● 恋愛シミュレーションはつくりません! “女性に媚びない”『BASARA』が売れたワケ 戦国武将同士が戦うアクションゲームでありながら、『歴女ブームの火付け役』となり、 多くの女性に支持されている『戦国BASARA』シリーズ。 男性向け作品がここまで女性向けファンの獲得に成功した理由とは何なのか? プロデューサー小林裕幸氏に聞いた。
BASARAシリーズは、スピンオフ的な作品を交えながら毎年新作を出しており、 今年7月に発売した『戦国BASARA3』で6作目になります。 ユーザーの男女比については、1作目の『戦国BASARA』(05年)では8:2でした。 そもそもゲームユーザーは圧倒的に男性のほうが多いので、 女性ユーザーは2割もいれば「多い」と評されるんですよ。 それが翌年の『戦国BASARA2』では、購買者の母数が7:3になり、 さらに翌々年の『戦国BASARA2英雄外伝(HEROES)』では6:4にまで膨れ上がった。 『戦国BASARA3』は未調査ですが、肌感覚的に6:4のままではないかと。
「歴所ブームの火付け役」とも言われていることから、 「BASARAは女性ユーザーの方が多い」と誤解されたり、 メディアで取り上げられる際に「乙女ゲーム」と称されることも少なくないのですが、 決してそうではありません。 確かにイベントなどに来場するのは9割9分女性ですけど(笑)、女性だけの購入層では、 1作で何十万本も売り上げることは不可能。 うまくいっても10万本が関の山でしょう。 乙女ゲームはヒット作といわれるものでも、売り上げが10万本台に届くことは滅多にない。 したがって、「女性の層が厚い普通のゲーム」というのが、正しい解釈だと思います。
もともと1作目を制作した時も、女性ウケはまったく狙っていませんでした。 ただ、『ONEPIECE』(集英社)などの少年マンガのように、楽しむ人を制限しない作品にしたかった。 ボタンひとつで簡単にクリアできるように設計したのはそのためです。 操作が複雑だと、女性・子ども・お年寄りの三者は「難しくてできない」と投げてしまう可能性が高い。 特に女性は操作性やアクションよりも、キャラやストーリーを重視する傾向があるため、 その2つの魅力を難なく堪能できるように工夫したんです。
ゲーム内で、伊達政宗が「Let’s Party!!」「Coolにいこうぜ」など英語交じりのセリフを叫んだり、 真田幸村がライダースジャケットを羽織っていたりと、武将を現代的にアレンジしているのも、 より幅広い層に楽しんでもらうための戦略です。 実在した武将を少年マンガのキャラのように構成し直すことで、たとえ伊達政宗を知らない人でも、 気軽に楽しんでもらえるのではないかと。 ゲーム自体のシステムはシリーズを通して同じでも、史実通りの武将を登場させていたら、 おそらく売れなかったと思います。 ただ、同時に「タイトルに『戦国』という冠が付いているのだから、 史実から完全に乖離した武将にしてはいけない」ということも心がけています。 “BASARAの伊達政宗”が支持されているのは、“史実の伊達政宗”の要素が残っているからであって、 そうでなかったら人気を獲得できなかったでしょう。 現にオリジナルキャラよりも、実在した武将キャラのほうが、圧倒的な人気を誇っているんですよ。 一度作ったキャラは、シリーズを通して描き続ける方針を取っては居るんですが、 ストーリーの都合上、出せなくなることもあって…。 そのキャラが好きな女性ファンから、イベントの時に直接クレームをもらうことも多々あります(笑)。
BASARAシリーズは女性ウケを狙っていないからこそ、 多くの女性ユーザーに愛されているのではないかと思います。 女性は“追いかけること”が好きなので、「貴女のために」という姿勢を見せると、 逆に逃げてしまうんですよ。 よくスタッフから「もっと女性ウケを狙った要素を取り入れましょう」と提案されるのですが、 それは絶対にしない。 今後もBASARAシリーズは、女性に媚びませんよ。(談) 小林裕幸 1972年、愛知県生まれ。 95年にカプコン入社後、『バイオハザード』などの開発に参加。 99年よりプロデューサーとして、『バイオハザード』シリーズ、『デビル メイ クライ』シリーズ、 『戦国BASARA』シリーズなどの作品制作に携わる。 また、現在公開中の映画『バイオハザードⅣ アフターライブ』にも アソシエイト・プロデューサーとしてかかわっている。
*1 ユーザー内の女性層が事実上全滅している、STGや対戦格闘ゲームのプロデューサーには即座にこの数値を出せないと思われる。
*2 確かに、FF13やポケモンBWやディシディアやキャサリン等、他ゲームのアンチWikiは存在するが、それら超大作とはBは規模からして違う。加えて、それら作品のアンチはあくまで旧作の支持者が中心である。要は内部同士の争いなのであって、周囲にまで影響を及ぼしてはいない。Bを巡る争いは、Bファンと彼らに迷惑をかけられたものとの争いの面が強く、内部と外部との争いという形をとっており、前者とは争いの持つ意味が全く異なる。逆に、規模的にはBより劣る同人ゲームでありながら、膨大な数の信者を擁する東方ProjectにもアンチWikiが存在するが、こちらは厨の言動や行動こそBに匹敵するかそれ以上の凶暴さだが、製作者に関しては比較的マシである。
*3 無双シリーズにはお市や貂蝉がおり、同じカプコンのゲームでも春麗やモリガンがいることを想起されたい。