「慧音先生の好きなモノって何?」
「………は?」
少し時間は遡る。
物珍しい奇貨を手にする前、横暴横柄な漫画家と出くわすより更に前、二人の少女が並んで歩いていた。
慧音先生と呼ばれた少女の表情は厳しい。いや、沈痛な面持ちをして歩いていた。ここは殺し合いの舞台。ならば悩める少女の思いも死人に起因していた。
出立直前のアクシデントは二人の死者。それが原因なのは想像に難くない。しかし殺し合いの場に立つならば、いつまでも項垂れていてはいけない。
それに何よりも、彼女にとっていよいよ話しておくべきことが一つあったのだから。
「だから好きなモノよ好きなモノ!何かあるでしょ?」
もう片方の少女が答えを催促する。だがそれは慧音にとって話しておきたいことにカスりもしない話題だった。
アレだろうか、好きなモノを考えていれば気分も良くなるとか、そんなノリじゃないだろうか。そこまで単純に見られているとしたら慧音にとって少々物悲しい。
「なんだなんだ藪から棒に。この状況で他に尋ねることはなかったのか?」
「いいじゃない、こんな状況でも。私の趣味と貴女の実益も兼ねて、ねぇ?」
趣味も実益も全部お前のためだろう、慧音は声に出さず細めた視線で言外に語るが少女は別段取り繕う様子がない。
鈍感と言うより、どこ吹く風と言った体だ。必ずそうだ。間違いない。
「急に言われても、だな。好きなモノなんて、そんなすぐには…」
一応、沈黙を蹴破ってくれたことを素直に感謝していたし、歩きながらとはいえ真面目にも彼女は付き合ってあげた。
「そう?先生の見た目からして、これは!って言うのがあると思うけどなぁ…」
「そんな身形で好きなモノが割れるワケがないだろう。」
呆れた顔で隣を見遣ろうとする慧音だったが、当の少女はと言うと両手をそれぞれの両耳に当てて人差し指を伸ばしていた。ニコニコと慧音に視線を返し、そこで丁度目が合う。
一対の『角』のように見える。自分の双角はこんなにみすぼらしくなんてない、と慧音は思う。
そしてそんな角モドキが慧音の趣味嗜好を指しているつもりらしい。余りにも分かりにくいヒントだ。
「歴史の編纂が私の好きなモノ、そう言いたいんだな?」
「そうそう!好きでもなきゃやってらんないでしょ、歴史の編纂なんて!」
随分な言葉も一緒に帰ってきたが、少女の謂わんとしていることの的を得ていたようだ。
冴えた施政者にこの妖在りと謳われた『白沢』。
少女は智啓の聖獣を継ぐ半人半妖、ワーハクタク。
名は体を表すとばかりにその姓は上白沢(ウワハクタク)。
しかし、彼女は常に人間と共に在るのだから、その姓を上白沢(カミシラサワ)と呼ぶ。
やや堅い喋り口の少女の本名は
上白沢慧音。双角と尾っぽを生やした本性、ワーハクタクの姿を日の元に曝していた。
「残念ながら歴史の編纂そのものが好きかと言われたら、そうでもない。」
ぎょっとした顔で慧音は見られていた。その頭上で乱舞する疑問符。その理由は先の少女の言葉通りだろう。何で好きでもないのにそんなことしているんだ、と。
歴史の編纂は妖怪の状態でさえ重労働と言って良い重労働。それ故にそんな反応されてもやむなしかな、と慧音も思わないでもない。
しかし、こちらの諸々の事情も知らずここまで意外に思われるのも、やはり面白くないしやっぱり物悲しい。
仕方がない、つまらない堅物と思われるようなあらぬ誤解を解くためにも、ささやかな愚痴も添えて少し語ることにしよう。
「歴史の編纂の何が大変かと言えば、それはもう一から十全てが大変だ。まず、ワーハクタクに姿が変わると同時に、ありとあらゆる幻想郷の知識が流れてくる。歴史の作る程度の能力で得られる編纂に必要な情報の断片群だ。一つの事件、出来事をあらゆるヒトの視点から多角的に眺められるようになるのだが、その量は膨大どころの話ではない。この話も膨大じゃあ済まないぞ。鈍い頭痛と闘い、うんうん唸りながら情報を精査し、筆を執る。中には知識とは言い難い、編纂の役に立たないモノも混ざる。やれあそこの肉まんが旨いだとか、やれ油揚げがまとめ買いされただとか、食べ物が絡むと編纂のために夕食を早めた身には、胃袋に効く。夜が明ける追い込みの時間にそんなモノ見せられてみろ……私だって夜食ぐらい摂りたくなる。摂っちゃったさ、いいじゃないか白沢だもの。それに頭に来るのが一番、今日一日退屈だった何も無い一日だったとか、そんな些末事を見た時だ。こちとら満月中に一月分の歴史を纏め起こさなきゃあならないと言うのにだぞ!暇があるなら分けてほしいさ。どこの誰がそんな一日を過ごしたのかいっそ探り出して、閻魔じゃないが説教に赴こうかと何度実行しかけたか…そもそもそんな時間がない。そう、何より時間がないんだ時間が!半日未満じゃあちっとも足りない!!いくら妖獣でも私は元人間なんだから無理なモノは無理が出るさ。疲れるのは嫌さ。あっ…その顔、それじゃあ編纂に備えて予め毎日調査しておけばいいとか考えたな
岡崎夢美。違うぞ、歴史の編纂はそんな甘いモノじゃない。私という一人物の視点が濃くなれば濃くなるほど、それは私の歴史。幻想郷の歴史として遠のいてしまうだろう。歴史は所詮、出来事に過ぎない。関わった人にとって見えるモノが変わってしまう。そして私は人里のたった一人の編纂者だ。私はあくまで中立で物事を見て判断しなければならない。かつての、白沢、いや中国に伝わる白澤は、施政者が変わる毎に過去の歴史を改竄させられていったと聞く。過去の歴史を貶めることで今の施政から大衆の目を背けさせたり、正しいと錯覚させるためだな。残念に思うよ。決してそんな風に使われるべきモノなどではないのだから。だからこそ私は、一つの出来事とっても是と非の意見の二つを突き合わせ、そこから生まれる中立の出来事こそ真の歴史と言えるのではないかと考えている。ワーハクタクなんて人間と妖怪の中庸な存在である私だからこそ出来る義務。だからこそむしろ私が平時に事件に関わりたくはないし、すべきでないのだ。というかしたくないぞ。プライベートな人間の時間まで誰が差し出すか。人間の時で出来ることなんて精々、触れるであろう出来事にぼんやりと目星を付けるぐらいさ。私だって白沢」
「ああーーーはいはい!!わかったわかったわかりましたから!!好きじゃないってのは、ほんとーによーーく伝わりましたって!!!!」
「誰も嫌いだとは言っていない」
長話のおまけに名指しされた岡崎夢美は、もう一言釘を刺そうかするも押し留める。次は何が飛んでくるか分かったモノではない。
「つい愚痴が弾んだが、幻想郷の知識が流れる感覚一つ取っても、この役目を嫌ってなどいないよ」
「あっそれは興味あるわ、全知全能って感じがしそう」
「お前と一緒にするな」
身も蓋もなくピシャリと言い切られる夢美。両手で口の両端を引き延ばし、イーイー言うも慧音は僅かに視線を細めるだけで更に続けた。
「あらゆるヒトを介した情報が一斉に私の頭の中に入って来るワケだが、そこに何も無い空白が入ってくることもある。」
空白。それが頭に入るとは如何なることか、夢美が口を延ばしたまま、またも猜疑の視線を寄越す。しかしそれはすぐに氷解した。
「新しく生まれた、生命だよ。」
ほーん、と間の抜けた声で相槌を打つ。しかし、この岡崎夢美それなりに驚いていた。それは慧音の能力の程は夢美の想像を大きく逸脱していたからに他ならない。
「だからこそ空白なんだ。何も知らない真っ白な無垢なんだ。」
幻想郷の全ての知識を以て歴史を創る。
それがワーハクタクに変じた慧音の能力なのだと、夢美は既に聞かされていた。しかしこの力、歴史を創ることなんかよりヤバい能力なのではないか、と認識を改め始める。
その能力とは幻想郷の全ての知識を以て歴史を創る、とのこと。
そう『幻想郷の全ての知識』なのだ。
全てとはどこまで指すのか、土地が覚えていたりするのか、果ては幻想郷中の書物なのか、分からなかった。だが慧音の話で一つ明らかになった。
知識とは、智慧を智慧として認識できる『ヒト』だからこそ持つことが出来る一つの技術。
ヒトの持つ知識という技術は、ありとあらゆる『過去』の経験、その成果が知識として集積される。
ならば『幻想郷の全ての知識』とは『ヒト』に記憶される『過去』そのもの。そして上白沢慧音はそれら『全て』を知ることができることになる。
これを驚かずにいられるだろうか。
「だが、私にも映らない空白の出来事こそが、その命の歴史の一頁を飾るのだろうな。」
そしてそれは、生まれたばかりの赤子の記憶の情報さえも拾う。ひょっとしたら人に限らずヒトの、人妖の知識さえもあるいは、と想いを馳せる夢美。いや可能だろう。出来るに決まっている。そう思いたい。
異変に関わる大半は当然、妖怪だ。連中の知識なくしてまともな歴史はカタチに出来るはずがない、一先ずはそう結論付ける。
それほどの情報収集能力があれば、歴史の編纂も出来るというもの。一つの出来事を多角的に情報を覗くことで自ずと真実は浮き彫りにされる。
『歴史を創る準備が整う程度の能力』慧音の力はこう言い換えることができる。
そこで夢美は考えごとをしていると悟られぬよう、慧音と目線を合わせた。
「私は事実を糧に筆を執るけど、人が生まれたってことはそこに事実以上の意味があることを忘れないようにしたい。歴史の節目に立ち会える名利以上の重さをね。」
堅苦しい言葉に似合わず、その表情は慈愛に満ちていた。そしてその表情を夢美は既に知っている。放送後間もなくパチュリーに言葉を掛けた、聖母マリアもかくやの優しげな表情。
そうか、あれは見間違いではない。ここにいる堅物は確かに幻想郷の人間の母でもあるのか、と夢美は思った。
そして同時に、誰よりも多くの親不孝を被ってきたのかな、とも思った。
「歴史の終わりにも立ち会うこともあったでしょ?」
思うだけに留まらず、口走る。始まりを覗くこともあったならばその逆だってあるはずだ。今際の際を、人が死ぬ直前を、不可抗力とは言え見たことだってあるはず。
ぶしつけに尋ねた。失礼だろうと構ったことではない。今ここで知りたい。それに、同情とか綺麗事以上にここで知ることに意味があった。
「いやに察しが良いな。ああ、そういうことだって何度かあったよ。」
それを知ってか知らずか、失礼千万の夢美の言動を、慧音は頭ごなしに叱ることもなかった。
「じゃあ慧音先生にとって、ここはどこまで幻想郷?」
これだけではちょっと要領を得ない言葉だ。しかし夢美の微笑みには、これぐらい先生なら分かるでしょ、と書いてある。慧音は溜息と言葉を返す。
「君は話を飛躍させたがる節がある、もうちょっと順を追ってほしいよ」
「先生はダラダラと話したがる節がある、もっと端折っていきましょう」
「君と足して2で割れば丁度いいのかもしれないな」
「私はパチェとかけ合わせたい♪」
両手人差し指でバツ印させ、それはもう満面の笑みを慧音に向けた。
さらっとお断りされた慧音は別段気にする様子を毛筋一本分も見せることなく、飛躍した質問に答えるべく口を開く。
「どこまでも幻想郷だよ、ここは。異物が混じり、在るべき人と妖怪がいないこと以外、ここは幻想郷だ。」
「ここは幻想郷!だとしたら流れている!!『幻想郷の全ての知識』!それ即ちこのパチモン幻想郷の住人となった私たち全員の知識!!バトロワ歴史なるモノが!!!」
慧音の話通りならば、そうあって然るべきだ。夢美は鼻をフンスフンス鳴らし興奮を隠さないのも無理はない。
今の彼女はワーハクタク。この限りなく幻想郷に似せた舞台を土台にしたバトルロワイヤル、その歴史を編纂出来るほどの知識が慧音には流れている。
だが疑問に思うこともあった。
「まず断っておくと今は流れていない。」
疑問は解けた。それもそうだ、目の前の妖怪が今まで延々と人の死に様を見ていたとは到底思えそうになかった。
夢美の疑問はそこなのだった。もし慧音に『幻想郷の全ての知識』がここに来てずっと垂れ流しになっているとしたら、それは疑似的な殺し合い追体験だ。
そして、それに耐えられるような人物だとは到底思えない。そこで夢美は少しホッとし、肩を下ろした自分に気付いた。
「じゃあ、流れるようにするには?」
「指先一つでパチンと」
「おっけーね、お手軽ねー」
家電製品みたく切り替えが利く、らしい。案外そっちのが便利なんじゃないのかと思ったが、今度こそ思うだけにしておいた。
「本来は満月なら常に流れ続けている。それがどういうワケか今は流れていない。」
ワーハクタク化に関しては、満月の魔力に相当する魔力をこの会場が有しているという話だった。
だが今現在、ワーハクタクになったにも関わらず、幻想郷の全ての知識を引き出すにはワンステップ必要になるらしい。
仕様が異なると言うべきか、今の慧音はかつての慧音と勝手が違うとのことだ。
これ全てが、土地の魔力だけの問題になるのか。
「ステレオをモノラルに切り替えられる充実したオプションね。」
「……」
つまらない軽口を相手にする様子もない。先の軽さはどこへやら、慧音の表情は重々しい。
無理もない。常に流れているはずの幻想郷の全ての知識が切り替え可能になっている。満月どころか陽が上がった今でもワーハクタクのままになっている。
端的に言って、これらの事実はもう自分の知る上白沢慧音ではない。
「私はもう私じゃないかもしれない」
既に弄られている可能性が高い。彼女の顔つきも厳しくなるのも不思議ではない。
「イイじゃない。みんな頭に爆弾仕掛けられているみたいだし、弄られているって言うなら全員一緒よ」
「はぁ、随分と軽く言ってくれるな」
「先生見たいな真面目なヒトが殺し合い実況まがいなモノ耐えられないでしょ。妖怪はメンタルが資本なんだし、それで良しとしましょ?私は先生とお話出来て嬉しいわぁ」
「白々しさしか聞こえんなぁ」
考え出したら不安が蒸し返されたか、少しつれなくなった慧音。夢美は割と善意を込めて口にしただけに、彼女の日頃の行いの悪さが祟った。
そんな慧音に合わせるように夢美も話題と声のトーンを変えた。
「それより良かったの?私に話して?」
謂わんとしていることが分からない彼女ではないだろう。今まで隠してきたことを打ち明けたのだ、そこに何の意味もないとは考えられない。
それこそ、その危険な能力を前向きに使ってくれるのではないか。
「黙ってたら何されるか分かったもんじゃないし」
「うわっ」
「九割九分九厘はその理由」
「一縷の望みに願いを託すわ。さぁカモンフォローカモン」
「打ち明けたかったからかな、誰かに」
「私ね!私にね!!」
「誰でも良かったんだ。そう、誰でも」
夢美の扱いは割とぞんざいだった。いや、それにしたって、けんもほろろのズタボロである。
しかし、やられたらやり返すのが教授の流儀。
夢美は思う。さあさあ、一体何からどこからどんなとトコから仕返してやろうかしら、と。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
沈黙に次ぐ沈黙。
ざっざっざっ、と草を踏み締める小さな音だけが、枯れ木も山の賑わいと盛り上げようとする。しかし、ただ甲斐甲斐しさだけが二人の後ろへと過ぎて行く。
何も慧音への意趣返しを咄嗟に思い付かなかったワケではない。夢美のプラトン、いやソクラテス並の頭脳を以て弾き出した解に偽りはない。
慧音は何か話したがっている。
彼女の言葉にそれとない一抹の不安を嗅ぎ取ったというか。勘だ。ソクラテス並の頭脳も今は腐らせよう。何か待ってれば何か起きるだろう。
「肝心なトコでうるさくないなぁ」
やはり沈黙は金、値千金だ。
「さぁ続けて続けて」
「姦しい貴方だからと期待したのに、急に黙りこくって」
「ほらほら、やっぱり私じゃないとイケないんじゃない!」
「あの時騒がしてくれなかったんじゃやっぱり誰でも良かった」
「うわっ」
さめざめと嘘泣く素振りを見せる夢美に溜息を、そして内に溜めていた言葉を、慧音は吐き出す。
「最初から、ここに来た時から、この能力を使っていればと思って。」
歴史を創る程度の能力、延いては『幻想郷の全ての知識』それを最初から手にしていれば、ということだろう。
「二人も死ぬことはなかったってこと?」
「ああ」
ああ、そうだろうな、と夢美は納得した。だって彼女も真っ先にそこに考え着いたから。
慧音は康一とにとり、二人の死を慧音は悔いている。
彼女が能力を駆使していれば、にとりが爆弾作ったことなど真っ先に露見する。
いやそれどころか、にとりが悪意を抱いていることすら、彼女のバトロワ歴史を紐解けば看破出来たのかもしれない。
「でも、そんなに単純な状況でもなかったでしょ?」
あるいはたった一人を除いて、上白沢慧音は人知れず『終わっていた』かもしれない。
あの男の素性をいの一番に察して、彼女が何もしない可能性があるのか。
その男、殺人鬼吉良吉彰。慧音と最初から行動を共にしていた人物。彼女は決して愚かではないが、廃ホテルでも説得するなど言い出した事実もある。説得の果てに殺されていてもなんらおかしくない。
吉良は徹底した殺人鬼だ。一対一、隠蔽の効く範囲なら躊躇なく殺しにかかる。今は丸め込めているが、そう容易に口説き落とせる相手ではない。
その他にだって、あの時にこの時に知っていればと思うことはあるだろう。しかしそれらは過ぎた過去、全てはたられば、そこに留まるのは詮無きことだ。
「それでも、それでもだ。」
だが、だからこそ、そこで踏み留り次に繋げようと苦心する。過去を省み今を変えようとヒトは葛藤する。そこに人だの妖だの隔たりはないはずだ。
「知ってさえいれば、何も分からないまま終わることなんてなかった。私はあの惨劇を防げるはずだった、はずだったんだ…!」
こんな醜悪な争いにこの力を持ち込みたくない。流れる不の情報に潰されるかもしれない。矜持と臆病が邪魔したばかりに二人の死を許してしまった。
そういえば、と夢美は思い出す。慧音がパチュリーに一つの懸念を漏らしていた。
もし一人になって己の心に真に対峙したらどうなるのか、と。
それは、持て余した己の能力の処遇にあったのかもしれない。
一人になれば、もう誰かに教える教師でなんていられない。その手にあるメガホンで誰かを呼ぶ非常識ができるヒトでもない。いよいよ矜持を捨てしかし臆病を抱えパンドラの箱を開けることになる。
耐えられないのかもしれない、そんな風に他人事のように考えていたのだろうか。だって9人もの集団だった。だがそれも、たった2人の死で彼女を決意させた。
慧音は、脆かった。
「だから話した。遅かれ早かれ使うだろうし話してスッキリさせたかった。」
仕事も悩みも溜め込んだままだと毒だからな、と慧音は軽口を付け足した。その横顔に陰りは見えない。
「私はスッキリしてないけどね。」
そんな風に見えるとしたら、今すぐ診てもらった方が良いと夢美は思う。
慧音の顔は取り繕った表情をしている。それが却って顔の端々に深い陰影を刻んでいる。そんな風に見えなくもない。
「やはり諍いの種になるだけだと君も思うか。」
「なんだ、わかってるじゃん。」
夢美が慧音の能力を危惧している。それは余りにも単純なことだ。
誰だって心の内など知られたくない。
能力を行使した慧音は、さとり妖怪と比較して大なり小なり似た存在になる。
知識とは過去を集積した結果。慧音はそれを参照することが出来る。そのヒトの過去を覗く、ある意味で読心術紛いの能力と言える。
それでも幻想郷ならば不特定多数と言えるほどの頭数が揃っていた。能力は一月に一回切りだった。そして悠長に閲覧する余裕もない編纂作業。
ここでは違う。
豊か過ぎる個性の妖怪が半数を超える。中身を覗けば人物を特定は難しくはない。朝を過ぎてもハクタク化は未だ解けない。編纂などここでワケもない。そして能力の切り替えすら可能と来た。
まるで使ってくれとばかりに、放っておくのは宝の持ち腐れとばかりに、幾らでも用途のある能力だ。
「吉良さんとは再び呉越同舟。なのにみすみす刺激するようなモノだわ」
「この能力は口外しないつもりだ、私が裏で動いて争いの芽を摘んでみせる」
「私に伝えといてそりゃないでしょう。まず私がパチェにバラしちゃうし」
慧音が渋い顔をしたのが横から見ても良く分かった。
能力を口外しない、と彼女は言ったがおそらく出任せだ。むしろ公正を来たすために全員に打ち明けるべきか悩んでいたはずだろう。
慧音の気持ちは先走っている。自分に出来ることはあったのだから、今度こそなんとかしなければならない、と。
しかし、裏で能力を使っていたと知られれば争いの火種をバラ撒き、猜疑心は加速する。
かと言って、予め打ち明けたところで一悶着は免れない。そんな能力を持っていると知られ輪を乱さないワケがない。
その上、慧音の能力ここに来てほぼノータッチで来ている。能力を披露した結果、全て根掘り葉掘り大っぴらにされるか、あるいはここに呼ばれただけの情報なのか、未だ不透明だ。
どちらにせよハイリターンは期待できる。
だがそれに見合ったリスクが、それもさらに膨らんでいくリスクを負うのは確実だ。それをやるには覚悟がいる。裏で隠れて何かやるというなら露見するリスクを背負わなければならない。
「でも私は先生の話に乗るつもり。」
しかし岡崎夢美は違う。ハイリターンさえあれば良い。そこに興味があれば良い。
歴史を創る程度の能力の一端『幻想郷の全ての知識』その甘美な言葉は夢美の感性を刺激して余りある。周りへのリスクを度外視してでも。
「早速使ってみましょう。まずはどこまで使いモノになるかチェックしてみないことには話が始まらないわ。」
「……そうだな。試してみないことにはな…」
好きなモノを好きにしたい、それが岡崎夢美の金科玉条。彼女の『好き』の犠牲者を見れば、それはもう言葉が要らないほど自分の好きに愚直だと分かる。
そして『好き』というのは自分自身のモノの基準であり価値観。彼女は自分の価値感に超率直、他人のことなどお構いなし。一言で言ってワガママなのだ。
「手始めにパチェのあんなことこんなこと調べちゃって頂戴な♪」
「やっぱりやめた」
「何でよ!!!!!」
うっがー、と地団駄する夢美。疾風怒号のスタンプラッシュ。掌を返した角女の手がそこに転がっているかのようだ。もちろん無い。
余りに侘しい様を当の角女は冷えた視線で見つめ、仕方なしに歩みを止めた。
「まったく、真に受けるんじゃなかったよ。調子の良いこと言って、君はパチュリー以外何も見えてないのか?」
「ちゃーんと見えてます!見えた上で!迷惑上等で!厄介承知で!それでも知りたいんです!!」
「なおさらタチが悪い」
「ああーッ!!もう!!!」
ぎゃあぎゃあ言う赤女を他所に慧音は深い溜息を吐いた。危うくこの赤女の身勝手で軽率に能力を使うところだった。
慧音自身、能力を使う覚悟は決めているし、それに賛同した赤女のことも、まあ、まあ感謝している。
だが、赤女の明け透けな考えを放っておくには、教師としての性が許さない。
「君はパチュリーを信じてないのか?」
「信じてる!心配!怖い!いいえ、信じようとするから怖いんじゃない!!だから教えてほしいの!!」
まあそんなところだろうな、と慧音は一人得心する。そして安心もした。
我欲身勝手だけで慧音の能力に目を走らせただけではなかったことに。向こう側にいるのだ。目配らせ続けている相手が。それを含めて知りたかった、その理由に慧音は安堵したのだ。
「ダメだ」
「何でよー!!!」
かと言って能力を使うかどうかはまた別の話だ。夢美はヒト一人入る穴でも掘るかの勢いで、未だ地団駄し続けている。
「もーいやよー。何でこんなず~~~~~~~~~~~っと悶々としてなきゃいけないのよーーちくしょーー!」
「まだ30分も経ってない」
「うるさーい!!私の6時間はもう終わったのよーーー!パチェーー早く来てーーー!!」
コイツあんまり人信じた試しがないのかな。慧音は失礼だろうが、ぼんやりと思った。バトルロワイヤルという殺し合いの舞台ゆえ、親しくなった相手が心配なのは致し方ないと思う。
しかし、あれほどパチュリーと仲良くしておきながら、別れてちょっとしたらこの有様だ。
「夢美さん、パチュリーだって君を信じているんだ。きっと同じように君を案じ思い悩んでいる。それなのに君だけが信じるのを止めてしまうというのは如何なモノか。」
パチュリーが今この瞬間、夢美を案じているとまでは思えないが、余計な言葉は胸に仕舞う。
「信頼は互いの信じる気持ちが拮抗してなきゃいけない。思い悩む余り信じる気持ちを忘れたら『信頼』し合える仲にはなれないんだから。
でも君が誰かを心配して苦悶できることは限りなく優しい感情だ。だけどそれじゃダメと言われたろう。『一方通行』の優しさだけじゃダメだと。」
パチュリーが口にした、そんな魔力に期待して、彼女が話した内容を思い出し慧音は講釈を垂れた。
「先生には、言われたくない。」
つーん、とそっぽを向いて夢美は短く口にした。冷めたのか。話の途中で地団駄は止め、砂埃が腰の辺りまで微かに漂っている。
「慧音先生だって、その能力で色んなヒトのあれこれを見てるんでしょ?それってスゴく『一方通行』じゃない?先生はヒトが好きらしいけど、それって『信頼』し合えてないってことでしょ。」
毎月の慧音の行為を一方的な情報の搾取だと夢美は貶めた。まして慧音は人間が好きだ。その好きな相手に『一方通行』を働いているのは、慧音もまた同種だと、なじった。
沈黙。
慧音はそこで怒ることを良しとしなかった。代わりに感心した様子で少し目を見開かせ、夢美の背中を眺めていた。
それは少なからず彼女が気にしている事柄を的確に突いて来たからに他ならない。
「そうだね。私は人間と決して信頼を結べない存在だ。」
咀嚼するようにゆっくりと言葉を繋ぐ。しかし、噛み締めるにしてはその声色は穏やかで、全てを受け入れた風に語っていた。
「だからこそ反面教師になるだろう。私みたいになる必要が、君たちにはないんだ。だから私の代わりに、と言うのも可笑しなことかもしれない。でも二人には信頼を深めてほしい。」
「先生は里の人間と信頼できない、それでいいってことなの?物分かりが良すぎる。そんなんでいいの?」
「私一人の信頼なんかより必要だと信じている。歴史は必要になる。だから創る。それが一方通行の優しさであっても私は構わない。」
慧音は頑なだ。先の発言とは打って変わったこの態度が彼女の決意を思わせる。あるいは慧音の人間への想いも執着も薄いのではないか、そんな夢美の考えを飲み込ませるほど。
「じゃあ何で必要なの?」
嚥下し切れなかったのは純粋な興味。そこにどんなワケがあるのか夢美は疑問だった。
「幻想郷には、そういう役割の子がいるんじゃなかったっけ?」
「
稗田阿求だな。彼女も私と同じく、人間の生活を守る目的から幻想郷縁起を記している。でも私は私独自のモノが必要だと思っているよ。」
夢美は黙らされたささやかな悔しさを、慧音の決意を引き出すことで、帳尻を合わせる。
「彼女はどちらかと言えば異変や妖怪がメインだ。当然だな。縁起は百数十年に一度、一冊しか出されないのだから。そこに載るに相応しい事柄が選ばれる。」
幻想郷は妖怪たちの楽園だ。ならば、そこに記されるのは自ずと彼らになる、彼らがあの箱庭の主役なのだから。
「だから人間の歴史が必要ってこと?」
「妖怪は随分と長く生きる。だから歴史なんて必要ない。しまいには自分の都合良く覚えてしまう。あるいは歪める。ヒトの数だけ歴史があると言っても、だ。」
改竄した歴史を盾に嘯く施政者を、白沢はよく知っていた。
「私はより里の人間に迫ったカタチにして歴史を編纂しているよ。幸い私の能力なら多くの視点でモノを視られる。人間の目線でかつ、公正に仕上がっていると思うよ。我ながらね。」
阿求ならもっと中立の視点でやるだろうけど、と一言付け足した。羨望の混じった声だった。それこそが正しいとまたも受け入れた風な感じだ。
「妖怪は人間の敵。いざという時に守る術を持っていないといけない。人里の歴史はそのためにある。」
何事においても知ることこそが自衛への簡単最短の道だ。
「妖怪は人間の敵、ね。」
思わず夢美は反芻する。人外たる誰かもまた人間である自分と相対するものなのだろうか。バカバカしい。
「妖怪は人を襲うってこと……それってやっぱ人間を殺そうとしたりするモノなの?いや、ちょっとだけ、疑問に思っちゃってさ。」
不安が宿った声色。本当に本当に微かな変化だったが、傍若無人を地で行く誰かにしてはらしくなかった。これもまた向こう側の彼女を気にしての発言だろう。
「殺害にせよ捕食にせよ、そう滅多に起こることじゃない。夜更けに人里を離れるような真似さえしなければね。」
夜は彼らのゴールデンタイム。まして、人里の外は人外の里。そこで何も起きなければ妖怪の沽券に関わる。何かが起きなければならない。絶対に。
夢美の心中を察しつつも確かな真実を伝える。きっとそれこそが真に安寧を与えるはずだ。
「ただ、例外も度々ある。」
例外とは何を指した例外なのか、夢美は尋ねるより先に慧音がさらに続けた。
「『妖怪が人間を襲う』その定義、最もポピュラーなのが異変、もう一つが人里を『恐怖』に陥れる、大きくはこの二つになる。」
異変に関しては夢美も大まかにパチュリーから窺っている。異変とまでは言い難いかもしれないが彼女自身もやったことがある。まあ恐怖を目的とした行為ではなかったが。
それ故に、後者については僅かに首を傾げた。
「私たちはこのバトルロワイヤルの主催者二人を神と仮定した。そして神というのは一様にして『信仰』なくして存在しえない。もし妖怪に同じような概念があるとしたら…」
「それが『恐怖』だってことね」
彼らのほとんどは忘れられた存在。神への信仰、妖怪への恐怖、人間は忘れてしまった。
「人間は、いや外の世界の人間は、妖怪も神も真に恐れてない。夢美さんの世界でもそんな感じじゃないかな。」
「そんなモノかもね。こっちは魔力の魔も無い科学の世界。そーいうあやふやな存在を信じてるなんて絶滅危惧種でしょうね。」
夢美はオカルト好きが高じて文献を漁ったりもしただとか。かつてはそういう存在もいたらしい記述はあるが、実に乏しい。
「こちらの世界の話をするとね。妖怪という種族は、人間の文明開化と共に追いやられていった。あらゆる事象が科学的に紐解かれ夜の暗さに恐れる者が急激に減ってしまった。
特に、昔の妖怪はね。人間の持つイメージに大きく左右されていたんだ。」
ほうほう、と夢美は興味あり気に頷く。
「妖怪としてポピュラーな天狗を例に挙げれば、山中にて怪奇な音を立てる、石を降らす、赤子を攫う『恐怖』の対象だった。人間を脅かす現象として彼らは始まった。
逆もまた然りだが恐怖とは信仰でもある。そうして仏教の伝来を経て天狗は山岳信仰の対象になる。山伏を手助けも邪魔もする精霊として。今の天狗が山伏の恰好を模したものも、
余りに厳しい修行を努める山伏は天狗と同一視されていたことが起源と聞いている。天狗のイメージとして有名な、あの鼻高天狗なんかも山伏たちが持っていたお面が元になっているらしい。」
「随分とコロコロ変わるモノねぇ、でもそれもここまでかしら。」
「ああ。それが文明開化と共に存在の不実のみが明らかにされ、人間のイメージに左右される彼らは居場所を失った。」
私が妖怪だったらひょっとしてポックリしてないか、と向こう側で自説をメタメタにされた夢美の脳裏に過った。
「天狗に限らず全ての妖怪が消滅の危機に瀕した。それを救うべく幻想郷は隔離した世界になった。
元から姿形の定まらなかった彼らはこの時、真に自由を得たという。そうして独自の体系のもと進化を遂げ今に至る。」
「かつての妖怪は人間の『恐怖』延いては人間の想像の枷を外すことで、幻想郷の妖怪へと進化した……ってアレ?」
慧音は言った。人里を『恐怖』に陥れることで妖怪は『今』も人間を襲っているのだと。
だとしたらおかしい。たった今『かつて』の妖怪が人間の想像の枷を『恐怖』を外したと話したばかりだ。真っ向から食い違っている。
「里の人間は今も妖怪に脅かされる日々を過ごしている。」
慧音の顔付きは渋い。そしてさらに続けた。昔に比べれば遥かに良くなっているとは言え、と。
「人間と敵対し果ては捕食する、五体に裂かれても平気の平左で立ち上がる、ヒトはその様を見て立ち竦み恐れ戦き逃げ惑う。それが妖怪の本質。私たちの根幹は人間から向けられる『恐怖』にある。
だからこそ里の人間を脅かし続けなければならないというのは、当然の帰結である。かつて無形だった私たちは精神こそが主体。故に己の精神を満たさないまま、生きることは叶わないのだから。」
「妖怪の本質は変わっていない。進化したのは彼らの住まう土地『幻想郷』だけだったってこと。」
だからこそ、今もなお妖怪は人間を脅かそうとする。そこにどんな理由があろうと。
情報の統制だろうが、裏の支配権を握るためだろうが、ある者は純粋に人間の恐怖を求めて、人里を混乱に恐怖に陥れる。
智慧の無い木端妖怪は、その意味すら知らず無用に人間の命を奪いさえする。ときに昼夜を問わず、挙句人里という安全圏すら踏み込んで密かな凶行の影は走る。
そこから抜け出そうとする者がいて何がおかしいだろう。里の隠れた片鱗を知り、自らを妖怪にやつしてでも。しかし、その命もまた多くに知れることなく潰えた。
慧音は全てを知っている。だが、たとえ妖怪が妖怪として存在するためでもあっても、あったとしても、人間は妖怪に怯え果てに命を奪われもする。それを耐えろ、と言うのは余りにも酷な話ではないか。
何せ彼女は全てを知っているのだから。
だからこそせめて歴史の一つでも記すのだ。もうこれ以上、里の人間が過ぎた恐怖に煽られることのないように。
「慧音先生の歴史は、そういった妖怪から守るためにあるのね。だから里の人間に信頼されなくても構わないと。」
私みたいになる必要がない、という慧音の発言の意味が少し分かった気がする。人間が好きでありながら、真に通じ合えない白沢の存在を。
「その代わり私は君にパチュリーを信頼してほしいと思うワケだ。迷惑上等、厄介承知と言った具合にね」
「押し付けって言うんじゃありません?タチが悪いわぁ」
「そうだろう?なら先の君の発言もそういうことになるな?取り下げられてやむなし。おあいこ」
斯くして、慧音の能力に目を付けた夢美のワガママな要求は突っぱねられた。
たとえ好きだとしても里の人間と信頼し合うことが出来ない、そんな慧音の姿に思うところがあったのかもしれない。
ただ、人間と妖怪は存外歪な関係で結ばれていることを知るに至った。夢美の興味は何だかんだ満たされたので、それでよしとした。
「慧音先生が『先生』なのも、妖怪の知識を伝えて回る歴史の教師だからなのね」
「私は教えてないよ」
「はい?」
「私は、教えてない」
まだ、終わらない。
もう少しだけ彼女の興味は満たされる。そして、より歪な人妖模様を知ることになる。
「ちょっ!?ちょっと待ってよ!先生は里の人間に歴史を教える教師じゃなかったって言うの!?」
「歴史は教えるさ。正確には、私が編纂した『人間の為の歴史』それを『里の人間』に教えることは、ほぼない。」
夢美は押し黙って思考する。ちょっと情けなく狼狽し過ぎた自分を戒める意味も込めて。流石に予想外だ。意味が分からない。
里の人間に教えないとしたら、その歴史は一体誰に教えると言うのか。妖怪か、それこそ、まさかだ。
「里の人間には歴史は教えている。でも人間の為の歴史を使わないで授業してるってこと?」
「そうだ」
「どうして!?」
考えもなしに疑問をぶつけた。だって意味がない。信頼されなくても構わない、そんな意志で歴史を創っていたのではないのか。それを使わないなら最初から必要ないではないか。
何故彼女は別の歴史を吹き込んでいるというのか。
「妖怪が恐怖に根差した存在だというのは、先に語った通り。それに付随して、私は人間の為の歴史を知らせることを諦めている。」
そこで夢美は、一つの考えに至った。表情には決して出さない。恥の上塗りは勘弁だ。
「一つ夢美さんに尋ねたい。康一君が死んだあの瞬間、貴女はどう感じた?変に取り繕わなくていい、教えてほしい。」
いきなりこの質問だ。それも今の話と符合する質問とは思えない。
十秒も前の夢美だったらそう思ったかもしれないが、この問い掛けが脳裏に過った考えと合致、確信した。
「ワケが『分からなかった』とでも言えばいいかしら。だっていきなり人一人がドカン!なんて流石に参っちゃう。」
悲しいだとか残念だとか、そういう綺麗事はこの際忘れておく。慧音の望む話の流れにそれらはきっとそぐわないはず。
夢美もまた康一、にとり爆殺の一連の流れに動けなかった。それが正直なところだった。それと凄まじくぞんざいに扱われたことをまたも思い出した。
「私も同じようなモノさ。あの状況に呑まれてしまった。だって理解できなかった。一体誰が、何故康一君が、他にも諸々。泉のように湧く疑問で頭の中は過積載だ。」
悪びれもせず夢美に比べて、慧音の表情にはいくらか悔しさが滲み出ていた。
「
河城にとりの殺意も、その手段も、私たちは一切合切『知らなかった』。まあ知りようがなかったからね。わかるかっつーの。」
慧音は顔をまた曇らせただろうか。只一つ『知らなかった』あの状況を『知る』術があったのは、先に話した通りだ。今の論点はそこではない。
『知らなかったが故に理解できなかった』そここそが大事なのだ。
「私たちは、あの瞬間『恐怖』したのだと思う。一人の人間が突如死んだ事実に戦慄し、状況を理解できずに恐々した。」
『恐怖は常に無知故に生じる』そんな言葉があるように、あの状況を理解するには情報が足りなさ過ぎた。余りにも突発的だった。
恐怖、そう称されるのは夢美にとって癪だが否定は出来ないだろう。爆弾の矛先がもしパチュリーに向けられていたとしたら、そう考えると夢美とてゾッとする。
「脅威とは見えない謎がそこにあるから。分からないのに厳然な事実が私たちを無理やり分からせてくる。理解が追いつかない、その状況こそが恐怖。」
そこで慧音は言葉を止めた。大事なことを言いますよ、とそんな如何にもな間の取り方だ。
「そんな『恐怖』を根源にする存在が妖怪。だから、私が『無知』を取り除くワケにはいかないんだ。」
あの状況で起きた混乱、恐怖も、妖怪が起こすそれと変わらない。慧音はそう思って引き合いに出した。
そしてそれが慧音が人間に妖怪を教えない理由だという。だがやはり、このままでは分かりにくい。
「見えない、知らない、分からない、そんな状況こそが『恐怖』を生む。そして妖怪はその恐怖が欲しい。そのために、里の人間には『無知』なままでいてもらった方が良いと。」
知らないでいた方が都合が良いのだ。里の人間が無知であるほど恐怖に染め上げるのは容易い。人間の里は妖怪の恐怖で満たせる環境を創り出している。
だって幻想郷の主役は、里の人間なんかじゃない。
妖怪だ。
「先生はそれで良いの?」
一番気になるのはそこだ。人間が食い物にされていると言われても、字面通りに食物にされているワケじゃない。そこに嫌悪感はない。少なくとも夢美にとって。
妖怪にとって必要なら、それも致し方なしと思える。
だが慧音は違う。彼女は当事者であり、何より人間が大好きだ。
「黙認してきた私にそれを咎める権利はない。」
加えて生真面目だった。努めて平静な声色が却って痛々しい。
幻想郷の存続と人間の尊厳を天秤にかけ、そこに彼女なりの分銅を乗せた上で天秤にかけ、それでも出した答えだと想像に難くない。
「ごめんなさい愚問だったわ。」
そういえばまだ背を向けていた。回れ右して頭を下げる。それも素早く。もうちょっと近ければおさげが慧音を襲っていたかもしれないぐらい速かった。おかげで彼女の顔を見ないで済んだ。
ほんの少しの沈黙を経て慧音は続けた。
「これは言い訳に過ぎないけど」
「え?」
「幻想郷の鬼は余りにも強かった」
「へ?」
夢美は思わず下げていた頭を上げた。眉根を僅かにひそませつつも、慧音の顔はいつものそれだった。だからどうして、彼女は堪えようとするのか。
「妖怪退治の専門家と違った鬼退治の専門家がいたほど、鬼とは正に恐怖の権化、そんな時代があった。」
話の掴みも繋がりもへったくれもない、一体どうしたのか本気で心配する。しかし、私を見習って話を端折ったのだろう、と夢美は自意識過剰気味に解釈した。
「だが今の幻想郷、地上には片手の指で数えるほどしかいない。何故だろう。」
「退治し尽くされたってワケじゃなさそうね。」
「ああ、今いる鬼の多くは地下世界に移住してしまった。人間に嫌気が差したから。」
そこで夢美は右手で首を撫でながら傾げた。珍しく悩む素振りを取ってのシンキングタイムだ。
だが、それも長くない。この話は繋がっている。『未知が生む恐怖』それと地続きになっている。
「鬼だけの専門家がいるほど、彼らは知り尽くされ研究されてしまったのね。人間は鬼への『未知』を、『恐怖』をモノにしてしまった。」
「そう、やがて人間は言葉巧みに鬼を騙した。人間は鬼の性をよく理解したんだ。例えば、鬼は必ず人間の用意した勝負事に乗っかる、とかね。そこから人間の逆襲が始まった。」
―――鬼は酒が好きだ、なら飲み比べに称して毒をこってり盛ってしまえばいい。
―――鬼は決して仲間を裏切らない。たった一匹、それさえ捕まえれば良い。何だここに酔いつぶれた鬼がいるではないか。
人質ならぬ鬼質だ。さあ脅そう。投降せねばこの鬼を殺してしまうぞと。するとどうだろう。一匹だった鬼がまた一匹また一匹と増えてしまった。
そういった過程で鬼は嘘を毛嫌い敏感に感じ取るようになった、という説もある。慧音はそう付け足した。
「なまじ鬼という一括りの種族だっただけに、ありとあらゆる手管を以て鬼という鬼を下した。やがてそれらの全貌を知った鬼は幻想郷を去って行った。
因みに今の鬼にこんな雑な退治方法は通用しないよ。本当の退治方法は、人間の歴史認識の甘さにより遺失してしまったから。」
既にいる。
前例がある。
幻想郷の人間に淘汰された妖怪は、幻想郷の人間の知恵に屈した妖怪は、最強の種族と謳われる鬼だった。
「そんな過去があったからこそ、里の人間に本当に正確な妖怪の知識を持たせるワケにはいかないのね。最悪、妖怪は身を滅ぼす、と。」
「『知る』という根っこの部分から押さえ込み、振り絞る知恵をそもそも持たせないようにする。実に徹底してるだろう?」
夢美は感心していた。
幻想郷の管理人がいるとしたら、そいつは本気で里の人間を飼い殺す決意を固めている。
慧音が里の人間に知恵を貸さないのも当然と言える。
もし、里の人間全てが正しく妖怪の知識を身に付けてしまったら、妖怪の適格な対策を取られてしまったら、妖怪は『恐怖』を失うだろう。
恐怖を失えば、人間を脅かす存在足り得なくなり、遠からず消滅するのかもしれない。
たとえ慧音が人間側に重きを置く人物とはいえ、妖怪の滅亡を望んでいるワケではない。
しかしだ。話をひっくり返すが、仮に里の人間が妖怪の知識を持ったとして、そのまま滅亡を辿るかと言えば夢美は違うと答える。
恐怖を失い始めた妖怪は、再び恐怖を獲得するべく動くのだ。彼らには別の手段がある。里の人間を脅かす最上上等の方法―――『暴力』を以て。
恐怖を得るという目的は変わらない。今までは手段がそのまま目的だった。恐怖を得るために恐怖に陥れようとしていた。それが恐怖を得るために力で訴えるようになるだけだ。
幾ら妖怪の知識を得たところで、妖怪は謂れに弱いと一口に言っても、一朝一夕で妖怪の力に抗えるものか。
妖怪にとって今までは全て『ごっこ遊び』だった。そしてそのごっこ遊びに耐え兼ねたのは人間だ。
手を抜かれてなお恐怖に屈していた人間が本気で挑んで、力の差が埋まるワケがない。妖怪は本気を出すまでもなく、お遊びのまま人間を叩き潰す。
だが決して滅ぼされはしない。彼らは妖怪の生命線、彼らは恐怖の源泉。失ってしまうワケにはいかないのだ。
そして人間は滅ぼされない限り必ず復讐の刃を研ぐだろう。そしてその力をいつか爆発させる。大妖中の大妖、鬼を退けたように。
禁忌の膜壁は破られ、超えてはならない一線を超える。
人間と妖怪の争いのクロニクルが幕を開けるのだ。
それは『怖さを知り、恐怖を我が物とする』そんな命題の物語。
『人間』の『無知』を『恐怖』を乗り越え、『知恵』と『勇気』を以て『妖怪』退治へ挑むストーリー。
『人間賛歌』と呼ばれる『人間』の『勇気』の物語が始まる。
もう一度だけ問おう。妖怪とは何だ。恐怖だ。恐怖の権化なのだ。
人間など吹けば飛ぶ。そんな虐げる力を持て余しながら、遊びに興じる。精神こそ元本、それ故に身勝手の極致を地で行く怪物なのだ。
その強大な怪物に恐怖に貧弱な人間は挑む。
奪われた『知恵』を取り戻し『無知』を塗り替える。『無知』から生じる『恐怖』はたちどころに霧散し真に恐れるべき『恐怖』の正体『妖怪』と相対出来る。
そこまでして人間は初めて『勇気』を持てる。そこまで出来て人間は、いや『里の人間』ようやく『人間』足り得るのだ。
謂わば『里の人間』は『人間』ですらない。
彼らに『物語』はない。物語の主役は彼らではない。だってあの箱庭の主役は誰だ。人間か、いいや違う。違うはずだ。違うだろう。
―――妖怪なのだ。
―――だからこそ『幻想郷に人間賛歌は響かない。』
そして勇気も智慧もないヒトが学ぶ歴史を影に妖怪はこう宣うのだろうか。
―――『人間賛歌偽典』、と。
「人間は無知であり続け、妖怪に踊らされなきゃいけない、かぁ。」
しばしの熟考を終え、夢美はそうひとりごちた。その言葉が幻想郷を維持する安全策。だがそんな幻想郷の理屈など彼女にはまっぴらだ。守る気などさらさらない。
「先生には悪いけど、パチェをもっと知りたいのよ私は。幻想郷の暗黙のルールなんて守れそうにないわね。」
「ああ、構わないよ。君は例外だからね。むしろよろしく頼む。」
あれれ、と一瞬固まった夢美。守らないとヤバいんじゃなかったか、妖怪消えちゃうんじゃなかったのか、思わず疑問が湧きそうになり、そこで思い出す。
自分の立場のことを、だ。
「あ『里の人間』じゃないか私って」
「らしくないな君にしては。まあそれだけ熱心に聞いて考えてくれたんだろう?」
「さあね」
夢美は部外者だ。妖怪染みているものの人間であり、どこともいつとも知れぬ外の世界っぽい世界在住の人間である。
幻想郷の暗黙のルールが『里の人間』を括りにしているのならば彼女は、ぺっ、と爪弾きにされる存在だ。
「君は無知である必要も恐怖に戦く必要もない人間ってことだな。」
「まぁそもそも私は賢いし妖怪は怖くないし私は賢いし。」
「そして君の他にも、幻想郷に『例外』がいる。ワケあって里の外で暮らしている人間がね。当然彼女らも例外になる。」
人里の外で暮らす人間も僅かだが存在する。その僅かはこの殺し合いの舞台に召還されてしまっているが。
「君と同じように、彼女らは真に妖怪を恐れていない。いわゆる『妖怪との距離が近い人間』に当たる、ほんの『一部』の人間だ。」
「距離?」
「距離だよ。これを近づけ過ぎた者は人妖と呼ばれそのほとんどは処断される。だがまあ、それはまた別の話だ。」
さらっと、とんでもないことをブチ撒けてきた。
何せ目の前にいる半人半妖こそ、その人妖と呼ばれる存在に極めて近いのではないか。その証左を慧音は既に語っている。後天的にワーハクタクへと至った、と。
人間から妖怪に変じている。人間と妖怪の距離をゼロにしてしまった存在ではないか。処断されるべき存在なのではないか。
そして彼女が人間の時点から人里に住んでいたとしたら、彼女は如何な変遷を辿り今に至るのだろうか。
彼女の背中に深い影が差している、そんな風に思えてならないのは考え過ぎだろうか。
今は、忘れよう。
「そんな『妖怪との距離が近い人間』は『恐怖』を妖怪に寄与することはほとんどないが、代わりに重要な役割を担っている。」
「それが異変解決。」
―――『妖怪が人間を襲う』その定義、【最もポピュラーなのが異変】、もう一つが人里を『恐怖』に陥れる、大きくはこの二つになる。」
慧音が先に口にした言葉だ。
今までの話から考えるに、異変とは、妖怪としての力を誇示することで自然と妖怪への畏怖を高め恐怖に繋がるのだろう。
そして、それを終息させる役割に『妖怪との距離が近い人間』が存在すると考えていいのか。
そこで夢美はふと思い口にする。
「例外がルールに組み込まれているって感じよねぇ。」
妖怪が主役の幻想郷で、彼らの存在に必要なモノは恐怖。であるなら、恐れない人間という存在そのものが不要だ。
だがしかし、異変を解決するのに、無知で恐怖に浮き足立つ人間がこなせるものではない。そう、妖怪を恐れない人間が『例外』が必ず必要になってくる。
本来はルールの外に在る筈の例外が、異変と言う妖怪が人間を襲う最重要ルールの要素に含まれている。イレギュラーな存在にも関わらず。
「敢えて例外を作ったんだろう。里の人間から大きく変えていくことができないのは先に話した通りだ。身勝手を是とする妖怪に至っては論外だ。話が通じない。」
「妖怪が人間を襲う、その恐怖で妖怪は満たされる。そこから外れた関係を模索していた。そのための彼女たちってワケね。だから妖怪に恐れない人間をルールに組み込んだ、と。」
妖怪は里の人間を脅かし、里の人間はそれに怯える関係。それを完全に崩してしまえば、今の幻想郷の平穏に影を落とす。たとえそれが仮初の平穏であっても。
故にルールを堅守し続けなれば幻想郷は幻想郷でなくなってしまう。
「だからこそ、ルールの外側の『例外』をルールに則って動かした。」
『里の人間』と『妖怪』が、妖怪が人間を襲うというルールを守り続ける存在ならば、
『妖怪との距離が近い人間』はそのルールを破る存在、もしくは、どんな妖怪も最後には退治されるというルールを守る存在。
前者のルールの比重が大きい幻想郷において、その存在は『例外』と言える。妖怪を恐れない人間と妖怪を突き合せたらどうなるか、それを観測する舞台こそ異変解決か。
「
八雲紫は、幻想郷の今を変えるヒントを模索してた、と私は思っている。」
恐れない人間と妖怪がぶつかったら、恐怖とは違った関係が生まれることだろう。だってそもそも恐れないんだからどうしようもない。代わりにお酒でも入れるしかない。
『妖怪との距離が近い人間』と『妖怪』が別の『ナニカ』で関係を築けると言うならば、
あるいは『里の人間』と『妖怪』の恐怖の関係を解き放てる『ナニカ』を見付けられるのではないか、と考えていたのかもしれない。
「先生だって気付いてるでしょ。だからこそ私にお節介焼いて説教した。」
夢美には身に覚えがあり過ぎる、つい先ほどのやり取り。それもまた人間と妖怪の新たな関係を求めたモノではないのか。
「………私のそれは、只の期待だ。立場のせいだけじゃない。私にはできないからって遠ざけて来た、希望を覗き見た人妖模様。」
「「『信頼』」」
『恐怖』に代わる『信頼』の関係、慧音はそれを望んでいる。
人間も妖怪も怯え脅かすことなく、ときに信じときに頼るそんな共生の関係を。
「でも、やっぱりそれは絵空事なんだ。」
慧音は自嘲気味に自分の意見を取り下げる。
「『恐怖』が生まれずして、妖怪は妖怪足り得ない。そこに『信頼』で取って代わろうなんて、テンで意味が分からないだろう?土台無理な話なんだよ私の考えは」
妖怪が『恐怖』を失えば、その存在の意義を失うのだ。代替できなければ意味がない。恐怖が信頼と置換できなければ、その先はただ影を差すのみ。
お互い信じられるようになりました。仲良しこよしになりました。はいおしまい、とはいかない。その物語は許されない。
物語が終わっても、その生は続く。ならばその続きも生あるよう、綴らねばならないのが物語だ。
仲良しこよしではいおしまいの物語は、妖怪の存在そのものがおしまいになるだけ。
だからこそ幻想郷の管理人は苦心する。苦心し続けている。
「そうかしら?私は信頼することだって、怖いことだと思うわ。」
だが、夢美はそれに異を唱えることができた。他ならぬ今、妖怪と信頼を築こうとする彼女だからこそ、一つ考えがあった。
「だって、他人のことなんて分からないじゃない。自分より遥かに。特に、私はそう思うわ。それなのに信じようとするってちょっと嫌よね。まぁパチェのためだけど。」
自分のことは自分が知っている。だから怖くない。
だが他人を知るのに限界がある。それはきっと自分以上に難しい。知らないことは絶対出て来る。まして信じる相手は人間同士でなく『人間』と『妖怪』だ。
それでも信じようとすることが頼られることが『信頼』というならば、それは紛れもなく『恐怖』への対峙と言えないだろうか。恐怖と対峙するは己が内の妖怪を退治することにある。
「無知故に恐怖は生まれ、それでもそのヒトを知り信じることはおよそその為の闘い。これを『恐怖』への対峙としないで、ワーハクタクは何と称するの?」
慧音は言葉を返す素振りもなく押し黙る。しかしその両眼は僅かに見開かれていた。
「私はパチェの無事を信じてるけど怖い。不安で不安で仕方ない。そういうのも『恐怖』って言えるんじゃないかってことね。まぁ、これはこんな場所だからこその恐怖だけどね。」
夢美の声色に陰りはない。それどころか逆に明瞭だ。
自分さえ付いていればパチュリーに這い寄る全ての敵から守れる、そんなどうしようもない自信が言葉の端々に見せている。
「だけどまあ他にもあるでしょ。きっともっと『恐怖』ってのは転がってるモノだと思う。妖怪と人間が『信頼』する過程で。」
「信じることもまた怖い。『信頼』の過程もまた『恐怖』か。」
慧音は納得したかのように、そこで長く息を吐いた。夢美はその様子をニコニコしながら眺めている。どうだまいったか、と口走りそうな表情だった。
夢美は夢美なりに考えている。そのことが慧音は素直に嬉しい。
だが、この考えに一つだけ憂いがある。
信頼の過程に恐怖はあるだろう。それは確かだ。ならばその過程の果て行き付いた時、それでなお残っているのだろうか。残らなかったら、妖怪はどうなる。
それが残っていてなお信頼と呼ぶのか呼ばないのか、別の行き付く先があるのか。慧音には分からなかった。
ただ、ここで異を唱えるつもりはない。慧音はその答えを持ち合わせていない、代案があるワケでもない。それなのに、否定して芽を摘むような真似はしたくなかった。
「あるいはここはそんな場所なのかもね。」
「どういうことだ?」
夢美はポツリと呟く、たった今何かに気付いた口振りだ。
「今話したことが、ここで私たちを殺し合わせる理由なんじゃないかって、ちょっと思ったの。」
慧音の表情が一気に強張るのが見て取れた。
「この殺し合いが、信頼を築くためのモノだとでも言いたいのか!そのために人間と妖怪を集めたと、いくら何でもそれは…!」
「確かに先生の言葉通りだと、ちょっと具体的過ぎる。もうちょっと解釈を広げて言うなら、そうね。人間と妖怪の新しい関係を探るって感じ?」
「同じことだッ!確かに主催者は幻想郷における全能の神という仮説は立てた…!だが奴らが何故、幻想郷の未来を憂えるようなマネをする…!!」
全能の神の考えることなんて、ここにいる参加者全員が分かることではない。夢美もまた同じことだ。
だからと言って、そんな泣き所を叩かれてここで返さないのは些か癪だ、それが夢美なら猶更そう感じることだろう。
「なら別の方からアプローチしてみましょうか。八雲紫のことよ。彼女が作ったであろうゲームが殺し合いに起因しているって仮説は、先生も聞いてるでしょう?」
「東方心綺楼のことだな。」
東方心綺楼と同じように幻想郷での争い、異変がゲーム化され人気を博した。紫が用意した製作者のダミーが神格化するほどに。
神となった太田と荒木は『幻想郷の住人を争わせる程度の能力』で殺し合いの異変として参加者を引き摺り出した、そんな一つの仮説のことだ。
「作品っていうのは、その作者の意図が組み込まれているものでしょ。その作者の価値観やら考えやらがね。」
ゲームや漫画、果ては小説にエトセトラ。作品と呼ぶならば、そこに意味を持たせてあるモノが多い。
「だとしたら東方心綺楼の作品の考えって何かしら?これを作ったのが太田であり荒木であるとして、彼らは八雲紫のダミーであるとして、一つ思い付かない?」
「八雲紫が葛藤した、幻想郷の人間と妖怪の在り方がこの作品にも混ざっていると?」
八雲紫が作ったにせよ彼女が用意したダミーが作ったにせよ、このゲームの大本は八雲紫だ。いわば彼女がゲームの作者であるなら、彼女の考えが混ざってしまうのは当然のこと。
「八雲紫は幻想郷の未来を憂える存在と言えるでしょ?ある意味で彼女はこの殺し合いを望んでいたって節があったのかもね。」
先の話で、里の人間の智慧を奪ってまで楽園の維持に努めようとしたほどの傑物であり怪人だ。
ならば既に人間と妖怪の殺し合いに一つの可能性を見出していて、なんらおかしくない。
「それじゃあ!!八雲紫がこの殺し合いを望んでいただって…!?幻想郷の維持に、この殺し合いを開いたと…」
慧音が驚くのも無理はない。だが彼女の思考がさっきから少々堅い、いや直情的になり過ぎている。今にも崩れてしまいそうだった。
「いいえ、流石にそこまでは言い切れない。ただ、妖怪と人間の関係改善の可能性として、彼女が思い付かないワケがない。でも、それが望むカタチにはならないと分かっていたんでしょう。」
だが、その思想が造り出したゲームにも宿ってしまっていた、夢美はそう考えている。
「言ってしまえば、ここは八雲紫が望んだかもしれない場所。人間と妖怪の新しい関係は見付かる。でもその人間も妖怪も失う。だから八雲紫も望まなかった。そんな葛藤の一つだと思いたいわね。」
そう考えれば、恐怖に怯まない人間『例外』たちがここに呼ばれていることも、彼女の願望の一環だと考えられる。
ゲームの内容もその全てが異変を取り扱っているのも、異変の持つ一つの側面に人間と妖怪の在り方を観測する舞台だと先に論じたから。
「あの主催者が本当にゲーム作者のダミーだとしたら、八雲紫の考えに基づいて今回の殺し合いに至った。私たちを人間と妖怪の関係を正すために……」
慧音はそこまで口にすると茫然と立ち尽くしていた。
「まあ、この話は置いときましょうか。何にしたって慧音先生も、誰かと信頼することは大事ってことね!」
「……」
「それに、ここにはスタンド使いって『例外』もいるワケだしさ!」
「…ああ」
「それとも既に信頼に足るお相手は、ここに来ているとか?」
「……」
「まぁ、どっちみち、慧音先生自身がそれをここで知ることは大切なんじゃないかって思うわ。教える立場なんだもの」
「……」
「だから能力なんか使わなくたっていい。一方的に知ったって信頼ある関係なんてできない……って先生に言う必要なんてないか」
「……」
「……」
「……」
「……」
「私は、使うよ」
たとえそれが信頼より遠い行いだとしても、そんな肉付けのできる台詞を慧音は吐いた。少なくとも夢美にはそうとしか聞こえない。
「だからどうしてよ!先生って里の人間と信頼し合いたいとか、そんなんじゃないの?だったらここでそれを学ぼうってなんないの!?」
別に慧音の態度が他力本願で気に入らないとか、夢美はそんなことを考えてはいない。
夢美の行動原理は只一つ。好きなモノを好きにしたい、ただそれだけだ。
だからこそ目の前のワーハクタクが、人間が好きでそれでも諦めていた上白沢慧音が、そのための一歩を踏み出さないのが夢美にとって癪だった。
「確かに夢美さんの言う通りの姿を、私は求めている。あるいは至上の目的と言ってもいい。でもね。たった今、それを超えてしまう思いが一つだけ、できてしまった。」
夢美は奥歯を深く深く噛み締めた。腹立たしいワケじゃない。慧音の口にした言葉のその重みを文字通り咀嚼しただけだ。
これから続く言葉の重みは今までの比ではない。
だって彼女はたった今、と口にした。彼女の背中を今、夢美は押してしまったのかもしれない。
「いいわ。聞いてあげる。ただ、言葉には気を付けてね。貴女が今から発するそれは、至上の目的とやらも全てを塗り替えちゃうんだから。」
そういうことになる。
慧音は里の人間との信頼を結びたがっていた。だが、その想いは幻想郷のしがらみに十重二重に阻まれ、とても叶わない。乞い願おうとも叶わない。
決して縮まらない人間と妖怪の溝。それを埋めるヒントを得たのかもしれない。たとえそれが如何に陳腐なモノだとしても。
慧音はそれを蹴った。
それを振り払ってでも今、果たすモノがあると言ったのだ。
こんなの嫌な予感しかしないじゃないか、夢美は目を瞑った。眼を背けたか、杞憂であれと祈ったか。
「あの主催者共が骨の髄まで憎い。」
「だから私はこの力を使う。もう、アイツらの思い通りなんて、とても、とても耐えられない…」
「信頼の過程に恐怖が潜む。私は今その考えを知るに至った。それはとても有意義で、何より夢美さんの善意が本当に嬉しくてたまらなかった…」
「でもだからこそ、それをこんな場所で気付いたことが、我慢ならない…!私たちは本当に導かれているようでそう思えてならない。そんなこと認めたくない認めて、認めて、たまるか…!!」
「勇気ある人間が恐怖の妖怪を下す『人間賛歌』は、手を取り合う人間と妖怪が生まれ『夢物語』は、間違いなく人妖の関係は一気に昇華させる。だけど、そのために、それくらいのために………」
「幻想郷を蠱毒の坩堝に陥れるなんて!!!!許してやるものかッ!!!!」
「最初から!最初から幻想郷は蠱毒の坩堝だった!ただの蠱毒じゃない。食い潰し合うことのない、大き過ぎる矛盾を抱えた蠱毒だったんだ!!
人間の尊厳を平気で踏み躙っていたさ、とても否定できない!擁護なんてできもしない!!」
「停滞は即ち衰退だ!だから完全に停滞し切らないように妖怪は敵で在り続けたんだ!!そうまでして呑気な蠱毒はここまで来た、ここまで来れたんだ!!
安定した不安定を敢えて続けさせて、静かに静かに変化を待った!そうなるよう私たちは幻想郷を整えて来たのに……!!」
「それをアイツらはその全てをブチ撒けた!!!!ご破算にした!殺し合う、そんな絶対に越えようのないどうしようもない一線を越えさせた!!!!」
「それを幻想郷の今を変えるためだなんて、一言でもほざいてみろよ。」
「変わって当然だ!!!当たり前だろう!!そこを越えさせないために、どれだけの幻想郷の連中が苦慮したと思っている!!!」
「たかが玩具に宿る二柱の神が!!!吹けば飛ぶ信仰のクソッカス共が!!!!どのツラ下げて創造主ヅラしてやがるんだぁああああああああッッ!!!!!」
ずしゃり、とヒトが倒れたような音がした。
慧音の怒りは理に適いつつも、幼いモノだった。
気に入らないのだ。慧音のそれは、ただそれだけなのだ。それだけで能力を使うつもりでいる。
これ以上主催の手中で踊らされるのが勘弁ならない。たとえそれが主催の掌で踊ることになっても。
だけど激情は理屈なんか一足飛びに超えていく。そういうモノだと夢美は思っている。
自分のことは分かっている、と先に言った言葉は少し訂正しなければならない。だって己の価値感に如何にして火が付くか、これだけは分からないことを夢美は既に実感しているから。
その分、慧音の怒りは十分筋が通っている。慧音は確かに人間が大好きだ。故に彼女はこれから全てを失うワケというではない。なんせ彼女の愛する里の人間は幻想郷で依然健在のはずだから。
だが、和を以て貴しとなす。
慧音はそう在り続けて来た。幻想郷にも、妖怪にも、里の人間にも、決して諍いの起きることのない様に振る舞い続けて来た。それなのに幻想郷と妖怪は彼女の与り知らぬところから勝手に瓦解し始めた。
雁字搦めのルールに縛られ、それでもスキマを掻い潜り、緩やかな変化を待ち続けていた幻想郷は、今や全てのルールを無視して、急激な変化の代償に妖怪と人間を使い潰している。
幻想郷の賢人らにとって、あるいは同じ方法を考えていたのかもしれない。これで人間と妖怪が歩み寄る答えが出ない方が嘘なのだ。だがそれを誰が実践する。誰がそこにいる。誰が残っている。
見守ってきたのに。耐え忍んできたのに。待ち続けたのに。自分を殺してでも遠い理想郷を夢見て。
もう、その理想郷は帰って来ない。
理想は幻想に溶けて潰えた。
その幻想の郷ももはや。
戻ることはない。
永遠に。
ならば、それを齎した者に怒り狂わずしてどうしろというのだ。
そこにある意義は確かに小さい。その力を使っても争いを防げるとは限らない。おそらくはむしろ踊らされる。もう既に介入された力、それこそ全ては思う壺だ。
じゃあだからと言って!何もせずにいろと?諦めて全てを受け入れろと?ふざけるな!!歯向かずしてどうするというのだ!!どうしろというのだ!!!
夢美は閉じていた瞼をようやく押し上げることができた。何のために目を閉じていたか、もう覚えていない。
ただほんのうっすらと視界が滲んでいた。恐怖に竦んだ己を守るために、瞼を下ろしたとしか思えなかった。
慧音は夢美に背を向け、その場で崩れていた。地面を拳に叩き付けていた。何度も何度も判を押すように。忌々し気に。けれど力なく。夢美はこの時初めて気付いた。
彼女の後ろ姿が余りに小さかったことに。
慧音は泣いていた。
先の怒りなどもはや燃え尽きてしまったかのように、その涙を以て鎮火させてしまったかのように。ただ咽び泣く。静かに泣く。
上白沢慧音は半人半妖だ。そしてその存在通り、彼女は私情に全てを明け渡すことを良しとしない中立な存在であったのは、もはや語る必要もない。彼女は誠実だった。
だからこそ、この失意と絶望はどの妖怪の追随を許さないほど重いのに、彼女の『性』が踏み留まろうと働き出している。
慧音が望んでやまない尊い『信頼』という願いすらも、ここではもはや卑しい願いへと貶められたのに。
まだ理性のタガは外れきれなかった。それは何よりも救いでもあったが、余りにも彼女が憐れ過ぎた。
夢美はどうしたらいいか分からない。でも一つだけなら絶対にやり遂げられる。
彼女と彼女に教えてもらったことぐらい、全うできずして何が天才か。
慧音にのしかかるそれを取り除ける。
卑しくなんかない願いだと、ワーハクタクを動かすべく彼女は動く。
「それじゃ先生は能力を使うってことね。OK任せるわ。不埒な輩を見付けたら、ちゃんと教えてよね。」
夢美の態度も言動も、もはやいつものそれだ。先のやり取りがなかったかのようだ。
「あぁ、でもそういうの『信頼』的なアレに反してダメだっけ?勝手に知るってことだから。でもまあ、そこら辺の裁量も先生に任せるわ。」
慧音は地に蹲ったまま見向きもしない。それを良いことに夢美は音も無くにじり寄り、慧音の首にその両腕を素早く絡めた。
「っん!放さないか!!」
「それとその内バレると思うから言っとくけど、康一君の首、悪いけど多分パチェが持ってるはずだから。」
「なっにッ!?」
言うが早いが慧音は拘束を力づくであっさりと振り解くと、そそくさと距離を取った夢美と対峙した。
「あはは、やっぱ近づくモノじゃないわね。痛い痛い、掴まれなくて良かったわホント。」
「どういうことだ!!どうして死者を弄ぶ真似なんかやったんだ!!答えろ!!」
慧音の両眼はやはりというか真っ赤に染まっていた。そしてまだ興奮が抜けきっていないのは言動を聞いての通りだ。
「どうもこうもないわ。この殺し合いを脱出するために生首が必要になることくらい先生だって分かるでしょ。」
「仗助君だっているんだぞ。みすみす和を乱すつもりか!」
「そうね河童の生首があれば一番良かったわ、悼むヒトなんていなさそうだったし?それに帽子の中身も見たかったなぁ。あー惜しい。」
「夢美!!貴様ッ!!!」
慧音の眼が更に血走った。幻聴なのか歯軋りがここまで届いて来た。これは完全に沸騰したかもしれない。ちょっと拙いが上等だ。
「貴女がやろうとしていることは、そういうことだから。それでもって言うなら今、私に突っ込んできなさいよ、慧音!」
二人はそのまま睨み合う。いや片方が睨みもう片方はそれを受け流すように視線が混ざり合う。
そして数秒の間膨れ続けた空気は、小さく弾けた。
「やめだ」
「ええー」
激闘の予感は細やかな茶番の幕に貶められ切って落とされた。慧音は長く息を吐き出し、身体に走らせていた緊張を解きほぐした。
「やっぱり、私なんかじゃ先生は動かせないのかねぇ。受け止めてあげられなかったぁ~」
「そんなことは。私は、夢美さんに危険な目に合ってほしくなかったし、感謝している。」
「そこを振り切りさせられないから私じゃ役不足ってワケだけどね」
慧音が困った顔をするのを見てしまう前に、夢美は徐に地面に転がった。
「でもこれで良かったかな。貴女が一番信頼できるヒトに私がならなくて…」
夢美にしては珍しく物憂げな顔つきで、慧音は本気で驚いた。
「まぁ私はパチェ一筋だからねぇ、慧音先生が二番目になっちゃうのが可愛そうじゃん?重婚罪ってワケにもいかないしね」
慧音はしらーっとした夢美を睨んだ。心配したのにと顔に書いてある。
「何をしてる」
「こういう仲違いの後は草原で寝そべるのが定番」
「さっさと起きなさい」
「先生は寝なくてもいいわよ、さっきのは仲違いでも何でもないんですもの」
「勝手にしろ」
「素直で宜しい」
慧音は身体を投げ出して夢美の隣に並んだ。うっかり角が夢美に刺さらないよう注意する素振りもなかった。恐ろしい。
「素直ついでにありがとう」
「どういたしまして。でも私が撒いた種だった。しかも刈り取れそうにない。そうでしょ?」
「………」
「やっぱり諦めてくれないの?」
「多分、使う」
「そっか、ごめんね。なら私が諦めとくわ、うん。やっぱりごめんなさい…本当に」
慧音はその能力を使って、諍いの芽を摘むつもりでいる。先の夢美の茶番も、慧音が能力を使うにあたって、どこまでの裁量があるか見たかったからだ。
細かな問題は目を瞑らなければならないだろう、そして大き過ぎる問題もまた目を瞑らなければならないだろう。
慧音が裏で能力を使うならば必ずその見極めができなければ意味がない。自滅する。
そう、自滅しかねない。そんな危険な役割を勝手に始めようとしている。他ならぬ夢美の言葉によって。後悔しないワケがなかった。
あわよくば、先の茶番が闘いになれたとしたら、慧音の抱える想いを幾らか晴らすことができる、そんな魂胆もあった。
今は夢美は慧音に背を向け、その表情が良く見えなかった。
「信じさせてね…先生。それで手を打つから!」
「分かったよ。私も君には信じていてほしい」
それら全てを夢美は精算することは叶わなかった。だからこそ、最後にして最高の妥協案を慧音に押し付けることができる。
『心配』だから『信頼』させろ、と。
パチュリーと慧音に教わった信頼を、慧音にとって余りにも得難い信頼を押し付けることができる。それが決して卑しいモノではないと押し付けることができる。
「どう転んでもってことか、大した役者だな」
「さあて、先生がポカしないように信じといてあげるから、先生も私とパチェが信頼できるかでも信じてて、これで『信頼』ね」
「大きなお世話だ、まったく。それと、君たちの信頼の如何なんて、これっぽっちも信じちゃいないよ」
「あら冷たい」
「どうして君が私を信じるのに、私は君とパチュリーの仲を信じなきゃいけない。対等に行くぞ。私は君を信じる。これで『信頼』だ」
「あら熱いわ」
「君たちの仲なんて、どうせ私が信じなくたって勝手にやるだろう」
「じゃあもっと私を信じられるように、色々お話してあげなきゃ。知ってもらわないとね」
「いい加減にして行くよ、時間を潰し過ぎた」
「ちょっと先生待ってよ~」
慧音が大股でズカズカ歩き出し、夢美はそれに追随する。
その道中は夢美が勝手にくっちゃべり些かにぎやかが過ぎた。そしてあっさりと漫画家に見つかり、更には吸血鬼を見つけていく。
存外その結託とは案外堅いのかあるいはとても緩かったのか。
怪しまれないためとは言え、片方が本にされてもそっちのけで読み耽るばかりか、その輪に入り込む人間一人。
あの時、友人の死に打ちひしがれた漫画家。その手に握られていた一ページがもしめくられていたら、友の首の行方が載っていたかもしれない。
その後も二度に渡り、天国の門を開かれるワーハクタクだが『幻想郷の全ての知識』を白日の下に曝されることは終ぞなかった。
知識の上澄みを読み取られるだけで済んだのも、彼女の勤勉さが功を奏したのか。未だ使っていない能力故にワーハクタクすら知り得ない内容なのか。
あるいは『幻想郷の全ての知識』とは余程のタブーなのだろう。
読み始めに【警告】の文字が躍っているほどの。
だが、いずれにせよここでのやり取りは奇跡的に露見されることなく、今に至る。
そしてジョースター邸に七人の人間と妖怪が、終結する。
中にヒトはいる。気配、彼女にとってはそれもまた魔力で判別が付く。尤もかなり頼りない精度だが。感知する領域に至らない微かなそれは4名のヒトが占拠していると判断できた。
東方仗助、
比那名居天子、岡崎夢美、上白沢慧音、ぴったり4名。問題なし、レッツゴー。なんてできるほど、彼女の道程はイージーではなかった。
何より、気配が違った。夢美と慧音はおそらくいる。だが、他二人のそれは仗助と天子ではない。そこまでしか読み切れない。
挙句ジョースター邸の近くは、散乱し焼けた鉄の残骸に焼け野原。これで身構えない方がどうかしていた。
後ろの二人に臨戦の指示を振る。そして
パチュリー・ノーレッジはジョースター邸の扉を開いた。
敵か味方か、いざ。
「………」
開け放った扉、そこから確保された視界からは人っ子一人いない。
入るわよ、いつも以上の囁き声でパチュリー一向はジョースター邸へ入館を果たした。
辺りを三人で詮索するも、このフロントにはいない。次の部屋まで行くべきか。だが気配は決して遠くはないのだが。
「おひさ」
いたのか。
わざわざ天井に張り付いていたのだろうか。蝙蝠みたく。できればそうあってほしい。四つん這いで天井に張り付いていたなんて聞きたくない。
何にしても私の背後から聞き覚えのあり過ぎる声が、それも淀みなく、聞きたかった声が聞こえた。
何故か随分と懐かしい。
「おひさ」
言葉は抑えめに。余り喜ぶと笑われかねない。きっとこの吸血鬼もそうだと思っている。ならば、それに沿うのが通りだ。
見栄っ張り、だとは思う。
だけどお互いが同じように考え同じように見栄を張り挙句同じようにそれを理解しているのなら、それは十二分に仲睦まじいものだとパチュリーはいやレミリアはいいやパチェもレミィも思っている。
だから今は、これだけで良い。
何より、この不安を煽るような来訪をした友人の後始末が先だ。山ほど積もった話は後でもできる。
吉良はスタンドを出し、ぬえも霊力を収束させていた。巻き添えはごめんだ。
「パチェ~~~~~いやっほ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
ああ、こっちの巻き添えはもっとごめんだ。今にも私目掛けて突っ込んで来る。だが逃げ切れるかというと、まあ無理な話だし。諦めるしかない。
レミィの文字通りの横槍は期待できそうにない。落ち着き払った悠然とした佇まいは、私の反応を窺っているのか、そういう意味なのだろう。
「はぁ」
取りあえず両腕を広げて、突っ込んで来るバカを受け止めなければならない。頑健じゃないんだから、腰をイワしてしまわないか不安だ。
この体勢のまま日符でも切るか、とかぼんやり考えた。いや考えるだけの時間が流れている。
あれ、突っ込んで来ないの。
「パチェ!」
ニコニコと擬音が聞こえてきそうなハツラツとした笑顔だった。どうにもロクな時間を過ごしていないせいだろう。それだけで心に熱が籠もった。
いや、熱は私の手にも。岡崎夢美の熱だ。強すぎず弱すぎず、私の手をギュッと。
「『また』!!会えたね!!!」
律儀に覚えていたのか。でも鼻で笑う気にはなれない。
「そうね。『また』会うことができた…」
生長するのは速いモノだと薄ぼんやりと思いもする。
いつぞや『寂しい』と思ったことは未来永劫、黙秘することになりそうだ。だって目の前で甲斐甲斐しくも腕一つ、掌一つの温もりで満足しようとしている少女がいるのだから。
まぁいきなり飛び付いてくるかもしれないし、騙されないようにしよう。
だが褒めてはやろうか。
「やればできるじゃない。」
我ながら可愛くない言葉しかでない。見栄っ張りは中々治らない病気だ。
「まぁね♪パチェから『信頼』されているって思えばこそ、ね」
夢美はそれさえもひっくるめて嬉しそうに笑った。会えて嬉しいなんて、伝えたら何されるか分かったもんじゃないな、と意地悪に考えておいた。それを理由にまだ『嬉しい』は黙っておこう。
そしてここで悪い考えが過ってしまうのは私が日陰の少女だからだろう。
もし仮に、私が命を落としていれば、と思ってしまった。現に死にかけた、というか現在進行形で死へのカウントダウンが始まっている。
下手を打てば、夢美の信頼を裏切ってしまっていたかもしれない。そうなれば、彼女にどれほどの影を差してしまうのだろうか。
まだ死ねない。元より死ぬつもりでなどいやしない。それでも芽吹いた信頼が実を結ぶまでは、それを吹き込んだ者として責任があるだろう。
まったく、丸め込んだと思ったら却って心配する羽目になるなんて。
これじゃどっちが思う壺に嵌ったのかわかりゃしない。
背後が賑やかになってきた。
とっくにフロントを後にしている。仗助らはいない。それに放送までそう遠くない。そんな安寧の一時をただ私はくつろぎたかった。
くつろぎたかったのに。
パチュリーさんの言う通り私は『安心』していたんだ。彼女は『信頼』できる。それだと言うのに、クソッ。
最悪だ。
よりによって、よりによってか。どうして私は出会わなければならない。付き纏われなければならないんだ。忌まわしい顔見知りなんかに。
ここは杜王町ですらないというのに、どうしてこうも立て続けに出くわさなければならない。
「まあ座れよ。そこ、空いているだろう。」
二人きり
ああ、椅子なんて腐るほど転がっている。良いインテリアだな、このダイニングテーブルは。
じゃあどうしてその内の一つを指差されなきゃいけない。そして何故お前なんかと面と向かって座らなければならないんだ。
「悪いが、遠慮しておくよ」
御免被る。ここは食堂だろうが、こんな奴と向かい合わせだ。仮にどんな豪勢な料理を差し出されても受け付けないだろうさ。こんなところいてたまるか。
「動くな。」
「……」
「動けばお前を本にする。本にした上で中身を全部引っぺがして、火にくべる。嫌だろ。なら椅子に座るんだな」
「…」
聞く耳すら持たない。その一点で、コイツは誰よりもタチが悪い。舐めやがって。
「露伴さん。貴方は勘違いしていないか。私は、ゲームに乗っていないんだ。一言で言ってね」
「さん付けするな、馴れ馴れしい」
「何より私はこのゲームから逃れ得る鍵でもある。滅多なマネは君の首も締めるんだ、露伴」
「呼び捨てにするな、馴れ馴れしい」
ふっざけるなよ…!!私が下手に出てれば付けあがりやがって…!
しかも、馴れ馴れしいだと!?選りに選ってその言葉を吐くか!!お前と慣れ合うつもりなんざ毛筋一本分もありはしない、この吉良吉影にその言葉を吐くか!!!
「しかも、お前。今『優越感』に浸ったんじゃあないよな?ゲームを逃れる鍵って。自分のことが、この露伴より優れてると思えて仕方ないってワケかい。ふふふ」
挙句この言いがかりだ。眩暈がする。とても同じ人間とは思えない、狂っているんじゃあないのか。
「そんなつもりはない、酷い誤解だ。癪に障ったのなら訂正させてもらおう」
「『訂正』していいんだな?僕の手で?そうかそうかそうかそうか」
ダメだ。コイツは揚げ足を取る機械だ。やはり最悪。コイツに何を言っても、何一つ通じない…!
「まあ聞けよ。僕はね、ちょっとばかし反省していることがあるんだ。」
露伴は伏し目がちに語る。反省しているようで、あくまでそれっぽい動きだけ。そうとしか捉えきれないのは奴の人となりがなせる業だな。
「3回だ、これ何の数字かわかるかい?分かったらここから離れていいよ、嘘じゃあない。」
下らない。真面目に取り合ったところで、どうせ最後は嵌めるに決まっている。だが、答えなければ、そこからまた言いがかりを吹っ掛ける。
「君がこの会場で本にした回数か」
「あっはっは惜しいね惜しいねぇ。本にした回数は合っているんだ。でも少しばかり違うんだよ」
当たらずとも遠からずか。だが、問題なのはコイツがこれから私をいつ本にするかだけだ。どうにかして撒かないと、十中八九私は本にされるだけ。
「同じヒトだ。同じヒトを3回も本にしてしまった。」
意味が分からない。3回も本にしただと。
「僕はね。これでも自分のことはよ~く分かってる。ちょっとだけ短気で賢いんだ。そして『ヘブンズ・ドアー』を振るうことで齎す意味はもっと良く知っている。
コイツは何よりも不和を呼ぶスタンドだからな。知りたい放題、証拠も消せるし命令も……って、お前はもう知っているんだよなぁ吉良吉影」
本にする、その言葉だけで大人しくし過ぎたか。父親から、コイツの能力やらは全て把握している。どの道、シラを切った時点で本にされるだけだから、どうしようもない。
「さてそんな能力を同じヒトに3回も使った。リアリティは何よりも優先する、そんな僕でも3回はちょっとやり過ぎなんだよ。
覗くだけの価値はあってもそれを知るためだけにってのはちょっと頂けないよな」
「じゃあどうして、僕はそんな行動をしてしまったのかちょっと考えた。答えはすぐ出たさ。」
「康一君の死を知ったせいだ。彼を失って僕はとても怒っている。とっても『軽率』になれるんだ。僕を怒る彼がいない。彼に咎められるかもしれない、そんなブレーキはもうないからな。」
「そう、今の僕はとても『軽率』なんだよ。吉良吉影。お前のお蔭でな。」
「言いがかりだ!!私は康一を殺してなどいない。何も聞かされていないのか!?」
「聞かされたさ。だけど、それがお前を隠し事をしていない証左には繋がらない。確実なリアリティを以て知る。康一君の死を受け止める覚悟はできているからなッ!」
お前の覚悟なんざ知ったことかぁッ…!!
無茶苦茶だ。コイツは周りの人間をロクすっぽ信じちゃいないだけのクソッタレにしか私には見えない!!
「お前言ったよな。ゲームから逃れる鍵って。知ったこっちゃあない。このゲームは
岸部露伴がブッ壊す。僕の漫画がブッ壊す。そしてお前は僕のスタンドでブッ壊すとしよう。」
どう転ぼうと私を本にするつもりかコイツは…!クソッ!逃げられるならとっくに私は逃げている。
コイツのスタンドはパワーもないスピードだって大したことはない。
だがコイツが、コイツの筆の速度が、それだけは、どうしようもない…!!疾すぎる…!!!
「安心しろ、殺しはしない。まずお前がにとりと結託してなかったか、その情報を掴む。後は、運を天に任せておくんだな。」
スタンガンを爆弾に、投げ…!!
「遅すぎるんだよ、ノロマが」
光っぁ……くっそクソクソクソ!!クソッタレ共が!!!どうしてどうしてどうして!!!私だけが、こんな目に合い続けなければならないんだ!!!!
パラパラと本のページが翻る。その音は静かに吉良の鼓膜を叩いた。しかしおかしい。身体の自由が効いたのだ。そして気付いた。
「これで『4回目』だ。反省。してるんじゃなかったのか露伴先生。」
上白沢慧音が割って入っていた。身を挺して吉良の盾となっていた。小気味よいページの音が、インクで汚れた慧音の手を笑っているようだった。
「なっにぃッ…!いつから居た!!割り込んだだとォ!?在り得ない……どうして!?」
「妖獣……だからな、脚ぐらい・…・…速い、さ。」
「そんなんで納得いくか!!何で…どうしてだ…描く速度なら絶対に誰にだって負けない僕が……天狗だって出し抜いた僕の早業が……??」
露伴はそこで茫然としてしまっている。好機だ。
「吉良さん…・本当に申し訳ない!彼には……言い付・けておくから、もう・…少しだけ他所…で待って…てくれ。頼む!」
じっとりとした汗ばんだ服も気にしてもいない、それほど呼吸が荒い。余程急いで駆けつけて来たのだろう。
私は慧音さんに頷くと、去り際に一人でほくそ笑む。あのいけ好かない漫画家のプライドに実に気味の良い傷跡が付いたからだ。今までの屈辱が全て清々しさにひっくり返るほど。
その一方で疑問が残らないワケじゃなかった。露伴と同じような疑問を。
ふん、露伴は時間稼ぎという私の下らない浅知恵に負けただけ。諦めず会話を続けた私の執念が上回っただけだ。
謙虚に振舞っていれば良かっただけのこと。愚か者の末路には実に相応しい。私では犯しようのないしょうもないミスに足を掬われた。
自分の行動が過去に移っているのに、誰かに見られていることすら考えていなかった。
それに比べ慧音さんは身を挺す前提だ。しかも時間の無さを知っていたかのような徹底ぶり、覚悟が違った。それこそが何よりの敗因だ。
そしてやはり、慧音さんは素晴らしい。私の命を救ったと言っても過言じゃない。もしほんの数秒でも遅れたら、私は何もかも忘れてアイツの操り人形にされ兼ねなかった。
それに大声を上げたわけでもない。合図なんて到底できない。それどころか、ついさっき再会したばかりだというのに。即座に私の元へ駆けつけて来てくれた。
ふふ、私の命をより良いところへ運んでくれる、そんな運命を慧音さんは全うしてくれる。
そして、慧音さんの手をわざわざインクで汚した露伴。不可抗力だって?仕掛けたのは露伴だ。隙あらば奴も芥子すら残さず発破してやる。私の手で精算してやるさ。
七人もの人間と妖怪が集まった洋館で一人の妖怪は姿を潜め、二つの事の成り行きをただ静観していた。
僅かに舌を鳴らし怒りを露わにするも、誰も見届ける素振りなどあるはずもなく。
どちらにも付かず、どちらにも付けず、未だ保身のために。
レッサーパンダはただ見ている
二回目の放送まで、もうすぐのこと。ジョースター邸はかつてない活気を取り戻していた。
【昼】C-3 ジョースター邸
【レミリア・スカーレット@東方紅魔郷】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:「ピンクダークの少年」1部~3部全巻(サイン入り)@ジョジョ第4部、ウォークマン@現実、 鉄筋(残量90%)、マカロフ(4/8)@現実、予備弾倉×3、妖怪『からかさ小僧』風の傘@現地調達、 聖人の遺体(両目、心臓)@スティールボールラン、鉄パイプ@現実、 香霖堂や命蓮寺で回収した食糧品や物資(ブチャラティのものも回収)、基本支給品×4
[思考・状況]
基本行動方針:誇り高き吸血鬼としてこの殺し合いを打破する。
1:パチェと話す。
2:咲夜と美鈴の敵を絶対にとる。
3:ジョナサンと再会の約束。
4:
サンタナを倒す。
エシディシにも借りは返す。
5:ジョルノに会い、ブチャラティの死を伝える。
6:自分の部下や霊夢たち、及びジョナサンの仲間を捜す。
7:殺し合いに乗った参加者は倒す。危険と判断すれば完全に再起不能にする。
8:億泰との誓いを果たす。
9:ジョナサン、ディオ、ジョルノに興味。
10:ウォークマンの曲に興味、暇があれば聞いてみるかも。
[備考]
※参戦時期は東方心綺楼と東方輝針城の間です。
※時間軸のズレについて気付きました。
【パチュリー・ノーレッジ@東方紅魔郷】
[状態]:体力消費(小)、霊力消費(小)、
カーズの『死の結婚指輪』を心臓付近に埋め込まれる(2日目の深夜後に毒で死ぬ)、服の胸部分に穴
[装備]:
霧雨魔理沙の箒
[道具]:ティーセット、基本支給品×2(にとりの物)、考察メモ、
広瀬康一の生首
[思考・状況]
基本行動方針:紅魔館のみんなとバトルロワイヤルからの脱出、打破を目指す。
1:今は再会の喜びを噛み締める。
2:夢美や慧音と合流したら、仗助達にバレずに康一の頭を解剖する。
3:魔力が高い場所の中心地に行き、会場にある魔力の濃度を下げてみる。
4:第四回放送時までに考察を完了させ、カーズに会いに行く?
5:ぬえに対しちょっとした不信感。
6:紅魔館のみんなとの再会を目指す。
7:妹紅への警戒。彼女については報告する。
[備考]
※喘息の状態はいつもどおりです。
※他人の嘘を見抜けますが、ぬえに対しては効きません。
※「東方心綺楼」は八雲紫が作ったと考えています。
※以下の仮説を立てました。
- 荒木と太田、もしくはそのどちらかは「東方心綺楼」を販売するに当たって八雲紫が用意したダミーである。
- 荒木と太田、もしくはそのどちらかは「東方心綺楼」の信者達の信仰によって生まれた神である。
- 荒木と太田、もしくはそのどちらかは幻想郷の全知全能の神として信仰を受けている。
- 荒木と太田、もしくはそのどちらかの能力は「幻想郷の住人を争わせる程度の能力」である。
- 荒木と太田、もしくはそのどちらかは「幻想郷の住人全ての能力」を使うことができる。
- 荒木と太田、もしくはそのどちらかの本当の名前はZUNである。
- 「東方心綺楼」の他にスタンド使いの闘いを描いた作品がある。
- ラスボスは可能性世界の岡崎夢美である。
※
藤原妹紅が「メタリカ」のDISCで能力を得たと思っています。
【上白沢慧音@東方永夜抄】
[状態]:健康、ワーハクタク
[装備]:なし
[道具]:ハンドメガホン、不明支給品(ジョジョor東方)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:悲しき歴史を紡がせぬ為、殺し合いを止める。
1:『幻想郷の全ての知識』を以て可能な限り争いを未然に防ぐ。
2:他のメンバーとの合流。
3:殺し合いに乗っている人物は止める。
4:出来れば早く妹紅と合流したい。
5:
姫海棠はたての『教育』は露伴に任せる。
[備考]
※参戦時期は少なくとも弾幕アマノジャク10日目以降です。
※ワーハクタク化しています。
※能力の制限に関しては不明です。
※時間軸のズレについて気付きました。
【岡崎夢美@東方夢時空】
[状態]:健康、パチェが不安
[装備]:スタンドDISC『女教皇(ハイプリエステス)』、火炎放射器@現実
[道具]:基本支給品、河童の工具@現地調達、レミリアの血が入ったペットボトル、不明支給品0~1(現実出典・確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:『素敵』ではないバトルロワイヤルを打破し、自分の世界に帰ったらミミちゃんによる鉄槌を下す。
パチュリーを自分の世界へお持ち帰りする。
1:パチェとお話♪
2:他のメンバーとの合流。
3:能力制限と爆弾の解除方法、会場からの脱出の方法、外部と連絡を取る方法を探す。
4:パチュリーが困った時は私がフォローしたげる♪ はたてや紫にも一応警戒しとこう。
5:パチュリーから魔法を教わり、魔法を習得したい。
6:霧雨魔理沙に会ってみたいわね。
[備考]
※PCで見た霧雨魔理沙の姿に少し興味はありますが、違和感を持っています。
※
宇佐見蓮子、
マエリベリー・ハーンとの面識はあるかもしれません。
※「東方心綺楼」の魔理沙ルートをクリアしました。
※「東方心綺楼」における魔理沙の箒攻撃を覚えました(実際に出来るかは不明)。
※時間軸のズレについて気付きました。
【岸辺露伴@第4部 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:背中に唾液での溶解痕あり、プライドに傷
[装備]:マジックポーション×1、高性能タブレットPC、マンガ道具一式、モバイルスキャナー
[道具]:基本支給品、東方幻想賛歌@現地調達(第1話原稿)
[思考・状況]
基本行動方針:色々な参加者を見てマンガを完成させ、ついでに主催者を打倒する。
1:ふざけるなよ。速筆の僕が…どうして遅れを取った…?
2:『東方幻想賛歌』第2話のネームはどうしようか。
3:仗助は一発殴ってやらなければ気が済まない。
4:主催者(特に荒木)に警戒。
5:
霍青娥を探しだして倒し、蓮子を救出する。
6:射命丸に奇妙な共感。
7:ウェス・ブルーマリンを警戒。
[備考]
※参戦時期は吉良吉影を一度取り逃がした後です。
※ヘブンズ・ドアーは相手を本にしている時の持続力が低下し、命令の書き込みにより多くのスタンドパワーを使用するようになっています。
※文、ジョニィから呼び出された場所と時代、および参加者の情報を得ています。
※支給品(現実)の有無は後にお任せします。
※
射命丸文の洗脳が解けている事にはまだ気付いていません。しかしいつ違和感を覚えてもおかしくない状況ではあります。
※参加者は幻想郷の者とジョースター家に縁のある者で構成されていると考えています。
※ヘブンズ・ドアーでゲーム開始後のはたての記憶や、幻想郷にまつわる歴史、幻想郷の住民の容姿と特徴を読みました。
※主催者によってマンガをメールで発信出来る支給品を与えられました。操作は簡単に聞いています。
※ヘブンズ・ドアーは再生能力者相手には、数秒しか効果が持続しません。
※時間軸のズレについて気付きました。
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:体力消費(中)、喉に裂傷、鉄分不足、濡れている、ストレスすっきり
[装備]:スタンガン
[道具]:ココジャンボ@ジョジョ第5部、ハスの葉、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:平穏に生き延びてみせる。
1:露伴から離れる。
2:東方仗助とはとりあえず休戦?
3:
空条承太郎らとの接触は避ける。どこかで勝手に死んでくれれば嬉しいんだが…
4:慧音さんの手が美しい。いつか必ず手に入れたい。抑え切れなくなるかもしれない。
[備考]
※参戦時期は「猫は吉良吉影が好き」終了後、川尻浩作の姿です。
※慧音が掲げる対主催の方針に建前では同調していますが、主催者に歯向かえるかどうかも解らないので内心全く期待していません。
ですが、主催を倒せる見込みがあれば本格的に対主催に回ってもいいかもしれないとは一応思っています。
※能力の制限に関しては今のところ不明です。
※パチュリーにはストレスを感じていません。
※藤原妹紅が「メタリカ」のDISCで能力を得たと思っています。
【
封獣ぬえ@東方星蓮船】
[状態]:体力消費(小)、精神疲労(中)、喉に裂傷、濡れている、吉良を殺すという断固たる決意
[装備]:スタンドDISC「メタリカ」@ジョジョ第5部
[道具]:ハスの葉、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:聖を守りたいけど、自分も死にたくない。
1:隙を見て吉良を暗殺したいが、パチュリーがいよいよ邪魔になってきた。ていうかこの女、顔が死にかけてない?
2:皆を裏切って自分だけ生き残る?
3:この機会に神霊廟の奴らを直接始末する…?
[備考]
※「メタリカ」の砂鉄による迷彩を使えるようになりましたが、やたら疲れます。
※能力の制限に関しては今のところ不明です。
※メスから変化させたリモコンスイッチ(偽)はにとりの爆発と共に消滅しました。 本物のリモコンスイッチは廃ホテルの近くの茂みに捨てられています。
最終更新:2017年05月23日 02:03