神骸騎ディ・カダーベルTRPG

ノスフェラトゥ戦記最終話:光と闇と

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◆最終話:光と闇と


著:凪ノ香


○シナリオ概要


 皇帝騎を名乗る〈神骸騎〉の出現は、周辺諸国に激烈な動揺をもたらした。
 いにしえの宿将たちが付き従う、白き機体のその威容、その武勇。
 僭称を疑う声は小さく、神聖イクタリ帝国は日に日に信望を集めていく。

 しかし光が強く輝けば、闇もまた濃く凝るもの。
 神聖イクタリ帝国の支配を良しとせぬ諸国は、ドウラ公国を旗頭として戦力を結集していく。
 イクタリ大陸全に、再び迫る大乱の嵐。

 不死の伝説を継ぐ〈神骸騎〉たちは、いま悠久の伝説と対峙する。



○GM向けガイド

 第四話のシナリオは、第三話でスラク・ダオ皇女を「救出したもの」として記述している。
 しかし殺害した場合でも、ユジン・ダオ皇帝の行動の大筋に変化はない。

 スラク・ダオ皇女がいない状態を想定してシナリオやデータを組み直そう。
 救出した場合と比べ、事態は難化するだろうが解決不能ではない。

 またいずれの場合でも、ここまで【国威】が増加すると、〈神骸騎〉の性能の差も大きくなる。
 特に最終決戦まわりについては、丁寧にボスデータの調整を行うことをお勧めする。






○マスターシーン:神聖なりしイクタリ帝国



“神聖イクタリ皇帝”ユジン・ダオ
「《皇帝騎》の名のもとに!」
「神聖イクタリ帝国の、名のもとに!」

「今こそ我らは、いくさを止めよう!」
「許し難きを許し、憎しみを捨てる時が来たのだ! ともに平和と繁栄の果実を享受しようではないか!」

 高い屋根が立ち並ぶ旧ダオ帝国の帝都でも、ひときわ大きな行政府。
 そのバルコニーから広場に向け、父を弑逆し国号を改めたユジン・ダオ皇帝が、建国の演説を行っている。
 バルコニーの傍らには、白き《皇帝騎》、アイオーンが威厳をもって佇んでいる。

「《皇帝騎》は、公正な裁きを約束しよう! 自由で平等な協定を保護しよう!」
「それらを脅かす無法な暴力から、必ず諸君らを守るとここに誓おう!」
「かつて人は、手を取り合い楽土を築いた! いま再び、黄金時代は到来する……そう! 我々が築き上げるのだ!」

 帝都の広場には民衆が詰めかけている。
 その目には期待と歓喜の色がある。

「虐げられしものよ、来たれ! 弱き者よ、困窮する者よ、来たれ!」
「我らは諸君を庇護する! 諸君の力こそが必要だ! 集い、ともに築こう!」
「――――新たなる楽土、神聖イクタリ帝国をッ!!」

 ユジン皇子が力強く拳を突き上げると、群衆から次々に声があがる。

  • 群衆
「無敵なりし英雄皇帝、万歳ッ!! 」
「慈悲深きラルヴァ皇后、万歳ッ!!」
「《皇帝騎》、万歳ッ!! 神聖イクタリ帝国、万歳ぁぁぁああいッッッッ!!」

 鳴り止まぬ歓声と、それを堂々と受け止めるユジン。
 新たなる皇帝の後ろに控えた皇后ラルヴァは、仮面のように静かな微笑みを浮かべている。
 その瞳は、眼帯に隠されてうかがい知ることはできない――



○PC2 オープニングフェイズ:追憶は薄闇に佇む


 首都エポリナの公城の一角。
 ドウラ公国歴代の公王の眠る霊廟は、薄暗く静かだった。
 その最も新しい墓碑、“冷血王”ゲオルグ・ドウラの墓の前に君はいた。

(GM、PC2に非搭乗状態での登場を促す)

 PC2が望むNPCを1~2名登場させること。
 または先代のゲオルグ公王との回想シーンでも良いし、NPCを登場させず〈魂魄〉と〈御者〉のみの会話でも良い。
 基本的に、PC2の望みに沿ったオープニングを行おう。

 GMはこのシーン中に、以下の情報を提示すること。

――――――――――――――――――

【現在の大陸情勢】

 ダオ帝国が神聖イクタリ帝国に国号を改めてから数ヶ月が経過した。
 “神聖イクタリ皇帝”ユジン・ダオの政変は概ね成功したといえるだろう。
 幾つか小さな反乱はあったものの、〈神骸騎〉アイオーンと『七星騎』が、圧倒的な力でこれを鎮圧した。
 帝国諸侯の多くはユジン皇帝に臣従している。

 現在のところ、〈神骸騎〉アイオーンが皇帝騎であるという明白な証明は無い。
 ただしアイオーンには皇帝騎を名乗るだけの抜群の性能がある上、二騎の『七星騎』まで随伴している。
 アイオーンが勝利を重ね続ける限り、皇帝騎であるという自称は信憑性を増していくだろう。
(※シナリオフック「○失われた皇帝騎」を参照。他を寄せ付けぬ「絶対的な強さ」は皇帝騎の証明となりうる)

 そして、皇帝機を名乗るアイオーンの手には……ゲオルグ公王より奪われた皇帝槍がある。
 ……あの日、ゲオルグ公が討ち取られたあの時。ユジン・ダオは、皇帝槍を狙っていたのだろうか?

――――――――――――――――――

 回想に良い区切りができたところで、シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。




○PC3 オープニングフェイズ:白き光の支配する



 ドウラ公国の首都エポリナは物々しい賑わいを見せていた。
 種々の旗を掲げて集う〈神骸騎〉。
 兵士の公募。あちらこちらの地域からやってくる傭兵団。
 時折、喧嘩騒ぎなどが起こっては、増員された衛視が呼子笛を鳴らして駆けていく。

(GM、PC3に非搭乗状態での登場を促す)

 PC3が望むNPCを1~2名登場させること。
 またはNPCを登場させず、〈魂魄〉と〈御者〉のみの会話でも良い。
 GMはドウラ公国の物々しい様子を説明しつつ、以下の事柄について適切な方法で説明すること。

――――――――――――――――――

【現在のドウラ公国】


 神聖イクタリ帝国は拡大と安定の道を辿っている。
 しかし無論、さまざまな理由でユジン皇帝を受け入れられない者もいる。

 スラク・ダオ皇女や、先帝ビケザ・ダオに忠義を誓っていた者たち。
 ユジン皇帝に滅ぼされたマヌ=カーセ連邦の残党。
 神聖イクタリ帝国の伸長を警戒するもの。

 そういった雑多な勢力が、いま手勢をまとめてドウラ公国に参集しつつある。
 マヌ=カーセ連邦が瓦解した今、神聖イクタリ帝国に対抗しうる有力な国家はドウラ公国ただ一国。
 ……大陸史に大書されるほどの、決定的な大戦が生じる日は遠くはないだろう。

 口さがない者などは、「光と闇の戦い」などと語っているようだ。
 むろん、光がアイオーンであり、闇はノスフェラトゥというわけだ。

――――――――――――――――――

 会話に良い区切りができたところで、シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。




○PC1 オープニングフェイズ:炉辺のひと時


 ゲオルグ公王が討ち取られたのは砲の月、六月のことであった。
 以後どれだけの時間が経過したかはパーティの裁量によって決定して良いが、一年は経過していない。
 大祭による三ヶ月の平和休戦があったことを勘案すれば、冬の前後の時期だろう。
 ――公王の執務室の暖炉からは、パチパチと薪がはぜる音がする。

(GM、PC1に非搭乗状態での登場を促す)

  • “小覇王”スラク・ダオ
「こちらが新たに仕官してきた〈神骸騎〉を中心にした部隊創設の稟議書」
「私から見て気になった点には、赤のインクで指摘を入れてあるわ」
「それからこっちは今年の租税で、こっちが服属国からの貢納の一覧……」

 君たちの傍らの席で、スラク・ダオが書類にテキパキと目を通しては君に回してくる。
 そしてふと、彼女は思い出したように言った。

「ねえ、PC1。……今更だけれど、私ったらなぜこんなことをしているのかしら?」

 スラク・ダオは虜囚ではなく、高貴な賓客として遇されていた。
 そしてドウラ公国はここ最近の雑多な勢力の参集に、事務方がとても足りてはいない。

「この辺の書類とかもう公国の機密よね」
「私がこれ手土産に兄さまのもとに走ったらどうするつもりなのよ……」
「……私だって恩知らずでも馬鹿でもないから、しないけれど」

 いつしか見かねてスラク皇女が手伝い始め、すっかり彼女も公国首脳部の一員となりつつあった。
 スラク皇女は、仕事の合間に冷めてしまった茶を一口飲む。

「……父さまは、底なしの怒りと野心に呑まれた人だったわ。私に関心なんてなかった」
「兄さまも、昔は誰に対しても心を閉ざしていた。今なら分かる、壊れた家族よ」

「けど、ラルヴァと巡り合って、兄さまは活き活きと明るくなって」
「父さまも何かが少しだけ満たされたのか、すこしだけ表情が柔らかくなって」
「……でも今はもう、私は兄さまやラルヴァが、何を考えているのか分からない」

「謀反の計画から排除されていた理由は分かるわ。私が父さまに情を抱いていたからでしょう」
「兄さまたちは、私が土壇場で父さまの側につく可能性を恐れて、謀反から遠ざけた――それは、分かる」
「あの時、私はノスフェラトゥの正体があなたたちだと知って、精神的にも安定していなかった」
「だから不確定要素とみなして排除を試みた。父を殺されたと聞いて、何をするか分からない状態だったから。それも、分かる」

「理屈は通っているの。でも、分からない」
「兄さまたちは本当に、『皇帝騎の使命』なんて綺麗な理想のために動いているのかしら?」
「それは少しだけマシになった家族を、取り返しがつかないほどに壊してまで、果たすべきことなの……?」

 ティーカップを持つスラク皇女の手は、微かに震えている。

「私は……どうすれば……」

 PC1がスラク皇女に対して何か働きかけを行うと、スラク皇女の震えは止まり、彼女は微笑みを取り戻す。

「ありがとう、PC1。あなたがいてくれて、本当によかった」
「ねえ、私が聞けた義理ではないかもしれないけれど……それでも、よければ聞かせて頂戴?」
「ゲオルグ公王は…………あなたの家族は、どんなひとだったのかしら」

 会話に良い区切りができたところで、シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。





○ミドルフェイズ シーン1:偽りの平和


 ドウラ公国、首都エポリナの公城。
 その大会議室には、伝説的な〈邪神騎〉の胸部装甲を槍で貫く〈皇帝騎〉の大絵画が飾られている。

  • “紋章官”フィオ・サームズ
「……以上が神聖イクタリ帝国、ユジン・ダオ皇帝よりの親書となります」 

  • “神官長”イズラ・サン
「要約するに、あちらは講和と友好条約の締結を求めているという理解でよろしいか?」
「ダオ帝国時代の占領地を破棄し、旧来の位置に国境線を引き直し」
「あちらの『連絡の不手際による事故』によって生じた、スラク皇女の亡命についても一切不問」
「度重なる先帝の領土侵犯に対し、謝罪の意を表明しても良いとまで」

  • “内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「破格の条件ですな……ユジン皇帝にはビケザ皇帝ほどの野心はないようだ」
「公王陛下! これは、帝国との長年の戦争に終わりの目が見えましたな! ワハハ!」

(GM、PC1~3に非搭乗状態での登場を促す)

 GMはまず、この講和の申し出に対する各人の意見を聞くこと。
 適度に論議が進んだ状態で、スラク皇女を話に参加させること。
 スラク皇女の意見は以下のようなものである、PCたちの意見に合わせて同調する形を取るなど、適宜調節すること。

 なおGMは、これが開戦の決断を行う想定のシーンであることを事前にパーティに告げること。
 宣戦布告の大義名分は、「ユジン皇帝の簒奪を非難する」「皇帝騎を僭称とみなす」等、いくつもあるだろう。
 パーティの好む名分を採用する。

 ただし、もしどうしてもパーティが講和条約を受け入れたフリをしての暗躍などを試みたい場合、物語は別の形となるだろう。
 GMは掲載のボスデータを利用して、臨機応変にシーンを描いていこう。
 また、いったんこの会議では結論を保留し、別途、PCたちが悩んだ末に結論をくだすシーンなどを設けても良い。


  • “小覇王”スラク・ダオ
「……ミスターニ閣下も、本当はお分かりでしょう」
「ドウラ公国が。今やこの地域にて唯一、帝国と渡り合える国力を持つ列強国が、神聖イクタリ帝国を『皇帝騎のあるじ』と認めることの意味を」

「それはもう事実上の、公国の臣従、服属にほかなりません」
「そして服属したところで、帝国に対して公国の持つ交渉の札はあまりに少ない……武力をもって走狗となろうにも、おや困りましたね、追う兎がいません」
「なにせ帝国最大の仮想敵国である、ドウラ公国がその立場を放棄していますから。あとはもう、いかようにも」
「――提示されているのは、猛毒入りの甘い砂糖菓子です」


  • “内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「――スラク殿下。それは私も分かっております。確かに帝国はドウラ公国があるゆえにこそ、無体を働けぬ形でしょうな!」
「しかしだからといって、どうせよとおっしゃる?」
「敵は皇帝騎アイオーンに、七星騎ミザール、アリオト――諸国より皇帝騎の名を聞いて馳せ参じたる幾柱もの〈神骸騎〉!」

「いま歯向かえば、ドウラ公国は跡形もなく滅ぼされましょう」
「ならば偽りの平和を享受し、時を稼いで好機を待つのも手ではありませんか?」


  • “小覇王”スラク・ダオ
「その時間こそが敵なのです」
「まず兄はまだ若く、しかも〈神骸騎〉と契約を結ばぬ〈御者〉であるがゆえ、寿命や乱心を待つことは難しいでしょう」

「不滅の〈神骸騎〉の伝説が、皇帝騎の伝説に塗りつぶされた時点で、公国の求心力は喪われます」
「神聖イクタリ帝国はますます栄え、ドウラ公国は衰える……この選択の先には、それしか」

「……恐らく、今しかありません。兄の掲げた『皇帝騎』の伝説に、一撃を加えるとすれば、今しか」
「戦場で他の〈神骸騎〉に後れを取るようなことあれば、それは『アイオーンは皇帝騎ではない』という何よりの証明」
「それが成せるのはドウラ公国とノスフェラトゥを置いて他にはないでしょう」


  • “内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「……そしてノスフェラトゥがあの絵画のようになれば、いかがなさる」

 ムライプが指差す先にあるのは、会議室の大絵画だ。
 伝説的な〈邪神騎〉の胸部装甲を槍で貫く、〈皇帝騎〉の威容――

  • “内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「伝説の再現だ! 皇帝騎に逆らった愚かなる〈神骸騎〉として、ノスフェラトゥは末代までの汚名を被る!」
「そもそもが殿下! 帝国の人間であり、ユジン皇帝の妹である貴方が戦を煽るとは――」


  • “小覇王”スラク・ダオ
「そうですね。……皇帝騎は、本物“かもしれない”」
「ユジン皇帝は善良で徳のある立派な君主“かもしれない”」

「帝国に恭順することこそが正解である可能性を、私は否定できません」
「それに賭ける判断を、間違っているとも思いません。ひとというのは、そのように考えるものでしょう」

「……ですが私も、何の覚悟もなしに開戦を論じてはおりません」

 ムライプの叫び声を聞きながら、スラク・ダオは微笑みを浮かべる。

「これは議事録の残る会議です」
「兄の行いを恨みに思った愚かな“小覇王”が、公王に戦をそそのかす――動かぬ証拠の残る会議です」
「敗北の暁には、わたくしを弁明に用いればよろしい。わたしは無様に狂乱して見せて、死毒を一瓶あおりましょう」


  • “内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「な……っ!?」

  • “小覇王”スラク・ダオ
「……ねえ、公王陛下」
「あの皇帝を名乗っている兄に歯向かうならば、付き合うわ。降るならば、それもいい。私をうまく利用して頂戴ね?」
「一度救われた命ですもの。……私は、その……あなたのために、死んでもいいわ」

 会話に良い区切りができたところで、シーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。




○「ミドルフェイズ シーン1」前後に関する補足

 第四話は最終話であるため、シーン2からは神聖イクタリ帝国との決戦が矢継ぎ早に描かれる。
 平和な状況下での〈魂魄〉と〈御者〉のやりとりを描けるのはここが最後となる。

 何かプレイヤー側に行いたい演出などがあれば、GMは可能な限りその要望を汲もう。
 また「シーン1」でもし決断を保留した場合、「シーン2」までの間に開戦を決定するイベントを挟もう。


○ミドルフェイズ シーン2:嵐の先触れ


 ドウラ公国と神聖イクタリ帝国の講和交渉は決裂。
 シーン1で提示された大義名分によって、ドウラ公国は神聖イクタリ帝国に宣戦を布告した。

 一帯に存在する大小全ての国々が、固唾を飲んでこの大戦の推移を見守っている。
 神聖イクタリ帝国の皇帝騎はまことか、否か。
 ドウラ公王とノスフェラトゥは、皇帝騎に歯向かう愚者なのか、それとも僭称を見抜いた賢者なのか。

『〈神骸騎〉での戦いで勝利したものが正義であり、神である』

 イクタリ大陸を支配する絶対の法則は、今もなお健在だ。
 ――この戦の結果が、イクタリ大陸の歴史を作る。

(GM、PC1~3に搭乗状態での登場を促す)

 ドウラ公国と神聖イクタリ帝国の間に存在する、ガセキ平原。
〈神骸騎〉同士の会戦に適したその広大な平地では、先代ゲオルグ公王の時代から幾度も戦いが行われていた。

 暗雲覆う空の下。多くの将兵の血が染み込み、古錆びた〈神骸騎〉の部品が転がる平原。
 そこに、今また軍勢が居並び、無数の旗指し物が強風にたなびいている。

 一方はドウラ公国。
 新たなドウラ公王の駆る、不死の〈神骸騎〉ノスフェラトゥ。
(PC2とその〈神骸騎〉を称える言葉をGMは用意すること)
(PC3とその〈神骸騎〉を称える言葉をGMは用意すること)

 もう一方には、神聖イクタリ帝国。
 神聖イクタリ皇帝ユジン・ダオが〈御者〉として駆る、皇帝騎アイオーン。
 伝説の七星騎、ミザールとアリオト。

 その背後には、帝国側が数割ほど多勢であるものの、どちらも万を超える軍勢。
 双方あわせて参戦する〈神骸騎〉は数十柱。
 イクタリ大陸に戦多しといえども、これほどの規模の会戦はめったに生じぬものだ。


  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン・ダオ
「講和の申し出を受け入れてもらえず、残念だ。ドウラ公王」
「だが君を討てば、いまだ半信半疑の諸国も認めるだろう――このアイオーンこそが、まことの皇帝騎であると」

 念話機を通じて、ユジン・ダオがパーティに話しかけてくる。
 応答を描写すること。
 ユジン・ダオの事情についてはGMは後述の「○パーソナリティ詳細情報」を参照すること。
 妹の暗殺未遂や皇帝殺害について問いただした場合、ユジン・ダオは全て「この〈神骸騎〉の〈御者〉としての使命に従った」と回答する。

 会話がキリの良いところまで進んだあたりで、ラルヴァがそれを中断させる。

  • “神聖イクタリ皇后”ラルヴァ
「……ユジンさま、いよいよ。雨の気配が」

  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン・ダオ
「うむ。名残惜しいが、これよりは言葉ではなく刃でもって語らうとしよう」
「さあ、ノスフェラトゥ。死なずの〈神骸騎〉よ。――決着の時だ」

  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン・ダオ
「兵たちよ! ――この皇帝騎アイオーンに挑むは、大陸の伝説! 不滅の〈神骸騎〉ノスフェラトゥ!」
「相手にとって不足なし! いざ、不死殺しの名誉を勝ち取るが良い!」

 ユジン皇帝が念話機から拡声された声をあげると、イクタリ帝国側の将兵から雄叫びがあがる。
 パーティ側も兵を鼓舞する声をあげて良い。

 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン3:ガセキ平原の会戦


 歩兵の陣列がぶつかり合い、無数の弓矢が宙を飛ぶ。
 そして何柱もの〈神骸騎〉が激突し、その巨大な武具が火花を散らす。
 放たれる棒火矢や閃光兵器が曇天の下にまばゆく輝く。

  • “小覇王”スラク・ダオ
「PC1! 左翼側から斬り込んで、アイオーンを狙って頂戴!」
「中央と右翼はなんとか支えてみせる!」

 スラク・ダオが生存している場合、彼女が采配を振るうことで戦線を頑強に支え、アイオーンへの突破口を自動的に発見できる。
 生存していなければ、パーティの全員が【技術】または【魔力】で判定を行うこと。
 いずれかが成功数3を出すことで突破口を発見できる。
 失敗した場合、「不足分の成功数×10点」のHPをパーティ全員が失う。


  • ドウラ公国兵士
「ゆくぞぉ……! 公王陛下の為に!」
「ノスフェラトゥに続け! 突撃ぃぃ!」

  • 神聖イクタリ帝国兵士
「う、うわあ! ノスフェラトゥだァ!」
「突っ込んでくるぞ、逃げろ――!!」

 スラク皇女の見立て通り、左翼に配された兵士は数が多いようだが、比較的に士気が低い。
 パーティが先頭に立って突入すると、容易に崩れ始める。

 GMはパーティ側が分厚い敵左翼を食い破る様子や、兵士のリアクションなどを描写して戦場の雰囲気を強調しよう。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン4:亡霊騎士と嘆きの妖精


 左翼を切り分けていくと、〈神骸騎〉が立ちふさがる。
 あるいはパーティにとっては、見覚えのある機体かもしれない。

 第一話のダオ帝国軍の侵攻。
 峡谷の橋を巡る、左軍との戦いの――

  • 〈神骸騎〉バンシー
「ゲゲーッ! ノスフェラトゥ!? わ、わわ、どうしようデュラハン!」
  • 〈神骸騎〉デュラハン
「くっ……お前は下がっていろバンシー!」

 神聖イクタリ帝国に服属する諸国の〈神骸騎〉、バンシーとデュラハンだ。 
 GMはいずれかのPCが、対峙する二柱に対し、念話機を用いて【心力】で密談を行うことができると宣言すること。
 成功数2でバンシーとデュラハンは「やられたふり」に合意する。

 以前にもこの二柱の〈神骸騎〉と出会ったことがあり、平和的な別れ方をしていた場合、この難易度は1に低下する。
 GMはパーティがこの二柱の〈神骸騎〉からの十分な好意を得ていると判断した場合、判定に無条件で成功するものとしても良い。

  • 〈神骸騎〉バンシー
「公王サマはさ、アタシたちみたいな、小さな国の〈神骸騎〉にも気をつかってくれるんだね」
「皇帝騎とか、よくわかんないけど……ドウラ公国が勝つのも悪くないのかな。ねえ、デュラハン」

  • 〈神骸騎〉デュラハン
「かもな。……感謝する、ノスフェラトゥ。さ、拡声器を入れるぞ」

  • 〈神骸騎〉バンシー
「たいへん! 排莢不良、排莢不良! 射撃できない!」

  • 〈神骸騎〉デュラハン
「ちぃ! 何をやってるバンシー! ひとまず下がるぞ、みな踏み潰されるな!」

 バンシーとデュラハンは機体トラブルを装いノスフェラトゥを通過させる。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。

――――――――

 なお判定が失敗した、あるいはそもそも交渉する気がなかった場合。

  • 〈神骸騎〉バンシー
「ええい! 小国の〈神骸騎〉だからってナメるなよォ! 戦わなきゃ、こっちだって立場が危ないんだ!!」

  • 〈神骸騎〉デュラハン
「兵どもは下がっていろ! ……悪いがこいつは殺させん。相手をしてもらうぞ、ノスフェラトゥ!」


 以下の[接敵]状態で戦闘を開始する。
 敵側の性能は第一話時点と変化はないため、同じものを使用すること。
 それぞれの〈神骸騎〉を撃破した時点で、突破したものと判定する。

【バンシー/デュラハン】<距離>【パーティ側〈神骸騎〉】


バンシー
【HP】37/37 【LP】6/6 【防御力】肉体:5 技術:2 魔力:1 心力:5
[射撃攻撃]7D ダメージ:3D6+【肉体】5 または 1D6+10【心力】 または 3D6+【心力】5(範囲/一回のみ)
[白兵回避]3D
[射撃回避]7D
[反射ダイス]1/1
※接近された場合、《銃型》(消費HP4)を使用する。〈励起〉は可能な機体だが、〈励起〉より撤退、降伏を優先する。


デュラハン
【HP】39/39 【LP】12/12 【防御力】肉体:3 技術:1 魔力:8 心力:4
[白兵攻撃]4D 命中時ダメージ:2D6+【魔力】8
[突き返し]4D 命中時ダメージ:2D6+【魔力】8
[射撃回避]1D
[反射ダイス]4/4
※マイナーアクションで移動を行わない場合、《魔導照準》(消費HP5)を使用。
 また来歴:親友による判定振り直し一回を持つ。〈励起〉は可能な機体だが、〈励起〉より撤退、降伏を優先する。




○ミドルフェイズ シーン5:双巨神、死守


 血しぶきと爆音。喉が枯れるほどの叫びや悲鳴。
 会戦はますます激しさをましている。
 左翼を突破して本陣へと向かうパーティだが、更に遊撃の〈神骸騎〉部隊が阻止に回り込んでくる。

  • 卑劣な野装騎×2
「あれだ! あの三柱を止めろォ!」
「勝てなくて構わねえ、時間を稼げれば大戦果だ!」

  • 誉れなき従卒騎×3
「手柄首ッ! 報奨は疑いなしだなァ!」
「撃ち合おうぜェ!!」「ヒャハハハ!!!」

 パーティにとっては敵ではない程度の小型〈神骸騎〉たちだが、足止めを喰らえば更に多くの〈神骸騎〉に取り囲まれるだろう。
 危険な状況だが、しかし――

  • “小覇王”スラク・ダオ
「征きなさい――!」

 スラク皇女の念話機越しの命令が響く。
 次の瞬間、機関砲の弾が敵〈神骸騎〉群に降り注ぎ、突入した多腕の〈神骸騎〉がそれらを次々に切り刻んだ。
 野装騎と従卒騎たちは、悲鳴すらあげられずに大破し沈黙する。

  • “小覇王”スラク・ダオ
「ヘカトンケイレス、ギガンテス。私の戦友」
「あなたたちの命を、私に頂戴。……命令は、死守よ」
「命を賭けて、彼らの背中を守って!」

  • 神骸騎ヘカトンケイレス
「ヌハハ! ヘカトンケイレス、承知したッ!」
「主君の命にて死地を支えるは戦士の誉れ! 有り難し!」

  • 神骸騎ギガンテス
「ギガンテス、同じく拝命した!」
「ノスフェラトゥ、行け! あの皇帝騎とやらに、貴様の力を示してこい!」

 叫びとともにヘカトンケイレスとギガンテスは暴風のように戦いを開始する。
 パーティが本陣へ向かうと、多数の〈神骸騎〉に囲まれた双巨神の方角から、[励起]の輝きが見えるだろう――


 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。


――――――――

 もし双巨神やスラク皇女を殺害していた場合。
 あるいはパーティが双巨神の好意や尊敬を勝ち得ていないと判断される場合、以下の接敵状態で戦闘を開始する。
 〈神骸騎〉を3騎撃破した時点で、突破したものと判定する。

【誉れなき従卒騎×3/卑劣な野装騎×2】<距離>【パーティ側〈神骸騎〉】


【誉れなき従卒騎】
【HP】51/51 【LP】3/3 【反射】1 【防御力】肉体:7 技術:4 魔力:2 心力:1
[射撃攻撃]5D ダメージ:3D6+【肉体】6(拡散閃光砲で防御ダイス-1。[接敵]時、使用不可)
[火炎放射]5D ダメージ:【LP】1(拡散閃光砲で防御ダイス-1。[接敵]時のみ、葡萄玉で[範囲]化可能)
[白兵回避]1D
[射撃回避]5D
[反射ダイス]1/1
 ※白兵型の〈神骸騎〉の[接敵]を待ち、隠し武器である火炎放射器から[範囲]に燃料を放射します。
  火炎放射器の間合いに入ってこない〈神骸騎〉ばかりの場合、通常の射撃戦を行います。
  誉れを捨て切った、機体の構築自体が罠のような〈神骸騎〉です。


【卑劣な野装騎】×2
【HP】32/32 【LP】9/9 【反射】1 【防御力】肉体:5 技術:2 魔力:5 心力:4
[白兵攻撃]5D ダメージ:2D6+【肉体】5(《強襲》使用時+5)
[突き返し]5D ダメージ:2D6+【肉体】5(《強襲》使用時+5)
[射撃回避]2D (至近からの射撃の場合、《矢切》で5D)
[反射ダイス]1/1
※寄せ集めの集団のため、じゅうぶんな連携は取れない。
 攻撃可能な誰かをランダムに狙い、可能ならば《強襲》(【HP】5消費、要移動)を用いて攻撃する。



○ミドルフェイズ シーン6:勇者たち


 暗雲が不気味に流れ、ぽつぽつと雨粒が降り注ぎ始める。
 嵐の気配の中、ついにパーティは神聖イクタリ帝国の陣を斬り裂き、本陣へと辿り着いた。
 だがそこには、皇帝騎アイオーンと、《七星騎》のミザールとアリオトが揃って待ち構えている。

  • 皇帝騎アイオーン&〈御者〉ユジン
「辿り着いたようだね。実に見事だ、ノスフェラトゥ」

  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「な!? あれほどの〈神骸騎〉たちの壁を抜けてきたというのですか!?」
「このリクハが、またも見誤るとは……!」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「ハハハ。流石の英雄ぶりだね、ノスフェラトゥ!」
「以前の雪辱戦を挑ませてもらおうか」

  • 皇帝騎アイオーン&〈御者〉ユジン
「だが、この三柱の〈神骸騎〉を相手にしては――」
「いかにドウラ公国の主力〈神骸騎〉三柱といえども、分が悪いのではないかね?」

 事実、この三柱を真っ向から相手にしてはパーティでも分が悪い。
 さらなる増援でもあれば別だが、敵の真っ只中でそのような助けの手は期待できないだろう。
 厳しい戦いであるが、やるしかない――という状況であることを、GMはパーティに説明すること。

 PCたちの反応を確認した上で――

  • ???
「ククク……ハハハ! ハァーハッハッハッハッ!」
「分が悪い!? 分が悪いだって!?」

 突如として戦場に笑い声が響く。

  • “無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「――それじゃあ、リアピオン大祭個人戦、準! 優勝ッ!!」
「この“無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイルが、助太刀しても構わないということだ!」

 曇天の下、目にもまばゆい金色の機体が、大跳躍からの派手な着地とともに戦場に乱入してくる。
 タラレヤ・アンダマイルの〈神骸騎〉ラードーンだ。

  • “無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「キミには恩があるからね! ノスフェラトゥ!」
「このタラレヤ、借りっぱなしは性に合わないのさ!」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「ほう、こりゃまた派手な〈神骸騎〉が来たなァ!」
「その義侠心、見事なり! この《七星騎》アリオトが相手をしよう、“無敵の勇者”よ!」

  • “無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「応とも! 相手にとって不足なし!」
「さあノスフェラトゥ! コイツは僕が倒してしまってかまわないだろう? ――行きたまえ!」

 そう叫ぶや、〈神骸騎〉ラードーンは《七星騎》アリオトと交戦を開始する。
 機体性能の差で不利な戦いだが、ラードーンは金の塗装を泥まみれにしながら延々と粘る構えだ。


  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「ひ、必勝の策が……尽く……!」

  • 皇帝騎アイオーン&〈御者〉ユジン
「ハハハ、策でもって謀り殺すことはできないさ」
「それこそがイクタリ大陸の生ける伝説、ノスフェラトゥだ」
「だからこそ――」

 ユジン皇帝の駆るアイオーンが、その手にゲオルグ公から奪った皇帝槍を構える。

  • 皇帝騎アイオーン&〈御者〉ユジン
「我が手でもって、討ち果たす価値がある! ――さあ、来るがいいッ!」

 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。


――――――――

 もしリアピオン大祭で、タラレヤが恩義を感じるような行動をパーティが取っていないと判断される場合、タラレヤは登場しない。
《七星騎》アリオトを加えた状態でクライマックス戦闘を行うこと。

 また万が一にでもリアピオン大祭の個人戦でタラレヤが優勝している場合、それにあわせて演出やセリフを変えること。



○クライマックスフェイズ:光と闇と



 戦闘前に、各自に絆ダイスを1つ配布する
 GMは各キャラクターの絆ダイスが、4~5個あることを確認しよう。
 極端な使い方をしていない限りは、ほぼ上限値になっているはずだ。

 絆ダイスはキャラクターたちの勝利を支える重要な要素である。
 もし明らかに絆ダイスが不足している様子であれば、GMはロールプレイを促し、更に絆ダイスを与えても良い。


  • 神聖イクタリ帝国兵士
「み、見ろよ……あれ……」
「ああ、まるで神話だ、ガキの頃に見た……」
「皇帝騎の、伝説の――」


 皇帝槍を構えた白い〈神骸騎〉アイオーンが、ノスフェラトゥと対峙する。
 それはまるで、かつての皇帝騎伝説をなぞるような光景だ。
 ――――光と闇が、いま対峙する。


  • 皇帝騎アイオーン
  • 七星騎ミザール

 以上のエネミーを、下記の[接敵]状態で登場させる。
 勝利条件は「皇帝騎アイオーンの撃破」であると明示すること。

【皇帝騎アイオーン/七星騎ミザール】<距離>【パーティ側〈神骸騎〉×3】


  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「私は一族の使命に従い、皇帝騎に仇為すものを討つ!」
「覚悟しなさい、ドウラ公国の〈神骸騎〉たちよ!」

  • 皇帝騎アイオーン&〈御者〉ユジン
「ノスフェラトゥ! 不滅の〈神骸騎〉、我が敵手よ!」
「ふたたび、決着をつけようじゃあないか――!」


 皇帝騎アイオーンが[励起]を要する状態になった段階で、GMは戦闘の中断を宣言すること。

  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン
「ぐ、う……!」
「すまない、我が君よ。どうやら[励起]抜きでは、勝てぬ相手のようだ」

  • “神聖イクタリ皇后”ラルヴァ
「いいえ、致し方ありませんわ。ユジンさま」
「ともに参りましょう。どこまでも、どこまでも……」

 念話機から聞こえる彼らの会話とともに、アイオーンの白い機体に変化が生じる。
 関節各部から、禍々しい真っ黒な光が放たれはじめる。
 その身を飾る装飾具が砕け、機体の白い塗装が剥げ落ち――そして、剥げ落ちた胸部装甲の塗装の下。
 そこには〈神骸騎〉の修復能力をもってしてもなお癒えぬ、古く深い“槍傷”が刻まれていた。

 珍しく慌てた様子の“紋章官”フィオ・サームズから念話が入る。

  • “紋章官”フィオ・サームズ
「そんな、まさか……! こ、公王陛下! あれは皇帝騎ではございません!」
「あの禍々しき威容、胸部の深い槍傷……! あの特徴と一致する〈神骸騎〉は、大陸にただ一柱…」
「かつてイクタリ全土を惨禍に陥れ、皇帝騎との戦いのすえ討ち取られた、伝説の邪神騎が一柱――」
「……《偽神騎》、“裏切りの”ヤルダバオト!」


 GMは「二幕目のクライマックスシーン」を行うと宣言すること。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒める。

 そして例外的に、GMはそれぞれに絆ダイスを【3つ】渡し、次のシーンに移行する。
 この際、通常の絆ダイスの上限を越えても良い。



○GM用判定早見表


【《皇帝騎》アイオーン】
【HP】90/90 【LP】10/10 【反射】6 【防御力】肉体:6 技術:4 魔力:3 心力:7
[白兵攻撃]9D ダメージ:2D6+【心力】12(《血を燃やせ》使用時+1~3D6)
[突き返し]7D ダメージ:2D6+【心力】12
【射撃攻撃】9D ダメージ:2D6+【心力】12(《血を燃やせ》使用時+1~3D6)
[射撃回避]3D (至近からの射撃の場合、《矢切》で7D)
[反射ダイス]6/6
※《彗星の如し》で適切な箇所に移動し、皇帝槍(魔剣)の効果で1シナリオ1回の2連続攻撃を放つ。
 《血を燃やせ》は積極的に使って与えるダメージを増加。《古強者》は必要に応じて使用。
 HPが0になった場合、一度だけ「水素の心臓」でHPを1に回復する。


【《七星騎》ミザール】(魂魄:リクハ)
【HP】53/53 【LP】8/8 【反射】6 【防御力】肉体:1 技術:2 魔力:5 心力:3
【射撃攻撃】9D ダメージ:2D6+【魔力】15(《血を燃やせ》使用時+1~3D6)
[白兵回避]1D
[射撃回避]8D 
[反射ダイス]6/6
※《血を燃やせ》(消費【LP】1~3)は積極的に使って与えるダメージを増やす。
 《古強者》(消費【HP】5)は必要に応じて使用。
 《戦術指揮》(消費【HP】5)は可能な限り使用する。



――――〈神骸騎〉ラードーン非参戦の場合――――

【《七星騎》アリオト】(魂魄:モノク)
【HP】63/63 【LP】4/4 【反射】5 【防御力】肉体:6 技術:2 魔力:1 心力:3
[白兵攻撃]9D ダメージ:2D6+【肉体】22(《一騎当千》(消費【HP】5で範囲化)
[突き返し]9D ダメージ:2D6+【肉体】22
[射撃回避]1D (至近からの射撃の場合、《矢切》で9D)
[反射ダイス]6/6
※《彗星の如し》(消費【HP】5)で白兵キャラに接敵する。

――――――――――――――――――――――――






○クライマックスフェイズ2:ノスフェラトゥは蘇る



  • 神聖イクタリ帝国兵士
「な、なんだよあれ……」
「アイオーンは、皇帝騎じゃなかったのかよ……!?」

  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「そんな……あれは、あの胸の槍傷は、まさに《偽神騎》!」
「よもや謀られるとは……このリクハ、一生の不覚ッ!」

  • “無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「ぜぇ、ぜぇ……ぎ、《偽神騎》だってぇ!?」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「ちッ! クサいと思ってはいたが、想像以上の怪物が出てきたな――」
「“無敵の勇者”よ、降参だ!」

  • “無敵の勇者”タラレヤ・アンダマイル
「ハ、ハハ。《七星騎》に勝ってしまったな! けど、これはまた厳しそうな二回戦だ……!」

 戦場は混乱のさなかにあった。
 皇帝騎を名乗っていたアイオーンが、[励起]の瞬間、偽神騎の本性を現したのだ。
 曇天の空模様はついに崩れ、雨粒が猛烈な勢いで降り注ぎ始める。


  • “神聖イクタリ皇后”ラルヴァ
「ハハ! ハハハ! 何が『神聖なる皇帝騎』だ、馬鹿どもめ!」
「私はあの忌々しい皇帝に繋がる全てを冒涜してやりたかった! それだけだ!」

 嵐の中に、ラルヴァの哄笑が響き渡る。

  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン
「そうだ。我が運命、我が〈魂魄〉がそれを望んだ」
「だから私は、それを叶えよう。それが〈御者〉たる者の務めだ」

 ユジンの声は、穏やかなものだった。

  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン
「これから、君たちを皆殺しにしようと思う」
「この嵐だ。……ヤルダバオトの真の姿を見たものは、少ないだろうからね」

  • “小覇王”スラク・ダオ
「……にい、さま。《偽神騎》に、ラルヴァに魅入られたの?」
「今までのことは、みな嘘だったの?」

  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン
「いいや、何一つ嘘ではない」
「私は、父に顧みられぬ才無き皇子である私は、この神々の支配する大陸で、英雄になりたかった――」
「ラルヴァはその狂おしき切望を叶えてくれた。私はラルヴァを愛している。私は、彼女の味方だ」

  • “神聖イクタリ皇后”ラルヴァ
「たとえ私が、《偽神騎》に宿る怨霊だとしても」
「たとえ私が、破滅をもたらす悪そのものと知っていても」
「血のつながった家族と私を、天秤にかけねばならぬとしても。ふふ、フフフ……!」
「さあ。皆殺しにしましょう、ユジンさま――そして大陸に、更なる混沌と冒涜をもたらすのです!」

 誰もが無傷ではない状態。
 ラルヴァがそう宣言した、その時だ。
 《偽神騎》ヤルダバオトの手にある皇帝槍が、澄んだ音を響かせ震えだしたのは。

  • “神聖イクタリ皇后”ラルヴァ
「……? 槍が……」

 次の瞬間、ヤルダバオトの手から、皇帝槍がフッと掻き消えた。
 そしてノスフェラトゥの手に、皇帝槍は最も適切な武器のかたちとなって出現する。
 ……美しい、白い光と共に。

  • ドウラ公国兵士
「皇帝槍が……!」
「あの槍が、ノスフェラトゥの手に戻ったぞ!」
「ノスフェラトゥが、蘇った!」

 ――ノスフェラトゥは蘇る。
 ――ノスフェラトゥは、蘇る!
 兵士たちの間で、熱をもってその言葉が交わされる。

  • “神聖イクタリ皇后”ラルヴァ
「忌々しい皇帝槍め! 私の手にあることがさほどに気に入らぬか?」
「ハッ、構わぬ! これこそがヤルダバオトの真の槍……この槍で、皇帝槍を打ち砕いてこそ!」

 ヤルダバオトが手をかざすと、渦巻く禍々しい暗黒のオーラが凝結し、その手に禍々しい槍が現れる。
 その形状は、皇帝槍にあまりに酷似している――

  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン
「さあ、決戦だ。ノスフェラトゥ――!」

  • “小覇王”スラク・ダオ
「兄さま、ラルヴァ……」 スラク皇女は震える声でつぶやくと、PC1の名を呼ぶ。
「お願い、勝って――! どうかあの《偽神騎》を、兄さまたちを、止めてっ!」


 《偽神騎》ヤルダバオトを、改めて下記の[接敵]状態で登場させる。
 前シーンの戦闘ラウンドの続きからではなく、新規に1ラウンド目から戦闘を開始すること。

【《偽神騎》ヤルダバオト】<距離>【パーティ側〈神骸騎〉×3】

 なお盤面が煩瑣にならないよう、周囲の機体はデータ的に参戦しない。
 代わりに以下の支援効果を適用する。



――――――――――――

 GMはパーティにこの効果の一覧を渡すこと。
 パーティはこのクライマックス戦闘中、以下の効果を使用できる。

【味方による支援効果】

  • 《七星騎》ミザールの《戦術指揮》
 セットアップに使用する。通常の処理を無視して、自身および味方の行動順を任意に決定できる。(1シナリオ1回)

  • 《七星騎》アリオトの連携攻撃
 1ラウンドに1回、任意の攻撃が命中した際、そのダメージに+4d6ダメージを追加する。

  • スラク・ダオの采配
 1ラウンドに1回、〈神骸騎〉一柱の【反射】値と反射ダイスを+3する。

  • 〈神骸騎〉ラードーンの《鉄壁》
 任意の〈神骸騎〉へ攻撃が命中した際、そのダメージを無効化する。(1シナリオ1回)


【皇帝槍の追加効果】

  • 皇帝槍
 この武器の形状は、現在のノスフェラトゥが使用する任意の武器データに変更される。
 武器効果の使用を宣言することで、皇帝槍の装備者はメジャーアクションで2回の攻撃を行うことができる。(1シナリオ1回)

  • 賦活
 皇帝槍からは[励起]状態を思わせる光が放たれている。
 任意の〈神骸騎〉の【LP】が0になった際、〈魂魄〉の死亡を打ち消し、【LP】1に回復できる。(1シナリオ1回)


――――――――――――



――――――――――――


【効果使用時のNPC台詞例】

  • 《七星騎》ミザール&リクハ
「いかに《偽神騎》の装甲とはいえ、《七星騎》の武装ならば――」 ミザールが真っ先に閃光砲を放つが、《偽神騎》の前に弾け散る。
「なっ!? 嘘でしょう、神代そのままの魔導障壁だとでもいうのですか!? これに通る武器は、もはやイクタリ大陸には――!」

  • 《七星騎》アリオト&モノク
「伝説の《偽神騎》といえども、不滅じゃあない。キミの胸の傷が、その証明だろう?」
「長いことどっちつかずの困った立場だったが、ようやくだ。――さあ羽ばたこう、アリオト!」

  • スラク・ダオ
「ラルヴァ。あなたにとっては全て演技でも、私はあなたを姉のように思っていたわ――」
「皆、《偽神騎》がどれほどのものであれ、兄さまの御者としての癖はそのままのはずよ……来るわ! 今!」

  • 〈神骸騎〉ラードーン&タレルヤ・アンダマイル
「《偽神騎》だかなんだか知らないが……ノスフェラトゥを負かすのは、ボクさ!」
「大陸の危機、か。ハハ……〈御者〉を頼んでからずっと、キミには無理をさせてる。けど、もう少しだけ頼んだよっ!」


【敵NPCの台詞例】

  • ラルヴァ
「やつが遺した、《七星騎》の存在は懸案だった。しかしもはや、《七星騎》さえ《虚無の衣》を貫けぬ。凋落したものだな、ハハハ!」
「さあ、《暗黒の太陽》――ヤルダバオトの威を知るが良い!」
「さあ血を燃やせ! ヤルダバオトの暗黒の神血は無尽……闇の炎に灼かれて消えよ!」
「あ゛ああッ! さらに……さらに力を! 暗黒の太陽よ、煮え滾れッッ!」
「蘇る? 不滅の〈神骸騎〉だと? はッ! このヤルダバオトこそが、真なる不滅よ!」

  • ユジン
「このヤルダバオトの御者たるため、私は鍛錬を繰り返してきた。機体の性能を持て余すなど、期待しないことだ」
「汲み上げよ、我が君よ。暗黒の深淵より、さらなる力を!」
「ぐ、うう……まだだッ! ラルヴァ! 君の望むがままに、私は邪悪で在ろう! 幾度でも立ち上がろう!」


――――――――――――




――――――――――――

【味方による支援効果】(パーティ閲覧不可)

 この支援効果はGMのみが参照すること。
 支援効果が発揮されようとする段階、つまりPCが死亡するタイミングで、パーティにこの効果の存在を開示すること。

  • 屍の盾
 皇帝槍の支援効果などが尽き、[励起]状態のパーティの誰かが死亡する状況となった際に使用できる。
 死亡する〈神骸騎〉1騎につき、NPCひとりが盾となり死亡する。
 犠牲となる〈神骸騎〉はGMが自由に選択すること。

 この死亡には、双巨人など、シーン外の〈神骸騎〉が飛び込んできても構わないものとする。
 また、状況によっては生身のNPCを使用しても構わない。

 例えばスラク皇女が同乗している場合、大破したノスフェラトゥの心座に破片が飛び込み、皇女が魂魄を庇う。
 エタタヤが倒れた〈神骸騎〉に駆け寄り応急処置を行いPCを励ますが、その背には致命傷となる破片が幾本も突き立っている。
 カグラが手勢とともにラルヴァの気を引き、ヤルダバオトの一撃で血煙と化す等だ。

 死亡するNPCは、できるだけそのPCにとって思い入れの強い者を優先し、GMが選出する。
 記憶に残る、壮絶な死を演出しよう。

 盾をつとめられるだけの関係をもったNPCが尽き果てた時。
 あるいはPCがNPCの「・屍の盾」の効果を拒絶し自らの死を望んだ時、PCの〈神骸騎〉は大破、死亡する。

――――――――――――




《偽神騎》ヤルダバオトの【LP】が0になった時点で戦闘を終了する。

  • ドウラ公国兵士
「あれは、まるで……」
「まるで皇帝騎の、伝説の――」

 白く輝く皇帝槍を構えた〈神骸騎〉ノスフェラトゥが、《偽神騎》ヤルダバオトの胸を貫く。
 それはまるで、かつての皇帝騎伝説をなぞるような光景だ。

  • “神聖イクタリ皇后”ラルヴァ
「そんな、ありえない! 皇帝騎ならざる、ただの〈神骸騎〉に! このヤルダバオトが!」

  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン
「ああ、強いな……槍の強さではない。これが、人の身で伝説を背負うものの強さか」 

 禍々しい黒炎を噴出しながら抵抗するヤルダバオトの〈心座〉が、貫かれ、崩壊していく。

  • “神聖イクタリ皇后”ラルヴァ
「ああ、これで終わり、ですか――」

  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン
「最後に聞かせてくれ、ラルヴァ。いにしえの怨霊よ。何故、お前は私を選んだ?」

  • “神聖イクタリ皇后”ラルヴァ
「フ、フフ。ほんの少し――ええ、ほんの少しだけ。あなたさまは、あの憎たらしいひとに似ていたのです」

  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン
「ならば――私が、お前の運命だったのだな」

 解き放たれた皇帝槍の力によって局所的に暗雲が晴れ、天から光が差し込む。
《偽神騎》を討ち取るノスフェラトゥの姿が戦場全体に晒され、神聖イクタリ帝国軍は混乱し、戦意を喪失する。

 完全に破壊された偽神機の〈心座〉では、ユジンの骸とラルヴァの骸が、抱き合うように事切れている。
 パーティが勝利し、各NPCと会話を行ったところで場面を終了する。




○GM用判定早見表


【《偽神騎》ヤルダバオト】
【HP】0/90 【LP】100/100 【反射】6 【防御力】肉体:6 技術:4 魔力:3 心力:7
[白兵攻撃]8D ダメージ:2D6+【心力】17(マイナーで《血を燃やせ》、LP3点使用し+3D6)
[突き返し]7D ダメージ:2D6+【心力】17
【射撃攻撃】9D ダメージ:2D6+【心力】17(マイナーで《血を燃やせ》、LP3点使用し+3D6)
[射撃回避]3D (至近からの射撃の場合、《矢切》で7D)
[反射ダイス]6/6
※1ラウンド目のセットアップで《暗黒の太陽》、シーン全ての〈神骸騎〉を攻撃。
 《虚無の衣》の効果により、皇帝槍からダメージを受けるまで全ての攻撃を無効化する。
 メジャーアクションごとに、魔王槍+飛刃で二騎に対して続けざまに攻撃を行う。
 またLPが0になった瞬間、《不滅なる悪神》で起き上がり、殺害可能な〈神骸騎〉を道連れにしようとする。

 《彗星の如し》、《血を燃やせ》、《古強者》などの従来戦技も残数があれば積極的に使用する。
 特に《血を燃やせ》については、膨大なLPを利して、可能な限り最大値3消費で使用し続ける。
 《暗黒の太陽》での全体攻撃と、《不滅なる悪神》によるLP1での再起時、《血を燃やせ》が使用不能であることに注意。



○エンディング


 各プレイヤーの希望に沿ってエンディングを演出すること。

 ドウラ公国とダオ帝国の行く末については、PC1がスラク皇女に対し恋愛感情があれば結婚と併合。
 友情を有しているのであれば、ダオ帝国を復興してのドウラ公国との強固な同盟関係を形作るのが妥当だろう。
 あるいはドウラ公国が、ダオ帝国を併呑し、空前の大帝国を築き上げても良いかもしれない。
 いずれにせよ地方一帯が広域に平定され、平和と繁栄の時代を迎えることとなる。

 金色の麦畑が風にそよぐ、穏やかなドウラ公国の景色。
 それを眺めながら、“小覇王”スラクが言う。

「……ねえ、PC1。知ってる? 皆が言っているの」
「ノスフェラトゥは蘇る。ノスフェラトゥは不滅の〈神骸騎〉だって」
「負ければ壊れる普通の〈神骸騎〉だなんてこと、ホントはみんな分かってるはずなのに」

「もしかしたら……大昔の皇帝騎も、そんな〈神骸騎〉だったのかもしれないわね」
「不死でも、不滅でも、無敵でも、最強でない」
「〈魂魄〉と〈御者〉と〈神骸騎〉が力を合わせて、皆が『信じたい』伝説を背負いきった」
「そうして戦乱を駆け抜けた、ただの普通の〈神骸騎〉――――」

 ……ノスフェラトゥは、蘇る。



         ――――神骸機ディ・カダーベルTRPG 【ノスフェラトゥ戦記】 完




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 ……この平和が数十年続くか、百年続くかは分からない。
 だが、これがいかに価値ある平和かを、この場にいる誰もが知っていた。

                   『ドウラ大公国年代記』エタタヤ・サン


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――







○使用エネミーデータ



『誉れなき従卒騎』(作成:凪ノ香)

ライフパス
儀式:性別/肉体+1
来歴:兵士/射撃+1
感情:――――

能力値
【肉体】7 【技術】4 【魔力】1 【心力】2 【神格】3
【HP】51 【LP】3 【常備化ポイント】15

【白兵】1 【射撃】5 【反射】1

【攻撃力/防御力】
肉体 7/7
技術 4/4
魔力 2/2
心力 1/1


装備(合計常備化ポイント:15/15)

 従卒騎(ミーレス) 常備化P:3
 【HP】+10。【肉体】能力値+1。


 主兵装1:大筒(カノン) 常備化P:3
 ダメージ:【肉体】+3D6
 自身と[接敵]している対象には使用不可能。【反射】-1。


 主兵装2:盾(ベイル) 常備化P:2
 ダメージ:【肉体】
 【HP】+10。


 副兵装1:火炎放射器(フレイムスローワー) 常備化P:2
 ダメージ:【LP】1ダメージ
 この武器のダメージはあらゆる装甲を無視する。
 この武器のダメージは、あらゆる効果によって上昇しない。
 自身と[接敵]している対象にのみ使用できる。1シナリオ中に3回まで使用可能。

 副兵装2:拡散閃光砲(フラッシュビーム) 常備化P:1
 ダメージ:なし
 [マイナーアクション]で使用する。
 次の[メジャーアクション]で攻撃する対象の、防御判定のダイスを-1する(最低1)。


 オプション1:増加装甲(フルアーマー) 常備化P:2
 【HP】+10。【反射】-1。

 オプション2:葡萄玉(ラングリッジ) 常備化P:2
 射撃武器による命中判定を行う際に使用する。その攻撃の対象は[範囲]となる。
 この装備を使用した場合、〈神骸騎〉に対しては使用者と[接敵]していない限りダメージは0になる。
 他の弾薬系装備と同時に使用する事はできない。消耗品。

 ※念話機(テレパシー) 常備化P:0


《歴戦》
消費:なし
【HP】+10。


【誉れなき従卒騎】
【HP】51/51 【LP】3/3 【反射】1 【防御力】肉体:7 技術:4 魔力:2 心力:1
[射撃攻撃]5D ダメージ:3D6+【肉体】6(拡散閃光砲で防御ダイス-1。[接敵]時、使用不可)
[火炎放射]5D ダメージ:【LP】1(拡散閃光砲で防御ダイス-1。[接敵]時のみ、葡萄玉で[範囲]化可能)
[白兵回避]1D
[射撃回避]5D
[反射ダイス]1/1
 ※白兵型の〈神骸騎〉の[接敵]を待ち、隠し武器である火炎放射器から[範囲]に燃料を放射します。
  火炎放射器の間合いに自ら入ってこない〈神骸騎〉とは、基本的に通常の射撃戦を行います。
  誉れを捨て切った、機体の構築自体が罠のような〈神骸騎〉です。




『卑劣な野装騎』(作成:凪ノ香)

ライフパス
儀式:感情/心力+1
来歴:兵士/白兵+1
感情:――――

能力値
【肉体】5 【技術】2 【魔力】5 【心力】4 【神格】1

【HP】32 【LP】9 【常備化ポイント】5

【白兵】5 【射撃】2 【反射】1

【攻撃力/防御力】
肉体 5/5
技術 2/2
魔力 5/5
心力 4/4


装備(合計常備化ポイント:5/5)
 機体:野装騎(常備化P:2)
 【HP】+10。【魔力】能力値+1。【技術】属性の武器を装備できない。

 主兵装1:斧(アックス) 常備化P:2
 ダメージ:【肉体】+2D6 【反射】-1

 主兵装2:盾(ベイル) 常備化P:2
 ダメージ:【肉体】
 【HP】+10。

 オプション:紋章(エンブレム) 常備化P:1
【HP】+5。盾(ベイル)を装備している場合、[オプション]枠を使用しない。

 ※念話機(テレパシー) 常備化P:0

《強襲》
消費:【HP】5
 自分から[移動]を行って[接敵]した際に使用する。
 直後に行う[白兵攻撃]のダメージを+5する。

《矢切》
消費:【HP】2
 至近距離からの[射撃攻撃]の対象となった際に使用する。
 【白兵】で[防御判定]を行う事ができる。[突き返し]は発生しない。



【卑劣な野装騎】
【HP】32/32 【LP】9/9 【反射】1 【防御力】肉体:5 技術:2 魔力:5 心力:4
[白兵攻撃]5D ダメージ:2D6+【肉体】5(《強襲》使用時+5)
[突き返し]5D ダメージ:2D6+【肉体】5(《強襲》使用時+5)
[射撃回避]2D (至近からの射撃の場合、《矢切》で5D)
[反射ダイス]1/1
※寄せ集めの集団のため、じゅうぶんな連携は取れない。
 攻撃可能な誰かをランダムに狙い、可能ならば《強襲》(【HP】5消費、要移動)を用いて攻撃する。






○ボスキャラクターデータ



《七星騎》アリオト(作成:駄天使エイワス)

魂魄:モノク
御者:
神骸騎:《七星騎》アリオト
国家:ダオ帝国

ライフパス
 儀式:性別/【肉体】+1
 来歴:兵士/【白兵】+1
 関係:/

プロフィール

能力値
 【肉体】6 【技術】2 【魔力】1 【心力】3 【神格】5

 【HP】63/8+55 【LP】4/4 【常備化ポイント】40

 【白兵】9 【射撃】1 【反射】5 

 【攻撃力/防御力】
  肉体 6/6
  技術 2/2
  魔力 1/1
  心力 3/3

 【絆ダイス】:1/5

戦技
 《遺産》×3 消費:なし
  [常備化ポイント]を5ポイント獲得する。
 この【戦技】は3回まで取得でき、効果は累積する。

 《矢切》 消費:【HP】2
 至近距離からの[射撃攻撃]の対象となった際に使用する。
 【白兵】で[防御判定]を行う事ができる。[突き返し]は発生しない。

 《彗星の如し》 消費:【HP】5
 [セットアップフェイズ]に使用する。[移動]または[離脱]を行える。

 《一騎当千》 消費:【HP】3
 [メジャーアクション]で使用する。同時に[白兵攻撃]を行い、その対象を[範囲]とする。

 《二刀流》 消費:なし
 オリジナル戦技。
 同じ主兵装の[白兵武器]を二つ装備している場合、そのダメージを合計する。
 同時に【白兵】を+1する。


装備(合計常備化ポイント:39/40)
 機体:七星騎(強襲騎) 常備化P:20
    【HP】+40。
     【白兵】+3。[白兵攻撃]のダメージ+10。【反射】+1。

 主兵装1:長剣(ソード) 常備化P:1
      ダメージ:【肉体】+1D6

 主兵装2:長剣(ソード) 常備化P:1
      ダメージ:【肉体】+1D6

 副兵装:近接防御砲(バルカン) 常備化P:2
     ダメージ:【技術】
     [オートアクション]で宣言し、至近距離に対する[白兵]、[射撃]、[突き返し]のダイスを+1する。
     この武装は上記効果を含め、1シナリオ中に1回のみ使用できる。
     上記効果を用いてこの武装を同時に使用する事は、合計で「1回」とする。

 オプション1:水素の心臓(ハート・オブ・ハイドロゲン) 常備化P:3
       【肉体】+1。
       また【HP】が0になった瞬間、【肉体】を1下げ、【HP】を1に回復する事ができる。
       [励起]中には使用できない。この効果は1シナリオ中1回だけ使用できる。
       このオプションは1つしか装備できない。

 オプション2:調律骨格(ハーモナイズ・フレーム) 常備化P:3
        【心力】+1。【反射】+1。【HP】+5。
        このオプションは1つしか装備できない。
       ※専用色(カラー) 常備化P:5
        【反射】+1。[オプション]枠を使用しない。このオプションは1つしか装備できない。

 神化:【HP】+5

成長
 【国威】:5
 《遺産》取得
 《遺産》取得
 《矢切》取得
 《彗星の如し》取得
 《一騎当千》取得




《七星騎》ミザール(作成:駄天使エイワス)

魂魄:リクハ
御者:
神骸騎:《七星騎》ミザール
国家:ダオ帝国

ライフパス
 儀式:聖痕/【魔力】+1
 来歴:継承/【反射】+1
 関係:/

プロフィール

能力値
 【肉体】1 【技術】2 【魔力】5 【心力】4 【神格】5

 【HP】53/3+50 【LP】8/8 【常備化ポイント】40

 【白兵】1 【射撃】8 【反射】6

 【攻撃力/防御力】
  肉体 1/1
  技術 2/2
  魔力 5/5
  心力 3/3

 【絆ダイス】:1/5

戦技
 《遺産》×3 消費:なし
  [常備化ポイント]を5ポイント獲得する。
 この【戦技】は3回まで取得でき、効果は累積する。

 《銃型》 消費:【HP】4
 [メジャーアクション]で[射撃攻撃]を行う際に使用する。
 [接敵]中に使用不可能な射撃武器を、[接敵]中でも使用可能にする。
 それ以外の射撃武器であれば、そのダメージは+2される。

 《血を燃やせ》 消費:【LP】1~3
 [マイナーアクション]で使用する。
 直後に行う[メジャーアクション]で相手に与えるダメージを、消費【LP】1ごとに+1D6する。

 《古強者》 消費:【HP】5
 自分が判定を行った直後に宣言する。その判定に用いたダイスを振り直す事ができる。
 同じ判定に連続して使用する事も可能だが、結果を差し戻す事はできない。
 1シナリオ中に3回だけ使用可能。

 《戦術指揮》 消費:【HP】5
 オリジナル戦技。
 [セットアップフェイズ]に使用する。
 通常の処理を無視して、自身と味方を行動順番を任意に決定できる。


装備(合計常備化ポイント:40/40)
 機体:七星騎(強襲騎) 常備化P:20
    【HP】+40。
     【射撃】+3。[射撃攻撃]のダメージ+10。【反射】+1。

 主兵装1:閃光砲(ビームカノン) 常備化P:5
      ダメージ:【魔力】+2D6 
      この兵装を用いた[射撃攻撃]のダイス+1。
      自身と[接敵]している対象には使用不可能。【反射】-1。

 主兵装2:盾(ベイル) 常備化P:2
      【HP】+10。

 副兵装:目牙閃光砲(メガビームカノン) 常備化P:3
     ダメージ:【魔力】+3D6
     1シナリオ中1回のみ使用可能。

 オプション1:望遠鏡(スコープ) 常備化P:2
        【射撃】+1。このオプションは1つしか装備できない。

 オプション2:調律骨格(ハーモナイズ・フレーム) 常備化P:3
        【心力】+1。【反射】+1。【HP】+5。
        このオプションは1つしか装備できない。
       ※専用色(カラー) 常備化P:5
        【反射】+1。[オプション]枠を使用しない。このオプションは1つしか装備できない。
 神化:なし

成長
 【国威】:5
 《遺産》取得
 《遺産》取得
 《銃型》取得
 《血を燃やせ》取得
 《古強者》取得





《皇帝騎》アイオーン(作成:駄天使エイワス)

  • 魂魄:ラルヴァ
  • 御者:ユジン
  • 神骸騎:アイオーン(ヤルダバオト)
  • 国家:神聖イクタリ帝国

  • ライフパス
 儀式:??/??
 来歴:??/??
 関係:??/??

  • プロフィール

  • 能力値
 【肉体】6 【技術】4 【魔力】3 【心力】7 【神格】6

 【HP】90/90 【LP】10/10 【常備化ポイント】54

 【白兵】7 【射撃】3 【反射】6 

 【攻撃力/防御力】
  肉体 6/6
  技術 4/4
  魔力 3/3
  心力 7/7

 【絆ダイス】:1/5

  • 戦技
《遺産》 消費:なし (3回)
 地下に〈神骸騎〉が隠してあったなど、往々にして〈神骸騎〉とその操手たちの出会いは劇的である。
 [常備化ポイント]を5ポイント獲得する。
 この【戦技】は3回まで取得でき、効果は累積する。

《矢切》 消費:【HP】2
 優れた剣士たるもの、射撃への備えも身につけているものだ。
 至近距離からの[射撃攻撃]の対象となった際に使用する。
 【白兵】で[防御判定]を行う事ができる。[突き返し]は発生しない。

《血を燃やせ》 消費:【LP】1~3
 戦いに勝つということは、生命そのものを燃やして尚、容易い事ではない。
 [マイナーアクション]で使用する。
 直後に行う[メジャーアクション]で相手に与えるダメージを、消費【LP】1ごとに+1D6する。

《古強者》 消費:【HP】5
 常に生き残ってきたからこそ、強者と呼ばれるようになったのだ。
 自分が判定を行った直後に宣言する。その判定に用いたダイスを振り直す事ができる。
 同じ判定に連続して使用する事も可能だが、結果を差し戻す事はできない。
 1シナリオ中に3回だけ使用可能。

《彗星の如し》 消費:【HP】5
 周囲の地形を蹴りつければ、〈神骸騎〉は想像を絶する加速力を獲得する。
 [セットアップフェイズ]に使用する。[移動]または[離脱]を行える。

《歴戦》 消費:なし
 戦歴を重ねるには、強いだけでは意味がない。生き延びる事が、最低条件なのだ。
 【HP】+10。この【戦技】を取得した時点での【神格】が2以下の場合は更に+5する。

《三位一体》 消費:なし
 〈魂魄〉、〈御者〉、〈神骸騎〉の完全なる合一、三位一体の在り方は、まさに神の復活に他ならない。
 [励起]中、相手に与えるダメージは全て+5される。


  • 装備(合計常備化ポイント:54/54)
 機体:皇帝騎(偽神騎ヤルダバオト)(常備化P:15)
    【HP】+40。[白兵攻撃]と[射撃攻撃]のダイス+1。
    【肉体】【技術】のダメージ+3。【反射】+1。
 主兵装1:皇帝槍(魔剣)(常備化P:5)
      ダメージ:【心力】x2+2D6
      この兵装を用いた[白兵攻撃]のダイス+1。
      [メジャーアクション]で使用する。
      その[メジャーアクション]では、この武器の攻撃を2回行う事ができる。1シナリオ1回。

 主兵装2:盾(常備化P:2)
      ダメージ:【肉体】 【HP】+10。

 副兵装:拡散閃光砲(常備化P:1)
     ダメージ:なし
      [マイナーアクション]で使用する。
     次の[メジャーアクション]で攻撃する対象の、防御判定のダイスを-1する(最低1)。
    ※飛刃(常備化P:5)
     ダメージ:【心力】x2+2D6
     この兵装を用いた[射撃攻撃]のダイス+1。
     この兵装に対しては、[防御判定]のダイスは-1される。(最低値0)
     皇帝槍(魔剣)を装備している場合は、[副兵装]枠を使用せず装備できる。
     皇帝槍(魔剣)を装備している場合は、この武器は【白兵】を用いて[射撃攻撃]できる。

 オプション1:水素の心臓(常備化P:3)
        【肉体】+1。
        また【HP】が0になった瞬間、【肉体】を1下げ、【HP】を1に回復する事ができる。
        [励起]中には使用できない。この効果は1シナリオ中1回だけ使用できる。
        このオプションは1つしか装備できない。
 オプション2:調律骨格(常備化P:3)
        【心力】+1。【反射】+1。【HP】+5。
        このオプションは1つしか装備できない。
       ※専用色(常備化P:5)
       【反射】+1。[オプション]枠を使用しない。このオプションは1つしか装備できない。

 神化:【HP】+5(5回)

  • 成長
 【国威】:11

 ・《遺産》取得
 ・《遺産》取得
 ・《矢切》取得
 ・《血を燃やせ》取得
 ・《古強者》取得
 ・《彗星の如し》取得
 ・《歴戦》取得
 ・《三位一体》取得
 ・【常備化P】+3
 ・【常備化P】+3
 ・【常備化P】+3


  • 以下、[励起]後に使用可能となるデータ

主兵装1:皇帝槍(魔剣)→魔王槍(魔剣)に変更。
通常通り、「飛刃」も使用可能。

 魔王槍(魔剣)
 ダメージ:【心力】x2+2D6
 かつて《皇帝騎》と互角以上に渡り合った、ヤルダバオト自身の権能の具現。
 見た目は《皇帝槍》に似ているが、比較にならないほど禍々しい。
 この兵装を用いた[白兵攻撃]のダイス+1。
 [メジャーアクション]でこの兵装を使って攻撃する場合、同時に「飛刃」での攻撃も行える。
 その際、対象は別々に指定すること(同一対象に攻撃は行えない)



  • 専用戦技(これらの戦技の使用はあらゆる手段で妨害、無効化する事はできない)

《暗黒の太陽》
 真の力を解き放ったヤルダバオトは、あらゆる光を呑み込む暗黒の天体そのものと化す。
 [セットアップ]で使用する。その際、自身が装備している[主兵装]か[副兵装]を一つ選択する。
 【LP】を最大値まで回復した上で、【LP】の数値を10倍にする。(つまり【LP】が100になる)
 同時に、シーン内に登場している任意の対象全てに選択した兵装による攻撃を行う。
 この能力は1シナリオに1回まで使用できる。


《虚無の衣》
 ――あらゆる攻撃を無効にするヤルダバオトの魔力障壁。
 無敵に等しい神代の護りだが、かつて宿敵から受けた古傷という綻びが存在する。
 ヤルダバオトが受ける全てのダメージを無効化する。
 ただし一度でも「皇帝槍」での攻撃が命中した場合、ヤルダバオトは上記のダメージ無効をシーン中喪失する。


《不滅なる悪神》
 死すべき運命すら、邪悪なる神は歪めることができる。人よ、慄け。神の御前に頭を垂れよ。
 【LP】が0以下になった際に使用できる。
 【LP】を1点回復し、即座に[マイナーアクション]と[メジャーアクション]を1回ずつ行える。
 この能力は1シナリオに1回まで使用できる。












◆キャンペーン背景情報



○歴史の分岐点


「キャンペーンシナリオノスフェラトゥ戦記」は、公式の歴史ではありません。
 ですからあなたがたのイクタリ大陸では、二三〇四年においてもこの戦乱は起こらないかもしれません。

 このキャンペーンシナリオが、イクタリ大陸の歴史において発生する分岐点は一つ。
 ダオ帝国の、空気のような庶子ユジン・ダオ皇子。
 彼がある日どこかの外遊中、気晴らしに皇帝騎ゆかりのものとされる古戦場跡へ遠乗りに出かけるか、否か。
 たったそれだけの出来事が歴史の分かれ目となります。

 ユジン皇子が、《偽神騎》ヤルダバオトの〈魂魄〉ラルヴァと出会わなければ、ゲオルグ公王は討ち取られることはありません。
 ダオ帝国とドウラ公国の戦力均衡は保たれることでしょう。

 しかしこのキャンペーンを遊ばない場合でも、「ノスフェラトゥ戦記」の戦乱が、あなたたちのイクタリ大陸で起こったものとしても構いません。
 そしてその大乱のなかで、ドウラ公国の継承者は《偽神騎》を討ち取れないかもしれません。

 この戦いが悲劇に終わった場合はどうなるでしょう?
《偽神騎》ヤルダバオトの〈魂魄〉ラルヴァは大陸秩序の破壊とイクタリ帝国への冒涜を目的としています。
〈御者〉であるユジン皇子にも、それを制止する意志はありません。
 彼らは英雄の仮面をかぶり、ドウラ公国をも併呑し、神聖イクタリ帝国を膨張させ――
 そしてある日、突如として冒涜的な圧政を開始します。
 その場合、その圧政に対し立ち向かう、新たな〈神骸騎〉を駆る英雄たちが現れるかもしれません。

 あるいは、誰か別の者がラルヴァと出会った場合はどうなるでしょう?
 大国であるダオ帝国の皇子ではなく、もっと別な立場の人間が《偽神騎》に魅入られ、戦乱を画策したとしたら。
 あるいはプレイヤーが「悪」の側につき、《偽神騎》とともに大陸じゅうを征服し、そしてラルヴァとユジン皇子に叛乱を試みたら?

 ――この「ノスフェラトゥ戦記」は、そのようなシナリオフックとして利用してもかまいません。
 自由な発想で、あなたがたのイクタリ大陸の歴史を紡いでいってください。




○パーソナリティ詳細情報



  • “神聖イクタリ皇帝”ユジン・ダオ

 空気のように扱われていた皇子は、気晴らしの遠乗りで皇帝騎が戦ったと伝えられる古戦場に赴きました。
 そこで女の声――ラルヴァのものです――に導かれ、瓦礫の下に眠る《偽神騎》を発見したのです。
 それが良くないものであることなど、ひと目でわかり……それでも彼は、その〈神骸騎〉に乗り込みました。
 そして〈魂魄〉ラルヴァの導きによって、彼は夢を叶えることができました。
 一国の皇子たるに相応しい、戦場の英雄としての誉れ。運命を共にしてくれる、儚げでたおやかな美姫。
 ラルヴァによって救われた彼は、ラルヴァを愛し、ラルヴァのもたらす破滅をすべて受け入れる覚悟です。
 そして叶うならば、どうしようもなく狂ってしまったラルヴァの永き生に、終わりをもたらしてやりたいとも。

 その手をとった〈魂魄〉のために、すべてを捨てて尽くし戦う者。
 ――――彼はある意味で、最も〈御者〉らしい〈御者〉のひとりだったのかもしれません。



  • “腕輪の君”“神聖イクタリ皇后”ラルヴァ 女性 ??歳

 その二つ名、“腕輪の君”とはなんら比喩ではありません。
 彼女の儚げなたおやかで容貌は、全てユジン皇子の腕輪からの立体映像です。
 ――ラルヴァが《偽神騎》ヤルダバオトに捧げたのは「瞳」などという生易しいものではなく、肉体や精神、寿命を含む「全て」なのですから。

 その時からラルヴァは《偽神騎》ヤルダバオトと一体となりました。
 この〈神骸騎〉の〈魂魄〉となった者は老いることも狂うことも死ぬこともできず、その肉体は〈心座〉から一歩も外には出られません。
 つまり彼女は、まさに《皇帝騎》とかつて戦いを繰り広げた、伝説の邪神騎の〈魂魄〉そのひとなのです。

 ――であれば僭称を警戒する《七星騎》たちを騙すのも、彼女にとっては容易なこと。
 真の皇帝騎を直に知る彼女であれば、己の〈神骸騎〉を皇帝騎に似せ、その由来をもっともらしく語るなど、造作もないことでした。

 そして真なる《皇帝騎》の行方は《七星騎》たちさえ知らず、その《七星騎》たちも時の流れに性能を削られ、もはやヤルダバオトには遠く及ばない。
 それを知った時、常に淑やかに振る舞っていたラルヴァは、ユジン皇子の前で大声で笑いだしたといいます。
 ……もはや大陸に敵など居ない。
 ここはかつての自分を知るものも、敵も味方も誰一人いなくなり、何もかもの技術が退行した時の果てなのだと。
 その時はじめて、そう理解したかのように。

 彼女が何を思い、何を願って《皇帝騎》と戦いを繰り広げたのか、今となっては誰も知りません。
 《皇帝騎》を、初代イクタリ皇帝を、愛していたのか、憎んでいたのか。彼女自身さえ分かりません。
 どうして、何のために大陸を制覇し、《皇帝騎》の伝説を貶めようとしているのかも、また……
 しかし《偽神騎》に宿る怨念ともいうべき彼女が、《皇帝騎》にまつわる全てへの冒涜と、大陸秩序の破壊を画策していたのは歴然たる事実です。

 ――――そんな彼女が最後の〈御者〉としてユジン皇子を見出したのは、本当に運命であったのかもしれません。



○〈神骸騎〉詳細


  • 《偽神騎》ヤルダバオト

 ――《皇帝騎》アイオーンなど偽りの名。
 かつて《皇帝騎》が平定していった、魔王や魔神、悪神などと称される伝説的な邪神騎たちの一柱。
 それがこの《偽神騎》、“裏切りの”ヤルダバオトです。
 この〈神骸騎〉は、〈魂魄〉に肉体の一部でも心でも寿命でもなく、「全て」を要求します。
 つまり〈魂魄〉の全てを心座に呑み込む代わりに桁外れの力を発する、まさに悪魔のような〈神骸騎〉なのです。

 封印が施された状態でも最高位の強襲騎なみ。
 封印が解ければ《暗黒の太陽》たる動力炉から煮えたぎる昏き神血を無尽蔵に汲み上げ、[励起]状態での長時間戦闘さえ可能とする、比類なき性能の邪神騎――
 これに立ち向かい勝利をおさめたのは、歴史上でも伝説の《皇帝騎》のみと伝わっています。

「魔王槍から弾ける火花。突き返しの皇帝槍が《偽神騎》の《虚無の衣》を貫き、その胸甲を穿つ。
 黒炎を噴き上げる《暗黒の太陽》。もがく手を宙に伸ばしつつ、奈落のごとき谷底へと落下していく《偽神騎》――」

 それは詩歌や絵画で幾度も歌い継がれ描き継がれている、《皇帝騎》伝説の有名な一節、《偽神騎》の最期です。
 その皇帝騎でさえ、《七星騎》をはじめとした何騎もの有力な〈神骸騎〉を率い、やっと討ち取ったほどの一柱。
 それが《偽神騎》ヤルダバオトなのです。
 ……もしイクタリ大陸において再びその偉業を成せば、その者は《皇帝騎》と並び立つほどの伝説を背負うこととなるでしょう。

 なお一説には、この機体は《皇帝騎》と呼ばれるようになった「神」の兄弟あるいは姉妹の亡骸であったとも伝えられています。
 なぜ《皇帝騎》の兄弟機、姉妹機とも言える機体が、《皇帝騎》を裏切り、《偽神騎》と呼ばれる存在にまで堕ちたのか……
 史書には、もはや何の痕跡も残されてはいません。


 なお、あえてこの〈神骸騎〉の欠点を挙げるのであれば、怨念そのものの〈魂魄〉と[励起]が可能なほど同調できる、とてつもなく腕の良い〈御者〉が要求される点でしょう。
 〈神骸騎〉のちからは、〈魂魄〉と〈御者〉の三位一体でこそ発揮される。
 ――その一点だけは、いかに《偽神騎》ヤルダバオトでさえも覆しがたい事実なのです。
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