-
⑦-1
馬蹄の音が響く。
奇襲における最大の武器は、速力。
カテリナ通りを数分で駆け抜けた銀嶺騎士団は、『塔』の正門に向かって駆け抜ける。
後続の鉄道騎士団が、街中で洗礼者達の注目を集め、フランク・ラパートと北の穂先族が後陣を形成している頃だろう。
混乱の中、重要拠点である‘塔’の正門を制圧する。
『貴方たちならできるはずです』
‘導師’キスリングは、先陣を任せた‘理由’をこう説明した。
『AFを使用しない貴方たち、銀嶺騎士団なら』
‘黄昏の時代’において『開祖』が編み出したと言われる馬上槍術の伝承により、心身を鍛え自己を磨き、技を研ぎ澄ます。
-伝統は不変
故に、時代に取り残されら遺物と揶揄されたこともある。
だが、彼らは知っている。
-可能性は無限
鍛鉄の如く繰り返し、鍛え抜かれた技術と精神は、あらゆる状況において対応が可能である事を。
‘塔’の正門の前に男が立っていた。
古の戦装束。
長く伸びた黒髪。
ベルザインの高弟、‘十人の子供達(テン・チルドレン)’が一人、サリエリ・プシュートス。
『北の教会』の異端審問官達と互角以上に渡り歩き、今回の奇襲における『最も警戒する相手』に挙げられている一人。
迫る銀嶺騎士団に対し、無造作に背中の長槍を抜く。
銀嶺騎士達に動揺はない。
-相手にとって不足なし
疾走する馬速を更に上げ、十七騎の騎士たちが構える槍が、サリエリへと殺到した。
-
78:拾郎 :
2023/11/13 (Mon) 23:20:19
-
7-2
型はあるが、定型無し。
或いは、無型こそが唯一の型。
それが、銀嶺騎士団の精神であり、真髄だ。
その一方、修練は単調極まりない。
馬を駆り、渓谷を、原野を、原生林を疾走する。
早朝に出発し、夜に及ぶ事もある。
雨天、強風、雷雨。
時間も天候も、こちらの都合は関係なく、ただ泰然とそこにある。
一つとして同じく条件がないなか、槍を構え愛馬と駆け抜ける。
数年経てば、走りながら、周囲に無意識のうちに気が張れるようになる。
更に研ぎ澄ませれば、自身の背後での僅かな木の葉の揺れを感じるようになる。
自身を中心として、小鳥の羽ばたき、羽虫の羽音、朝露の滴りを認識する。
それが、無型。
銀嶺騎士団の精神、つまりは騎士道だ。
研ぎ澄まされた精神に基づく、『あらゆる状況』への即時対応。
その創設以来受け継がれてきた伝統と技術は、『あらゆる能力』を使う洗礼者に対して、十分以上に渡り合ってきた。
銃火器も、AFも使用せず、近代戦術に対応できない『骨董品』と言われてきた銀嶺騎士団が、アスガルドにその名を知らしめる。
その意思を込めた十七本の槍が、サリエリに向かって殺到する。
-
79:拾郎 :
2023/11/27 (Mon) 16:49:15
-
⑦-3
人馬一体。
一団にして一個。
流麗だが重厚。
鋭利ながら獰猛。
意志ある捕食者の顎の如く、襲い掛かる必殺の十七連撃。
銀嶺騎士団の長きに渡る歴史の中に、個人が防いだ例はない。
初撃を捌き、二撃を弾いたとしても、以降の連撃に飲み込まれる。
だが。
槍を構えた戦装束の戦士-サリエリ-は違った。
初撃がサリエリに放たれる瞬間、先頭の騎士が『見えない壁』に激突する。
次列、参列目の騎士達も次々に『見えない壁』により、その突撃を阻まれる。
後続の騎士達は瞬時に異常を察知。
『無型』の修練により磨かれた心身が、即座に次善策にて対応する。
ある者は迂回し、駆け抜けざまに。
ある者は跳躍し、頭上から。
その全てをサリエリの槍は迎撃する。
銀嶺騎士団の真骨頂である十七連撃。
分断した時点で、それは『個別』の攻撃。
『各個撃破』が可能となる。
-嵐の後の静寂。
血だまりに沈んだ先陣の騎士が、サリエリを見上げる。
全力を尽くした上での、敗北。
相手がAFを使用しようが、超常能力を使おうが、言い訳は不要。
完敗だ。
敗者に弁は不要。
だが。
「・・・無礼を承知でお頼み申す」
これだけは確認しなければならない。
先陣にいた自分だけが認識できたはずだ。
『見えない壁』に激突する際に、確かに見た。
サリエリの、頬に、首筋に、手首に浮き出た紋様を。
銀嶺騎士団『開祖』より伝わる、古の戦士の紋様を。
「・・・貴公の名は?」
-真の名は?
それは敗者に対する餞(はなむけ)か。
寡黙な戦士が口を開いた。
「我が名は、ロベール。ロベール・エリクセン」
「・・・馳走になった」
返礼の言葉と共に、騎士は己の血の海に倒れ込む。
-ならば、あの槍は
-神槍‘ダマーシュ’
「・・・道理で」
それが、最後の言葉だった。 -
80:拾郎 :
2023/11/27 (Mon) 17:51:08
-
⑦-4
以降、ロベール・エリクセンは『見』に回った。
『塔」正門の守護、という意味合いもあるが、
銀嶺騎士団以上に、彼の闘争本能を刺激する存在がなかった、というのが本音の所だ。
‘十人の子供達(テン・チルドレン)’における唯一のルール、『早い者勝ち』に従った結果とも言える。
だから、その二人組を見た時には、些か驚いた。
ロベール・エリクセンが座す正門前に現れた、帯剣した女と、軽装鎧の男。 -
81:拾郎 :
2023/12/29 (Fri) 18:34:09
-
⑦-4
女は小柄な体格であった。
身にまとうのは軽量した細身の胸鎧、手甲、すね当て。
栗色の髪は動きを妨げる事の無いよう、後頭部で一結びにまとめている。
歩き方には芯があり、一種の気品が漂う。
一方の男は古びた革鎧に二対の短剣を無造作に腰帯に挿している。
左足には充て木とバネを仕込んだ歩行補助具をつけている。
事実、片足を引きずりながら歩いているが、その動きはあくまで自然体だ。
修練を積んだ女騎士と、負傷の後遺症にうより速度を失った軽戦士。
この場にいる事におかしくはない。
『奇襲』を受けているこのロンバルディアにいる事はおかしくはない。
塔の『正門』を突破しようと試みる事はおかしくはない。
だが、この場にいる事はおかしい。
このロベール・エリクセンの前に立っている事はおかしい。
女騎士は厳しい修練を積んだのであろう。
軽戦士は失った敏捷性の変わる技術を会得しているのだろう。
この『奇襲』に賭ける思いもあるのだろう。
だが、それだけだ。
技量も、技術も、思いも、全てが及ばない。
このロベール・エリクセンおろか、先ほどの銀嶺騎士団達にすら、何一つ遠く及ばない。
故におかしい。
この場に立つ事はおかしい。
このロベール・エリクセンに剣を向けることはおかしい。
ロベール・エリクセンは、無造作に背に手を伸ばし、槍を抜いた。
『構えた』のではない。
『抜いた』だけだ。
そして一言。
「去れ」
「・・・あれが、ロベール・エリクセン」
女騎士は掠れた声で呻いた。
―なんという威圧感。
決意が、一瞬で崩れた。
―実力が違いすぎる。
槍を握って立っているだけの相手に、足が進める事がない。
覚悟が、刹那で失われた。
―叶うわけがない。
「これが、‘白き腕’か。ハッ、思っていたより大した事はなさそうだな」」
軽装鎧の男が軽口を叩く。
明らかな去勢。
圧倒的な威圧感、存在感に‘飲まれまい’とする自身に対する強がり
飲まれてしまえば全てが無駄になる。
「ビビるな!」
突如張り上げた男の声に、震えていた女騎士の体に響く。
「俺たちがやる事に意味はないかもしれねえ。
結果なんか残らない。
奴の記憶にも残らない。
やるだけ無駄、ってやつだ。
だが、俺はやる。
結果よりも大事なものがあるからだ。
・・・分かるだろ!
ここまで来たお前なら!
・・・分かるだろ!
こいつらと過ごしたお前なら!」
男は周囲に飛散した白嶺騎士団の躯を挿し、なおも叫び続ける。
「わかるだろ!
分かるよな!?
分かれよ!!!」
「・・・お前は怖くないのか?
ロベール・エリクセンが怖くないのか?」
「当たり前の事を聞くな
怖いさ。
しゃべってなければ、呼吸もできないほど怖い。
だけどな、俺はもっと怖いものを経験している
それに比べりゃ、なんでもねえ」
「それは・・・」
「お前の爺さんと戦った時だ」
―震えが止まった
「・・・おじい様」
無意識に、剣の柄へと手が伸びる。
「そうだ。
あの爺さんの孫なら、
いけるよな?
いけるだろ?
いけんだろ!?
お前なら、いけるだろ!?」
剣を抜いた。
自然体の動きだ。
一切の無駄はない。
男は笑う。
「そうだ、それでいい。いこうぜ、‘ジャンヌ’ -
82:拾郎 :
2023/12/30 (Sat) 19:31:56
-
7-5
~ ◇ ~ ◇ ~ ◇ ~
ロベール・エリクセンは疲弊していた。
数千の刻を越え。
数万の場所を越え。
戦い、闘い、獄ってきた。
勝利が欲しいわけではない。
望むは一つ。
望みを掴めば、得てきた勝利の万倍もの敗北を受け入れる。
だが、ある時気づいた。
自分は、望みを得る機会を遥か過去に逃している事を。
そして、気づいた。
自分は、望みを得る事が永遠に叶わぬまま、幾星霜の刻を生き続ける事を。
その意味に、気づいた。
自分は、どれほどの勝利を積み重ねようが、決して‘終わる’事がない事を。
『キミの望みはボクがプレゼントするよ、ロベール』
数百年降りに、ロベールの前に姿を見せた男が言った。
『今のキミが‘唯一にして最大に必要’とするものをね』
以前と変わらぬ、砕けた口調。
かつては、神経を逆なでたその口調が、不思議に胸に沁みる。
『その代わり、一つキミの力をボクに貸して欲しい。
かつて、ボクと同じ場所で、同じ時を過ごした、キミの力を・・・』
僅かな思案ののち、ロベールは口を開く
いくつもの時代を共に歩みながら、決して交わる事の無かった二人の道が・・・
―我が欲するのは、‘終わり’だ、ベルザイン。
この瞬間、重なった。
~ ◇ ~ ◇ ~ ◇ ~
女騎士‐ジャンヌ‐は、剣を抜き、一歩足を踏み出した。
分かっている。
ロベール・エリクセンが『去れ』と言っている以上、踏み出した先は『死の世界』だ。
踏み出した瞬間、ロベール・エリクセンが動く。
少なくとも、ジャンヌが認識したのは、ロベール・エリクセンが動いた、という事実だけだ。
如何なる所作か、技術か、連技かは見切れない。
結果として‘槍’が眼前に迫る。
ロベール・エリクセンの槍による一撃。
‐つまりは、‘死’
ジャンヌの祖父はかつて言った。
『我輩が聖騎士だった頃、つけられた異名が幾つかある』
『その中でも我が名を最も知らしめたものであるが、その由来である』
ジャンヌの眼は閉じられている。
その心眼は、、‘槍’を見つつ、‘槍’を見ていない。
槍の遥か、先にある‘星’を見つめる。
星の輝きは、遥かな年月をかけて地上に届く。
その光に比べれば、槍の速度はあくまで地上の速度。
その光が辿りつく先は。
その光を受けるのは。
-星宮の騎士
冷気。
そして張り詰める熱気。
光の粒子が女騎士の剣から立ち上る。
「──出るぞ」
刹那の瞬間、軽戦士は呻いた。
閉じられていた女騎士の瞳が、それまでと全く異なる輝きと共に開かれていく。
「 開 闢 (かいびゃく)!!!」
轟音。
爆風。
ジャンヌの剣から全方位に向けて放たれた光が正門全体に乱反射する。
「うぬっ!!」
まるで世界の終わりが来たかのような、という例えが大げさに聞こえない。
その証左に、あのロベール・エリクセンの動きが止まる。
光と闇と風と土ぼこりが空間のあらゆる場所でのたくり、龍のごとく暴れまわる。
-
83:拾郎 :
2023/12/31 (Sun) 09:09:22
-
7-ラスト
爆風が晴れていく。
やがて澄んだ風が視界を開いていくと、両手にそれぞれ剣を携え、周囲に十本の浮遊する剣を従えたジャンヌの姿があった。
「やれば、出来るじゃねえか」
軽装戦士は全身から光の片鱗を放つジャンヌの肩に手を伸ばす。
そして、目を閉じ、イメージする。
厳密には、その精神を模倣する。
ジャンヌの祖父リヒャルト・ドイセン=ブルクハルトの精神を。
この‘鏡の剣士’イヴォルドとと対峙した際に見せた研ぎ澄まされた精神により繰り出した絶技を。
ロベール・エリクセンを中心に十本の剣が、周天する。
厳かに、一身に、聖地を求める巡礼者の列だ。
「──聖剣“星宮の巡航者(ゾディアック・クルーザー)”」
ロベール・エリクセンが剣の名乗りのを代弁するかのように言った。
自身の持つ‘神槍ダマーシュ’に匹敵する‘聖剣’
その刀身に秘められた失われた絶技を目にする事になるとは。
女が刀身を解放し、男が操作しているのであろう。
まるで比翼の鳥。
互いに足りないものを補い、この絶技を発動させている。
「・・・感謝する」
深い吐息とともに‘星宮の巡航者’を見上げる。
‘終わり’を求めていた自分は見過ごしていたのかもしれない。
自身が歯牙にもかけなかった‘弱き力’が、幾つも重なりあう事で、目的に達する事を。
その中には、求め続け、遥か過去に諦めた‘望み’に至る道もあるのかもしれない。
そして、その答えは戦いの中にあるのだろう。
互いの尊厳と、誇りをかけた戦いに。
「・・・行くぞ‘ダマーシュ’」
ロベール・エリクセン呟きと共に、‘神槍’ダマーシュの刀身が輝き出す。
‘星宮の巡航者’と対になる同色異種の輝き。
そして、‘神槍’と‘聖剣’が激突した。
-
84:拾郎 :
2023/12/31 (Sun) 09:09:36
-
7-ラスト
爆風が晴れていく。
やがて澄んだ風が視界を開いていくと、両手にそれぞれ剣を携え、周囲に十本の浮遊する剣を従えたジャンヌの姿があった。
「やれば、出来るじゃねえか」
軽装戦士は全身から光の片鱗を放つジャンヌの肩に手を伸ばす。
そして、目を閉じ、イメージする。
厳密には、その精神を模倣する。
ジャンヌの祖父リヒャルト・ドイセン=ブルクハルトの精神を。
この‘鏡の剣士’イヴォルドとと対峙した際に見せた研ぎ澄まされた精神により繰り出した絶技を。
ロベール・エリクセンを中心に十本の剣が、周天する。
厳かに、一身に、聖地を求める巡礼者の列だ。
「──聖剣“星宮の巡航者(ゾディアック・クルーザー)”」
ロベール・エリクセンが剣の名乗りのを代弁するかのように言った。
自身の持つ‘神槍ダマーシュ’に匹敵する‘聖剣’
その刀身に秘められた失われた絶技を目にする事になるとは。
女が刀身を解放し、男が操作しているのであろう。
まるで比翼の鳥。
互いに足りないものを補い、この絶技を発動させている。
「・・・感謝する」
深い吐息とともに‘星宮の巡航者’を見上げる。
‘終わり’を求めていた自分は見過ごしていたのかもしれない。
自身が歯牙にもかけなかった‘弱き力’が、幾つも重なりあう事で、目的に達する事を。
その中には、求め続け、遥か過去に諦めた‘望み’に至る道もあるのかもしれない。
そして、その答えは戦いの中にあるのだろう。
互いの尊厳と、誇りをかけた戦いに。
「・・・行くぞ‘ダマーシュ’」
ロベール・エリクセン呟きと共に、‘神槍’ダマーシュの刀身が輝き出す。
‘星宮の巡航者’と対になる同色異種の輝き。
そして、‘神槍’と‘聖剣’が激突した。
-
85:拾郎 :
2024/01/04 (Thu) 23:43:28
-
8_1
その異変に最初に気づいたのは野性だった。
氷壁を自在に駆け巡つていた熊羊が、身震いと伴に、雷鳴のような嘶きを上げる。
北の穂先族の戦士は、自身の半身たる獣の異変を直ぐに察知。
直後に、この戦場の長に報告する。
「フランク殿!」
名を呼ばれたフランク・ラパードは、短く鼻をならし、空気を嗅ぎ取る。
―来るか
―奴が来るのか
判断は一瞬。
「撤収!散開して退避しろ!」
氷壁は、以前多くの洗礼者達を足止めしている。
ここを放棄するということは、ロンバルディアに進行した味方が、背後から追撃を受けると言う事だ。
自身が、そして熊羊が感じた兆候は、誤りかもしれない。
撤退命令も誤りかもしれない。
だが、奴が戦場に現れれば、僅か数分で、味方は全滅する。
自身も含めて、一人残らず、死ぬ。
文字通り、全滅だ。
判断の遅れは許されない。
この奇襲、つまりは第三次大聖伐において、北の教会が最も恐れる男。
―その男の名は
迷っている暇はない。
この奇襲
迷っている時間はない。
「」 -
86:拾郎 :
2024/01/07 (Sun) 19:22:43
-
8-②
風が、中央広場に吹き始める。
ほぼ同時に、広場後方より鳴り響く、連絡用警笛の音。
‘一音階の一音’
最も単純であり、最も響く音。
‐つまりは、‘緊急撤収’の合図。
「全員撤収!」
中央広場の指揮を執っていた元聖冠騎士副団長・ナーディアの判断は早かった。
今回の‘奇襲’においてナーディアに託された任務は、中央広場に展開した『‘経路(パス)’の死守』と、『味方への進行指揮』。
現時点で‘経路(パス)’を通じて、北の教会の集結地点である‘死せる都’クルア・セルラから、このロンバルディアに進攻した自軍は、現時点で全軍の七割に満たない。
単純な数において、ロンバルディアの‘洗礼者’の総数に及ばない。
更には・・・。
「撤収!?だけど、まだ・・・」
ナーディアの背後で、‘聖鉄盾’を展開していたロメロが困惑を混じった声を上げる。
言いたい事は分かる。
味方は全軍到着していない。
そして、彼が到着していない。
‘北の教会’の最高責任者、第八課課長キールベインが到着していない。
「!?」
ナーディアが何か返そうとした瞬間、‘経路(パス)’が閉じた。
空間に開いた亀裂が、蜃気楼のように消えていく。
クルア・セルラで何かトラブルがあったのか?
‘融合’の能力により、‘経路(パス)を開いていた双頭の獣戦士の問題か?
『行け』というキールベインからの合図か?
いずれにせよ、もはや留まる意味はない。
「全員撤収!急げ!」
ナーディアは再び叫ぶと、自身も傍らで困惑するロメロの手を取り走り出す。
中央広場に吹く風は、先ほどより強くなり、目を開けるのも困難だ。
すぐに立っている事すら困難なほどの強風へと変わるだろう。
「ナーディアさん!」
「いいから走れ、死ぬぞ!」
走りながらナーディアは目指す。
中央広場に最も近い石作りの堅牢な建造物である聖フランシス礼拝堂を。
まだ、距離はある。
間に合うか?
「アイツが来る!」
たった一人で、このロンバルディアにいる全員を全滅させる力を持った‘ベルザインの子供達’。
その男の名は。
「‘告げる者’」 -
87:拾郎 :
2024/01/15 (Mon) 19:26:58
-
8-③
「・・・こりゃ、まずいな」
人気のない旧市街地を単身走りぬけながら、ロイドリッツは呟く。
‘洗礼者’達が無作為に拡張した迷路のような街路は、ロイドリッツの記憶と異なり、突如として袋小路となっていた。
「ようやく、自分の状況を理解できたようね」
足を止めたロイドリッツの背後から、一人‘洗礼者’が迫る。
尼僧服の上から、半身を覆う外装を付けた、黒髪の‘元異端審問官’。
「貴方の置かれている状況を・・・」
左手で頭上に指先台の鉄球を数個、放り投げる
「貴方が招いた惨状を・・・」
目線に落下した鉄球を、‘鋼化’させた右拳で殴りつけると、鉄球は超速でロイドリッツに向けて打ち出される。
「貴方が犯した大罪を・・・」
更に落下する鉄球を乱打すると、ロイドリッツの退路は塞がれる。
打撃の度に共鳴する耳を切り裂く金属音が、元異端審問官ウェルマの悲痛な叫びの様に響き渡った。 -
88:拾郎 :
2024/01/31 (Wed) 18:19:11
-
8-④
「・・・こりゃ、まずいね」
追い込まれた極狭の裏路地。
眼を開けるのも困難な強風と共に、顔に叩きつけられる砂埃と礫。
‘鋼化’された拳により撃ちだされた迫る’鉄球‘。
ロイドリッツの置かれた状況は、悪い。
地勢も、視界も、天候も悪く、防御姿勢も回避行動も取れる間合いではない。
死地に追い込まれた最悪の状況だが。
「・・・さて」
ロイドリッツにとっては死地ではない。
頬髯に飄々とした笑みを紛れ込ませ呟く。
予想した局面の一つ。
事前情報と経験に基づくアドリブ。
そして、手にするAFは、『始原のAF』
すわわち『24AF』の一つ
「-闘神都市(バトル・シティ)」 -
89:拾郎 :
2024/02/12 (Mon) 12:13:34
-
8―⑤
『バトルシティ』発動。
効果は、地形操作。
発動係数は、最小。
それでも最大最後のAFは、使用者に過大な負荷をかけるが、ロイドリッツは、驚異的な精神力で負荷を併殺し制御する
。
石畳がせり上がり、ロイドリッツの背丈程の石柱が現れる。
その数、3本。
子どもの腕ほどの直径だが、密度は高い。
放たれた鉄球は、石柱の表面を滑り、石柱の背後に身を潜めたロイドリッツの至近距離を抜け、後方の壁を穿つ。
偶然か、計算か。
3点を穿かれた壁は、強風と自重により、脆くも崩壊する。
「く、また逃げるつもりか!」
頭巾から零れ落ちた黒髪を振り乱し、ヴェルマが叫ぶ。
追い詰めたはずのロイドリッツに、再び『逃走経路』が生まれた、
折角生まれたロイドリッツを殺す機会が・・・
「なにっ!」
逆だ。
ヴェルマが倒壊した壁に視線を移した瞬間、ロイドリッツは石柱から身を乗り出し、ヴェルマに迫る。
身を乗り出すと同時に、石柱を蹴り、加速をつけての突進だ。
「くっ!捨て身か!」
間合いの内側に入られ、鉄球射出は間に合わない。
だが、ヴェルマには拳がある。
『鋼化』により、どんな鎧でも打ち抜く拳がある。
自身を捨てた、ロイドリッツを殴る拳がある。
拳を振り上げた瞬間、ロイドリッツと目があった。
いつもの軽薄さは無く、穏やかで僅かに寂しさが交じる目が、ヴェルマを見つめている。
「ロイ・・・」
何かを言いかけ、振り上げた拳が止まった瞬間に、
轟音と共に上空からの落雷が、ヴェルマの鋼化した拳を射抜いた。
-
90:拾郎 :
2024/03/24 (Sun) 23:42:54
-
⑨-1
『優しい事は、罪ではないさ』
だが、と男は続ける。
『だからこそ、難しい。
-誰も悪くない
-みんなが悪い。
そのような認識こそが、環境を悪化させる
・・・確実にね』
優しい語り口に、僅かに皮肉が混ざる。
『そんな、君だからこそ、ふさわしい。
‘共感’の聖別能力は、君にこそふさわしい。
君以外であれば、ボクは渡さなかっただろう。
このアスガルドで如何なる者も追随不可能な大いなる力と、
大いなる代償を払う事になる、この‘見つける者’は渡さなかっただろう』
『君は‘共感’により、この‘見つける者’と同化する。
‘見つける者’そのものになる。
君なら、偉大な者になれる。
私欲もなく、成すべきことを理解しているキミならね。』
『ボクは何も求めない。
あえて一つ、言うなれば、
君は、ただ君が正しいと思った事をしてほしい。
ただ、それだけだ』
『誰よりも優しい君ならば、分かってくれると思っている
・・・さあ、今日から君は‘見つける者’だ』
そういうと、ベルザインは静かに頷いた。
-
91:拾郎 :
2024/04/14 (Sun) 11:25:39
-
9-②プロット
・ロンバルディア市街地は、天変地異に見舞われる。
氷塊を伴った暴風、連続する落雷。
奇襲をかけた北の教会だけでなく、迎撃にあたっていた洗礼者達も被害が及ぶ。
・屋内、もしくは地下に避難し、足止めを食らう『北の教会』メンバー
雷鳴に光る『塔』を見上げ、「後、少しなのに」
・暴風と落雷は更に強まり、ロンバルディア中の家屋を崩壊させていく。
轟音により、隣同士の会話も聞こえない中、
やがて、異変に気づく。
・耳鳴り、頭痛、吐き気。
更に吐く息が白く、呼吸も苦しくなっていく。
「気温と、気圧が下がっている?」
・強行突破を試みれば雷に撃たれ、待機をしていれば、気温と気圧は下がり続ける。
・「これが、見つける者。・・・ベルザインが誇るテン・チルドレン最強と言われた洗礼者か」 -
92:拾郎 :
2024/04/20 (Sat) 23:04:20
-
9-③
落雷と暴風の地獄と化したロンバルディアの遥か上空。
渦巻く積乱雲の中心に、見つける者は『座している』。
ベルザインにより下賜された24AFの一つ、天候操作AF。
テラフォーミング機能を備えた24AFは、操作補助デバイス無しでは使いこなす事は出来ないが、見つける者はその類稀なる能力『共感』により、24AFと一体化。
自身がAFとなる事で、様々な制限を受けるが、天候操作能力を自在行使する。
曰く、天空の神。
曰く、『ベルザインの子供達(テン・チルドレン)』最強
だが、代償も大きい。
天候気象操作AFは、惑星の外気を適正化させる能力。
適正化させる能力を行使するには、外気が異常値でなければならない。
その為には、見つける者自身にとって、外気が異常値、つまりは『猛毒』である必要がある。
見つける者が全身に纏う外套は、与圧服であり、決して脱ぐことは叶わない。
神になると言うことは、人に非ずということ。
素顔を晒し感情を出すことも、地上の物を食することも、他者と交流も持つ事も出来ない。
ベルザインが見つける者に差し出した道は、天国への道。
同時にそれは、決して他人と交わることはない、煉獄の道である。
自身がAFと一体化した事により、通常の外気 -
93:拾郎 :
2024/04/21 (Sun) 17:19:11
-
9-④
その瞬間まで、与圧服に装着された‘義眼’は反応しなかった。
‘見つける者’に脅威となる事象全てを判定し、排除行動を支持する‘義眼’が反応しなかった。
‐衝撃
‐右肩
‐飛び散る鮮血
‐裂けた与圧服から流れ込む‘外気’
‐すなわち‘猛毒’
異物が、‘見るける者’の背後からぶつかり、右肩の与圧服を裂いた。
あり得なくはない話だ。
地表の暴風に巻き上げられた瓦礫や岩片が、遥か上空の‘見つける者’が座する領空まで到達する。
だが、‘見つける者’に接触の危険があると‘義眼’が判断すれば、対象の硬度に応じて真空波や圧縮空気の射出において排除する。
するはず、だ。
痛覚を遮断しつつ、‘見つける者’は、自身の体を‘猛毒’に順応。
同時に‘義眼’を展開し、全方位に索敵。
直後に、乱流に乗り‘飛翔’する‘人影’を捉える。
‐‘人影’?
‐否
‐ありえない
24AFにより展開した‘天空神’の領域は、気圧と酸素濃度が極端に低い環境だ。
例え、何等かのAFの使用により、この高度に到達したとしても、生物が活動できる、いや、生存できる環境ではない。
範囲を拡大した‘義眼’を、‘人影’に設定し解像度を上げる。
そして、その正体を知った。
女性的な肢体。
一切の動力を使用せず、手脚に張った被膜のみで空中を滑空する事で、‘義眼’の危険度判定を搔い潜る。
乱気流の流れを読み、僅かな手脚の操作により、方向を操作し、揚力を発生させ、‘見つける者’との間合いを瞬時に詰める。
酸素濃度も空圧も影響を受けない、文字通り人間離れをした‘自動人形’。
かつて、‘ベルザインの子供達(テン・チルドレン)’の間で、『最も危惧する存在』であったが、使用者の死亡により失われたはずの脅威。
-すなわち
-‘湖畔の英霊’ -
94:拾郎 :
2024/04/21 (Sun) 17:55:15
-
9-⑤オチ
・‘見つける者’対‘湖畔の英霊’
・‘見つける者’にとっては、唯一の『他者との交流』
・言葉を話さなくても、孤独な‘神の領域’に踏み込んで来た相手を無意識に歓迎する。
・いつしか、『戯れる幼少時の記憶』が蘇り、‘湖畔の英霊’と重なるように地上に落下する。
~ ◇ ~ ◇ ~ ◇ ~
・地上、ロンバルディア市街地。
・上空を覆っていた積乱雲が晴れ、異常気象は収まる。
・倒壊した家屋の中で、老人の様な風体となり横たわるルナン・クライトス。
・AF再生能力である‘灰は灰に(アッシュ・トゥ・アッシュ)’により、‘湖畔の英霊’を限界まで再稼働させた結果。
・ルナン『貴方の事が、少しだけ理解できた気がします。・・・ライナス・バルグ』
・傍らでルナンを看取る、フェルメノとクエイル・バーネット。
・ルナン『君に、・・・受け取って欲しい』 →第六課課長印をクエイルに渡す。
・その手が重なった瞬間に、ルナンの意識は途切れる。
・気が付くと、ルナンの手を握っているのは、『アーシャ』
・『遅かったね、課長』『待ちくたびれたッすよ』『土産話はたんまりあるんでしょうね』
→旧・六課の面々が、『あの頃』と同じ姿で、ルナンを迎える。
・ルナン、長年‘顔向けできない’と非を感じていた旧六課に、誇らしく向き合えている自分に気づく。
『全く、お前たちには苦労をかけられる』 → 笑みを浮かべて、終了 -
95:拾郎 :
2024/04/21 (Sun) 17:56:44
- 次回で、最終章・前半のラスト
-
96:拾郎 :
2024/04/25 (Thu) 11:53:58
-
【設定・演出】『第三次大聖伐』と『異端審問印』
・ロンバルディア襲撃にあたり、『第8課課長キールベイン』は、『大聖伐』を発令
・大聖伐発動条件:異端審問局課長のうち、過半数の承認(つまり7名以上)
・大聖伐発動効果:発令中、各異端審問が所有する異端審問印に、第一種封印弾レベルの超高濃度荷電粒子が充電される。
格ゲーでいえば、必殺ゲージが貯まる速度がクッソ早くなる状態。
各異端審問官が所有するAFによる、必殺技が複数回、あるいは連続で使用可能になる。
※効果はAFにより異なる。
・発動期限:発令から24時間。
・継続条件:異端審問局課長の過半数が存在する事。過半数を割ると、24時間以内でも大聖伐は終了する。
・第三次大聖伐発動時の課長
第一課:不明
第二課:アズール・バール(前任ジグボルト死亡に伴い継承)→承認
第三課:ロイドリッツ→承認
第四課:畜生サーシャ→闇落ち中
第五課:ケステ・ジャイム→死亡
第六課:ルナン・クライトス→承認
第七課:不明→承認
第八課:キールベイン→承認
第九課:不明→承認
第十課:ローフェルマルス→死亡
第十一課:フェルメノ・キルス→後に承認
第十二課:フランク・ラパード→承認
第十三課:不明 -
97:拾郎 :
2025/02/09 (Sun) 21:57:11
-
⑩-1‘銀の雨’フォースティーVS‘鋼化のヴェルマ
・ロイドリッツの戦闘中に、地下通路に落下したヴェルマ。
・落下と同時に全身を‘鋼化’。ダメージはないが、‘鋼化‘を説くと地下通路に一人とりのこされている。
・避難路、高度な水道施設、‘塔’の落下により半分は崩落。
・崩落を免れた通路も歪に歪み、石畳はうねり、照明設備も機能していない。
・移動すると、事前に仕込まれた‘鋼糸’によるトラップ発動。
・「お姉さんの相手は、僕に任されたんだ。あの人から、念入りにね」
・移動と共に次々とトラップ発動。フォースティーの姿は見えないが、声だけ暗闇に響く。
「僕もね、あの人に振り回されるのは本当に懲りているんだ。」
「腹立たしい事は、振り回される事に最近は『慣れた』ことだよ。良くないよね」
「無茶な頼みをされても、『ああ、またか』、としか思わなくなった。本当に、よくないよね」
「だからね、『お駄賃あげるから、お姉さんと遊んでくれ』と言われて、引き受けてしまうんだ」
「今度こそ、ハッキリ断ってやろうと思っていたのに、何でだろうね。・・・お姉さんはどう思う?」
「ああ見えて、あの人は約束を守るんだよ、・・・嘘もつくけどね」
・ヴェルマ、トラップから脱出するため、通気口から地上へ脱出。
・上空へ跳躍して、ロンバルディア全景を初めて認識。
‘見つける者’の天候兵器により、‘塔’半径500メトル―の建造物が破壊され、瓦礫が螺旋状に散りばめられている。
・声を失い地下道へ落下するヴェルマ。
「気づいたかい」
「ネタ晴らしは、終了。この有様で、戦う力なんて残っていないのさ。・・・『北の教会』にも、ボク自身もね」
「僕が頼まれたのは、『お姉さんと遊ぶ事』だ。・・・戦う事じゃない」
「着いてきなよ。案内するよ、ロイドリッツさんの所へ」
「約束を果たしてもらうといい。ああ見えて、あの人は約束を守るんだ、・・・嘘もつくけどね」 -
98:拾郎 :
2025/06/01 (Sun) 15:16:50
-
⑩-2 ~間章~ ‘鉄道騎士団’
・舞台:ロンバルディア地下最下層「アスガルド鉄道・特別格納庫」
・暗闇の中、鉄道騎士達の持つランタンが、扇形格納庫の最深部で眠る車両を照らしている
「本当に眠っていたのか」
無骨にして流麗なフォルム。
特装の8輪駆動の車輪。
「・・・第一課専用特別列車、‘スレイプニール’」
誰かが、震える声で喉を鳴らした。
「我々の、最後の希望・・・」
‘伝説’を前にして。
これから起こる事の責任の重さを背にして、全員の体が震えた。
‐ただ一人を除いて
「駆動前点検、開始!」
静寂の空間に、弦を張ったかのよな声が響く。
その声を合図に、鉄道騎士達は俊敏に車体の各部へと散った。
「外観点検、破損状況確認!」
「制動装置確認!・・・ヘルメス後期2型と同一です!」
「制御器回転、・・・ヨシッ!行けます!起動試験に入ります」
「制御系統点検、異常無し!点灯チェック、良好!
「連結部分確認!ジョイントタイプSS型。ヒッチさえ合えば、行けます!」
-いつも通り
-いつも通りの運行だ。
-‘神の列車’であろうと、‘最後の希望’であろうと、些細なことだ。
‐目的地まで列車を守護(まも)る
-それが
「鉄道騎士団だ」
第七教区鉄道騎士団団長キンラーセンの言葉に反応するように、
その身に纏った赤銅色の騎士鎧が赤色の光沢を放つ。
「あとは・・・」
発射準備を整える鉄道騎士達を背に、キンラーセンは前方を塞ぐ‘大門’を見上げる。
この格納庫を守り‘箱舟’落下の衝撃からも格納車両を守り抜いた門だが、閉会のための動力源は、落下の衝撃により‘死んで’いる。
「信じるのみ」
‘大門’に背を向けると、キンラーセンは再び鉄道騎士達へ指示を出し、‘その時’を待つ。 -
99:拾郎 :
2025/06/15 (Sun) 16:26:59
-
⑩-3 ~大門前~ エムレ・ゼラート対‘締紐’のヤマル
前編
‘洗礼者’ヤマルは常に自問し続けてきた
‐幼き日に親に捨てられ
‐仲間に裏切られ
‐組織に利用され
泥の中を這いまわる間、‘もう一人の自分’が問い続けてきた。
‐人が生きる上で、最も必要なものとは何か?
その答えが見つかれば、自分の生は意味を成し、他人の生に意味を与えられる。
‘祈り’も‘神’も答えを与えてはくれなかった。
長き葛藤の末、朽ち果てようとした自身の前に、‘調停者’が現れた。
『・・・その質問は、ボクも答えることはできないなあ』
‘調停者’は微笑んだ。
『だって、答えは君自身が‘持っている’じゃないか』
白い指が、額に触れる。
その瞬間、ヤマルの頭の中に、閃光が走った。
-そうか
‐人が生きる上で、最も必要なものとは
‐『 』であったのか
後編
漆黒の闇が続く、広大な地下空間。
聖都ロンバルディアの地下で、エムレ・ゼラードは冷たい石畳の上に倒れ伏していた。
広大な地下空間の中を走り続けてきた、体力的な限界。
‘上級洗礼者’であるヤマルを、一人で対峙してきた‘精神的な限界’
そして、四方から自在襲い掛かる‘縛紐’により、全身が切り刻まれた‘肉体的な限界’。
それでも。
「・・・終わってなんか」
血まみれの右手で、愛銃‘ケルベロス’を構え、
「いねえぞ!」
震える指で引金を引く
暗闇に銃声が空しく響く。
最後の‘炸裂弾’は、地下空間の天井に赤い華を咲かせ、刹那の光明が地下空間を照らす。
一クモの糸より細い‘紐’が、幾何学模様が張り廻らされた、地下空間を。
「君の奮闘は、賞賛に値する」
「私の‘縛紐’は、決して切れる事はない」
「初手で、私の‘縛紐’は、君と私を繋いだ」
「これにより君の行動範囲は、私を中心とした半径30メトルーのみに制限された」
「逃げ続ける君の行動を制限する為、この地下空間に‘縛紐’の展開を続けた」
「結果、‘縛紐’は、君の体を切り刻み続けた」
憐憫の視線を、倒れ伏したエムレに向ける。
「最後に、もう一度君に問おう。
人が生きる上で最も必要なものは何だ?」
「・・・‘飯’じゃねえなら」
血まみれの口を動かし、エムレは答える
「‘愛’ってヤツじゃねえよな」
「答えは、そう『繋がり』だ」
「他者との繋がり、心の繋がりが、大切な事だ」
「最も、最も、最も、最も、大切なものが‘繋がり’だ」
「故に私の‘縛紐’は、私の死後も消えることはない」
「永遠に両者を結び続ける。・・・結ばれた両者が解除を望まない限り、永遠にだ」
「それを聞いて、安心したぜ」
エムレが、上体を起こした。
「・・・なんと言った」
「俺の予想通り、て言ったんだよ」
地下空間に響き渡る轟音。
四隅の石壁が割れ、大量の水が流れ混む。
二人の足首が、濁流につかる。
「さっきの炸裂弾は、天井の‘堰’を狙った。
大河アグとこの地下空間を繋ぐ水路をせき止めていた水門さ」
「ここはな、貯水槽なんだとよ。
ただの貯水槽じゃないぜ。
最下層のアスガルド鉄道特別格納庫の大扉を、第一課の許可なく開けるための非常用装置だ。
・・・鉄道騎士のおっさんが言うんだから、間違いないんだろうぜ」
「この貯水槽に水が溜まり切れば、その重さで大門が沈む。
‘最後の希望’が堂々と発車できる訳だ。
ただし、‘箱舟’落下の衝撃で脆くなった貯水槽を修繕する必要があった。
補修無しでは、水をためる途中で圧に耐え切れないからな。
当然、そんな時間も資材もない。
‘決して切れない紐’なんて便利なモノがなければ、不可能だったろうぜ」
「ぐっ!」
既に、濁流は腰の高さまで浸食している。
「この‘紐’はアンタが死んでも消えることはないが、アンタが距離をとると消滅してしまうらしい
・・・あんたが俺を追いかけてくる時に見せてもらったぜ」
「逆に言えば、俺がここを動かなければ、アンタは俺から半径メトルー以上動けない」
「さて、今度は俺からアンタに質問だ」
「・・・これから起こる事が、分かるか?」
エムレは、刻刻と水かさが増すこの貯水槽の中心に居座り続ける
その間‘縛紐’で結ばれたヤマルは、脱出することができず、貯水槽の強度は維持される。
「この私が、・・・貴様と、・・・心中などと」
「‘心中’、違うぜ」
ニヤリ、と笑みを浮かべる。
「・・・‘根性比べ’だ!」
叫ぶと同時に、濁流が二人の投身を飲み混んだ。
-
100:拾郎 :
2025/06/15 (Sun) 17:14:11
-
⑩-4 神楽士ロイドリッツ・ヴァレンタイン
「やあ、今日顔を合わすのは2度目だね」
フォースティーに案内され、地下通路から地上に出たヴェルマを、瓦礫に腰をかけたロイドリッツが静かに迎えた。
「不思議なモノだね。法王庁時代は、君が俺と顔を合わせる事なんて、滅多になかったのにね」
ロイドリッツの右わき腹からは、血が滲んでいる。
止血処置はしてあるものの、流血は止まっていない。
重傷である事が分かる。
あるいは致命傷か
「・・・それは」
法王庁消滅以降、ヴェルマには思いがある。
期待に応えず、責務を果たさず、思いを裏切ったロイドリッツに対する思いがある。
だから、自分は‘洗礼者’への道を進んだ。
進まざるを得なかった。
「あなたが、いつも遅刻と無段欠勤をしていたからでしょう」
だが、ロイドリッツの死期を悟りながらも、穏やかな表情を見ると、
口からでたのは、法王庁時代の、異端審問官時代のヴェルマが抱えていた思いだった。
「・・・そうだよな。ヴェルマ君は、いつも早朝訓練してたよね」
「知っていいたのですか?」
「‘第二修練場’の鍵、いつも空いていたのは何故だかわかるかい?」
無精ひげを搔きながら、小さく笑う。
悪戯小僧の笑みだ。
あの日と同じ、ヴェルマが初めてロイドリッツと会った時の笑みだ。
「その貴様の自覚の無さが招いた事態が!」
引き戻された心を、無理やり戻す。
「この様だ!・・・お前が招いた地獄の光景だ!」
‘見つける者’が引き起こした暴風域は、聖都ロンバルディアの地上の構築物の殆どを薙ぎ払った。
螺旋状に広がる瓦礫を中心に、‘塔’、すなわち‘箱舟’が座している。
「そう、逃げたんだよ。あの時の俺は・・・」
ロイドリッツは静かに立ち上がる。
「その責任は、取らなくちゃいけない。・・・俺自身でね」
立ち上がったその左手が握っているのは、箱型を成す『闘神都市』
創生の24AFの一つにして、その能力は、『地形創成』
「そして、約束も果たす。俺の命、ヴェルマ君にあげるよ。・・・もう少しだけ、待っていてくれたらね」
そして、地脈が鳴動する。
『戦神都市』が放つ赤い点滅に連動し、地表の瓦礫が舞い上がり、‘塔’を中心とした渦を成していく。
瓦礫が地表を離れる音。
空気が切り裂かれる悪露。
旋回により瓦礫が積み重なる音。
全ての音が、やがて一つの旋律になっていく
「‘光の螺旋律’。・・・昔ね、俺が作曲したんだよ
三重奏がね、別々の曲を奏でるけどそれが秩序を成すんだ。
段階的に発展していく過程における規則性とも言えるけどね」
螺旋はさらに大きくなり、やがて地表から‘塔’の外周を旋回する‘線路’へと姿を変えていく -
101:拾郎 :
2025/06/22 (Sun) 17:15:23
-
⑩―4 間章
「あー」
意識が戻ったので、声を出してみた。
視界はぼやけているが、聴覚と触覚はハッキリとしている。
汽笛の音と蒸気機関駆動音。
そして断続的な振動を伝える硬質の木造床。
列車の、貨物車の中なのだろう。
「天国行きの列車、て事はないよなぁ」
「‘天国’に行けると思っているなら、図々しいわ」
呟きに応えたは、聞き覚えのある素っ気ない声。
「地表に向い‘塔’に目指す。・・・貴方が開けた、‘大門’を潜り抜けて」
「・・・実質、地獄行きじゃねえか」
安堵の吐息を、自虐的な嘯きで誤魔化す。
-そうか、俺はやったのか
「‘天国’に行けるのは、最後の瞬間まで精一杯生きた人だと、聞いた事があるわ」
視界が徐々に鮮明になる。
両腕、脇原、大腿部に巻かれた包帯
滲む薬染みは、止血と麻酔用の草膏か。
そして、傍らに‘‘魂食の鎌(テスティレンス・サイズ)にもたれ掛かるようにたたずむアンジェ。
その全身は濡れていた。
まるで『水中から人一人を救助したか』の様に。
車窓から入る風で渇きつつあるものの、肩ほどまで伸びた髪は白い首筋に張り付き、
白い布鎧は薄い肢体を明瞭に晒していた。
「まあ、‘天国’が楽しいところとは限らねえしな」
エムレは視線をそらしつつ、鼻を掻く。
「・・そうね」
アンジェが微笑んだ。
‘自動人形’と見間違うほどに感情を見せない少女が、微笑んだ。
「・・・見せてもらったわよ」
「な、何をだよ?」
「‘男の意地とナントカ’よ。・・・根性勝負は、確かに貴方の勝ちだった」
「・・・そっちかよ」
何故か、安堵の溜息。
礼をまだ言っていない事に気づいた。
戦況や、仲間の安否も気にかかる。
だが、言葉が続かなかった。
そして、沈黙が続く。
「お前さ」
やっとの事で、言葉を紡ぎだす。
「‘人が生きる上で最も必要なもの‘って、何だと思う?」
静謐の地下空間にて、‘締紐’の洗礼者より詰められ続けた、問い。
「そんな事、聞く?」
「まあ、答えなくてもいいけどよ」
「‘飯’でしょ」
「・・・だよなぁ」
破顔一笑。
列車は地下空間を抜け、地上へと駆け上る。 -
102:拾郎 :
2025/08/14 (Thu) 17:11:45
-
⑩-5
‐よお、‘俺’
‐斜に構えて、傍観者を気取る事で、本心をごまかしていた‘俺’
-どんな気分だい?
―今、この瞬間は、どんな気分だい?
一瞬、意識が飛びかけた。
視界が暗転する直前に、聞こえた‘声’で、意識が戻る。
崩れ落ちる直前であった膝に力を入れ、踏みとどまる。
「・・・悪いな」
無精髭に覆われた口元が小さく動く。
「今は、・・・取込み中でね」
眼前に浮かぶ、拳二つ分程の七色に光る球体―‘戦神都市(バトル・シティ)’―に再度、意識を集中。
制御デバイス無しでの精神接続は、精神/肉体共に多大な負荷を使用者に求めるが、自身の思考言語を明瞭に反映。
同時に、瓦解した聖都ロンバルディアに散らばる瓦礫が、集約し、『線路』を形成。
『塔』を幾重にも周回するように『線路』は伸びると、その一端は、旧ロンバルディア駅跡に設置
直後に、半壊した駅舎を突き破り、地下より駆け上った第一課専用特別列車、‘スレイプニール’が、形成されたばかりの新たな『線路』の上を駆け抜ける。
「敢えて言うなら・・・」
軋むような精神負荷が、『線路』を形成する度に断続して圧し掛かる。
だが。
始まりの24AFを自らの手で駆使し、集った仲間を乗せた希望の列車を最終決戦の地へと送り届ける。
そうだ
この瞬間の気分を言葉にするなら・・・
「悪くは、ないさ」
ロイドリッツは小さく笑った。
― ◇ ― ◇ ― ◇ ―
「浮上点突破に伴い、後部車両での戦列者受入作業を開始する」
黒銀に輝く機関列車が、連結する後部車両を牽引し、疾走。
伝声管を通したキンラーセンの指示に、鉄道騎士団達は即座に反応した。
「車両左右開閉扉及ぶ後部貨物扉を開放!防護壁はいつでも閉じられるように、手動制御だ!
『塔』は沈黙しているが、迎撃反応は必須と考えられる。
地表走行時間は、130秒だ、この130秒で一人でも多くの仲間をこの列車に回収する!」 -
103:拾郎 :
2025/08/21 (Thu) 18:01:06
-
⑩-5-2
『オーケストラの指揮者として、聖アマネスク音楽堂に立つ』
信仰とは無縁であった少年時代。
偶然出会った『音楽』が、魂を揺さぶった。
教会へと足を運ばせ、自身の内なる才能が目覚めきっかけとなった。
『あらゆる音を感覚と一致させる』という、唯一無二の才能を。
幸運であったのは。
その才能が、『音楽』の道を進む上で適していた事だ。
触れる楽器は美しい音を奏で、その音を調律る指揮者は天職とも思えた
不運であったのは。
それ以上に、その才能は『異端審問官』に向いていた
法王庁百年の歴史の中で使いこなす者がいなかったA級AF‘天奏司紋符’。
47枚の護符によるの配列により、無数の効果を発動させる‘設置系’AFを感覚だけで使いなし、すぐに「天才」として正審問官への道を進む事になる。
‐その道は、異端者を裁く道であり
‐天才と称され
‐神楽士と称えられ
‐第三課課長へとつながっていた
‐同時にその道は、自身の本心を押し殺す道であった
それが、『神楽士』ロイドリッツ・ヴァレンタインが歩んできた道だ。 -
104:拾郎 :
2025/08/27 (Wed) 17:39:00
-
⑩-5-3
‐よお、‘俺’
‐指揮者に必要な才能を持っていると、鼻にかけていたしていた‘俺’
‐才能ってやつはどんなものか、分かるかい?
「まず、第一に・・・」
己の内なる声に、半ば、無意識で答える
「・・・音楽的理解と想像力」
‐言い換えれば、楽譜に隠された作曲家の意図や表現したい部分を見つけ出す洞察力
今回の第三次大聖伐の主軸は、二段階の奇襲にある。
第一段階は、【経路(パス)】を利用した、聖都への奇襲。
第二段階は、アスガルド鉄道を利用した、『塔』への奇襲。
地下倉庫に眠る第一課専用車両により、『塔』の最上階へ直接駆け上がる。
『塔』の外周部に螺旋架橋による『線路』を形成し、鉄道の始点と終点を結ぶ。
テラフォーミング機能を備えた24AFのうち、地形土操作を司る‘戦神都市’。
操作補助デバイス無しでは使いこなす事は‘不可能’とされる最古のAFを、ロイドリッツは感覚だけで操作する。
主旋律を奏でるかの如く、瓦礫だらけの地表に‘線路‘を描いていく。
「次に・・・表現力と感情の伝達力」
‐それにより、‘演奏者‘一人ひとりの才能を引き出される
地下より地上へと駆け上がった列車を、『塔』を中心に周回させるように『線路』を展開。
‘見つけるもの’による落雷と暴風の地獄を凌ぎきった‘北の教会’の残党達が、周回する列車に次々と接近していく。
螺旋架橋を登攀する列車は地表で速度を落とす事は出来ない。
ロイドリッツは、周回する線路の流れを微調整。
半円を広げ、外周まで距離を伸ばし、列車との距離、速度を‘演奏者’個人に合わせ調整する。
「そして・・・、音楽的センスとリズム感」
曲のテンポ、強弱、フレーズの終わりなどを的確に伝えるための技術。
演奏者との時間差を計算に入れ、音楽に正確に合わせる折衝も重要だ。
-
105:拾郎 :
2026/04/30 (Thu) 18:40:23
-
⑩―6 「塔・外周螺旋架橋」
第一課専用車両「スレイプニール」が螺旋軌道を駆け上がる中、
『塔』の外壁表層に、“遅れて”反応が走る。
断続的な共鳴音。
それは砲撃でも魔力反応でもない。
――計測音。
ベルザインの箱舟システムが、
ようやく「この戦いの“異常値”」を認識し始めた証だった。
⑩-7ベルザイン視点
箱舟システムが、観測した“異常値”による警告を連続表示
――予測不能な地形再構成
――戦術利用率、想定値超過
「……へえ」
小さな感嘆。
怒りではない。焦りでもない。
純粋な興味の更新。
断続的に送信される塔の外部状況を、観測する事もなく、分析する事もなく。
ただ‘みている’
「‘戦神都市’を、線路として再定義するとはねえ」
ベルザインは笑った。
再認識する‘事実’。
たった一つの‘事実‘が、その頬を歪ませる。
「やっぱりさ。
“音楽家”って、戦争向きだよね。ロイドリッツ君」
⑩-8「ロイドリッツ(地上)」
ロイドリッツは、瓦礫の上に片膝をついていた。
視界が二重になる。
音が、色になる。
――やれば、出来るじゃないか
“もう一人の自分”が、皮肉もなく声をかける。
――逃げなかった
――誤魔化さなかった
――一番嫌いな方法で、『正攻法』で、正面からやったんだ
ロイドリッツは息を吐き、答える。
「……ああ。
下手くそなりに、それなりの指揮者だったよ」
何度も意識が途絶えそうになるが、まだ最後の仕事がのこっている
残り時間はわずか。
‘戦神都市‘と同調により鋭敏化した聴覚が「雑音」を捉える。
すわわち、残存する洗礼者達の接近音。
螺旋架橋は完成に近づいていた。
『戦神都市(バトル・シティ)』によって再構成された瓦礫は、
秩序だった曲線を描きながら、**塔を取り囲む“動脈”**を形作っていく。
一度完成した螺旋架橋は、物理的に破壊するしかない
――だが、その間際。
塔が、鳴った。
鐘の音ではない。
破砕音でもない。
低周波の、内臓音。
雑音とは比較にならない程の、不協和音。
「……調律が必要ってことか」 -
106:拾郎 :
2026/04/30 (Thu) 18:56:23
-
⑩-10
螺旋架橋の中心、塔の中層からせり出した「それ」は、「巨神」ではなかった。
頭部は「兜」を模している
顔面はスリット状のバイザーで完全封鎖
まるで――
神が意図的に“顔を隠している”かのようだ。
眼孔は存在しない故に視線を感じさせないが、
「見られている」という錯覚だけが残る
胸部装甲は分厚く、神殿の壁を思わせる意匠
中央には王紋と旧世紀象形文字が刻まれている
外装は金属だが、石の質感を持つ
肩当ては巨大な聖堂の屋根を思わせる曲面
脚部装甲は重く、城壁の構造に似る
聖堂と城壁。
相反する意匠の不自然な程の調和。
これは「巨神」ではない。
その源流に位置する「旧神」であった。 -
107:拾郎 :
2026/04/30 (Thu) 19:00:30
-
【再録】⑩-9が漏れてた
⑩-9
最初に異変を察したのは、鉄道騎士団ではない。
第一課専用車両「スレイプニール」の制御機関そのものだった。
圧力ゲージが意味のない数値を示す
距離計が「0」と「限界値」の間を往復する
進路予測が、唐突に“計算不能”を返す
機関は故障していない。
物理演算を拒否する程の、存在の出現。
-重力固定解除
-拘束杭排出
-神威炉、起動
塔の内部より響く‘不協和音’が、動力炉であるヘルメス機関に影響を与えている
螺旋架橋を駆け上がるスレイプニールの進路――
その「先」に、影が落ちた。
列車影ではない。
塔が、歪んだ事により生まれた、影。
塔中腹の外壁が上下に展開し、そこから“押し出される”巨大な影。。
⑩-10
螺旋架橋の中心、塔の中層からせり出した「それ」は、「巨神」ではなかった。
頭部は「兜」を模している
顔面はスリット状のバイザーで完全封鎖
まるで――
神が意図的に“顔を隠している”かのようだ。
眼孔は存在しない故に視線を感じさせないが、
「見られている」という錯覚だけが残る
胸部装甲は分厚く、神殿の壁を思わせる意匠
中央には王紋と旧世紀象形文字が刻まれている
外装は金属だが、石の質感を持つ
肩当ては巨大な聖堂の屋根を思わせる曲面
脚部装甲は重く、城壁の構造に似る
聖堂と城壁。
相反する意匠の不自然な程の調和。
これは「巨神」ではない。
その源流に位置する「旧神」であった。 -
108:拾郎 :
2026/04/30 (Thu) 19:18:52
-
⑪-1「ベルザイン視点」
「うん……いいね」
興味深そうに、旧神を見下ろす。
「やっぱり
“王権モデル”は完成度が高い」
彼は知っている。
この旧神の存在の意味を。
「これは“設問”だ」
「進むために、
何を捨てるかを問う設問だよ」
⑪-2「 鉄道騎士団の判断」
スレイプニールの演算機関が、悲鳴に近い数値を吐き出す。
重量反応:測定不能
慣性係数:未定義
接地圧:分布域超過
「……止まれない。いや」
キンラーセンは、即座に結論を出す。
「減速=停止=押し潰される」
選択肢は一つだけだった。
伝声管をにぎり、全鉄道騎士達へ伝令。
「全機関、最大出力維持!
進路は変えない、突破を試みる!」
すなわち、演算回路に頼らず、手動での全速運行。
⑪-3
旧神の胸部奥。
石と金属に覆われた内部に、
玉座ではない座席がある。
肘掛けはなく、
背もたれは低く、
計器は最低限。
そこに座るのは、王ではない。
王でなければならなかった者だ。
旧時代の王家の末裔。
名を残すこともなく、
国を持つこともなく、
だが、象徴だけを背負わされた存在。
彼は、静かに把手を握っている。
怒りはない。
復讐もない。
あるのは、ただひとつ。
「自分が不要だった理由を、
世界に問い返す意思」 -
109:拾郎 :
2026/05/01 (Fri) 11:59:26
-
⑪-4
把手が、静かに引かれる。
それは力強い操作ではない。
ためらいも、加速もない。
**“起動”ではなく、“許可”**に近い動き。
次の瞬間、
旧神の装甲が――鳴いた。
鐘でも、機械音でもない。
低く、深い、共鳴音。
石と金属が同時に軋み、内部から押し広げられる音。
胸部装甲に刻まれていた王紋が、分解する。
紋章を構成していた継ぎ目が開き、
神殿の壁を模した装甲板が、花弁のように展開。
内側から現れたのは、発光する水晶であり。
――“炉心”。
肩の聖堂屋根装甲が連動して持ち上がり、
背部の城壁構造が段階的にスライドする。
装甲は武装を露出しているのではない。
「旧神」たる存在理由を、露わにしている。
踏み出さない。
腕を振るわない。
ただ、展開したまま“存在する”。
その瞬間――
空間が、潰れた。
音が後追いで歪み、
光が一拍遅れて引き延ばされる。
衝撃ではない。
射撃でもない。
展開した装甲群が、共鳴器として機能し、
旧神自身の質量情報を――波として放射する重力波。
攻撃であり、拒絶
螺旋架橋に接続された高架線が、
一斉に悲鳴を上げる間もなく――
引き延ばされ、
捻じられ、
“重さ”に耐えきれず、破綻した。 -
110:拾郎 :
2026/05/01 (Fri) 13:57:03
-
⑪-5「ロイドリッツ(地上)」
ロイドリッツは、即座に反応。
考えない。
だが、躊躇もしない。
ただ、意識を研ぎ澄ませ、砕けた高架線の“音”を掴み、‘闘神都市’へと反射させる。
「――調律を、開始する」
指揮棒などない。
あるのは、空を切る指と、呼吸と、拍子だけ。
ロイドリッツが重んじる、音楽の三要素。
戦神都市が意識に投影する瓦礫の配置、螺旋の歪み、
スレイプニールの速度変化――
すべてを音として認識し、一つの楽譜へと落とし込む。
瓦礫が、鳴る。
重力波に晒され、崩壊し、歪んだ鉄骨が、異なるルートの架線を形成
不完全だ。
歪んでいる。
だが――繋がった。
⑪-6「鉄道騎士団・手動突破」
演算機関が、完全に沈黙する。
予測不能。
計算不能。
補正不能。
スレイプニールの動力炉-従来型の十倍の出力を誇るヘルメス機関-を演算機関なくしての制御は不可能だ
だが。
キンラーセンは、笑った。
「ここからは――
俺たちの仕事だ」
線路は、繋がっている。
操機士、機関士、測量手、補機員。
鉄道騎士全員が、自分の感覚だけを頼りに操作に入る。
車輪の振動。
風切り音。
僅かな傾き。
「右、二度切り!」
「出力一段戻せ、今だ!」
「高度三百到達!、予備輪駆動準備!」
「三、二、一、回せ!」
線路は揺れる。
たわむ。
再建した線路が重力波により破壊され、落下する直前に新たな線路が形成される。
それでも――
走る。
キンラーセンだけだはない。
鉄道騎士全員が笑っている。
不謹慎なのはわかっている。
だが、この状況が。
一つのミスで全てを失う中、己の全てを注ぎ込み、列車を運行しているこの状況が。
-ただ、楽しい。 -
111:拾郎 :
2026/05/01 (Fri) 16:33:19
-
⑪-7「地上・護衛」
ロイドリッツは、膝をついていた。
視界が歪む。
音に、雑音が混じる。
指の感覚は麻痺し、呼吸が乱れ、拍子の境界が溶け始めている。
それでも、意識は離さない。
“楽譜”を即興でつなげている。
そのロイドリッツに向けて、瓦礫の山の隙間から、影が動く。
正確には、人の形をした影が、音よりも先に滑り込む。
「……一つ、忠告してあげる」
軽口と同時に、鋼糸が撓(しな)る。
銀色の細線が空間に滲み、
光を反射するより早く――
洗礼者たちを“切り取る”。
「‘無防備な獲物’をいつでも殺せると思ったでしょ?」
切断される、足首、手首。
そして、片腕、片足。
「でもさ、そこに意識を集中した君たちも、‘無防備な獲物’なんだよ」
鋼糸が雨のように降り、
洗礼者たちは次々と地に転がる。
「・・・特に、‘銀の雨’にとってはね」
手数と速度。
勝機はそれしかない事を、鋼糸を操る胸の内で理解している。
軽口の半面、フォースティーは残存する敵の数と位置を、常に認識。
初手で、どこまで相手を減らせるか。
「距離と遮蔽」を取られ、遠距離戦に持ち込まれると、分が悪い。
特に――
‘炎熱‘や‘雷撃’といった、「物理的に弾けない」遠距離攻撃に対しては。
-
112:拾郎 :
2026/05/01 (Fri) 17:03:21
-
⑪-8
複数の洗礼者達が‘炎熱’と‘雷撃をロイドリッツに向けて放つ。
ファースティーは、即座に鋼糸を、地表に固定。
避雷針として‘雷撃’をそらすが、‘炎熱’は防げない。
だから、叫んだ。
迷い続けていた、‘相棒’に向かって
「いい加減に気づけよ!」
⑪-9「一瞬の視線」
ほんの一瞬だけ、背後を振り返った。
そこにいるのは、
瓦礫の上に膝をつき、
指揮を続けるロイドリッツ。
血に染まった口元。
焦点の曖昧な視線。
それでも、指先だけは止まっていない。
音を追い、瓦礫で線路を形成し、列車を走らせ続けている。
――昔と、同じだ。
訓練場の隅。
夜間修練の果てに倒れた、「あの時」の記憶
いつもの軽口をなく、説明もない。
朝焼けの中で、ただ在る背中。
ヴェルマの胸に、
鋼化とは別の“重さ”が走る。
(……逃げたんじゃ、なかったんだ)
いつも一番後ろで、見守っていたロイドリッツは
(……全員が前に進めるように、外に出ていただけだ)
その瞬間、体が動いた。
鋼化が、完全に安定。
視線を切り、前を向き。走り出す。
かつての上官を守る位置へ。
命令ではない。
義務でもない。
ただ、理解したからだ。
ロイドリッツが何を捨て、
何を選び続けてきたのか。
鋼化させた拳が、‘炎熱’を薙ぎ払う。
銀の雨が、その横で小さく笑う。
「……やっと気づいた顔だ」
ヴェルマは答えない。
ただ、脚を踏み込む。
鋼化した脚で地面を踏み抜き、
洗礼者達が潜む瓦礫群を、岩盤ごと引っ繰り返す
「――下がれ、まだ来る!」
「ったく、最後にしては景気がいい!」
銀の雨が笑いながら、鋼糸を解き放つ。
糸は踊り、弾き、縫い留める。
鋼が弾き、砕き、叩きつける。
守るべき背中のために -
113:拾郎 :
2026/05/01 (Fri) 17:31:41
-
⑪-10「白き腕」
絶えず変化を続ける線路の上を、スレイプニールは走り続ける。
最上階へ向かう高度はある。
だが、重力波の余韻が空間を撓ませ、
塔の外壁が遠ざかっていく。
その最中――
後部車両の側面装甲が、音もなく解放される。
圧搾空気が吐き出され、
白煙が流れ落ちる。
高速走行中にもかかわらず、
列車は一切の減速を行わない。
風圧が、内部に雪崩れ込む。
その開口部に、
一人の少女が立っていた。
白い布鎧。
濡れたように光る銀髪。
そして――‘神槍’ダマーシュ。
塔の正門にて、‘英雄’ロベール・エリクセンにより、譲渡された‘第一級グングニル’
‘音竜’、‘告げるもの’、そして‘旧神’。
塔への突入を想定した際の、三つの災厄。
その最後の関門を突破するために、必要であった‘最後の鍵’
‘構え’
アンジェにとっては準備動作は、存在しない。
強風が、容赦なく吹き付ける。
白銀の髪が、後方へと大きくなびき、
布鎧が風に張り付く。
だが、彼女は揺れない。
体重移動も、踏み込みもない。
列車と同調したまま、静止している。
‘白き腕’にとっては、‘バランスだけの問題だ。
‘神槍’ダマーシュであれば、旧神の炉心であると貫ける。
「……おい」
背後から、かすれた声。
アンジェが、わずかに首だけを動かす。
貨物車の影。
壁に背を預けるように、エムレが立っていた。
顔色は悪い。
包帯は乾き切っておらず、
前の戦いのダメージが、まだ抜けていない。
息も荒い。
それでも――
歩いてきた。
「今さら言うのも、アレだけどよ」
アンジェは、何も言わない。
瞳は、旧神の炉心を捉えたまま。
「……お前、
こういう役、似合わねえからさ」
風に掻き消されそうな声。
「だからさ」
エムレは、少しだけ声を張る。
「外しても気にすんな、・・・俺が笑ってやる」
間を置いて――
「……当たったら、もっと笑う」
それだけ。 -
114:拾郎 :
2026/05/04 (Mon) 11:29:09
-
⑪-11「光を見る者」
塔から離れた、崩壊域の外縁。
瓦礫の嵐が及ばぬ丘の上で、ロベール・エリクセンは立っていた。
長髪に古の戦衣装。
そして、その手には
-槍は、ない‐
その事実を、失ったとは感じていない。
長髪を揺らす風の向こう、
聖都ロンバルディアの中心で、空間が歪んでいる。
光すら歪める重力波が吹き荒れ、視認性を著しく低下させているが、その中心で起きている事は理解できる。
その中心にいる存在は、理解できる。
‐-旧神--
‘黄昏の時代’であれば、対峙すべき存在。
‘ベルザインの子供たち’に属した身であれば、同胞ともいうべき存在。
だが、今は違う。
そのどちらでもない。
(……届くか)
問いではない。
確認でも、願いでもない。
ただ、結果を見る者の視線。
脳裏を過るのは、塔正門前の光景。
剣を握り、一歩を踏み出した小柄な騎士。
恐怖に震えながら、相方に肩を支えられれながら、それでも剣を抜いた少女。
――ジャンヌ。
そして、あの瞬間。
星を見据える眼。
開闢と共に放たれた、剣の光。
神槍に並ぶ“聖剣”の‘真の姿’。
あの戦いで、ロベールは満たされた。
勝敗ではない。
終わりでもない。
(終わりがなければ、続くのであれば…、新しいものが見れる)
そう思えた事が、すべてだった。
――遠景に、一本の光が生まれた。
歪む景色の中心、旧神と対極する位置。
見間違えるはずがない。
――神槍ダマーシュ。
かつて自らが振るったそれが、別の意思によって放たれている。
ロベールは、目を細めた。
「いい判断だ」
誰に向けた言葉でもない。
ダマーシュを手放した自分に対してかもしれないし、今の担い手かもしれない。
光は凝縮し、旧神の中核へ――
正確に、過不足なく、収束する。
その瞬間、ロベールは確信した。
(預けたのは、正しかった)
神槍は、“終わり”を探す旅路の導杖ではなかった。
未来へと渡すための架橋であった事を理解する。
「……さて」
彼は踵を返す。
まだ、やることがある。
――未熟な剣を、星へ届く刃に磨き上げる――
そんな、些細で、だが確かな生きがい。
収束する光の結末を、ロベールはもう見ていなかった。
だが、その口元には、かすかな笑みがあった。 -
115:拾郎 :
2026/05/04 (Mon) 11:44:55
-
⑪-12「貫通」
旧神の対応に誤手はなかった。
‘重力波’による三重断層
炉心を中心に形成した防御壁が空間を歪め、万物を‘正しい形’で存在する事を否定する。
旧神の乗り手が、放たれた光を座標を認識するより先に――
射抜かれた。
衝突ではない。
破壊でもない。
“到達”だ。
炉心を構成していた水晶構造が、
内部から無音で割れる。
開放された膨大なエネルギーが、‘悲鳴’として放出されるが、
自身が形成した‘三重断層’は、‘悲鳴’すら存在を否定する。
炉心と連動していた王紋を模した増殖機関はひび割れ、
堅牢な装甲は、ただの金属と石へと戻り、輝きを失う。
だが、旧神は、倒れない。
――ただ、止まった。
重力波が、消える。
歪まられた空間が元へともどり、
旧神は、初めて「悲鳴」を上げる事を許された。 -
116:拾郎 :
2026/05/04 (Mon) 12:01:10
-
⑪-13「反動」
光の収束と同時に――
スレイプニールの後部車両が、大きく揺れる。
「……っ」
射出反動。
‘白き腕’といえども‘神槍’を使用した代償からは、逃れる事はできない。
虚脱状態となったアンジェの身体が、列車の揺れに嬲(なぶ)られ、
一瞬。
ほんの一瞬、足が浮く。
次の瞬間――
落下。
白い布鎧が、風に剥ぎ取られるように持ち上がる。
「アンジェ!」
エムレが、迷わず飛び込み、手を伸ばした。
全身の痛みを振り切り、
思考より早く、
反射よりも強く。
かろうじて、指が、掴む。
手首
‐-否。
手首に巻きつけていた保護布の一部。
いや、掴めたのは、布ではない。
“人の重さ”。
列車の遠心力か。
重力波の余波か。
それとも、冥界への呼び水か。
その重さをはるかに超える圧が、エムレとの逆方向へとアンジェの体を引き込んでいく
布が指が食い込み、激痛が走る。
「…ふざけるなよ」
奥歯を食いしばる。
「こっちは、飯食ってんだよ!」
巻き上げるように振り抜く。
「いきてんだぜ!」
次の瞬間、二人は床に転がり込んでいた。
列車は、止まらない。 -
117:拾郎 :
2026/05/04 (Mon) 12:19:13
-
⑪ー14「余風」
強烈な風圧が、まだ列車内に残っていた。
スレイプニールの後部貨物車。
側面装甲は開いたまま、外は奈落だ。
金属床に、二つの身体が転がり込む。
「……っ」
最後に響いたのは、エムレの息が喉に引っかかる音だった。
引き上げた。
落ちなかった。
それだけで、今は十分だ。
アンジェは仰向けのまま、天井を見ている。
神槍ダマーシュは、手から離れ、床に滑って止まった。
もう、光はない。
旧神を貫いた“結果”だけを残した、鈍い重さ。
「……当たったな」
辛うじて引っかかっていた息を吐きだし、掠れた声を出した。
アンジェは、天井を見たまま、わずかに頷く。
「ええ」
エムレは床に仰向けになり、鼻で短く笑った。
「外したら笑ってやる、って言ったのにさ」
「聞いていました」
「だよな」
貨物車に走り続ける振動に、先ほどまでの荒々しさはない。
ただ、沈黙を受け止める。
剥き出しの風が、加熱していた興奮を冷やしていく。
エムレは、自分の右手を見る。
震えは、まだ残っている。
さっきまで――
確かに、誰かを掴んでいた手だ。
「……正直に言うとな」
アンジェは視線を動かさない。
だが、耳だけを向ける。
「外れるかどうかじゃ、なかったんだ」
「…」
「落ちた瞬間さ。
ああ、やべえ、って思って」
少し、苦い笑い。
「それで――
当たっても外れても、
どっちにしても、笑うしかねえなって」
アンジェは、そこで初めて首を動かし、強張った表情を浮かべるエムレ見る。
「なぜ?」
「そう言っておかないと、
…多分、手を伸ばせなかった」
一拍。
「…ダメだな、俺。お前は俺の事をキッチリ助けてくれたのにn」
アンジェは、短く息を吐いた。
それは、確かに“笑い”だった。
彼女は上体を起こし、床に落ちた神槍へと手を伸ばしながら告げる。
「私は、当てた」
エムレが怪訝な顔をする。
「“当たったので”」
「……ん?」
アンジェは、静かに続ける。
「あなたは、“もっと笑う”べきよ」
エムレは、ぽかんとした後、
腹の底から息を吐いた。
「……参ったな」
そして、ようやく笑った。
大きくも、強くもない。
ただ、肩の力が抜けた笑い。
「じゃあ、一つだけ確認だ」
「何?」
「次に俺が落ちそうになったら」
列車が揺れ、エムレが僅かに跳ねる。
一方、アンジェはバランスを保ったままだ。
「掴むわ。それて」
迷いも、理屈もない。
「――笑う」
エムレは、天井を見上げた。
「しゃーねわ」
一拍、間を置いて。
「その時は…」
列車は走り続ける。
戦いは、まだ終わっていない。
神も、塔も、ここには、まだある。
だが――
「……先に笑っておく」
掴まれた感触と、
約束された笑いだけが、
この瞬間、確かに在った -
118:拾郎 :
2026/05/04 (Mon) 12:35:14
-
⑪-15「分離」
旧神の活動停止を検知し、
塔の自律システムが某業フェイズへ移行する。
-解放隔壁、封鎖。
-外部切断、遮断。
開放されていた塔の外壁が、閉じていく。
「短い期間だが、貴君等の乗車を・・・感謝する」
キンラーセンの声が、電声管を走る。
後部車両にスレイプニールに乗り込んだ突入班が、後部車両に移動。
「圧力弁、良し!」
「衝撃緩衝ボルト、異常無し!」
「測量班より、目標地点到達まで、あと十秒!」
鉄道騎士達の伝達の直後、
「後部、投下!」
切り離す。
スレイプニールは、前部と後部の二つに分断。
閉じていく塔の格納庫外壁の“隙間”に、後部車両を滑り込ませた。
わずか数メートル。
完璧な速度調整と角度観測。
衝撃緩衝ボトルの炸裂。
火花。
轟音。
閉じる壁。
そして――
‘塔’への投入、完了。
先頭車両は、そのまま上昇する。
最上層へ。 -
119:拾郎 :
2026/05/04 (Mon) 12:36:54
-
⑪-15「屋上」
塔の屋上。
かつて“地上で最も遠い場所”と呼ばれた場所に、
スレイプニールの先頭車両が躍り出る。
線路は、ここで終わる。
列車の使命も、
ここで終わる。 -
120:拾郎 :
2026/05/04 (Mon) 13:00:02
-
⑪-16 「惜別」
旧神の胸部。
展開した装甲の内側、最低限の座席。
座してなお把手に手をのばしているが、、
もはや“操縦者”と呼べる存在ではなかった。
王でなければならなかった者。
象徴だけを背負わされた者。
名も、国も、未来も奪われ、
「ここに座る理由」だけを与えられた存在。
その背後――
物理的距離ではなく、認識の奥に、ベルザインは‘居た’。
「……ああ」
ため息にも似た、軽い感嘆。
「やっぱり、侵入を許してしまったね」
「自分が不要だった理由を世界に問い返す意思は、立派だったよ。
だからこそ、旧神は重力波という答えを返したんだ」
ベルザインの声だけが、澄んで届く。
「ねえ、分かっているかい?」
返事はない。
操縦者は前を見たまま、把手を握り続けている。
「君はね、“王”になれなかったんじゃない」
どこか、優しい声。
「“王になる必要がなかった”だけなんだ」
指先が空をなぞる。
「国をまとめる力も、
世界を変える意思も、
誰かを導く言葉も――」
くすり、と笑う。
「最初から、君は持っていなかった」
嘲り。
だが、怒気はない。
「それでもさ」
ベルザインは、旧神の炉心を見据える。
「“象徴”としては、完璧だった」
王紋。
神殿。
城壁。
そのすべてが刻みこまれた旧神。
「何も決められない者を、
“決定そのもの”として据える」
「――これ以上、都合のいい装置はない」
旧神が、踏み出さない。
振るわない。
ただ、存在する。
「君は、責められるべきじゃない」
その声は、確かに哀れみを含んでいた。
「選択肢を与えられなかった。
拒否権も、逃げ道も、最初からなかった」
静かに、告げる。
「だからね」
ベルザインは、最後に嗤った。
「君が撃ち抜かれるのは、
――とても“正しい”」
次の瞬間。
遠方より、一条の光。
神槍ダマーシュ。
ベルザインは、もう旧神を見ていない。
「敬意を払うよ」
背を向けながら、独り言のように。
「君は、“前に進むために捨てるもの”を、
ちゃんと選んだ。・・・これで面白くなる」
撃ち抜かれた旧神の炉心が、完全に輝きを失う。
その最期を、
ベルザインは振り返らなかった。 -
121:拾郎 :
2026/05/05 (Tue) 22:39:39
-
⑪-17「約束と嘘」
「君に嘘をついてた」
塔の最上部に消えた蒸気を見届けた後、片膝すら立てる事は困難だった。
倒れ込んだ後、辛うじて仰向けとなる。
「‘第二修練場’の鍵、君の早朝訓練の為に開けておいたような事を言ったけどね」
息継ぎ。
闘神都市との精神接続は、限界を迎え強制解除。
肉体的、精神的疲弊は限界を越えている。
「・・・本当は、ただの閉め忘れなんだ」
笑おうとするが皺だらけとなった頬は動かない。
枯れ木のような老人の姿。
デバイスも無しに、24AFを使用した代償。
限界を越えて、「灰は灰に」と連動させた「湖畔の英霊」を稼働させたルナン・クライトスのように。
「・・・すまなかった」
簡素にして静かな、謝罪。
「・・・分かっています。私には、分かっています」
絞り出すように、答える。
ヴェルマに取って、ロイドリッツの謝罪は重すぎる。
受け止めた瞬間、感情が爆発してしまう。
かつての師弟の姿を、ファースティーは右胸に手を添え、見守る。
残された僅かな時間に、自分は立ち入るべきでは無い。
自分はただの聴衆だ。
最高の指揮者の、最後の演奏に立ち会えた、幸運な聴衆だ。
「だから、俺の命は、ヴェルマ君に渡す。・・・約束通りね」
左胸ポケットから取り出したのは、淡く光る「異端審問印(マグノリア)」。
その中央に刻まれる数字は、「3」。
すなわち、第三課課長の証。
「初めはね、軽かった。でもね・・・今は、命より大切なものになった」
今度は、頬が動いた。
「これの、おかげで最高の指揮も出来たし・・・」
右腕を、わずかに上げる
「君にも・・・」
たが、声は出ない。
「また、嘘ですね」
しっかりと、その手を握る。
ズシリと重たい、異端審問印の感触が伝わる。
「よく似合うはずさ」
その言葉が、最後だった。
異端審問印をヴェルマの手に残し、右手が落ちた。
「そうね、貴方は」
ヴェルマの胸に、異端審問印を掲げる。
「嘘はつくけど、約束は守るもの、ね」
そこで、限界だった。
「だから、今も!」
涙が、溢れた。
「嘘と言ってください、ロイドリッツ!」
風に消されることのない慟哭が、荒野となった聖都に響く。
ファースティーに、祈りの言葉はない。
暗殺者に取って、祈りなど無意味だからだ。
だから、取り出した小瓶の中身を空に放る。
鋼糸を磨く、銀粉。
残光に照らされ、銀の雨となって、ロイドリッツへと振り注ぐ
死者の魂は、星の橋を渡って天国へと旅立つと聞いた事がある。
ならば、銀の雨は、星の橋へと導けないか。
一つの約束が終わり、一つの嘘が、また生まれた。 -
122:拾郎 :
2026/05/07 (Thu) 16:26:55
-
⑪-18「神の座にて」
落下の衝撃により、L字に歪んだ装甲車両
衝撃緩衝ボトルが機能したとは言え、上空から叩きつけられた事実は変わらない。
歪みにより開閉不可となった装甲隔壁を爆破により強制排除。
白煙。圧搾空気の放出。
焼けた鉄と、焦げた火薬と、外界の冷気。
焼け落ちた隔壁の外に広がっていたのは――
静謐。
音が、吸われる。
反響しない。
返ってこない。
塔内部の格納庫。
建築構造体は黄昏の時代に近い。
床と壁は幾何学的な構造で遠近感が把握しずらい
材質は、石のようで、金属のようで、
だがそのどちらでもない。
継ぎ目がない。
加工痕もない。
まるで――
“最初からその形で在ったもの”を削り出したような建材。
その中央に。
“それ”が、あった。
旧神。
もはや動かない巨体。
展開したまま止まった装甲。
開いたまま閉じない“花弁”。
炉心は砕け――
光は、もうない。
だが。
倒れてはいない。
膝もつかず、崩れもせず、
ただ“正面を向いた”姿勢のまま停止している。
それは、敗北ではなく――
“役目の終了”のようだった。
だからこそ、この場所は‘神を祭る台座’であり、‘墓所’。
次の瞬間までは。
そこへ。
小柄な影が飛び出す。
床に転がり込むように着地。
脚に力が入らず体制を崩しかけ、
すぐに立ち上がる。
-黒の神父服。
-首から下げた異端審問印が放つ輝きは‘見習い’を示す‘銅’
-異端審問官‘見習い’
-エムレ。
「……っは、マジで雑だな。」
軽く肩を回し、息を整えながら悪態をつく。
「キンラーセンのおっさん、何が‘突入作戦を開始する’だ。完全に‘落下’じゃねえか」
その真上より。
「誤差の範囲よ、十分許容範囲」
-‘猟犬’
-‘白き腕‘
-アンジェ。
白い布鎧。乱れていない呼吸。
手には――光を失った神槍ダマーシュ。
無造作に飛び降り――
一切の乱れなく静かに立つ。
落下の衝撃は、ダマーシュの自動補正により負担減。
エムレが苦笑する
「それ、便利すぎるだろ」
そこに、くつくつと笑い声。
「へえ?
ずいぶん仲良くなったじゃない」
滑り込むように現れた影。
-肉食獣の香り。
-派手な襟飾りが装飾された尼僧服。
-その中央で揺れる異端審問印(マグノリア)に刻まれた数字は「11」
-第十一課課長
-フェルメノ・キルス。
口端を緩め、目を細める。
「なに?落ちそうになって手でも繋いだの?」
エムレが顔をしかめる。
「そんな事は……」
アンジェは一切反応しない。
振り向きもしない。
ただ一言。
「事実の誤認」
「いいわね、否定の仕方まで揃ってる」
フェルメノは肩を揺らして笑う。
「いいじゃない。……そういうの、かわいいわね」
「…のぞき見なら、趣味が悪いぜ」
ダマーシュ射出のあの瞬間は、発動余波に備えて全員が先頭車両に移動していた、…はずだ。
露骨に顔をしかめるエムレに、‘のぞき見の趣味はない’と返す
「いや別に?
生きるか死ぬかどうかの場面で…」
軽く肩を上げる。
「ちゃんと“掴んだ”んでしょ?」
一歩近づく
「いいわね、そういうの。憧れちゃうわ」
「・・・見ていたんじゃねえか」
さらに、一歩。
そこでアンジェは気づく。
(…完全に‘間合いの内側’に入り込んでいる)
ごく自然に、獲物を捕食する肉食獣の動きだ。
アンジェの槍が微かに傾き、
フェルメノは、満足げに目を細める。
「そこまでにして下さい」
淡々とした声が割り込む。
-神父服の下は、包帯と薬効。
-傷は癒えていない。
-だが、理解している。
-ルナン・クライトスから託された「6」の数字が刻まれた異端審問印の重みは理解している。
-第六課課長
-クエイル・バーネット。
動くのも苦痛のはずだが、吐き出す息はため息混じり。
「現場で遊ばないで下さい」
「遊んでないわよ」
フェルメノは即答。
「遊んでいるようにしか見えませんよ」
クエイルも負けてはいない。
懐かしい応答。
かつての上官と部下の会話。
今は、課長同士の会話だが、敬語口調は簡単に抜けるものではない。
軽口を叩きながらも、視線を走らせる。
出口、動線、遮蔽、構造。
“場”を掴む視線。
己の‘手記’の記述との‘答え合わせ’
‘塔’攻略の図面を修正する。
「今やる話じゃない」
フェルメノが不満げに口を曲げる。
「……空気読んでよ」
「読んでるから止めています」
間。
「まあ、いいわ」
フェルメノは軽く息を吐く。
「保護者が来ちゃったしね」
それ以上は、踏み込まない。
ズン。
床が沈む。
-巨漢。
-第二課課長
-アズール・バール。
肩に担いだ巨大な槍斧型AF‘エイバムの柱’。
その刃は振るわれていないのに、
既にその存在だけで“場を制圧している”。
彼は何も言わない。
ただ、武器の重心を数ミリだけ調整する。
同時に、その胸で異端審問印‘マグノリア’が揺れる
刻まれた数字は「2」
アディール・ノウからジルボルトへと。
そして、アズールと継承された課長印。
誇示したかったのは、巨大な武器ではない。
この小さく輝く、聖印だ。
この聖印の重みをアズールは誰より理解している。
体内で、微かに“何か”が軋む。
だが気にも留めず、いつもの調子で歩き、着地
大胆に。
無造作に。
-短く刈り込んだ金髪。
-二の腕むき出しの上着。
-分厚い胸板の前で揺れる「12」の数字が刻まれた異端審問印。
-第十二課課長
-フランク・ラパード。
着地後、旧神を一瞥。
「……でけえなぁ」
軽く息を吐く。
純粋な感嘆。
「…アイツなら何ていうかな」
“素材としては面白い”か
“大切なのは、好奇心よ”か
僅かに浮かんだ感傷をかき消し、何でもない顔で車両上部へ手を差し出す。
「‘降車の際にはお足元にお気をつけて降車してください’、てね。‘先生‘」
差し出された手を握ろうとし、
使わない。
歪んだ梯子と手すりを使い、普通に降りる。
-外套が揺れる。
-国家錬金術師の証である外套。
-その留め具は
-「5」の数字が刻まれた異端審問印
-第五課課長
-キスリング。
「その呼び方、やめてください」
眼鏡を軽く押し上げる。
「私が‘先生‘に見えますか」
フランク、間髪入れず。
「見えないな」
笑う。
「だから呼んでる」
キスリングが微かに眉を寄せる。
「理屈が破綻しています」
「アイツも、“本物の先生”も似たようなもんだったろ」
さらっと言う。
「‘先生’には程遠い」
キスリング、反応が一瞬だけ止まる。
だがすぐに戻る。
「……性質は異なります」
「はいはい」
フランクが軽く頷き、歩き出し、止まる。
自然に――
キスリングの半歩前。
「で?」
肩越しに、問いかける
「今回は“どこまで真似る気だ”?」
軽い口調。
でも、問いの本質はその逆。
重要で、重い問い。
キスリングは旧神を見ない。
その奥を見る。
目視は確認できない、遥か、遥か、塔の奥を。
そして、答える。
「真似はしません」
眼鏡を、右手で抑える。
「継ぐだけです」
フランク、小さく鼻で笑う。
「それが一番めんどくさいやつだな。…まあ、好きにやってくれ」
「それは命令ですか?」
「というか、お願いだな」
冗談っぽく言う。
だが、視線は笑っていない
そして、通告。
「アイツ絡みだと、俺はちょっとしつこいぞ」
キスリングはその言葉に、
ほんのわずかだけ――
息を抜く。
「……知っています」
そして半歩前へ。
「では、邪魔をしないでください。…巻き込んでも責任は持てませんから」
「それでいい。…その方がやりやすい」
二人は並び、前へ。
身長が異なる。
体格が異なる。
歩幅が異なる。
だが、歩調ぴたりと合っていた。
走行車両が軋む音を立てる、
まるで、誰かの鼾(いびき)のように。
クエイルが視線を動かす。
「・・・やはり、合流は無理ですか」
フェルメノが肩を揺らす。
「寝坊助は、放置でいいのよ」
エムレが振り返り、笑う。
「……腹減ったら起きて来るだろ」
アズールが、短く呟く。
「……遅れるくらいで丁度いい」
この場にいる7人が、‘八人目’を意識し、そして前に進む。
七つの影が踏み出し、全員の重心が揃う。
――長かった
――ここまで、来た。
――ベルザインへと届く、神の台座まで来た。
塔に侵入したのは、戦力ではない。
“裁定の意思そのもの”だ。
――ゆえに
7人が胸中で唱える
「これより、異端審問を開始する」 -
123:拾郎 :
2026/05/07 (Thu) 17:51:47
-
⑪-19「ベルザイン」
塔の中枢。
光の届かない区画で――
それだけが音を立てていた。
ぼこり、と。
無数の泡が、水面を歪ませる。
透明度の高い液体が満ちた水槽。
偉大なる「24AF」の一つ、
‘設計図’に基づき人体を再構成する“生命の泉”。
その中心で――
“形を取り戻した”人影が、ゆっくりと浮上する。
骨は、組み上り、
筋が、絡みつき、
皮膚が、張り付いている。
欠けていたものは、すでに存在しない。
歪んでいたものは、すでに補正されている。
“再生”ではない。
ベルザイン自身が設計した、‘新たな設計図’に基づく、“再構築”の完了。
水面が、静かに割れる。
浮上したベルザインが、起き上がった。
身体を確認するように、腕を一度曲げる。
軋みはない。
遅延もない。
つまりは、完全。
「……いいね」
小さく頷く。
泉の中で一歩踏み出す。
そのまま、“生命の泉”の縁へ。
濡れたままの身体を、気にも留めずに外へ歩く先へ。
装備が――用意されている。
衣。
装具。
そして、‘本‘。
すべてが、“新たな体で合わせたサイズで”配置されている。
濡れた髪を払うこともなく、衣を羽織る。
その動作は、丁寧でも粗雑でもない。
ただ、慣れている。
「……正直、驚いているよ」
誰に言うでもなく、‘見えざる目’を起動。
視線―‘見えざる目’が網膜に投影する映像―は、塔の内部へ。
侵入してきた“八つの反応”へ向けられる。
「ここまでたどり着いた、その過程と努力にね」
手袋をはめる。
指先まで、完全に密着する感覚が心地よい。
「だから、‘心からの歓迎’をさせて欲しい。」
その声には、昂りも、怒りもない。
ただ純粋な、期待。
ライナス・バルグ亡き後、奇跡なような努力を繋ぎ、ここまでたどりついた‘八人’への期待。
過小評価しては、礼を欠く。
最後に、外套の襟を正す
「ここからは、結果を確認しようか」
ほんの少しだけ口角が上げ、塔の内部へと歩き出す。
‘八人’を歓迎するために。
ベルザインにとって、これから始まるのは、戦いではない。
-結末の回収-だ。
アナザーマグノリア 最終章へと続く
昨日アクセスの多かった掲示板スレッドランキングです。話題のスレッドを見に行こう!
- ▸王様ゲーム⁹ - 初音ミクwiki掲示板wiki
- 三色鵺 ボカロ仲間で雑談22 - 初音ミクwiki掲示板wiki
- バトロワスレ3 - 初音ミクwiki掲示板wiki
- プログラミングスレ - 初音ミクwiki掲示板wiki
- プロゼミ民wiki改革案の話し合いの場 - プロゼ民Wiki【非公式】
- 色んな物擬人化しよう!! - 初音ミクwiki掲示板wiki
- 自分のおすすめ作品つぶやき所 - プロゼ民Wiki【非公式】
- 電音ユノの曲を作成するスレ - 初音ミクwiki掲示板wiki
- BL語ろ? - 初音ミクwiki掲示板wiki
- 配信勢や絵師向け! 悪口など言われないためにした方がいいこと! - りふぬとみんなのプロゼミ@wiki☆
急上昇Wikiランキング
急上昇中のWikiランキングです。今注目を集めている話題をチェックしてみよう!
最近作成されたWikiのアクセスランキングです。見るだけでなく加筆してみよう!
atwikiでよく見られているWikiのランキングです。新しい情報を発見してみよう!
最近アクセスの多かったページランキングです。話題のページを見に行こう!