうも不気味だな」
「一見して、騎士道精神あふれる見事な皇子ぶりだが……」
「私が見たところ、そのふるまいで人を酔わせ、己の裁量で動かせる手勢を集めているフシがある」

「だが読めん。いったい、何のためだ?」
「庶子とはいえ第一皇子、しかも〈御者〉としてあの活躍だ……順当に行けば帝国の次の冠はやつのものだろう?」
「兄妹仲も良好だとも聞くが、後継者争いに備えているのか、皇位継承後の側近を求めているのか……」
「PC3、お前はどう見る?」

 PC3とカグラの会話が一段落したところで、「お頭!」と占い屋に駆け込んでくる男が現れる。
 シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン6:忍の恩返し


  • ノザルキ衆
「お頭! 大変です、が……」

(GM、PC3に非搭乗状態での登場を促す)

  • “忍びの者”カグラ
「ああ、コイツは私の知人だ。聞かれて構わない、話せ」

  • ノザルキ衆
「今しがたマヌ=カーセ連邦の刺客がユジン皇子に襲撃を仕掛けて……返り討ちにあったそうです」

(PC2が助太刀していた場合)
「しかもドウラ公国の〈神骸騎〉乗りが居合わせて、多勢に無勢のユジン皇子を見過ごせず、主君の仇だってぇのに助太刀したとか」
「アイオーリアの市民たち、『なんという義侠心』『主の名を汚さぬ忠臣』と、すっかりドウラ公国びいきの様子です」

  • ノザルキ衆
「ただ、困ったことにどうも、ウチも関与が疑われているようでして」
「衛兵に若い者が何人かしょっぴかれちまいました」

  • “忍びの者”カグラ
「む……」

 PC3はドウラ公国の貴重な〈魂魄〉である。
 外交筋から上手く申し入れれば、無実のノザルキ衆を解放することはできるだろうと、GMは説明すること。
 PC3がそれについて提案した場合、カグラはその申し出を受け入れて感謝する。

  • “忍びの者”カグラ
「……すまぬ。借りを作ってしまったな」
「我々は恩を返す。さしあたっては――大祭の期間中、ドウラ公国の良い噂を広めておこう」

 この手助けを行った場合、PC3は【応援ポイント】(※詳細後述)を1つ獲得する。

 PC3とカグラの会話が一段落したところで、シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン7:トロヤの休日


(GM、PC1に非搭乗状態での登場を促す)

 GMはプレイヤーと相談し、「謎の少女」とPC1の、楽しい大祭見物を演出しよう。
 御者競技や、騎馬競技などを観戦しても良い。
 何か美味しいものを食べ歩いても良いし、アイオーリアの名所を見て回っても良い。
 自由に演出したうえで、最後に夕日のなかで二人が別れるシーンを描写する。

  • 謎の少女
「……ありがと。今日は一日、楽しかった」
「本当に楽しかった……こんなに笑ったの、何年ぶりかしら」
「その……コレ、私のリボン。今日の記念に、よければ持っておいて」

 謎の少女は髪を括っていた赤いリボンをほどくと、はにかむようにPC1にそれを渡す。

「あなたも大祭で、〈神骸騎〉競技を戦うのでしょう?」
「栄光を勝ち取れるよう、ちゃんとお祈りしておくから。貴賓席から、ちゃんと見ているから――」
「だから……もし勝てたら、表彰の時、それを掲げて?」

「あなたが誰だか、私に教えてほしいの」
「そうしたら、きっといつか……お父さまやお兄さまに頼んで、あなたの国を訪ねにいくわ」
「ね、約束よ? また会いましょう?」

 無事にPC1が謎の少女と良好な関係を築けた場合、【応援ポイント】(※詳細後述)を1つ獲得する。

 会話が一段落したところで、シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○「ミドルフェイズ シーン7」前後に関する補足

 PLたちが〈魂魄〉と〈御者〉の関係性をより演出したい場合。
 あるいは絆ダイスが不足していると思われる場合場合、更に増補的なシーンを差し込んでも構わない。

 これは個別のシーンでも構わないし、全体のシーンでも構わない。
 GMは柔軟に対応し、シーン数を増減させていこう。
 また、もしそこでPCたちが誉れある行動を行った場合、GMは【応援ポイント】を加算しても良い。


○ミドルフェイズ シーン8:出場


 リアピオン大祭の〈神骸騎〉競技の開催が宣言される。
 大闘技場に〈神骸騎〉たちが居並び、辺りに祝福の花びらが撒き散らされる。

(GM、PC1~3に搭乗状態での登場を促す)

 その中でも、観戦者たちの話題をさらっているのは、やはり〈神骸騎〉ノスフェラトゥだ。
 大国の国威を背負う〈神骸騎〉の出場は、リアピオン大祭でもなかなか見られない光景だ。

「あれが〈神骸騎〉ノスフェラトゥ……!」
「ドウラ公国の……」
「ダオ帝国と戦い続ける不死身の〈神骸騎〉……」
「たとえ壊しても蘇るって噂だぜ」

 そんな中、パーティに隣り合った位置にいる〈神骸騎〉が念話機越しに話しかけてくる。


“無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「やあ、ドウラ公国のノスフェラトゥ! すっかり、噂のひとだね!」
「でも君、〈神骸騎〉を受け継いだばかりだろう――?」

「リアピオン大祭ってのはね、素人が乗り込んでいきなり大活躍できるような甘いものじゃない……」
「この僕、“無敵の勇者”たるタラレヤ・アンダマイルが、君に敗北を教えてあげようじゃないか!」
「フフ、フハハ! ハァッハッハッハッ!」

 会話が一段落したところで、シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。


 加えてGMは、これまで得てきた【応援ポイント】についてパーティに説明すること。
 これはリアピオン大祭に限って使用できるパーティ共有のリソースであり、[絆ダイス]と同様の効果を発揮する。
 つまり、1消費するごとに判定に用いるダイスを1つ増やすことができる。
 [絆ダイス]同様、【応援ポイント】も、結果が確定する前ならば、判定後に追加使用を宣言することができる。

 ここまで順調に進めている場合、【応援ポイント】は3つあるはずだ。
 PC2がユジン皇子に助太刀しなかった、あるいは失敗した場合、2つかもしれない。

 GMは【応援ポイント】の残数を確認すること。
 このポイントは、読んでの通り競技試合における観客からの応援の度合いを表現している。
【応援ポイント】の使用を演出する必要がある場合、GMは演出として観客席を沸き立たせよう。



○ミドルフェイズ シーン9:個人戦決勝戦


  • 司会
「強い! 強い強い! ドウラ公国のノスフェラトゥ、強い!」
「これまでウアテマの疾風射手も、イコダイケの魔剣使いも、チョーマの鉄球使いすら鎧袖一触――ッ!」
「まさかまさかの展開だ! これまで競技会への参戦はありませんでしたが、圧倒的! 圧倒的です!」
「嘘だろう!? まさか! どよめきが止まりません! 本当に、この〈神骸騎〉は不死無敵なのかッ!?」

 司会が興奮したように叫んでいる。
 つい先程、PC1のノスフェラトゥが準決勝の相手を打倒したばかりだ。
 その興奮が冷めやらず、会場は熱狂の渦にある。

(GM、PC1に搭乗状態での登場を促す。またPC2~3は非搭乗状態で観客席に登場してよい)

  • 司会
「いよいよ決勝戦です! この二柱が栄冠を争うなど、誰が予想したでしょう!」
「ドウラ公国の〈神骸騎〉、“死なず”のノスフェラトゥ――!」
「そしてもう一方は……“無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル――!」

 闘技場のもう一方から、“無敵の勇者”タラレヤの、〈神骸騎〉ラードーンが入場してくる。
 だが金色の機体ラードーンの動きはぎこちない。
 特に、左腕がまったく動いていないのが見てとれる。

  • 司会
「おおっと……! こちらは準決勝の損傷が残っているか“無敵の勇者”!」
「これはラードーン、厳しい、厳しいぞ……!」

 観客席のざわめくなか――

“無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「うわ――! 左腕さえ、左腕さえ無事ならなァ――!!」
「ノスフェラトゥを相手にしても負けなかったんだがなァ! かァ――! 左腕がなあ――!!」

 猛烈な勢いでタラレヤが負け惜しみを叫びはじめ、「ふざけるなー!」「真面目にやれー!」と観客席からブーイングが飛ぶ。

  • “無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「本来ならなァ! 本来なら勝ってたんだけれどなァ――あ、やめっ! やめろ! 物を投げつけるな! 装甲が汚れるだろ!」
「ほら来いよノスフェラトゥ! 今なら絶対に勝てるぞ、なにせ左腕がダメだからな! かァ――!!」


 GMはPC1に対し、二つの選択肢があると提示すること。

 一つめは手負いのラードーンを、戦場でそうするように情け容赦なく打ち倒すこと。
 この場合、判定の余地なくPC1は勝利することができる。
 拍手と歓声と、タラレヤへのブーイングのうちに、勝利の祝福を受けることができるだろう。

  • “無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「かァ――! 左腕さえ無事ならなァ! かァ――!」
「準優勝で終わりはしなかったんだけどなぁ! かァ――!」

  • 観客
「いい加減にしろー!」「何が“無敵の勇者”だ恥を知れ――!」「ブー! ブー!!」

 ……ただ少々、観客の注目をタラレヤに持っていかれるかもしれない。


 二つめは、これはあくまで奉納武闘会であるとして、相応の手加減(※)を行うと宣言することだ。
(※こちらも同様に左腕を使わないと宣言しその通りにするなどの、騎士道的な所作である)

 この場合、PC1は〈神骸騎〉による、射撃または白兵の攻撃判定を一度だけ行う。
 これにより成功数2を出すことで、PC1は〈神骸騎〉ラードーンに対等の条件で勝利したものとできる。


“無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「……キミ、本気かい? リアピオン大祭だぞ? 決勝戦だぞ?」
「絶対に拾える勝利を、わざわざ対等に戻すっていうのかい? さてはバカだな! ハハハ!」

「でも、そういうバカは嫌いじゃない!」
「いいだろう、この僕、“無敵の勇者”たるタラレヤ・アンダマイルが、君に敗北を教えてあげようじゃないか!」

 この選択肢を選んだ場合、互いにハンデを抱えた状態での〈神骸騎〉ラードーンとのノスフェラトゥの激戦が開始される。
 もし判定に失敗し敗北すれば準優勝という結果になる。
 会場の観客たちはPC1の潔い態度を称賛し、ブーイングまじりにタラレヤの勝利を祝う。

 しかしこの選択肢を選んだ上で、判定に成功した場合、会場の観客たちはPC1の誉れある戦いぶりに熱狂する。
 ノスフェラトゥに対する歓呼の声が会場を揺るがし、PC1を称える叫びや口笛が鳴り止まない。
 “無敵の勇者”タラレヤに対しても健闘を称える声が響き渡るだろう。
 【応援ポイント】+2すること。

“無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「ぐっ、降参だ! 左腕――は、もう関係ない、文句のつけようもなく君の勝ちだよチクショウ!」

 タラレヤは〈神骸騎〉の無事な手を伸ばし、ノスフェラトゥに握手を求めてくる。
 PC1が応えた場合、ワッと観客からひときわ大きな歓声があがる。

“無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「だが次はないぞ! このタラレヤ・アンダマイルの名を覚えておくことだね!」

  • 観客
「いい勝負だったぞ――!」「おめでとう! おめでとう!」「よくやったー!」

 シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。




○ミドルフェイズ シーン10:団体戦闘競技


 会場の興奮も冷めやらぬなか、パーティは翌日には団体戦闘競技に出場することになる。
 紅白に色分けされた二つのチームに分かれ、多くの〈神骸騎〉が合戦同様に戦いを繰り広げる最も壮麗な奉納競技――
 個人戦が〈神骸騎〉の性能を測る最も注目される種目とすれば、団体戦は大祭の最後を飾る華となる種目だ。

  • “神官”エタタヤ・サン
「無茶な出場日程を考慮して、予備の部品を多めに持ってきておいて助かりました……」
「公王陛下、そして皆さん。どうかご武運を! 皆さんのご活躍は、必ずこのエタタヤが書き記します!」
「終わったら表彰式、それに祝宴も待っていますよ!」

 闘技場へと向かう直前。
 昨日から随員を指揮してノスフェラトゥの点検整備を行っていたエタタヤは、流石に疲れた様子だ。
 それでもエタタヤは、ここが年代記記録者の頑張りどころと、拳を握って応援の意欲を見せている。
 パーティがそれに対して応答したり、互いに会話をしたところで回想を終えよう。

(GM、PC1~3は搭乗状態での搭乗を促す)

 そして現在――

  • 司会
「なんだ、なんだなんだ、あの白組の〈神骸騎〉は――!?」

 闘技場で、観客たちは予想外の展開に大きくざわめいている。
 始まった団体戦闘競技では、序盤から白いマントを羽織った強襲騎が猛威を振るっていた。
 今も鉄球を振り下ろした重装騎が、それを躱され突き返しの魔剣に倒れる。

  • 司会
「あの白い強襲騎! 昨日の個人戦には出場していませんでした! 選手登録も『白騎士』とのみ!」
「しかし強い! 強い――! 今もチョーマの鉄球使いが倒れました!」
「有力〈神骸騎〉が次々になぎ倒されていくぅ!」

  • “無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「はッ! 昨日は準! 優勝! という残念な成績だったが!」
「この僕を前にして良い度胸だ! いくぞラードーン――――ぐわああああ!?」

 タラレヤのラードーンも『白騎士』に突っかけるが、飛刃と魔剣によってあっという間に打ち倒される。

  • 白騎士
「………………」

“無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「うわああああ――!? 待て待て降参降参――!?」

 『白騎士』がタラレヤに武器を振り下ろそうとする。
 パーティは演出的にここに割って入っても良いとGMは説明すること。

  • “無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「ノスフェラトゥ!? 一度ならず二度までも情けをかけられるとは! 屈辱だよでもありがとう覚えとけ!?」

 なお仮に特にパーティがタラレヤを見捨てた場合でも、タラレヤが死亡することはない。
 競技会で使われる武具は非殺傷用の模擬武器であり、『白騎士』も降参を宣言したラードーンにあまりに過剰な追い打ちは行わないためだ。

  • 白騎士
「………………」

 介入、不介入いずれにせよ『白騎士』の瞳がギラリと光り、パーティの〈神骸騎〉三柱を見据えて武器を構える。


  • 卑劣な野装騎たち
「あの『白騎士』、このままノスフェラトゥを狙うつもりらしいぞ!」
「おいおい、昨日の個人戦で優勝した〈神骸騎〉だぞ!?」
「……お、おい、けどよ。こりゃあおこぼれを狙えば、俺たちでも……ノスフェラトゥを狩れるんじゃないか?」
「ふ、不死狩りの〈神骸騎〉か……悪く、ねえな……」
「ダオ帝国に取り立ててもらえるかもしれねえ……!」
「か、囲め! 行け! あの『白騎士』を利用して、ノスフェラトゥの首を獲れ!」

 周辺の〈神骸騎〉たちも色めき立ち、目の色を変えてパーティを取り囲んでくる。
 性能はさほどでもなさそうだが、仮にも〈神骸騎〉がおよそ6機――二倍の数だ。

  • 司会
「おおっと! 『白騎士』がノスフェラトゥに狙いを定めた!」
「囲まれているぞ、囲まれているぞ!? 二倍以上の敵に囲まれているぞノスフェラトゥ!」
「どうなる! どうなる――!?」

 パーティが決戦前の会話を終えたところで、シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○クライマックスフェイズ:謎の『白騎士』



 戦闘前に、各自に絆ダイスを1つ配布する
 GMは各キャラクターの絆ダイスが、4~5個あることを確認しよう。
 極端な使い方をしていない限りは、ほぼ上限値になっているはずだ。

 絆ダイスはキャラクターたちの勝利を支える重要な要素である。
 もし明らかに絆ダイスが不足している様子であれば、GMはロールプレイを促し、更に絆ダイスを与えても良い。

 また【応援ダイス】も無理な使用をしていなければまだ残っているはずだ。
 こちらも残数を確認しよう。
 戦闘中、PCが観客を盛り上げるような活躍をしたと判断した場合、GMは追加の【応援ダイス】を与えても良い。
(※たとえば範囲攻撃によって、一気に複数の野装騎を薙ぎ払った時、『白騎士』に大ダメージを与えた時などだ)

  • 神骸騎『白騎士』
  • 卑劣な野装騎×6

 以上のエネミーを、下記の[接敵]状態で登場させる。

【卑劣な野装騎×3】<距離>【白騎士】<距離>【パーティ側〈神骸騎〉×3】<距離>【卑劣な野装騎×3】

  • 白騎士
「………………」
 この『白騎士』は念話機による会話には一切応答せず、魔剣と飛刃を振るって縦横に暴れまわる。
 ただし『白騎士』はパーティ内に[励起]した〈神骸騎〉がいる場合、極力それを狙うことを避ける。
 全ての〈神骸騎〉が[励起]した場合のみ、『白騎士』は[励起]した〈神骸騎〉に攻撃を行うものとする。

 なおリアピオン大祭は非殺傷競技である。
 仮に[励起]状態で【LP】が0となっても〈魂魄〉は死亡しないが、ごく稀にリング禍のような事故死は発生する。
 『白騎士』はドウラ公国の〈神骸騎〉を舐めているのか、それとも大祭を血で穢すことを避けているのか――?


  • 卑劣な野装騎たち
「ひ、ひひひ! あの白い〈神骸騎〉に続けェ!」
「俺だっ! 俺がノスフェラトゥを仕留めるんだ!」
「バカめ、先に取り巻きから仕留めるんだよ!」「は? 先に大将からだろ!?」
「なに指図してやがる!?」「ああ!?」「ああァン!?」「ああああァァン!?」

 卑劣な性根の野装騎たちは、盾と斧を構えてパーティににじり寄ってくる。
 この野装騎たちは合理的な連携を取ることができない。

※『白騎士』が撃破された時点で、野装騎が残っていた場合、野装騎は連鎖して降伏する。
「う、うわあ! 『白騎士』がやられた、もうダメだァ!」
「降参だ! 降参する、ゆるしてくれぇ!」


 戦闘は『白騎士』のHPが0となった時点で決着となる。
 『白騎士』は[励起]は行わず、HPが0になった時点で規定の「降参」の旗を掲げる。


  • 観客
「うおおおおおおおおっ!!」「こんな凄い勝負、見たことねえ!!」
「あの『白騎士』も強かったが、ドウラ公国の〈神骸騎〉はもっと凄かったなぁ!」
「大祭の伝説になるぜ、この一戦はよう!」「ノスフェラトゥ! ノスフェラトゥ!」

 パーティが倍以上の〈神骸騎〉たちに勝利し、観客席から口笛や雄叫び混じりの大歓声があがったところでシーンエンド。




○GM用判定早見表


【白騎士】
【HP】90/90 【LP】10/10 【反射】6 【防御力】肉体:6 技術:4 魔力:3 心力:7
[白兵攻撃]8D ダメージ:1D6+【心力】14(《血を燃やせ》使用時+1~3D6)
[突き返し]7D ダメージ:1D6+【心力】14
【射撃攻撃】9D ダメージ:2D6+【心力】14(《血を燃やせ》使用時+1~3D6)
[射撃回避]3D (至近からの射撃の場合、《矢切》で7D)
[反射ダイス]6/6
※《彗星の如し》(消費【HP】5)で射撃キャラに接敵し、白兵キャラに対して射撃攻撃を優先して行う。
 《血を燃やせ》(消費【LP】1~3)は積極的に使って与えるダメージを増やす。
 《古強者》(消費【HP】5)は必要に応じて使用。また[励起]した〈神骸騎〉への攻撃を避ける。


【卑劣な野装騎】×6
【HP】32/32 【LP】9/9 【反射】1 【防御力】肉体:5 技術:2 魔力:5 心力:4
[白兵攻撃]5D ダメージ:2D6+【肉体】5(《強襲》使用時+5)
[突き返し]5D ダメージ:2D6+【肉体】5(《強襲》使用時+5)
[射撃回避]2D (至近からの射撃の場合、《矢切》で5D)
[反射ダイス]1/1
※寄せ集めの集団のため、じゅうぶんな連携は取れない。
 攻撃可能な誰かをランダムに狙い、可能ならば《強襲》(【HP】5消費、要移動)を用いて攻撃する。




○マスターシーン


 このシーンはGMによる演出シーンとなる。
 PCは登場しない。


 ――埃除けの紗幕に覆われたダオ帝国の貴賓席のなか。
 扇で顔を隠したスラク皇女が、忌々しげにノスフェラトゥを見つめている。

  • “小覇王”スラク皇女
「完全にドウラ公国の一人舞台ね」
「また。また……ノスフェラトゥはいつもそう」
「何もかもを打ち壊していく。我こそは不死の怪物だと言わんばかり」

 そして、その視線が誰かを探すように、表彰式に参列する〈神骸騎〉たちの間を彷徨い――

「ぁ……」

 ノスフェラトゥの〈心座〉から現れたPC1を見て、響き渡る観客の歓声のなか、皇女は長く沈黙した。

「――――そう、そうだったの」

 勇士たちを称える表彰の儀式。
 PC1が栄光の月桂冠を受け取り掲げる、その腕には赤いリボンが見える。

「なんてたちの悪い、運命の悪戯――」
「ふふ。『きっといつか』? 『あなたの国を訪ねに』?」
「ああ、なんて滑稽な望み。――私はなんと、愚かで不出来な……」

 皇女は感情を感じさせない仕草で立ち上がり、貴賓席から立ち去ろうとする。
 しかしその時、入り口から『白騎士』の〈御者〉が現れ――

  • 『白騎士』の〈御者〉
「ああ、負けた負けた! 先代のノスフェラトゥは冷たい鋼のごとき強さだったが、今代も大したものだ!」
「……おや、ご機嫌斜めのようだね妹よ。兄がノスフェラトゥに敗れたのがそれほど不満かね?」

 兜を脱ぐと、その下にあったのは“伏龍皇子”ユジン・ダオの快活な笑みだ。

  • “小覇王”スラク皇女
「お兄、さま」

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「許してくれたまえよ。アイオーリア王の膝下で流血沙汰など起こした手前、アイオーンとしての出場はできないのだ」
「せめて悪役の一つも買って出て、最後の闘技を盛り上げようと思ったのだがね……」
「いやはや、つい熱くなってしまった! やはりドウラ公国には良い〈神骸騎〉が揃っている!」

  • “腕輪の君”ラルヴァ
「お止めしたのですが……皇女殿下、申し訳ありません」

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「おやラルヴァ。しかし最後の方は、君もけっこう楽しんで――」

  • “腕輪の君”ラルヴァ
「ユジンさまっ!!」

  • “小覇王”スラク皇女
「構いませんよ、ラルヴァ。それに兄さまが負けたことを怒ってなどいません」
「むしろ、良い偵察になりました」

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「ああ。片端から[励起]させていったのだ。これで、ドウラ公国の主戦力〈神骸騎〉の手の内は見えただろう?」
「これから私がマヌ=カーセ連邦を切り刻むまでの間、我が妹にはあの公国の〈神骸騎〉たちを押さえつけてもらわねばならぬ」

  • “小覇王”スラク皇女
「ええ、勿論。そうだ、その対価といってはなんですが……決戦の折には、所望したいものが一つ御座います」

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「なんだね?」

 スラク皇女は、ぞっとするような美しい笑みを浮かべて告げる。

  • “小覇王”スラク皇女
「――――憎い憎いノスフェラトゥ。その〈魂魄〉の首を、私に」

 シーン終了。



○エンディング


 各プレイヤーの希望に沿ってエンディングを演出すること。

 もしPCたちに特に意見がない場合、
 PC1は、なぜか悲しげな『謎の少女』(※スラク皇女は正体を明かす意志はない)との別れ。
 PC2は、助太刀をした場合、祝勝の宴でユジン皇子に改めて礼を言われる。
 PC3は、カグラやエタタヤなどとの会話が良いだろう。

 競技会の勝利の栄冠によって、服属国の動揺は沈静化するだろう。
 ドウラ公国の威信、ノスフェラトゥの強さは多くの〈神骸騎〉乗りの脳裏に刻まれた。
 平和休戦の期間は終わり、再びダオ帝国との因縁の戦争が始まろうとしている。

 イクタリ大陸は戦乱の地である。
 ひとたびの平和は、次の戦争までの準備期間に過ぎないのだ。

 ――しかし、それでも一つの戦争が終息し、平和が訪れたことは喜ばしいことだ。
 課題は多く、戦火の火種は燻っているが、それでも希望は確かにある。
 GMは、プレイヤーたちが十分な達成感を得られるエンディングを演出することを意識しよう。

 セッションに最後まで参加し、進行に協力し、これを楽しんだGMは2点、プレイヤーは1点の【国威】を得る。
 GMはこの競技会において誉れある振る舞いをしたプレイヤーたちの騎士道精神を称え、更に1点の【国威】を与えても良い。





○使用エネミーデータ


刺客の群れ
【白兵】2D 【射撃】2D 【反射】2
 攻撃力:生身戦のため、一撃命中で勝利
 防御力:生身戦のため、一撃命中で敗北



○ボスキャラクターデータ


『卑劣な野装騎』(作成:凪ノ香)


ライフパス
儀式:感情/心力+1
来歴:兵士/白兵+1
感情:――――

能力値
【肉体】5 【技術】2 【魔力】5 【心力】4 【神格】1

【HP】32 【LP】9 【常備化ポイント】5

【白兵】5 【射撃】2 【反射】1

【攻撃力/防御力】
肉体 5/5
技術 2/2
魔力 5/5
心力 4/4


装備(合計常備化ポイント:5/5)
 機体:野装騎(常備化P:2)
 【HP】+10。【魔力】能力値+1。【技術】属性の武器を装備できない。

 主兵装1:斧(アックス) 常備化P:2
 ダメージ:【肉体】+2D6 【反射】-1

 主兵装2:盾(ベイル) 常備化P:2
 ダメージ:【肉体】
 【HP】+10。

 オプション:紋章(エンブレム) 常備化P:1
【HP】+5。盾(ベイル)を装備している場合、[オプション]枠を使用しない。

 ※念話機(テレパシー) 常備化P:0

《強襲》
消費:【HP】5
 自分から[移動]を行って[接敵]した際に使用する。
 直後に行う[白兵攻撃]のダメージを+5する。

《矢切》
消費:【HP】2
 至近距離からの[射撃攻撃]の対象となった際に使用する。
 【白兵】で[防御判定]を行う事ができる。[突き返し]は発生しない。






『白騎士』(作成:駄天使エイワス)


  • 魂魄:ラルヴァ
  • 御者:ユジン・ダオ
  • 神骸騎:アイオーン
  • 国家:ダオ帝国

  • ライフパス
 儀式:■■/■■
 来歴:■■/■■
 関係:■■/■■

  • プロフィール

  • 能力値
 【肉体】6 【技術】4 【魔力】3 【心力】7 【神格】6

 【HP】90/90 【LP】10/10 【常備化ポイント】54

 【白兵】7 【射撃】3 【反射】6 

 【攻撃力/防御力】
  肉体 6/6
  技術 4/4
  魔力 3/3
  心力 7/7

  • 戦技
《遺産》 消費:なし (3回)
 地下に〈神骸騎〉が隠してあったなど、往々にして〈神骸騎〉とその操手たちの出会いは劇的である。
 [常備化ポイント]を5ポイント獲得する。
 この【戦技】は3回まで取得でき、効果は累積する。

《矢切》 消費:【HP】2
 優れた剣士たるもの、射撃への備えも身につけているものだ。
 至近距離からの[射撃攻撃]の対象となった際に使用する。
 【白兵】で[防御判定]を行う事ができる。[突き返し]は発生しない。

《血を燃やせ》 消費:【LP】1~3
 戦いに勝つということは、生命そのものを燃やして尚、容易い事ではない。
 [マイナーアクション]で使用する。
 直後に行う[メジャーアクション]で相手に与えるダメージを、消費【LP】1ごとに+1D6する。

《古強者》 消費:【HP】5
 常に生き残ってきたからこそ、強者と呼ばれるようになったのだ。
 自分が判定を行った直後に宣言する。その判定に用いたダイスを振り直す事ができる。
 同じ判定に連続して使用する事も可能だが、結果を差し戻す事はできない。
 1シナリオ中に3回だけ使用可能。

《彗星の如し》 消費:【HP】5
 周囲の地形を蹴りつければ、〈神骸騎〉は想像を絶する加速力を獲得する。
 [セットアップフェイズ]に使用する。[移動]または[離脱]を行える。

《歴戦》 消費:なし
 戦歴を重ねるには、強いだけでは意味がない。生き延びる事が、最低条件なのだ。
 【HP】+10。この【戦技】を取得した時点での【神格】が2以下の場合は更に+5する。


  • 装備(合計常備化ポイント:54/54)
 機体:強襲騎(常備化P:15)
    【HP】+40。[白兵攻撃]と[射撃攻撃]のダイス+1。
    【肉体】【技術】のダメージ+3。【反射】+1。
 主兵装1:魔剣(常備化P:5)
      ダメージ:【心力】x2+1D6
 主兵装2:盾(常備化P:2)
      ダメージ:【肉体】 【HP】+10。

 副兵装:拡散閃光砲(常備化P:1)
     ダメージ:なし
      [マイナーアクション]で使用する。
     次の[メジャーアクション]で攻撃する対象の、防御判定のダイスを-1する(最低1)。
    ※飛刃(常備化P:5)
     ダメージ:【心力】x2+2D6
     この兵装を用いた[射撃攻撃]のダイス+1。
     この兵装に対しては、[防御判定]のダイスは-1される。(最低値0)
     魔剣(ルーンブレード)を装備している場合は、[副兵装]枠を使用せず装備できる。
     魔剣(ルーンブレード)を装備している場合は、この武器は【白兵】を用いて[射撃攻撃]できる。

 オプション1:水素の心臓(常備化P:3)
        【肉体】+1。
        また【HP】が0になった瞬間、【肉体】を1下げ、【HP】を1に回復する事ができる。
        [励起]中には使用できない。この効果は1シナリオ中1回だけ使用できる。
        このオプションは1つしか装備できない。
 オプション2:調律骨格(常備化P:3)
        【心力】+1。【反射】+1。【HP】+5。
        このオプションは1つしか装備できない。
       ※専用色(常備化P:5)
       【反射】+1。[オプション]枠を使用しない。このオプションは1つしか装備できない。

 神化:【HP】+5(5回)

  • 成長
 【国威】:10

 ・《遺産》取得
 ・《遺産》取得
 ・《矢切》取得
 ・《血を燃やせ》取得
 ・《古強者》取得
 ・《彗星の如し》取得
 ・《歴戦》取得
 ・【常備化P】+3
 ・【常備化P】+3
 ・【常備化P】+3

【※マスクデータあり】
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