飽きは、本当におそろしいものだ。
それは熱中すればするほど顕著になる。
熱くなり、我に返ると、もう手のひらには空虚しか残らない。

モンスターボールを男は楽しそうに宙に放った。
くるくると回りながら落ちてきたそれを片手で受け止める。
男はかつてチャンピオンと呼ばれていた。
かつて、である。
今からして思えば、何故あれほどポケモンバトルに明け暮れていたのか。
何故あれほど強いポケモンばかりに執着を抱いていたのか、思い出せない。
失念してしまったように、男からポケモンバトルに対する情熱がすっぽり抜け落ちていた。
後に残ったのはバトルで懐に溜まり込んだ膨大な額の金。

男はそれを、新たな趣味へ注ぎ込むことに決めた。

一人で住むには広すぎるほどの邸宅。
——その母屋から、ボールを握りながら離れへ向かう。
複雑な形状の錠を開け、分厚く作られた壁にはめ込まれた大きな扉をくぐり抜ける。
男はある目的のためだけに作られたタイル張りの部屋に足を踏み入れた。
しっかりと戸締まりをして、男はボールを、今度こそ床に投げた。
赤と白が上下に割れて白い光が飛び出す。
光は男と比較してかなり大きな姿のシルエットを作った。

「カイリュー」

やがて眩しい光が引いて、その後に一匹のポケモンが現れた。
長い尻尾を一振りし、黒目がちなまるい目を瞬かせて、目の前に居る男をじっと見つめていた。
男は、その優しげな風貌のポケモンのつるんとした肌に手を触れる。
カイリュー。
海の化身とも呼ばれ、人間に匹敵する知能を持つドラゴンポケモンは人なつこそうな目で男のことを見下ろしている。
いや、観察している。
この若いカイリューはもともと男の手持ちではない——男が「買った」ものだ。
条件のいいポケモンとそれに見合うポケモンを交換する、それが成り立つのだから、ポケモンの売買も違法ではない。
ただ珍しい故に高かったが、と男は回想し、懐から大きく歪曲したマゴのみを取り出した。

「食べる?腹が空いてるだろ」

カイリューはかがんで男の手元に鼻を寄せる。
甘い香りに促されてそれを食べ始めた。
何と不用心なことだろう。
もっとも、それは本当にただのマゴのみだが、もしこれに薬を仕込んでいても同じように平らげてしまうのだろうか。
男はそう思い、カイリューがすっかりきのみを食べ終えるのを見届けた。

目の前で租借をしているカイリューの額から伸びる触覚に男は手を伸ばし、きゅっと握りしめた。
きゅうっ、と驚いたような声を上げた。
男はそれだけで止めずに触覚を扱く。
カイリューの身体は敏感な箇所を触れられて硬直している。
たじろいではいたが、恐らくこういう感覚は初めてなのだろう、はねつけることもなくただ男を上目遣いに見るだけだ。
息が荒くなってきたことも頬の血色が良くなったこともカイリューは気付いていない。
この感覚が快楽であるということも。

「ほら、お出ましだよ」

カイリューの下腹部、蛇腹に沿って走った横割れから、肉棒が顔を出していた。
当人は混乱しているのか、もしくは自分自身の身体の異常が分かっていないのか、困惑的な視線を男に送るばかりだった。

「何?もしかして自分の性器も見るの初めて?」

男は声をかけてみた。
だがカイリューはやはり言っている意味を理解できていないようで、どくどくと脈打つ自分の股間を見ている。

「ひぅっ?!」

試しに肉棒に触ってみると、カイリューは身体をびくっと奮わせ、益々顔を紅潮させた。
邪気のない瞳で不安そうに男を見つめているカイリューとは正反対に、その息子は快感を欲してぴくぴくと震えている。
男は笑い声を立てた。
性交すらしたことがないらしい、このまだ幼げなカイリューは。
それどころか性的快感だって今知ったような顔をしてるよ。
——ま、すぐに堕ちちゃ面白くないけどね。



男はカイリューから少し離れ、洋服のポケットから何かを取り出した。
細めの針金を捻ったような奇妙な金属と、軍手、待機状態の小さなモンスターボールだ。
モンスターボールの中心にある小さな白いボタンを押すとシュル、と音がして元の大きさになる。
ボールを床に落とすと同時、カイリューの時と同様に光が飛び出した。
しかしその大きさはカイリューに比べるとだいぶ小さい。
今度現れたのは男の手持ちであるリザードンだった。
昔はこのリザードンでチャンピオンの座を一度も譲らなかったものだったが、もう過去の話。
今のリザードンはもう男の手持ちの中で最強のポケモン、ではない。
カイリューを調教するための一つの手段だ。
カイリューは、リザードンがボールから出てきてから急に興奮し出した。
それもそのはず、リザードンは今発情期なのである。
人間には分からないものの雌の匂い、雄を誘う匂いがしている。
「カイリュー、やりたい?」
今度は「やる」という言葉の意味を本能で理解したか首を縦に振る。
発情期の雌を前にしても理性を保つとはやはり大した物だと、男はその目の前に金属の棒を突き出した。
「これが我慢できたらやらせてやるよ」
リザードン、と名前を呼ぶと、夢うつつの表情で振り返った。こちらもやりたくて堪らないようだ。
片手に軍手をはめる。
太い尻尾を持ち上げて、その先端に赤く燃える炎に金属の棒を晒した。
金属は熱されてやがて赤くになる。それがさらに輝く加熱して、男は金属の棒を火から下ろした。
動くなよ、と囁いて——男はおもむろにカイリューの太ももに焼きごてを押し当てた。
「——きゅううううううッ!?」
細い悲鳴を上げた。無理もない。肌を灼いているのだから。
だがカイリューはポケモン、それもドラゴンタイプだ。構造上、炎には強い。
分厚い表皮に精神力、人間にしてみれば拷問でも、彼にとってはそこまでのものではない。
しかし、とはいえ、焦げ目がつくだけの高温の金属を押し付けられ、時折身体が反射的にびくりとする。
苦痛に耐えているのか男には心なしか震えているようにも見えた。
それでも、未調教の人間相手なら精神が揺らぐほどの行為にも耐えるとは、やはりカイリューを完全に調教するのは、自分から絶頂を求めて尻尾を振るようになるまでには時間がかかりそうだ。
じゅうう、と白煙が立ち上り、焦げた匂いに鼻が慣れたところで、男は金具をカイリューから離した。
うす茶色をベースに、黒いモンスターボールの焼き印が浮かぶ。

「従属——いや、隷属の印だよ。消えなくていいでしょ?」

自分よりずっと上にあるカイリューの目は、先ほどと比べて怯えたような影をちらつかせている。
いきなり皮膚を灼かれたのだから当然だか、しかし——
——股間から首をもたげた肉棒は、まだまだ役に立ちそうだった。
こんな責め苦にも萎えないとは、と男は半ば感心する。

「お前も結構スキモノか?」
「……ひぅ、ぅ」

辱めの言葉すら耳に入らぬように、カイリューはリザードンのほうをじっと見ていた。
条件は満たしたのだから早く犯したいというふうに、尻尾でタイルの床を叩いている。
男が目の前からどけばすぐにでもリザードンに襲いかかるだろう。
いやリザードンもその気は満々だから押し倒すというほうが適切か。
男は皮肉っぽく笑って焼きごてを床に放り投げた。

「いいか。リザードン、相手してやって。そいつの最初で最後の普通の交尾だから」

男はきびすを返し、広い部屋の隅においてあった椅子に腰掛けた。
リザードンがカイリューにまたがるかとも考えたが案の定、カイリューがリザードンの身体を突き倒す。
無防備になったリザードンの身体にカイリューが覆いかぶさった。
すっかり固く大きくなった肉棒は人間の腕ほど太い。それはリザードンの秘所には太すぎたが、何せ卵はそこからひり出すのだから問題はないはずだ。
カイリューはその勃った肉棒を狭い秘所にあてがい。
一気にリザードンの雌を貫いた。

「あ゛っあああぁぁッ!!」

どちらが叫んだかは分からない。童貞を喪失して心を手放してしまいそうなほどの快感に襲われたカイリューか、太い雄をいきなり挿入されたリザードンか、ともかく交尾が始まる。
頭がまっしろになって、カイリューは身体を突き抜ける感覚にしびれた。
滴るほどの先走りも秘所を潤す愛液もこの直径は許容できず、リザードンとカイリューのつなぎ目からにわかに血がにじむ。
カイリューも随分と苦しいだろうに、二匹とも快楽で手一杯で、痛みを覚えるだけの余裕がないらしい。

「はぎっ……ひゅいッ!!あぅあッ!」

何度も何度も下腹部を下腹部にぶつけ、その度小気味の良い音がする。
肉棒を出し入れしながらカイリューは矯正をあげてリザードンの身体に爪を立てる。
リザードンも感じており、甘い声で鳴いては自ら腰を振った。くちゃくちゃと音がして、二匹の体液が胎内で混じり合う。

「今のうちによーく堪能しとけ、ホラ」

男がパチン、と指を鳴らすと、それに反応して、リザードンのとろけた目に光が戻る。
その尻尾が床をしたたかに打った。

「きゅ、い?」

次の瞬間、カイリューは天地が返るのを見た。さっきまで確かにリザードンの上に乗っていたのに、瞬時に仰向けになっていて、打ち付けた背が痛い。

「犯してばっかじゃなくて犯されんのも経験だよ」

かいりきを使って体位を真逆にしたリザードンは、弾力のあるカイリューの腹部に手をつき、そそり立った男性器に腰を沈めた。
カイリューは声にならない叫びでよがって背中を弓なりにそらせた。
身体の随が燃えるように熱く、覚えたての快楽の甘い疼きが身体を支配する。
そうしてリザードンの一挙一動がそのままカイリューの脳を焦がす電撃になっていく。
それはリザードンも同じだ。体のなかを雄が擦れる。壊れたようにピストンを続けた。

「いっ、いいあ゛ッ!ひゃひっ」
「んん?もう限界か?2人仲良くイッちゃいな」

その言葉に押されるようにして、リザードンの奥深くをカイリューが突いた。
リザードンが情けない叫び声を残して絶頂に達し、カイリューの身体にしがみついた。カイリューも耐えきれずその背中に手を回した。
秘所がきゅううっと閉まってカイリューの肉棒を締め付ける。

その瞬間、カイリューは頭の中でかみなりが弾けたのを感じた。

身体がびくびくと跳ね、もつれ合う。太ももを白い精液が伝ってこぼれ落ちたが、まだ肉棒は脈打ち続け、射精している。
汗が体中から噴き出す。肌が細かく震えていた。だが余韻が体中に残っていて、カイリューは自分の肉棒が粘つく生暖かい液体で包まれていくのが分かった。
ようやく射精が終わった頃、カイリューはゆっくりとリザードンの身体から出た。
ごぷ、とリザードンの秘所から白い液体がどくどくと溢れてみるみるうちに足下に広がっていく。
随分と派手に子種をばらまいてくれたものだ。近いうちに卵でも生むかもしれないな、と男はボールをリザードンの方に向けた。
間髪入れず赤い光が飛んできてリザードンの身体に触れ、それをも取り込んでボールの中に収まる。
カイリューは曇った目で男を見つめていたが、あたりに溜まりを作っている白い液体の臭気に顔をしかめ、少し後じさって、床に倒れた。

「気もちよかったか?……もう味わえないけどね」

男はリザードンの入ったボールを縮小してポケットにしまい込み、カイリューのほうへ歩み寄る。
その下腹部では体力は使ってもまだ満たされていないと言うようにまた男性器が立ち上がっている。
もっとも、男にはもうまともな交尾をさせてやる気などさらさらなかったが。



麻痺では運動能力どころか感覚も失われてしまう。眠らせてはカイリューが無理にイかされているという自覚を持てない。
だが、緊縛ならどちらもクリアする。頑丈な鎖なら千切れはすまい。
男はそう考えると横になっているカイリューの目の前でポケットからボールを取り出した。
その中にリザードンが入っていると思ったカイリューは疲れたような目を急に輝かせた。
——だが光の中から現れたエレキブルを見てその興奮は引く。
がっかりしたようだったが、すぐにその手を伸ばしてエレキブルにじゃれつこうとする。

「でんじは」

短い男の声を合図に、電気がエレキブルの触手からほとばしった。カイリューはいきなりのこと、痛みのない衝撃に目を見開いた。
伸ばしかけた指の先端から感覚が凍り付き始める。
電磁波は神経を一時的に狂わせる。ほどなく、カイリューの身体は硬直し、全身が痺れに覆われた。

「どう?身体を動かしてくても動かせないっていうの?」

声帯すら動かせないのか、カイリューは焼き印の時と同じ怯えた表情を垣間見せる。男は鼻を鳴らすと、部屋の分厚い壁に作られた収納の扉に鍵を差し込む。
凄まじい音を立て、カイリューの鼻先に鉄の鎖が投げ出された。
金属の擦れる嫌な音が鼓膜を摩擦した。衝撃に耐えられなかった幾枚かのタイルの破片が飛び散って音を立てる。
カイリューの顔色がみるみるうちに青ざめる。こんなもので打たれでもしたら——
エレキブルに男が何か耳打ちしたのを見て、カイリューは力の入らない身体を必死に固くし、声にならない悲鳴を上げた。
それに構うことなく無表情で近づいてくるエレキブルにさらに恐怖心をかき立てられ、さらにその顔を恐怖に引きつらせる。
太い腕で鎖をつかみ、エレキブルはそれをカイリューの身体に垂らした。

「〜〜〜〜ッ!!」

効果のない抗議に指の動き乱すことなく、エレキブルはカイリューの体を軽々と持ち上げ、鎖を身体に絡めて行く。
だがその動作は明らかに鞭打ちのそれではない。
安心したのもつかの間、エレキブルがごく強い電気を操ることを思い出しておののいた。
不自由な体を絡めとる重い鎖がいつ自分を感電させるのか、酷く震える瞳で、カイリューはエレキブルの一挙一動を追った。
そんな杞憂を笑い飛ばすようにエレキブルは、ジャラッと鎖を固く結ぶ。
右手と右足、左足と左手を括られ、性器をさらけ出した恥ずかしい格好で座らされ、カイリューは震えていた。

「エレキブル、待機してて」

男がカイリューへ歩きよるのと反対に、エレキブルはその影に隠れるように後ろにさがった。
カイリューはさらに身を引いたが、男の手に握られているものに見覚えがあることに気付き、警戒を緩める。

「さっきまでコチコチだったのに、さっきの怖かったんだ?」

不安のためにひくつく排泄口を無視し、カイリューの萎えた肉棒にかいふくのくすりを吹き付けた。

「恐いとダメなのに痛いのは大丈夫って、やっぱり変態なんじゃない?」

体力の回復に伴い、カイリューの肉棒も元気を取り戻す。麻痺状態もすっかり解けきった。
だがカイリューはもがくことすらせず、それどころかゆっくりと顔を赤らめ、息が少しずつ弾んでいく。
どうやらくすりを散布されて感じているらしい。
まだまだだ——男は薬の空容器を投げ捨てる。
性器をさらけ出し、それを弄ばれ、弄ぶことが恥辱であると知らないなら、それは調教とは言えない。
だがまずはまだまだ無知なカイリューに、射精に至るまでのプロセスを教え込まなければ、と男は結論づける。
目の前で脈動し、高く誇っている立派な男性器に目をやった。
道具を使おうか、でも人間の手で直接的にイかせるのがいいよね、男は独り言を言い、エレキブルにバケツを持ってくるように言いつける。
プラスチックでできた青いバケツをカイリューの目の前に押しやり、男はカイリューの肉棒を丁寧に扱き始める。

「あっ、ひっ……」

切なげな声を上げてカイリューは善がった。白い世界が思考の中に展開する。
現実と夢の境が曖昧になり、甘く柔らかな心地よさが身を委ねるように囁いた。理性が本能の手に渡る。
目と頭が熱で霞む。カイリューはぼうっとした視界の中に浮かぶ赤い目を見つける。
エレキブルは澱みのない、しかし表情もない目でじっとカイリューのことを見ていた。
見ないでほしい、とカイリューは顔を赤らめた。が、エレキブルはカイリューから視線を逸らそうとはしない。
もともと薬で湿っていた肉棒が透明な液体を吐き出し始めて手の動きがより滑らかになった。
ぬちゃぬちゃといやらしく音を立てながら手が前後する。
男が手首をひねるたび、指が筋に這うたび、血が性器に集まって、より固さを増す。
カイリューは恍惚の表情で大きく喘いだ。強い息遣いの中、確かに甘い吐息が含まれていた。
黒々とした目はすっかり快楽にとろけてしまっている。
……つまらないな、と、男は呟いた。
カイリューは確かに快楽に囚われていたが、与えられている性感に流されているだけだ。
普段から肉欲をにじませているような、真の淫乱ではない。

「おい、エレキブル、こいつの尻穴に触手さしてあげて」
「っ!」

エレキブルの名を聞き、カイリューはびくりとして目に光を取り戻した。
しかしもう遅い。エレキブルは命令に素早く応じ、性器のすぐ下にある排泄口に触手を伸ばした。
一瞬の間を置き、先端の赤く光る部分から、カイリューの内側に潜り込んで行く。

「きゅぃぃッ?!」

体内を触られる異様な感覚に意識を回復させられ、カイリューはその顔に恐れを露にする。
再度悲鳴を上げてもエレキブルは一向にやめる気配すら見せず、より体内奥深くまで侵入する。
表皮を通してならまだしも、内側から高電圧の電流を流されればひとたまりもない。
冷や汗が雫を作って頬を流れ落ちる。
が、その次の瞬間、意識に反してびくんと腰が浮く。
男がカイリューの肉棒の先端に爪を立てたのだ。その鋭く肉棒を刺激する状態のまま、男は爪先で裏筋をなぞる。

「きっ……ぃああ!!」
「ほらほら、そろそろ限界なんじゃない?」
「きゅ、う、あふッ」
「殺されるかもしれないっていうのに淫乱だなあ」
「いッ!……ッ!」

きっと男のことを睨みつけたが、理性と本能が戦い合っているように、その焦点は定まらない。

「じゃあ次イッちゃったら電撃ね。がんばれば?」
「ん……りぁあ?!」

嘘ではないと示唆するように体内でもぞりと触手が動く。カイリューは身体をこわばらせた。
それも男が軽く性器を弄ぶだけで緩んでしまう。圧倒するほどの熱が、頭と身体の中を駆け回る。
肉棒を愛撫する手の動きも、これまでのただ擦るだけのものから、急所を差すようなものに変わっていた。
男の指がつつつ、と先端をなで回して、カイリューはさきほどリザードンを犯した時と同じ気持ち、心地に駆られ始める。
それがいけないと分かっていた。イくと言う言葉がそれを指すことは薄々感づいている。
そう考え、都度、カイリューは自分を招くうずしおに歯向かってみるのだが、勝敗は火を見るより明らかだ。
どくどくと体自体が心臓になったように鼓動が激しく強いものになる。
熱いものが体の奥からこみ上げてきて、その感覚はリザードンに射精する直前のものに酷似していた。
カイリューは歯を食いしばる。それをこじ開けようと腹の奥底から次々と嬌声が生まれる。
が、エレキブルの目を再び見、それを堪えた。
カイリューは、そんなに見つめるな、自分を見るなと訴えたかった——声に出したかった。だが喉が動かない。
視線が自分を射抜くほど、子種を出さねば、という意志が湧き上がってくる。
一種の生存本能なのか。
押し寄せてくる恐怖から逃れようと背をそらすと、鎖が鈍く鳴って体が軋んだ。
それでも衝動の膨張は止まらず、噴き出そうになる。

「お前さあ、もしかして見られて感じてるの?」

辱めの言葉を投げかけられ、カイリューは違うと言う風に首を振った。
もはや体が打ち震えているのは戦慄しているからではなく、羞恥と快感によるものだろう。
達するものかとカイリューは強く目をつぶり、腹部に力を込めたが、しかしもう忍耐は限界に達していた。
男はカイリューの意気が上がっているのを確かめてバケツを手にとり、とどめとばかりに強く扱いた。
カイリューは悲鳴とも嬌声ともつかない声で鳴く。
白い世界が破けて、すうっと夢見心地が薄れた。一度目には見劣りするものの、多量の精液が竿を伝う。
肉棒が幾度も膨らみ、ポンプのように白い精液を排出する。
ビュクビュクと吐き出されるそれはすべてバケツの中に飛び込み、白がバケツの底を埋めた。
それでもまだ射精の勢いは衰えない。
溜まっていたか、もともと精力が強いのか、いずれにせよ、男は楽しげに精液を搾取する。
一方でカイリューは、絶望に似た感情と、虚無感と、不快感と、そして快楽に意識を奪われていた。
自分の意識とはまったく無関係に——コントロールできずに、射精してしまった。そのことがカイリューの自信を砕く。
しかし、これで終わり、ではなかった。

「ほれほれ、全部出しちゃいな」

再び湧き上がってきた感覚に翻弄され、カイリューは驚いてびくっとなる。
バケツの中の精液を手ですくいとり、どろどろになるまで肉棒にかけて、男はまたそこを強く刺激し始めた。
達した後の敏感な箇所を扱かれ、無事でいるはずがなく、カイリューは身をよじらせる。
しかし、……あっという間だった。抵抗しようとする時間すらなかった。
男の指のすき間から新しい精液がこぼれ、バケツの中に落ちてとぷっと音を立てる。
それでもなお男はやめようとはしなかった。

——結局、リザードンの時を含めて、7回ほどイったところで精を出し尽くした。
すっかり萎え、擦れてしまった肉棒から手を離すと、男は指を拭う。
バケツはほとんどいっぱいになってしまった。まったくとんだ絶倫だ、男は笑いながらカイリューの顔を見上げた。
文字通り精力を出し尽くして、カイリューはぐったりとしていた。体を小刻みに震わせている。
その顔は真っ赤で、息はもうすり切れてしまいそうなほどの早さで繰り返される。

「これで終りだと思っちゃだめなんだけど」
「りゅ……」
「言ったじゃない。イッたら電撃ってさ。もう六回も射精しちゃってさ、ほんっとうに淫乱だよね」
「……!!」
「じゃ、エレキブル、やっちゃって」

カイリューの瞳が目に見えて小さくなる。が、男はそれを取り消そうとはしない。
エレキブルの背中で火花がバチッとはぜた。カイリューは悲鳴を上げた。
触手に電気が送られ、カイリューの体に達し、

——まだ身体の中に残っていた精液がバケツの中に飛び込む。
カイリューは自分が死んだものと思って何度も瞬いた。が、体からずるずると触手が引きずり出され、抜かれる感触がある。
だが筋肉が緩んでしまって力が入らなかった。
男はその様子を見てけらけらと笑い、エレキブルをボールに戻す。バケツ一杯の精液に目をくれて、次はどうしてやろうかと考え始めた。
目の前では、太い鎖で緊縛されたカイリューが、呆然とした顔をしていた。

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最終更新:2009年07月28日 22:26