音の強さであり、物理量である。
一般的な会話の中では「音の強さ」(本来は物理量)と言っても、「
音の大きさ」(
心理量)を意味している場合もあり、混同される。
音楽では大小表現とは言わず、強弱表現という言葉が使われる。
音の大きさは心理量であり、音強とは違うものである。
<物理学>
物理学的に音の強さ(音強)は、音波の振幅の大きさである。
ヒトの耳に聞こえる音の大きさは、必ずしも音の強さと一致しない。
等ラウドネス曲線の如くに、音の周波数によって感度が異なる。
単位は
デシベル(dB)で表す。
(ベル(B)では単位が大きくて不便なので、10分の1という意味の接頭語のデシ(d)を付けた、dBを用いるのが一般的)
ヒトの聴覚は音の大小を対数尺で知覚し、dBも対数尺であるが、dBの値はヒトの感覚と一致しない。
単位は
ホン(phon)で表す。
ヒトの聴覚の特性を加味したものである。
「強さ」は物理量(測定器で測定したままの強弱)であり、「大きさ」は心理量(ヒトが感じた大小)である。
音強と言った場合、前者の「音の強さ」を指すのが正しい。
<西洋音楽>
西洋音楽にあっては、基本的に、物理学のような絶対的な強さ(dBなどの数値)で示されることはない。
フォルテ、ピアノと言った、比較的曖昧な記号によって示される。
西洋音楽では、音の大きさによる表現を、ダイナミクス(ディナーミク,強弱表現)と呼ぶ。
パイプオルガンのようにあまり細かな強弱表現を行うのが苦手な楽器も存在する。
<電子音楽>
電子音楽では音量(ボリューム)とベロシティ(ベロシティー)に大きく分けられる。
音量とは、純粋に振動の大きさのことであり、音量を変えるとはボリュームを回すことである。
ベロシティは、速さと訳されることもあるが、演奏する強さのパラメータである。
主要なパラメータとして、ベロシティやボリューム以外に、エクスプレッションというものもある。
(一般的なMIDI規格に対応した機材の範囲での説明)
主にノートオン・ベロシティ(音を出した瞬間のベロシティ)の意味で使われる。
一音一音の音の強さを相対的な値で示すパラメータであり、あくまで音を出した瞬間の強さである。
1~127の値を取る。値が大きいほど音は強くなる。発音中に強弱が変更できず音が減衰してゆく楽器の場合は、基本的に発音後は自動的に音は弱くなってゆく。
実際の楽器では、弱く演奏した時と強く演奏した時とで音色に変化が生じるのが普通であり、これをエミュレートするために、ベロシティの値が大きいほどLPF(ローパスフィルタ)のカットオフフリケンシーを上げるなどの設定変更や、PCM音源であればROMの波形を切り替えるなどの操作を、自動的に行うことによって、弱奏では倍音成分の少ない音色に、強奏では倍音成分が多い音色に変更されることもある。
一つ一つのチャンネル(パート)ごとの音量を決定するパラメータで、コントロールナンバー7である。
0~127の値を取る。初期値は通常100。0はミュートで、値が大きいほど音量は大きくなる。
通常、F.I.(フェード・イン)やF.O.(フェード・アウト)以外では、連続的に値を変更するようなことを普通は行わない。
ミキサーのチャンネルごとのフェーダーの役割をするパラメータである。
一音一音の連続的な音量の変化を決定するパラメータで、コントロールナンバー11である。
0~127の値を取る。初期値は通常127。0はミュートで、値が大きいほど音量は大きくなる。
例えば、管楽器のように、発音中に強弱を変更できる楽器などの表現をするために値を変更するパラメータである。
ボリュームとは違って、連続的な値の変更がよく行われ、チャンネル(パート)ごとの音量を決定すると言った意味合いでは使用しない。
管楽器奏者の息の強さの役割をするパラメータである。
ベロシティとは違って、同じチャンネルで和音を演奏した場合、一部の音だけに音量の変化を起こすことはできず、和音を構成する全ての音が同じように音量変化を起こしてしまう。
和音を構成する音の内の一部の音だけの音量変化をさせたい場合は、基本的には、別のチャンネルに構成音を分割しておく必要がある。
初期値が127のため、ベロシティで決定される発音時の音の強さよりも発音中に強くしたい場合は、予めエクスプレッションの値を小さく設定しておく必要がある。
最終更新:2009年08月10日 00:16