…気がついたら、朝でした。
朝の眩しさも、昨日の失敗を消してくれませんでした。
風邪気味だったのはもう治っていたのに、
ベッドから出ようとしても、体が動いてくれません…。
朝の眩しさも、昨日の失敗を消してくれませんでした。
風邪気味だったのはもう治っていたのに、
ベッドから出ようとしても、体が動いてくれません…。
(どうしたの?起きなきゃ…)
『私』がまた、言ってきました。
(学校に行く準備しなきゃ…いじめられにね)
「……」
(ほらほら、どうしてベッドから出ないの?
早く出ないと、今度はおねしょしてベッドから出られないのかな?
なんて思われちゃうかも…)
早く出ないと、今度はおねしょしてベッドから出られないのかな?
なんて思われちゃうかも…)
「うぅ…」
ノックが聞こえました。
返事をすると、お姉ちゃんが入ってきました。
「ゆーちゃん。朝ごはんだよ」
「……いらない」
私は布団から顔も出さないで、答えました。
「具合悪いの…?風邪ひどくなった?」
「ううん、風邪はもう治った…だけど…体が動かないの」
「んん…」
「学校…休みたい…」
「………」
お姉ちゃんは少し考え込んで…、
「…そうだね。まだ治りがけだし、無理しない方がいいよ。
学校の方には伝えとくから、今日はゆっくり休んで」
学校の方には伝えとくから、今日はゆっくり休んで」
そう言って、出て行きました。
(そうだね。学校に行かなきゃいじめられないね)
お姉ちゃんが出て行くなり、『私』が続けます。
(みんな心配するだろうけどね。お姉ちゃんも、おじさんも、
ゆいお姉ちゃんも、みなみちゃんも…
…あ、みなみちゃんが心配するわけないか。もう私のこと嫌いだもんね)
ゆいお姉ちゃんも、みなみちゃんも…
…あ、みなみちゃんが心配するわけないか。もう私のこと嫌いだもんね)
「……くすん…」
………
ベッドの中でだらだらしているうちに、学校が始まる時間になりました。
(今頃、みんな私のこと、話してるよ。
きっとずる休みだって。おもらししたのが恥ずかしくて来ないんだって。
ずるい子だって、みんな怒ってるだろうね…。
それとも、きたないから来なくてよかったって喜んでるかな)
きっとずる休みだって。おもらししたのが恥ずかしくて来ないんだって。
ずるい子だって、みんな怒ってるだろうね…。
それとも、きたないから来なくてよかったって喜んでるかな)
『私』は、止まりません…。
「ううぅ……」
きゅー…。
おなかが鳴りました…。
こんな状態でも、普通におなかは空いていました。
朝ごはんはいらないと言っちゃったので、お昼まで我慢です…。
ずる休みの罰だって自分に言い聞かせてた、そのとき…。
こんな状態でも、普通におなかは空いていました。
朝ごはんはいらないと言っちゃったので、お昼まで我慢です…。
ずる休みの罰だって自分に言い聞かせてた、そのとき…。
こんこん。
ノックの音が聞こえて…。
返事をすると、朝ごはんのお膳を持ったおじさんが入ってきました。
返事をすると、朝ごはんのお膳を持ったおじさんが入ってきました。
「こなたに頼まれてね。落ち着いた頃にご飯持ってってあげてって。
食べたい気分じゃないかもしれないけど…まずは食べるが基本です、だからね」
食べたい気分じゃないかもしれないけど…まずは食べるが基本です、だからね」
罪悪感で胸がちくちく痛んだけど…しっかり全部食べました。
ありがとう…おじさん、お姉ちゃん…。
ありがとう…おじさん、お姉ちゃん…。
食べたら、少しだけ気分が前向きになって…。
嫌いだったら…おしっこの後始末をしてくれたり、
鞄を持ってきてくれたりしないんじゃないかな?
みなみちゃんはまだ私のこと、見捨てないでいてくれてるんじゃないかな?
鞄を持ってきてくれたりしないんじゃないかな?
みなみちゃんはまだ私のこと、見捨てないでいてくれてるんじゃないかな?
そんな、小さな希望が湧いてきました。
(そんなの、保健委員の仕事だからやっただけだよ。
もし、鞄を持ってきてくれた時までは見捨ててなかったとしても、
追い返されたことでもういいやってなったんじゃない?)
もし、鞄を持ってきてくれた時までは見捨ててなかったとしても、
追い返されたことでもういいやってなったんじゃない?)
すかさず、『私』が言ってきました…。
「そうかもしれないけど…会って話してみないと分からないよ」
(会って、冷たくされたらどうするの?立ち直れるの?)
「うぅ……」
『私』は、私の中にいっぱいある弱さを簡単に引っぱり出してきて…、
私はすぐ、元の弱気に戻ってしまいました。
ただ…このままじゃだめ、っていう気持ちも、少しだけ残りました。
私はすぐ、元の弱気に戻ってしまいました。
ただ…このままじゃだめ、っていう気持ちも、少しだけ残りました。
………
お昼は、ちゃんとお部屋から出て、おじさんと一緒に食べました。
お昼ごはんを食べたら、また少し前向きになれて…。
このままじゃだめ、って気持ちがもう少し強くなりました。
お昼ごはんを食べたら、また少し前向きになれて…。
このままじゃだめ、って気持ちがもう少し強くなりました。
みなみちゃんに会って、もし冷たくされたって、
このまま一人でおびえてるよりはましだよ。
それに…いっぱい迷惑かけたこと。保健室でひどいこと言ったこと。
このまま謝らないでいるなんて…絶対にだめだよ。
このまま一人でおびえてるよりはましだよ。
それに…いっぱい迷惑かけたこと。保健室でひどいこと言ったこと。
このまま謝らないでいるなんて…絶対にだめだよ。
そう、思い始めました。
『私』も何も言ってこなくて、弱気に戻らないでいられました。
『私』も何も言ってこなくて、弱気に戻らないでいられました。
………
夕方になって、お姉ちゃんが帰ってきました。
お姉ちゃんはすぐに私の部屋に来ました。
私はパジャマのままだったけど、もうベッドに寝てはいませんでした。
お姉ちゃんはすぐに私の部屋に来ました。
私はパジャマのままだったけど、もうベッドに寝てはいませんでした。
「ゆーちゃん、気分よくなった?」
「うん…今朝よりはずっとよくなったよ」
「よかった…。それじゃ、聞きたいことがあるんだけど…ただ…」
「ただ?」
「昨日の…『あのこと』なんだよね。まだ、思い出すの辛いかな?」
「………」
今朝の私なら、今のお姉ちゃんの言葉だけでまた泣きそうになったかもしれません。
でも、今は少しだけ弱気から抜け出せていたから…、
でも、今は少しだけ弱気から抜け出せていたから…、
「大丈夫…聞いていいよ」
少し時間がかかったけど、そう言うことができました。
「…実はね。今日、みなみちゃんが来て…。
自分がゆーちゃんに『あのこと』させた、って言うんだよ」
自分がゆーちゃんに『あのこと』させた、って言うんだよ」
「…え」
「それも『ゆーちゃんを助けてあげられなかった自分の責任だ』って意味じゃなく、
言葉通り『自分が手を出したせいでしちゃった』んだって。
自分が何もしなかったら、ゆーちゃんは『あのこと』しないですんだ、って…」
言葉通り『自分が手を出したせいでしちゃった』んだって。
自分が何もしなかったら、ゆーちゃんは『あのこと』しないですんだ、って…」
「………」
まったく予想しなかった内容に、言葉が出ませんでした。
「聞きたいのはそこで…みなみちゃんが言ってるのって、ほんとなの?
わざとじゃないにしても、みなみちゃんがうっかりやったことが
『あのこと』の引き金になってたりするの?」
わざとじゃないにしても、みなみちゃんがうっかりやったことが
『あのこと』の引き金になってたりするの?」
「そんな!そんなことないよ!」
みなみちゃんがなぜそんなことを言い出したのか、分かりません…。
「念のため、ほんとに念のため、聞くよ。
私が怒ってみなみちゃんに何かすると思って、かばってたりしないね?」
私が怒ってみなみちゃんに何かすると思って、かばってたりしないね?」
「かばってなんかない。みなみちゃんは何も関係ないよ…」
「うーん…じゃあみなみちゃんはどうしてあんなことを…」
お姉ちゃんは考え込んでしまい…私も考え込みました。
記憶の奥底の、永遠に触れたくなかった部分に手を伸ばして…
その中からさらに、みなみちゃんがそばにいた部分だけ拾い出します…。
記憶の奥底の、永遠に触れたくなかった部分に手を伸ばして…
その中からさらに、みなみちゃんがそばにいた部分だけ拾い出します…。
休み時間のことは…明らかに無関係です。
時間は一気に飛んで…もう、少しもらしちゃった後。
みなみちゃんが先生に言って私のところに来て…。
みなみちゃんが私を連れて行こうとして…。
時間は一気に飛んで…もう、少しもらしちゃった後。
みなみちゃんが先生に言って私のところに来て…。
みなみちゃんが私を連れて行こうとして…。
「……!」
あのとき口走った言葉を思い出して、繋げてみて…はっとしました。
『だめなの…動けないの…
だめなんだよぉ…
やめて…動いたら…おしっこがぁ!』
だめなんだよぉ…
やめて…動いたら…おしっこがぁ!』
私が言ったのは『動いたらもらしたおしっこが見られちゃう』という意味でした。
でも…断片だけ聞けば『動いたらおしっこがもれちゃう』という意味にも取れます。
でも…断片だけ聞けば『動いたらおしっこがもれちゃう』という意味にも取れます。
私はあのとき、トイレに行くために尿意が落ち着くのを待っていて、
それを自分が無理に動かそうとしたせいでもらしてしまった。
みなみちゃんはきっと、そう誤解しているのです…。
それを自分が無理に動かそうとしたせいでもらしてしまった。
みなみちゃんはきっと、そう誤解しているのです…。
「…ゆーちゃん」
私がそれに思い至ったのとほとんど同時に、お姉ちゃんが口を開きました。
「みなみちゃんのせいじゃないってこと、早く伝えた方がいいと思う…」
「うん」
「…それでね、私から伝えるより…できれば、ゆーちゃんが直接伝えた方が
いいと思うんだけど…どうかな…?」
いいと思うんだけど…どうかな…?」
「…うん。私が自分で伝える。明日は、学校に行くよ」
不安なことはたくさんあったけど、私ははっきりとそう言いました。
「おぉ、よかったぁ…」
そう言ったお姉ちゃんの体が、少しふらついた気がしました。
「お姉ちゃん?」
「ん…?」
よく見ると、お姉ちゃんは顔が少し赤くて、呼吸も乱れていました。
「お姉ちゃん、具合悪いんじゃ…」
「ん…昼頃からちょっと風邪気味かなって感じしてた…。
もしかしたら、昨日のゆーちゃんのがうつってたのかもね…。
今日は…さすがに早く寝よっかな」
もしかしたら、昨日のゆーちゃんのがうつってたのかもね…。
今日は…さすがに早く寝よっかな」
…その後もお姉ちゃんの具合はよくならず、ご飯もあまり食べられない様子でした。
やがて寝る時間になって、明日に備えてベッドに入りました。
でも、お姉ちゃんのことも、明日のことも心配で…なかなか寝付けませんでした。
やがて寝る時間になって、明日に備えてベッドに入りました。
でも、お姉ちゃんのことも、明日のことも心配で…なかなか寝付けませんでした。