概要
セトルラーム共立連邦の国民は、同国の市民権のもとで暮らす多種族の住民集団である。
ロフィルナ人を最大の集団としつつ、
移民船団の到来と戦後の再編を経て、身体の造りも意思を伝える手段も異なる種族が一つの国籍を分け合っている。
主要構成民族
連邦の人口は、移民船団の末裔に、大戦後に国境を越えてきた人々が重なって成り立ち、民族ごとに背負う歴史の重さも異なる。
ロフィルナ人
国内人口で最大の比率を占めるロフィルナ人は、
星間機構の圧政に反発し、航路の外へ逃れた移民集団の多数派を源流に持つ二足歩行の人類種である。故地の
惑星イドゥニアで断種政策に晒された結果、異星人との混血が重なり、集団は多種多様な人種に枝分かれしていった。
大戦の終結後には種族要件の見直しが進み、古の
ロフィルナ王国にルーツを持つ全民族を指す語として再定義されている。ツォルマリア人そっくりの「ロフィルナ人」もいれば、ケルジャーナ人の特徴を備えた「ロフィルナ人」もおり、見た目で線を引く試みは、とうの昔に匙を投げられた。本来の王国系は金髪緑眼に白い肌を持つ姿で、現在の連邦人と並べて親戚と言い張るには、相応の勇気が要る。性質としては敵に向ける闘争心が過剰に強く、たいていの戦いで夥しい数の死傷者を出してきた。抵抗の文化は現代社会にもしっかり引き継がれ、ロフィルナ圏の治安が悪すぎる最大の理由としてミーム化されている。現在の
同名の王国はロフィルナ人の正統を自称しているものの、国際社会は、その肩書を身分証の欄に書き込む手間を、今日まで丁重に省き続けている。
ツォルマリア人
エルフを思わせる長い耳を持つツォルマリア人は、共立連邦の建国に関わった顔ぶれの中に名を連ねる人類種である。
星間機構の統制に不満を募らせた将校の一部が、移民船団の武装化に踏み切って航路の外へ向かった経緯から、離反将校の末裔を自任する家系が今も各地に残る。国内では、連邦で生まれ育った集団を連邦系、旧ツォルマリア本国の出身者を本国系と呼び分けている。本国系は淡い水色の頭髪と瞳で揃うのに対し、連邦系の色合いは世代を重ねるほど散らばり、垂れた耳を持つ家系まで交じる。世代航行の名残で体格差も極端であり、同じ連邦系の兄弟が並ぶと、頭一つどころか胴一つ違う場面すら日常の光景である。種族間の混血を忌避して遺伝子改変を重ねた時代の記憶は、本国系にも連邦系にも等しく残り、他種族から警戒の目を向けられる歳月も長かった。共立時代に入ると食の嗜好は草食に傾き、国内で
ツォルマ語が
ロフィルナ語に次ぐ話者を抱える背景にも、この集団の厚みがある。本国系の訪問者が連邦系の訛りに眉をひそめ、連邦系が本国系の発音を古臭いと笑い返す光景は、同じ耳を持つ者同士の挨拶として定着した。
ケルジャーナ人
ケルジャーナ人は、
カルスナード教王国を故地とする人類種で、高温かつ高重力の環境で進化した。
転移者の一部ではドワーフに似た種族と認識され、色黒から褐色の肌に、ずんぐりと筋肉の詰まった体型を持つ。
星間機構の支配下で強制進化を促された歴史があり、その怨恨は過去の大戦の一因にも数えられた。本来の姿は全身を厚い体毛に覆われるものの、技術の進んだ今日では体毛の薄い者も多く、他種族と並んでも見分けに迷う者が増えている。一部の共同体では種族の力強さが何よりも重んじられ、地肌をさらす振る舞いへの本能的な忌避から、「毛なし」を異端視する風潮が根強い。連邦政府は細心の注意を払って彼らの文化に敬意を示しており、公共空間の挨拶手順では、体毛の多寡に触れる言葉が禁句として真っ先に教えられる。過去の弾圧を記憶する者の多くはツォルマリア文明への怒りを今も抱え、両者が同じ議題に並ぶと炎上の火種になる場面もしばしば訪れる。それでも和解は概ね進んでおり、怒りの矛先が議論の場に収まる程度には、共存の作法が身に馴染んできた。
テルスヴィネル人
テルスヴィネル人は、惑星ヘズレルを故地とする竜人族の末裔で、体の一部を鱗に覆われ、頭に二本のツノを戴く。故郷では鱗の艶とツノの形で身分が決まり、ツノを失った者が差別階級に落とされる掟が長く続いた。
大戦の反攻作戦で連邦軍が都市を焼き払い、捕虜のツノを折って回った行為は、非道の限りとして
ユミル・イドゥアム連合帝国政府から指弾され、一時は国際問題に発展している。双方が事態の収束を優先した結果、賠償は行われずに終戦を迎えた。戦後、両国が難民の処理を進めると、帝国で「ツノなし」として居場所を失った人々の一部が連邦側に追いやられていく。両国の関係が安定した頃、
有志連合の勧告を受けた
フリートン政権が当事者への保障を申し出ると、差別の横行する帝国では、渋々ながら提案を支持する者が続出した。連邦への憎悪が消えたわけではない。しかし、保障の履行が伝わるにつれて移住の希望者が増え、帝国政府の合意のもとで、救済という名の棄民政策が実行された。ツノを巡る差別は時代とともに和らいだものの、この経緯は連邦国内でも負の側面が語り継がれ、触れてはならぬ政治的タブーと化している。今日、国内に住む全てのテルスヴィネル人は、
第四憲法のもとで国民の権利を享受する。
スクルニ人
スクルニ人は、森林惑星スクルシ(旧スクルシ王国)を故地とする、背に羽根を持つ小人の種族である。故郷ではツリーハウスで暮らし、他の人類種を一括りに「巨人族」と呼ぶ向きもある。連邦の共同体を形づくったのは、戦後に
ユミル・イドゥアム連合帝国から渡ってきた移民の末裔である。小さな体と羽根で機械の奥へ潜り込める器用さを買われ、精密機械の点検で重用された結果、一時はメンテナンス業界を席巻した。ところが、ナノマシンによる自動修理が普及すると技術者としての優位は崩れ、市場の取り分を次々と奪われていく。もっとも、追放の憂き目とは縁遠く、移住民の中では比較的恵まれた暮らしを謳歌してきた。悩みの種はむしろ都市の規格で、
タワーバスの手すりは頭上の遥か彼方にあり、羽根で飛び上がって掴まる姿は乗客の見慣れた朝の風景になった。今も一部の事業分野では一定数のスクルニ人が腕を振るい、知る人ぞ知る伝説のメカニックも輩出している。連邦国内のスクルニ人には緑髪の者が多く、一部は
アリウス女大公直属の整備士として働く。
ケルフィリア人
ケルフィリア人は、惑星フォフトレネヒトで誕生した種族で、狐の耳と尻尾を持ち、銀髪か金髪の者が多い。
新秩序世界大戦の後期、帝国への反攻に転じた連邦陸軍の手で、大勢のケルフィリア人が装飾品の材料として捕殺された。この蛮行は長らく連邦が恨まれる主因の一つとなり、後に政府が自主的な保障に踏み切るほどの政局案件として、
ヴァンス・フリートン大統領を苦しめたとされる。
ユミル・イドゥアム連合帝国政府の発表(偏向情報)によれば、全種族が付き従うべき高い知性の持ち主であるらしく、連邦国内でも様々な要職を担ってきた。一方で、体の弱さと運動の苦手さは発表文から綺麗に削られており、連邦の体力測定の会場では、偏向情報の答え合わせが毎年のように行われる。ケルフィリア人が討議の主導権を握る地方議会も存在するが、種族の知能に優劣をつける動きも一部で見られ、州自治体が差別対策に乗り出した。大統領は情勢を憂慮し、人種を問わず職業選択の幅を保つよう努める意向を示している。
ソルキア系住民
ソルキア系住民は、
ソルキア諸星域首長国連合から連邦に移り住んだ種族の総称で、獣人のキア族とゼヴァーラ族が大半を占める。同連合の工業が連邦由来の技術を種族の体格に合わせて作り直してきた縁から、技術者と留学生が少しずつ定着し、呼び寄せた家族とともに共同体を築いた。いずれも声で話す文化を持たず、キア族は耳と尾の傾きで、ゼヴァーラ族は体から放つ匂いの組成で意味を伝える。公用語の制定とともに配信された翻訳アプリは音声の聞き取りを前提に組まれており、導入直後の彼らは、画面に並ぶ空白の吹き出しを延々と眺める羽目になった。ゼヴァーラ族の嗅覚信号は本人の意思にかかわらず漏れ続けるため、
信用管理局の行動履歴が感情の起伏まで拾い上げる懸念も持ち上がっている。夜行性のキア族は、昼に動く社会との時差に悩んだ末、始業を夜に置く企業へ集まる傾向が強い。軟体知性体のビルーゼ族もごく少数ながら沿岸の都市に暮らし、
感応エコーラを介して、隣人と言葉以外の手段で意思を交わしている。
著名な人物
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最終更新:2023年02月03日 18:36