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「見えざるもの」

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【小話/プロット】エムレ編

子供の頃の話だ。
『先生』に拾われるまで、その少年は良き兄貴分であり、いつも一緒にいた。
短期な自分と違い頭が回り、路上を生き抜く上で、良くアドバイスをくれた。
時には致命的な失敗をした自分をフォローした上で、いつも口にしてた言葉がある。
『だから言っただろ』
笑いながら叱り、その後は、いつもの関係に戻った。

「クッ、ソッ!」
衝撃と痛みが同時に襲う。
苦悶の声と供に、エムレは薄暗い地下室の石床に転倒した。
ワイヤーとボウガンが連動した、単純なトラップ。
打ち出された短矢は、右太股に食い込み、単純には抜き取れない。
見えなかった。
そして。
視れなかった。

「だから言っただろ」
地下室の前方に蜃気楼の様に人影が浮かび上がるが、エムレが腰から下げた銃型AFに手を延ばすとすぐに掻き消える。
「俺の奇跡は、『不可視』だってな。見えなく出来るのは、自分だけとは限らないんだぜ。例えば、トラップそのものに事前にかけておく、なんて使い方もある。」
「喋りすぎだぜ、グレイユ」
エムレが掲げた銃口は、かつての兄貴分を追うが、声が反射する地下室では、『不可視』の相手の居所はさぐない。
「だかお前らしいよ」
地下室に反響する声色に優しさが混じる。
「なあ、俺と一緒に来いよ。法王庁がお前に何を与えてくれた?『先生』を奪い、罪人として利用し、異端審問官の真似事で捨て石にする。酷い話じゃないか」
エムレに昔の記憶が甦る。
ミスを優しく叱った後、いつも関係に戻った少年時代錯の記憶。。
その記憶と全く変わらない優しさで、エムレへとある言葉が注がれる。
「お前なら、優れた『洗礼者』になれる」

だが、限りなく懐かしく優しいその言葉は、エムレの胸の奥底に刻まれた、別の言葉に拒絶される。

『お前はなら、いい異端審問官になれる』

「へっ!」
エムレの口に笑みが浮かんだ。

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