神骸騎ディ・カダーベルTRPG

ノスフェラトゥ戦記第三話:スラク・ダオ暗殺作戦

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◆第三話:スラク・ダオ暗殺作戦



 著:凪ノ香
 想定プレイヤー人数:3人

 本シナリオのリプレイはウェブ、同人誌、動画等々にて公開して構いません。
 その際は二次創作についてのガイドラインに従ってください。


○シナリオ概要


 エケテイリアによるつかの間の平和は終わりを告げた。
 リアピオン大祭におけるノスフェラトゥの活躍により、公国の威信は蘇り、服属する諸国の動揺も収まった。
 ドウラ公国はかつての力を取り戻し……しかし、それでもダオ帝国は依然として強力であった。

 再開された両国の戦いにおいて、“小覇王”スラク・ダオは徹底して公国に「決戦」の機会を与えない。
〈神骸騎〉アイオーンを駆るユジン・ダオ皇子は、マヌ=カーセ連邦を着実に切り崩している。
 このまま膠着が長引けば、ダオ帝国は戦線の整理を終えるであろう。

 ならば残る手立ては、ひとつ。
 ――“小覇王”スラク・ダオ皇女を、討つほかになし。





○PC2 オープニングフェイズ:戦線膠着


 平和休戦を終え、ドウラ公国とダオ帝国との戦争は再開された。
 PC2は今まさに、公国の〈神骸騎〉たちを率い、ダオ帝国に占領されたドウラ公国の要衝の奪回のため戦っている。

 大地を踏み鳴らす震動が響き渡る。
 剣戟。砲音。閃光。火花――PC2と、それが率いる〈神骸騎〉たちはヘカトンケイレスとギガンテスを追い詰めつつあった。


(GM、PC2に搭乗状態での登場を促す)


  • 神骸騎ヘカトンケイレス
「グヌゥッ! PC2、やはり貴様も大した腕だ!」

  • 神骸騎ギガンテス
「これ以上は保たぬか……!」


 二柱を追い詰めるPC2だが――――
 突如、遠方から閃光兵器がPC2に向けて発射される。
 新手の〈神骸騎〉だ。


  • 神骸騎ヘカトンケイレス
「む、刻限か! すまぬなPC2、皇女殿下の命令とあらば致し方なし!」

  • 神骸騎ギガンテス
「者ども! これ以上は保たせずともよい! 次の陣地に下がるぞ!」


 ヘカトンケイレスとギガンテスが、手勢を連れて整然と撤退していく。
 恐らく次の要衝でもまた、十分な陣地と防御を敷いた上で迎撃してくるだろう。

 PC2はこの土地を奪回できたが――
 戦争が再開して以来、公国の〈神骸騎〉は思うように占領された国土を奪回できていない。

 ダオ帝国の陣地を破れないわけではない、今のように勝てることは多い。
 しかし破れたとしても、続けざまの防御陣地に消耗し、公国側の戦力も突破力を喪失。
 更には敵の機動戦力に後方を脅かされ、後退を余儀なくされ……一進一退が幾度も続いている。


  • 公国側の〈神骸騎〉たち
「くっ、また逃げられた! まるで手応えがねえ、畜生!」

  • 公国側の〈神骸騎〉たち
「“小覇王”め! 俺たちをじわじわと絞め殺すつもりでいやがる!」


 スラク皇女の現在の戦略は、堅実で隙のない持久戦だ。
 占領された国土を取り戻すためのドウラ公国の戦いは、実質的な膠着状態にあった。
 厳しい戦況をPC2が確認したところでシーンを終了する。

 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。




○PC3 オープニングフェイズ:連邦陥落


 ドウラ公国の首都エポリナ。
 その任意の場所で、PC3はカグラからの情報提供を受けている。
 ダオ帝国と、マヌ=カーセ連邦とのいくさの最新情報だ。

  • “忍びの者”カグラ
「結論から言って、マヌ=カーセ連邦は陥ちた」
「ダオ帝国との断続的な戦争。長年の悪政。加えてリアピオンでの不名誉な刺客騒ぎ」
「徹底抗戦を訴えるもの、帝国への譲歩を主張する者、これを機に離反せんとする者……」
「諸侯の会議は踊り、王は国をまとめるちからを欠いていた。お前のところの公王とは大違いだな」


(GM、PC3に非搭乗状態での登場を促す)


「そのような惨状にあの“伏龍皇子”が〈神骸騎〉アイオーンと皇帝槍を携えて襲いかかったのだ」
「連邦を構成する諸王国は連携をとれないままに切り崩され、併呑され、あるいは滅ぼされていった」
「王の首は落ち、後継を僭称する諸侯は複数。もはやマヌ=カーセ連邦は実質的に瓦解したといっていいだろう」

 カグラは淡々と地図に筆を入れていく。
 ダオ帝国の傍らにあった、けして小さくはない国が、一筆ごとに切り刻まれていく。

「もはやマヌ=カーセは、ただ小国が乱立する混乱の地に過ぎない」
「戦後処理を終え次第、“伏龍皇子”ユジン・ダオは手勢を連れて公国戦線へと帰陣する」
「公国は早期決着を狙うほかないが、“小覇王”スラク・ダオもそれは理解している故の持久戦だ」

「……PC3よ」
「お前たち二人だけならば、まだ逃げられんこともなかろう」
「最後までドウラ公国に味方するつもりか?」

 カグラは真剣な表情で問いかけてくる。
 その問いに、PC3が真剣に返答を行った場合、

「そうか。お前たちは、己が殉ずるべきものを見つけたのだな……」

 カグラは目を細め、静かに頷く。

「ならば、はなむけに教えてやろう。マヌ=カーセ戦線から、密かに送られた援軍の第一陣がじき到達する」
「中核となるのは“伏龍皇子”ユジン・ダオに最近仕えはじめた、謎の〈神骸騎〉が二柱」
「だが、我々ノザルキはその正体を把握している」

「……やつらは伝説の〈神骸騎〉、《七星騎(セプテントリオン)》だ」

 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。




○PC1 オープニングフェイズ:蘇る伝説



  • 謎の〈神骸騎〉乗り
「やあやあ。――お初にお目にかかるよ、ドウラ公国公王陛下。そして〈神骸騎〉ノスフェラトゥ」
「私はモノク。この〈神骸騎〉の〈魂魄〉を担うものだ」
「無位無官ゆえ、失礼があれば平にご容赦を――」

 念話機から、あなたのいる心座に向けて、若い女の声で念話がある。
 PC1の目の前にいるのは、一柱の見知らぬ〈神骸騎〉だ。
 優雅に一礼するそれは強襲騎であり、マントのような布を羽織っている。

 ……それだけならば異常はない。
 しかし、状況が尋常ではなかった。
 ここはドウラ公国の前線陣地のど真ん中なのだ。


(GM、PC1に搭乗状態での登場を促す)


  • 公国兵
「嘘だろ!? あのデカブツ、どこから入り込んできたんだ!?」

  • 公国兵
「警鐘鳴らせ! 公王陛下をお守りせよ、急げェ!」

 蜂の巣を突いたような大騒ぎなる陣地。
 しかしモノクと名乗った女は臆した様子もなく、念話を通してPC1のみに語りかける。

  • モノク
「いやはや、お騒がせして申し訳ない。こうして陛下のもとを訪問したのはワケあってのことでね――」
「実は、浮世の義理というやつで、私はユジン皇子とやらに味方せねばならなくなった」
「つまり貴方を殺さねばならぬ立場なのだが……どうだろう、降参する気はないかな?」

 モノクの問いかけにPC1が拒否をした場合。

  • モノク
「アハハ! そりゃそうだろうね。降れと言われて降るのは馬鹿のすることだ」
「けれど、これを見ても同じことが言えるかな……?」

 モノクは自らマントを剥ぎ取る。
 あるいはPC1が攻撃を行った場合も、モノクは回避動作と同時にマントを捨てる。
 ――その〈神骸騎〉の胸部には、特徴的な七つ星の紋章が輝いていた。

  • 公国兵
「な、なんだ!? あの胸に輝く紋章は――!」
「まさか、あれは!」

  • “紋章官”フィオ・サームズ
「……陛下、最大限の警戒を」

 間髪入れず、紋章官のフィオから念話が入る。

  • “紋章官”フィオ・サームズ
「あの胸の七つ星。あれはかの皇帝騎に仕えし宿将、《七星騎(セプテントリオン)》」
「伝説の七柱の〈神骸騎〉が一柱、アリオトに相違ありません」
「イクタリ帝国崩壊後、《七星騎(セプテントリオン)》は離散したとのみ伝わっておりますが……」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「私は余計な血を流したくはない。下らぬ敵と戦って、《七星騎》の名を汚したくもない」
「だからこうして訪問した、覚悟を問うためだ」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「『ノスフェラトゥは蘇る――』……現代の伝説、死なずの〈神骸騎〉のあるじよ」
「皇帝騎の伝説と、真っ向から対峙する覚悟はあるかい?」

 PC1が返答すると、《七星騎》アリオトは満足げに頷く。

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「なるほど。――その意気、見事。いずれ戦場でお会いしようじゃあないか」

 マントを羽織り直すと、モノクの駆るアリオトは騒然とする公国の陣地を去っていく。

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「……それと、そう、最後に一つだけいいかな?」
「ユジン・ダオ皇子には、気をつけたまえ。どうにも、あれは……嫌な感じがする」

 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。




○ミドルフェイズ シーン1:不名誉作戦


 ドウラ公国、首都エポリナの公城。
 その大会議室には、伝説的な〈邪神騎〉の胸部装甲を槍で貫く皇帝騎の大絵画が飾られている。

 よくよく見れば、その背景には敵勢を打ち払う皇帝騎の宿将――《七星騎》たちも描かれていることに気づくだろう。
 PC1が遭遇した《七星騎》アリオトに酷似した機体もまた、刃を振るって敵を打ち払っている。

(GM、全員に非搭乗状態での登場を促す)


  • “神官長”イズラ・サン
「………………」

  • “内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「………………」

 大会議室を、沈痛な沈黙が支配していた。

 戦線は膠着状態。
 きわめて強力な〈神骸騎〉が二柱、敵方に援軍として到来。
 更に後ほど、より大規模な援軍の到来が予想される。

  • “内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「先代の……ゲオルグ公の時代にさえ、これほどの攻勢は……」
「たとえもし、ゲオルグ公がご存命であったとしても――――」

 この全面攻勢を、ドウラ公国は受け止めることができない。
 ――誰もが、公国の滅びを予感していた。 

 ここでパーティの誰か(あるいは誰も発案に適さなければ、カグラなどを登場させても良い)は、
「一か八か、ダオ帝国の本陣に少数の〈神骸騎〉で奇襲を行い、スラク皇女を殺害する」という作戦を発案できる。
 防衛に卓抜した采配を振るうスラク皇女が突如として消えれば、戦局は一気に公国に傾くだろう。
 しかし――

  • “神官長”イズラ・サン
「…………誉れのない、作戦ですな」

 いかに指揮官とはいえ、〈神骸騎〉に乗ることのない貴人の少女を、複数の〈神骸騎〉で襲い叩き潰す。
 それは不名誉という他ない作戦だ。

  • “紋章官”フィオ・サームズ
「……しかし、それ以上の案を持つ方はいらっしゃいますか?」

 場に沈黙が落ち――

  • “神官” エタタヤ・サン
「……該当の土地近くには、たしか神代の遺跡が。経路に使えぬものか、調査いたします」

 エタタヤがそう言って席を立ったのを皮切りに、首脳部もそれぞれの準備のために散っていく。
 そして、大会議室にはパーティのみが残される。
 パーティの会話が一段落した時点で、シーンを終了すること。

 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン2:出立準備


 エポリナ神殿の〈神骸騎〉格納庫は、外界の喧騒と切り離されたかのように静かだった。
 〈神骸騎〉の最終点検を行うパーティのもとに、大量の古文書を抱えたエタタヤがやってくる。

  • “神官” エタタヤ・サン
「お待たせ致しました」
「……周辺の地図と、くだんの遺跡に関する記述がありそうな古書類です」

 パーティは【技術】または【心力】で判定を行うことができる。
 いずれかのキャラクターが成功数2以上を出すと、エタタヤと協力し遺跡の来歴や適切な侵入経路を推定できる。
 なお、もし全員が判定に失敗した場合でも、エタタヤが最低限の侵入ルートを判別する。


――――――――――――

【神代の地下神殿】
 この遺跡は神々が在りし神代には、壮麗で巨大な地下神殿だった。
 その後、神々が死して後の戦乱の時代においては要塞として利用され、幾度も増改築を繰り返された。
 神殿要塞の主となる勢力は、時代と共にさまざまに移り変わった。

 その最後の主はイクタリ帝国であり、第四代の皇帝によってこの要塞の放棄が決定された。
 当時は大陸の大半が平和を謳歌していた穏やかな時代であったこともあるだろう。
 経年劣化が深刻となり、崩落の危険がある巨大な地下施設の維持は不用とみなされたのだ。

 イクタリ帝国の崩壊後は最低限の管理すらなされず、魔獣たちが住み着く魔境となってはいるが……
 このような経緯から、この施設には〈神骸騎〉が侵入、往来可能である。

――――――――――――


 パーティが準備を整え、格納庫から出立しようとすると、外には公国の首脳部がみな整列している。

  • “神官長”イズラ・サン
「………………」

  • “内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「………………」

  • “紋章官”フィオ・サームズ
「………………」

 その視線はパーティへの信頼と、全ての不名誉を分かち合う覚悟に満ちている。
 見送りに応じ、パーティが出立したところでシーンを終了する。

 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン3:地下神殿


 薄暗い列柱回廊を〈神骸騎〉が進んでいく。
 天井から、パラパラと土埃が舞い落ちる。
 不気味な暗闇に覆われた遺跡は、もう長い間、人が侵入した痕跡はない――

(GM、全員に搭乗状態での登場を促す)

「○シーン2:出立準備」において侵入経路の判定に成功していた場合のみ、パーティは【肉体】または【魔力】で判定を行うことができる。

 もっとも高い達成値を記録する。
 以下のエネミーの【】でくくられた[接敵]グループを、達成値1つごとに任意に1つ排除して良い。
 つまり達成値3を出したら、【成れ果て】【食人樹×3】【珪素蟲の群れ×4】を取り除く等である。
(※上手く察知されない経路を辿った、存在を察知して先んじて仕留めたなど演出は自由に行って良い)

 もし「○シーン2:出立準備」において侵入経路の判定に失敗していた場合、パーティはこの全ての敵と交戦せねばならない。

【珪素蟲の群れ×4】<距離>【食人樹×3】<距離>【パーティ】<距離>【成れ果て】<距離>【食人樹×3】<距離>【珪素蟲の群れ×4】

 大きな広間に出たところで、パーティは四方からの殺気を感じる。
 神殿に巣食う、無数の魔獣たちの襲撃だ!

 戦闘に勝利し、パーティが会話を終えたらシーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン4:再び、戦士の休息


 地下遺跡のなかには、頑丈な扉が残る格納庫と思しき部屋があった。
 魔獣の襲撃を警戒しながらの長い地下行軍で、みな集中力が途切れかけている。
 いったん休息してから決戦に向かうべきだろう――

 部屋の安全を確認し、〈神骸騎〉で扉を閉じると、みな〈心座〉から降りて一息つくことができる。
 部屋には〈神骸騎〉の部品や工具などもいくらか残っている。少しは整備をする時間もあるだろう。
 ――いつか、PC1が公国を受け継いだ時にも、このようなひと時があった。

(GM、全員に非搭乗状態での登場を促す)

 ここではPC全員が、【技術】または【魔力】で一回の判定を行うことができる。
 任意の〈神骸騎〉のHPを、「2d6×成功数」ぶんだけ回復させることができる。
 この成功数は任意の機体に振り分けできるが、振り分けが確定した後に回復量のダイスを振ること。

 つまり2成功した場合、〈神骸騎〉2柱に1成功ずつ2d6の回復を振り分けることはできる。
 しかし3点と11点が出てから、損耗の大きい側の機体に11点を振り分けるといったことは不可能だ。

 適度にロールプレイを行い、キリがついたらシーンを終了しよう。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン5:皇帝騎伝説


 一行は真っ暗な遺跡を進んでいく。
 遺跡は様々な時代の様々な勢力によって増改築が施されている。
 見たこともないような建築様式のもの、使途も分からない錆び朽ちた謎の機械――そこらに潜む危険な魔獣。

 そんな中、パーティは比較的新しい雰囲気の区画に到着する。
 恐らくイクタリ帝国時代に改築された場所だろう。
 列柱回廊の壁画には、かつての皇帝騎の伝説が描かれていた。

(GM、全員に搭乗状態での登場を促す)

 パーティのそれぞれは【技術】で判定を行うことが出来る。
 成功数1以上で、以下の伝説を思い出すことができる。


――――――――――――

【皇帝騎伝説】
 ……かつて、イクタリ大陸の乱世が極まりし時。
 血と力に飢え怯えた人々の欲望は、暗黒の邪神たちの亡骸を〈回生〉させた。
 各地より姿を現したどす黒い神々は、その〈魂魄〉の魂や善性を喰らい、血と暴虐の限りを尽くした。

 ――恐怖の父アブホース。
 ――裏切りのヤルダバオト。
 ――疫病の王メスラムタエア。
 ――名を秘されし狂乱の神。
 ――呪われたる島のバビロン。

 暗黒の伝説。夜の炉端で恐ろしげな声で囁き伝えられる、闇の神々。
 現在では、それらの機体の詳細は判然としない。
 しかしその大半を討ち取ったとされるのが、イクタリ帝国初代皇帝の駆る皇帝騎だ。

 曇りなき正義と光を体現するかのような、白い機体。
 まさしく神そのものの絶対的な力と、伝説的な武装。
 七柱――あるいは番外の一柱を含め八柱とも伝えられる忠義の宿将、《七星騎》たち。

 白き機体の駆けるところ、悪なる神々はたちどころに討ち取られた。
 帝国の版図の広がるところ、乱世は駆逐され、秩序と平和、豊穣と安寧が広がってゆく。
 かくしてイクタリ帝国は建国された――――イクタリ帝国の建国史だ。
 ゆえにこそ皇帝騎は、イクタリ帝国の正当なる後継者の証なのだ。

――――――――――――

 美々しく飾り立てられた部分もあるのだろう。
 都合の悪い部分は、おそらくはぼかされているのだろう。
 それでも遺跡の闇の中で、悪なる神に立ち向かう、白い皇帝騎の絵画は未だに勇壮だ。

 しばし皇帝騎の壁画を眺めていると――
 パーティの行く手……ダオ帝国の陣地側から、轟音が響き渡った。
 歴戦の君たちが聞き違うはずもない。それは〈神骸騎〉による射撃の弾着音だ。
 ――何か、明らかな異常が起こっているようだ。

 パーティがそれを確認し、陣地側に移動を開始したところでシーンを終了する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○ミドルフェイズ シーン6:波乱の兆し


  • ダオ帝国叛乱兵士
「ユジン皇子を皇帝の座に! ――“小覇王”を殺せ!」

  • ダオ帝国兵士
「何を言っている!? 止めろ、止めろ! 皇女を御守りせよォ!」

 蔦に覆われた遺跡の入り口を抜けた先は、ダオ帝国の本陣のすぐそばだった。
 そしてその本陣では、なぜかダオ帝国の兵士同士が殺し合いをしている。
 競り合いの中央で対峙しているのは――あろうことか、二柱の《七星騎》だ。

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「リクハ! いったい何をしている!? 《七星騎》の名を穢す気か!」

  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「そこをどいてください、モノク! これは必要なことなのです!」

 《七星騎》ミザールの砲からは既に発射煙が立ち上っており、《七星騎》アリオトの握る刃には曇りがある。
 どうやらミザールの射撃を、アリオトが剣でもって反らしたようだ。

 大混乱のダオ帝国の本陣にあって、古参の帝国兵たちが守ろうとしているのはスラク皇女だ。
 PC1は判定の必要なく、それがリアピオン大祭で出会ったあのときの少女だと気づくことができる。

  • “小覇王”スラク・ダオ
「…………!」

 スラク皇女もまた、突如として現れたノスフェラトゥの姿に気づいて目を見開く。

  • ダオ帝国兵士
「ノスフェラトゥ!? なんてことだ、ノスフェラトゥが現れた!」
「いったいどういうことなんだよ! ドウラ公国の企みか!?」
「わからん! 皇女殿下、お下がりを、皇女殿下!」

  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「皇女殿下。恨みはありませんが、そのお命、頂戴いたします!」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「リクハ……くっ!」

 ミザールが巧みな挙動でアリオトを押しのけ、スラク皇女に砲を向ける。

  • “小覇王”スラク・ダオ
「あ…………」

 自らの死が迫るその瞬間。
 スラク皇女は何を思ったか、敵であるはずのノスフェラトゥに手を伸ばした。


 この時、GMはPC1に、3つの選択肢があると説明すること。

 1つ目はスラク皇女を見殺しにすること。アリオトの砲撃でスラク皇女は死亡する。
 2つ目はスラク皇女を攻撃すること。ノスフェラトゥの攻撃でスラク皇女は死亡する。

 そして3つ目は、ノスフェラトゥを駆りスラク皇女を救出することだ。
 ただし救出を行う場合、ノスフェラトゥは《七星騎》ミザールの攻撃を受けねばならないと説明すること。
 また、このとっさの救助行動は、スラク皇女と面識のあるPC1にしか判断できない。


【救助を行わなかった場合のシナリオ進行】

 直後、皇女の儚げな姿は〈神骸騎〉の攻撃によって血煙となった。

  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「標的の撃破を確認。……モノク、理解してくれとは言いません。ですが議論は後です、敵の襲来です!」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「ノスフェラトゥ。ノスフェラトゥか、ハハハ、格好をつけておきながら、ブザマなところを見られたな」
「だがこれも浮世の義理、仕える主は簡単に裏切れない……相手をしてもらおうか、死なずの〈神骸騎〉よ!」

 クライマックス戦闘に移行する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。


【救助を行った場合のシナリオ進行】

 PC1はノスフェラトゥを駆って手を伸ばし、スラク皇女を拾い上げて〈心座〉に匿った。

 直後、皇女を狙った《七星騎》ミザールの攻撃がノスフェラトゥに到達する。
 射撃攻撃に対する防御判定を行うこと。通常通りに判定を行い、失敗した場合はダメージを受ける。
 辺りに轟音が響き、爆炎と煙が巻き上がる。

  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「なっ!? 〈神骸騎〉の乱入――?」
「ですが無駄なこと、《七星騎》ミザールの砲撃を受けてはもろともです!」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「ハハハ! ……リクハ、冷徹な策士気取りのようだが、君の目はずいぶん曇っているな!」
「あの機体が、あの程度の砲撃で沈むはずがないだろう」

 PC1は、煙の中から現れるノスフェラトゥの姿を自由に演出してよい。


  • ダオ帝国兵士
「ノスフェラトゥ――」
「ノスフェラトゥだ……」
「また、また蘇って来やがった……!」
「だけど、今回は……今回ばかりは、よくぞ……!」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「あれはノスフェラトゥ! 公国の守護者、死なずの〈神骸騎〉! イクタリ最新にして最強の伝説!」
「それを砲撃一発で殺したつもりかい!? 《七星騎》もずいぶんと傲慢になったものだ!」

  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「ぐ、ぐ……!」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「ハハハ! いきなり暗殺沙汰に加担させられかけて、気分が最悪だったが……」
「気が晴れたよ。ミザールの乗り手として、少しは反省することだね、リクハ!」

「……とはいえ残念ながら、私もダオ帝国に仕える身だ」
「《七星騎》の名誉を汚す気はさらさらないが、皇女殿下をハイそうですかとさらわせるのもまた不名誉」

「ノスフェラトゥ、そしてその仲間たち! 美姫を守って悪漢と戦う英雄か、それとも姫をかどわかす邪悪な吸血鬼か!」
「勝ったほうが誉れある役を手にする形だ――君たちに、《七星騎》アリオトは挑戦するぞ!」

《七星騎》アリオトは、パーティに刃を突きつけてくる。
 パーティ側がそれに応じたところで、クライマックス戦闘に移行する。
 登場キャラクター各自の良いロールプレイをひとこと褒め、GMはそれぞれに絆ダイスを1つ渡すこと。



○クライマックスフェイズ:《伝説》対《伝説》


  • “小覇王”スラク・ダオ
「な、なんなのよ、ほんとうに……!」
「また。また……ノスフェラトゥはいつもそう」
「戦場に現れては、何もかもを打ち壊していく。我こそは不死の怪物だと言わんばかり!」

 PC1の駆るノスフェラトゥの〈心座〉にて。
 スラク・ダオは涙の滲む目で叫ぶ。

「それに、それに――――あなたたち、まだ、そのリボン、持って……」
「ほんと……〈神骸騎〉なんて、だいっきらい!」

 そうして、泣いてるような、笑っているような、晴れやかな表情をPC1に向ける。
 PC1とスラク・ダオの会話に区切りがついた時点で、クライマックス戦闘を開始すること。
 なお、スラク・ダオはパーティ全体に適応可能な、以下の支援効果を持っている。

――――――――――――

【“小覇王”スラク・ダオによる支援効果】

 スラク・ダオ皇女は〈心座〉から念話機を用いて、パーティの連携に協力する。
 パーティはこのクライマックス戦闘中、以下の効果を使用できる。

  • セットアップに使用する。そのターン中、〈神骸騎〉一柱の【反射】値と反射ダイスを+3する。(1シナリオ1回)
  • 任意の判定の達成値が決定した後、その判定を振り直す。(1シナリオ1回。相手のリアクション後にも使用宣言可能)

――――――――――――

 なお、スラク・ダオを殺害した場合は上記のやりとりと支援効果の記述は全て無いものとする。
 GMはそのままクライマックス戦闘を開始すること。


 戦闘前に、各自に絆ダイスを1つ配布する
 GMは各キャラクターの絆ダイスが、4~5個あることを確認しよう。
 極端な使い方をしていない限りは、ほぼ上限値になっているはずだ。

 絆ダイスはキャラクターたちの勝利を支える重要な要素である。
 もし明らかに絆ダイスが不足している様子であれば、GMはロールプレイを促し、更に絆ダイスを与えても良い。


  • 《七星騎》アリオト
  • 《七星騎》ミザール

 以上のエネミーを、下記の[接敵]状態で登場させる。


【《七星騎》アリオト/《七星騎》ミザール】<距離>【パーティ】


  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「そらそら、リクハ! いつまで悔しがっているんだい!」
「《七星騎》が皇女暗殺の陰謀に加担した挙げ句、乱入してきた敵の公王を取り逃す?」
「とんでもない不名誉だ! ご先祖さまに申し訳が立たないぞ! 少しは挽回してくれたまえよ!」

  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「くっ! モノク! あなたというひとは! あなたというひとは!」
「主君の命令をなんだと思っているんですか!」

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「キミこそ《七星騎》をなんだと思っているんだい?」
「陰謀や暗殺の必要性は否定しないが、《七星騎》はそんなものに関わって良い機体じゃない!」
「……とはいえ議論は後! 先に敵だ!」

  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「ええ。議論は後です、あれらは強い――このリクハ、もはや見誤りません!」
「いざッ!」

 二柱の《七星騎》の両方が撃破された時点で決着となる。
 二柱とも励起は行わないため、〈魂魄〉は死亡しない。

  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク
「ハハハ! 見事だ、私の負けだよ英雄どの! 行くがいい!」

  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ
「くっ! ユジンさま、申し訳ありません……!」


《七星騎》を撃破しても、ダオ帝国の兵士たちの戦いはなお続いている。
 更に遠方からは、新たな〈神骸騎〉が増援にやってくる気配もある――――


  • “小覇王”スラク・ダオ
「PC1、あなたの使った侵入経路で、私の兵たちを逃がすことはできる?」
「兵たちの命を救ってもらう以上、必ず対価は支払うわ。――お願い」

 この場に留まって暴れ続けたり、《七星騎》にトドメを刺そうとすると、あまり良い結果を招かない戦況だとGMは明言すること。
 PCたちがスラクに味方するダオ帝国の兵たちを連れ、遺跡づたいに撤退を開始したところでシーンを終了する。



○GM用判定早見表



【《七星騎》アリオト】(魂魄:モノク)
【HP】63/63 【LP】4/4 【反射】5 【防御力】肉体:6 技術:2 魔力:1 心力:3
[白兵攻撃]9D ダメージ:2D6+【肉体】22(《一騎当千》(消費【HP】5で範囲化)
[突き返し]9D ダメージ:2D6+【肉体】22
[射撃回避]1D (至近からの射撃の場合、《矢切》で9D)
[反射ダイス]6/6
※《彗星の如し》(消費【HP】5)で白兵キャラに接敵する。


【《七星騎》ミザール】(魂魄:リクハ)
【HP】53/53 【LP】8/8 【反射】6 【防御力】肉体:1 技術:2 魔力:5 心力:3
【射撃攻撃】9D ダメージ:2D6+【魔力】15(《血を燃やせ》使用時+1~3D6)
[白兵回避]1D
[射撃回避]8D 
[反射ダイス]6/6
※《血を燃やせ》(消費【LP】1~3)は積極的に使って与えるダメージを増やす。
 《古強者》(消費【HP】5)は必要に応じて使用。
 《戦術指揮》(消費【HP】5)は可能な限り使用する。





○インターリュード:皇女亡命


 ドウラ公国、首都エポリナの公城。
 その大会議室には、伝説的な〈邪神騎〉の胸部装甲を槍で貫く皇帝騎の大絵画が飾られている。

 ――スラク皇女の兵はひとまず公城に『賓客』として招かれ、兵は捕虜として留め置かれる運びとなった。

  • “小覇王”スラク・ダオ
「因縁深き敵味方の間柄にありながら、兵たちの命を救って頂き感謝の言葉もございません」
「このスラク・ダオ、公王陛下のお慈悲にすがり、この身の処遇はいかようにも――」

 ダオ帝国の“小覇王”の采配により、先の公王ゲオルグ・ドウラは戦死した。
 血族や友人を戦場で失った者も多いだろう。
 それを理解している皇女は、緊張した様子で公国の首脳部に挨拶しようとしているが……

  • “内務大臣”ムライプ・ミスターニ
「なんと! お若いとは聞いておりましたが、これほどとは……」

  • “神官長”イズラ・サン
「ああ! もう貴女の策を向こうに回さずとも良い! これほど安堵したことは御座いませぬ!」

  • “神官”エタタヤ・サン
「すっ、すぐにお茶をお淹れしますね! 皇女殿下の舌に合うような……!」

 公国の面々の反応は意外なほどに暖かく敬意に満ちており、スラク皇女は目を瞬かせる。

  • “小覇王”スラク・ダオ
「え? あの、私は客ではなく、公王陛下の捕虜で……その、ゲオルグ先王を……」

  • “紋章官”フィオ・サームズ
「はい。あなたはゲオルグ公を破った英雄であります」
「であれば、その名誉を貶めることは、あなたに敗れたゲオルグ公の名誉を貶めることでしょう」

  • “小覇王”スラク・ダオ
「…………そ、そうなの? PC1……?」

 母国で侮られがちであったがゆえに、敵国からの図抜けた評価に困惑気味のスラクと、PC1の会話をひとしきり描写する。
 その後――

  • “小覇王”スラク・ダオ
「けれど、なぜ兄上はあのようなことを……」
「わたしは皇位など望んでいなかった。父上も兄上を跡継ぎにと考えていたことでしょう」
「私を性急に殺す必要など、どこにもなかったはず。それなのに、なぜ――?」

 スラク皇女が呟いたときだ。

  • 伝令
「で、伝令! 伝令! 一大事にございます! 一大事にございます!」
「ダオ帝国にて、政変!」

 伝令が大慌てで大会議室に駆け込んでくる。


「ユジン・ダオ皇子が、ビケザ・ダオ皇帝を殺害……弑逆(しいぎゃく)いたしました!」


 叫びが会議室に響き渡り、シーンを終了する。
 なおスラク皇女が死亡していた場合、この「○インターリュード」そのものが無いものとする。



○マスターシーン


  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「我が父――――ビケザ・ダオは死んだ! なぜか!?」

 ダオ帝国の王宮広間。
 白い〈神骸騎〉が、念話機によって拡げられた声で演説を行っている。

「かつて主を弑して国を奪い、多くを殺し多くを奪い国々を平らげ、我が子さえも駒としか見なさぬ、野心!」
「老いた身を蝕むその野心が、あまりにも貪欲に過ぎたためだ!」
「マヌ=カーセへのやりようを見よ! 過去幾多の、ドウラ公国への無理押しを思い出せ!」

「諸君らも、既に薄々は気づいていたであろう!」
「このままでは帝国はビケザ・ダオの野心によって野放図に拡大し、いつしか恨みと憎しみによって瓦解すると!」
「私はそれを憂い、父殺しの罪を背負った!」

「なぜならば、私には皇子としての務め以上に、果たすべき使命があったからだ!」
「――この偉大なる〈神骸騎〉の、〈御者〉としての使命だ!」

 白き〈神骸騎〉、アイオーンが、大地を踏み鳴らし一歩を踏み出す。

「今こそ諸君に、この機体の真実を告げよう――」
「この〈神骸騎〉こそは、喪われし皇帝騎!」

 掲げられる槍は、かつてゲオルグ公より奪われし皇帝槍。
 その槍のかたちは、その〈神骸騎〉にあまりにも合致していた。


「皇帝騎アイオーン! イクタリ帝国の、真なる継承者なり!」


 政変に不安げにしていたダオ帝国の臣民たちが、その一声に瞠目する。
 帝国の皇子が、皇帝騎の武装を手に、皇帝騎のあるじを名乗り帝位を奪う。
 それはイクタリ帝国の民にとって、あまりにも多くの意味を持つ宣言だ。

「長き戦乱の時代は、皇帝騎の復活とともにまもなく終わるだろう!」
「――私は今ここに国号を改め、神聖イクタリ帝国の誕生を宣言する!」

 その宣言とともに、いずこかから、
「皇帝騎万歳!」「ユジン皇帝万歳!」「神聖イクタリ帝国、万歳!」と叫びがあがる。
 叫びは連鎖し、唱和となり……帝国の広場は熱狂の渦に包まれた。

 そして、アイオーンの〈心座〉のなか――

  • “伏龍皇子”ユジン・ダオ
「これで良かったのだろう? 我が君、我が運命よ――」

 拡声器を切ったユジン・ダオが、〈御者台〉からラルヴァへと視線を向ける。

  • “腕輪の君”ラルヴァ
「ええ、あなたさま。周到な準備――そして、見事な演説で御座いました」
「このイクタリ大陸では、〈神骸騎〉こそが神。そして真なる皇帝騎は、もはや所在も喪われた幻にすぎない」

 ラルヴァの口元には、おぞましい笑みが浮かんでいる。
 その両腕を伸ばし、ユジンへと絡め――

「誰も、私たちを止められはしません――――」

 ユジンへと囁くラルヴァの声は、毒のように甘かった。
 シーンを終了する。



○エンディング


 各プレイヤーの希望に沿ってエンディングを演出すること。

 もしPCたちに特に意見がない場合、
 PC1はスラク・ダオと改めて会話し、互いの関係を再定義する。
 PC2は皇女を追って亡命してきた、ヘカトンケイレスやギガンテスをはじめとするダオ帝国の将兵を迎え入れる。
 PC3はNPCのうちの誰かと、今回の政変や公国の今後について話し合うなどが良いだろう。
(※基本的にはスラク皇女が生存している流れを想定したものである。死亡している場合は適宜変更すること)

 ……あまりに不審な暗殺事件と政変を経て、ダオ帝国は神聖イクタリ帝国となった。
 〈神骸騎〉アイオーンは本物の皇帝騎なのか?
 ユジン皇子、そしてラルヴァの真意とは?
 不明な点は多いが、おそらく神聖イクタリ帝国との間に、容易に平和は成立しないだろう。

 イクタリ大陸は戦乱の地である。
 ひとたびの平和は、次の戦争までの準備期間に過ぎないのだ。

 ――しかし、それでも一つの戦争が終息し、平和が訪れたことは喜ばしいことだ。
 課題は多く、戦火の火種は燻っているが、それでも希望は確かにある。
 GMは、プレイヤーたちが十分な達成感を得られるエンディングを演出することを意識しよう。

 セッションに最後まで参加し、進行に協力し、これを楽しんだGMは2点、プレイヤーは1点の【国威】を得る。
 スラク・ダオ皇女を生存させた場合、GMはプレイヤーたちを称え、更に1点の【国威】を与えても良い。




○登場パーソナリティ



  • 《七星騎》ミザール&〈魂魄〉リクハ

「《七星騎》は忠義の機体。皇帝騎の宿将であるとは、そういうことです」
「モノク! あなたは奔放すぎます、今日は一体どこへ……は? ドウラ公王に宣戦布告をしてきた? はぁ!?」

 伝説の《七星騎》ミザールは、射撃に特化した強襲騎です。
 胸部に神代より伝わる特徴的かつ再現困難な七つ星の紋章があり、その輝きがミザールが《七星騎》であることを証明しています。

 ミザールの〈魂魄〉であるリクハは、軍略に通じた堅物で生真面目な女性です。
《七星騎》は皇帝騎の宿将であり、皇帝騎が再び世に現れれば、それに従うことこそが本義であると考えています。
 そして彼女の前に、皇帝騎を名乗る機体は現れました。
 一族に伝わる様々な伝承と照らし合わせても、欠片の相違も見当たらない、完璧な皇帝騎の威容。

 彼女は皇帝騎が蘇り、《七星騎》が再び集う時がきたのだと確信しています。
 そのため多少の汚れ仕事を任されようと、彼女は着実にそれを遂行するでしょう。
 ――それが、皇帝騎からの命令であるかぎり。

 なおリクハの一族は代々面倒見が良く、彼女もモノクをはじめとした《七星騎》ゆかりの一族へ多くの支援を行っています。
 彼女はモノクのことを、手のかかる妹のように思っているようです。



  • 《七星騎》アリオト&〈魂魄〉モノク

「《七星騎》は名誉の機体。皇帝騎の宿将であるとは、そういうことだろう?」
「ハハハ、リクハは生真面目がすぎる! せっかくの人生なんだ、少しくらいの遊び心がないと!」

 伝説の《七星騎》アリオトは、白兵に特化した強襲騎です。
 胸部に神代より伝わる特徴的かつ再現困難な七つ星の紋章があり、その輝きがアリオトが《七星騎》であることを証明しています。

 ミザールの〈魂魄〉であるモノクは、飄々とした洒落者の女性です。
《七星騎》は初代皇帝の武勲を今に伝える機体と考えており、その名誉を守ることこそが本義であると考えています。
 そのため彼女は、ユジン・ダオ皇子を盲信することはありません。
 たとえ限りなく本物と思われる皇帝騎の主であろうとも、それが愚帝であるならば助力は不名誉となるからです。

 しかし現在のところ、彼女はユジン・ダオ皇子を裏切るほどの理由も持っていません。
《七星騎》を使うような任務ではない、不名誉な暗殺沙汰に巻き込まれたことに憤ってはいます。
 しかし政変を起こすにあたって、信頼のおける刺客を用いて他の継承者を排除するという行為自体は理の通ったものです。
 ……一度仕えた主に向けて、安易に刃を向けることもまた不名誉。

 彼女は神聖イクタリ帝国の皇帝となったユジン・ダオを、慎重に見定めようとしています。
 もしユジン・ダオが、為政者としての徳を有さぬ愚帝であれば……
 皇帝騎の真贋に関わらず、《七星騎》アリオトは反逆の刃を振るうでしょう。

 なお、モノクにとってリクハは、放っておけない姉のようなものです。
 生真面目すぎて空回りしがちなところのあるリクハを、モノクはモノクなりに守っているつもりなのです。



○シナリオ製作者よりのお願い

 基本的にこのキャンペーンは「大国同士のうち続く戦争」を演出するため、【国威】を豊富に与える形式をとっています。
 もしプレイヤーの〈神骸騎〉が強力になりすぎ、戦闘からスリルが失われていると思われる場合、マスターは任意にデータを増強したり、エネミーを増やしたりしてもかまいません。
 またプレイヤーが趣味に走った〈神骸騎〉構築を行っている場合、逆にデータを少し加減したり、エネミーを減らしても良いでしょう。
 あなたの手腕で、ゲームを上手に盛り上げて下さい。



○使用エネミーデータ



珪素蟲(レギオン)の群れ
 異形の甲蟲です。一匹が人間ほどの大きさで、単体でも十分に脅威ですが、御者ならば退治できます。
 ですが群れとなった時は〈神骸騎〉でなくば対処できません。そして、対処するには注意が必要です。
 稲妻を糧とする珪素蟲は〈神骸騎〉によってたかって襲いかかり、その神血を吸い取ろうとしてくるからです。
 【HP】10
 【白兵】1(2D) 【射撃】1(2D) 【反射】2
 攻撃力:【魔力】8(白兵)
 防御力:【肉体】2 【技術】2 【魔力】0 【心力】0

食人樹(ヤ=テ=ベオ)
 密林の中で異常繁殖し、迂闊に踏み入った者を絞め殺して捕食する、食人植物。
 その蔦は自由自在に蠢き、〈神骸騎〉の装甲の隙間から、時として〈心座〉にまで達します。
 そのため辺境の小国家の〈神骸騎〉が討伐に赴き、〈魂魄〉、〈御者〉が絞め殺される事もあるそうです。
 【HP】20
 【白兵】2(3D) 【射撃】0(1D) 【反射】1
 攻撃力:【心力】10(白兵)
 防御力:【肉体】3 【技術】2 【魔力】0 【心力】0
 このエネミーに対して「火炎放射器」による攻撃が命中した場合、即座に戦闘不能になる。

成れ果て(レヴェネンス)
 戦場に斃れた〈神骸騎〉の残骸の「成れの果て」です。
 とうに〈魂魄〉、〈御者〉は死んでいるはずなのですが、独りでに動き、〈神骸騎〉や都市を襲います。
 もはや魂なき神の骸、その力は大きく劣っていますが、しかし曲がりなりにもこれは神の体です。
 ただの人間では、とても抗しうるものではありません。
 【HP】30
 【白兵】2(3D) 【射撃】2(3D) 【反射】3
 攻撃力:【肉体】15(白兵) 【技術】15(射撃)
 防御力:【肉体】3 【技術】3 【魔力】3 【心力】3



○ボスキャラクターデータ


  • 魂魄:モノク
  • 御者:
  • 神骸騎:《七星騎》アリオト
  • 国家:ダオ帝国

  • ライフパス
 儀式:性別/【肉体】+1
 来歴:兵士/【白兵】+1
 関係:/

  • プロフィール

  • 能力値
 【肉体】6 【技術】2 【魔力】1 【心力】3 【神格】5

 【HP】63/8+55 【LP】4/4 【常備化ポイント】40

 【白兵】9 【射撃】1 【反射】5 

 【攻撃力/防御力】
  肉体 6/6
  技術 2/2
  魔力 1/1
  心力 3/3

 【絆ダイス】:1/5

  • 戦技
 《遺産》×3 消費:なし
  [常備化ポイント]を5ポイント獲得する。
 この【戦技】は3回まで取得でき、効果は累積する。

 《矢切》 消費:【HP】2
 至近距離からの[射撃攻撃]の対象となった際に使用する。
 【白兵】で[防御判定]を行う事ができる。[突き返し]は発生しない。

 《彗星の如し》 消費:【HP】5
 [セットアップフェイズ]に使用する。[移動]または[離脱]を行える。

 《一騎当千》 消費:【HP】3
 [メジャーアクション]で使用する。同時に[白兵攻撃]を行い、その対象を[範囲]とする。

 《二刀流》 消費:なし
 オリジナル戦技。
 同じ主兵装の[白兵武器]を二つ装備している場合、そのダメージを合計する。
 同時に【白兵】を+1する。


  • 装備(合計常備化ポイント:39/40)
 機体:七星騎(強襲騎) 常備化P:20
    【HP】+40。
     【白兵】+3。[白兵攻撃]のダメージ+10。【反射】+1。

 主兵装1:長剣(ソード) 常備化P:1
      ダメージ:【肉体】+1D6

 主兵装2:長剣(ソード) 常備化P:1
      ダメージ:【肉体】+1D6

 副兵装:近接防御砲(バルカン) 常備化P:2
     ダメージ:【技術】
     [オートアクション]で宣言し、至近距離に対する[白兵]、[射撃]、[突き返し]のダイスを+1する。
     この武装は上記効果を含め、1シナリオ中に1回のみ使用できる。
     上記効果を用いてこの武装を同時に使用する事は、合計で「1回」とする。

 オプション1:水素の心臓(ハート・オブ・ハイドロゲン) 常備化P:3
       【肉体】+1。
       また【HP】が0になった瞬間、【肉体】を1下げ、【HP】を1に回復する事ができる。
       [励起]中には使用できない。この効果は1シナリオ中1回だけ使用できる。
       このオプションは1つしか装備できない。

 オプション2:調律骨格(ハーモナイズ・フレーム) 常備化P:3
        【心力】+1。【反射】+1。【HP】+5。
        このオプションは1つしか装備できない。
       ※専用色(カラー) 常備化P:5
        【反射】+1。[オプション]枠を使用しない。このオプションは1つしか装備できない。

 神化:【HP】+5

  • 成長
 【国威】:5
 《遺産》取得
 《遺産》取得
 《矢切》取得
 《彗星の如し》取得
 《一騎当千》取得






  • 魂魄:リクハ
  • 御者:
  • 神骸騎:《七星騎》ミザール
  • 国家:ダオ帝国

  • ライフパス
 儀式:聖痕/【魔力】+1
 来歴:継承/【反射】+1
 関係:/

  • プロフィール

  • 能力値
 【肉体】1 【技術】2 【魔力】5 【心力】4 【神格】5

 【HP】53/3+50 【LP】8/8 【常備化ポイント】40

 【白兵】1 【射撃】8 【反射】6

 【攻撃力/防御力】
  肉体 1/1
  技術 2/2
  魔力 5/5
  心力 3/3

 【絆ダイス】:1/5

  • 戦技
 《遺産》×3 消費:なし
  [常備化ポイント]を5ポイント獲得する。
 この【戦技】は3回まで取得でき、効果は累積する。

 《銃型》 消費:【HP】4
 [メジャーアクション]で[射撃攻撃]を行う際に使用する。
 [接敵]中に使用不可能な射撃武器を、[接敵]中でも使用可能にする。
 それ以外の射撃武器であれば、そのダメージは+2される。

 《血を燃やせ》 消費:【LP】1~3
 [マイナーアクション]で使用する。
 直後に行う[メジャーアクション]で相手に与えるダメージを、消費【LP】1ごとに+1D6する。

 《古強者》 消費:【HP】5
 自分が判定を行った直後に宣言する。その判定に用いたダイスを振り直す事ができる。
 同じ判定に連続して使用する事も可能だが、結果を差し戻す事はできない。
 1シナリオ中に3回だけ使用可能。

 《戦術指揮》 消費:【HP】5
 オリジナル戦技。
 [セットアップフェイズ]に使用する。
 通常の処理を無視して、自身と味方を行動順番を任意に決定できる。


  • 装備(合計常備化ポイント:40/40)
 機体:七星騎(強襲騎) 常備化P:20
    【HP】+40。
     【射撃】+3。[射撃攻撃]のダメージ+10。【反射】+1。

 主兵装1:閃光砲(ビームカノン) 常備化P:5
      ダメージ:【魔力】+2D6 
      この兵装を用いた[射撃攻撃]のダイス+1。
      自身と[接敵]している対象には使用不可能。【反射】-1。

 主兵装2:盾(ベイル) 常備化P:2
      【HP】+10。

 副兵装:目牙閃光砲(メガビームカノン) 常備化P:3
     ダメージ:【魔力】+3D6
     1シナリオ中1回のみ使用可能。

 オプション1:望遠鏡(スコープ) 常備化P:2
        【射撃】+1。このオプションは1つしか装備できない。

 オプション2:調律骨格(ハーモナイズ・フレーム) 常備化P:3
        【心力】+1。【反射】+1。【HP】+5。
        このオプションは1つしか装備できない。
       ※専用色(カラー) 常備化P:5
        【反射】+1。[オプション]枠を使用しない。このオプションは1つしか装備できない。
 神化:なし

  • 成長
 【国威】:5
 《遺産》取得
 《遺産》取得
 《銃型》取得
 《血を燃やせ》取得
 《古強者》取得
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