協商誓約天導機構(通称、協商機構、ラムティス連合)とは、
ツォルマリア星域連合直轄領を主導国とする経済・共存協商同盟。
ラムティス連合とも呼ばれる。
概要
協商誓約天導機構は、セクター・ツォルマリアにおける経済的繁栄と多種族共存を目的とした経済共同体である。
転移者星間戦争時の各国による苛烈な経済制裁で苦境に立たされた
ツォルマリア星域連合直轄領が、そのような不幸を二度と繰り返さないため、あるいは起こったとしても影響を最小限に抑えるために発足した。軍事同盟ではなく、宙域経済の強化を主眼に置き、加盟国である
ツォルマリア星域連合直轄領、
エルカム交通公団、
カルスナード教王国、
ウェトラム人類統一機構が、それぞれの特色を活かした相互補完を進める。具体的には、航路利便性の維持・共有、資源や技術の供給、社会福祉の向上を目指し、多種族が混在する共栄意識を高める役割を担う。防衛に関しては、国家間の関係が比較的良好であるため、
共立機構国際平和維持軍にほぼ委託し、協商自体は非軍事的な性格を保つ。ただし、外部からの経済的圧力に対しては一致団結して対抗する方針を掲げており、経済的抑止力としての側面も持つ。
歴史
協商誓約天導機構は、共立公暦605年8月12日に設立された。その背景には、
転移者星間戦争(共立公暦591年~)と、それに続く第一次世界動乱の混乱がある。この戦争中、
ラヴァンジェ諸侯連合体や他勢力との対立が経済制裁の応酬を招き、
ツォルマリア星域連合直轄領は交易路の封鎖や資源供給の途絶により深刻な苦境に立たされた。
共立機構国際平和維持軍が内政不干渉の原則から即座な介入が困難であったことも、事態を悪化させた一因である。この経験から、ツォルマリアは軍事力に頼らず、経済的結びつきを通じて危機を乗り越える新たな枠組みを模索。
エルカム交通公団と「ラムティス経済共栄協定」を結び、協商機構を立ち上げた。「天導」の名は、経済的共存が星の導きによる平和への道であるという理念を象徴している。以後、
カルスナード教王国や
ウェトラム人類統一機構が加わり、セクター・ツォルマリアは経済的安定と多種族共存のモデル領域へと成長した。
加盟国
正式加盟国
交易と技術の中心であり、協商の運営を主導する宙域国家。独自の軍を持たない。
豊富な研究資源と星間交易網を有し、協商の経済基盤を支える。
鉱石と各種宇宙技術の優先的提供。緊急時シェルターの解放等を含め、一部では食料品の輸出も担う。
生命倫理を重んじる宗教国家。協商では主に工業製品を輸入し、対価として食料及び科学薬品などの輸出を担っている。
かつて特異な思想を振りかざしたが、未曾有の敗戦を喫し、大規模な市場開放へと至った。主に工業製品の輸出で外貨を稼ぐ。
協力団体(オブザーバー)
防衛を担う独立組織。共立加盟国からの資金と人員で運営される。
加盟国の中では比較的強大な軍事力を誇る。異種族星間国家。
黒丘陣営に属するが、近隣経済の利点を求めオブザーバーとしての参加を果たした。
単純に距離が離れていることに加えて、体制の在り方を巡る見解の相違がネックとされる。そのため、オブザーバーとしての加盟に留まったが、非常に大規模な市場を有しており無視できない影響力を持つ。
主な取引
協商誓約天導機構は、加盟国間の経済的相互補完を基盤に、多様な資源や技術の取引を推進している。
これにより、転移者星間戦争時の経済制裁への耐性を強化し、多種族社会の安定と共栄を築いている。以下は主な取引の一例である。
ツォルマリア星域連合直轄領とエルカム交通公団間の航路共有協定
ツォルマリアが誇る先進的な宙域通信技術、特に「星脈トランスミッター」—超光速信号を星間距離で安定伝達する装置—を中核に、エルカム交通公団の広範な星間交易網を統合した共同航路網を構築している。このプロジェクトの発端は、転移者星間戦争時の壊滅的な交易路封鎖にある。当時、ツォルマリアは
ラヴァンジェ諸侯連合体や他勢力からの経済制裁で主要航路を失い、食料やエネルギー供給が途絶え、数百万の住民が飢餓とエネルギー危機に瀕した。この苦い経験から、協商設立直後の共立公暦606年に両国間で「ラムティス航路協定」が締結され、複数の迂回ルートや中継宙港が整備された。現在では、単一国家への依存を避けるため、少なくとも5つの独立した航路が運用され、エルカムの宙域管理技術—「星域安定グリッド」による気象予測や衝突回避システム—が導入されている。これにより、多種族の交易船団が安全に航行可能となり、共同で船団を運営する事例も増え、異種族間の信頼醸成と文化交流が深まっている。この航路網は、経済制裁が再発した場合でも協商全体の交易を維持する生命線として機能する。
カルスナード教王国とウェトラム人類統一機構間の食料・工業品取引
カルスナード教王国は、生命倫理に基づく高度な農耕技術で生産される「聖穀」—遺伝子改良で多種族の栄養要求に応じた穀物—や、抗病性と再生力に優れた科学薬品「エリクシル・ヴィタエ」を提供する。これに対し、
ウェトラム人類統一機構は、独自の工業技術による再生エネルギー装置「エテルノ・コア」—恒久的なエネルギー供給を可能にする小型炉—や、耐久性の高い工業製品(例えば「ナノ硬化建材」)を輸出する。ウェトラムが協商に加盟したのは共立公暦960年以降で、それ以前は孤立した勢力として工業力を蓄えていた。加盟後、共立公暦962年に「生命と技術の架け橋協定」が結ばれ、カルスナードとの交易が開始。カルスナードの聖穀はウェトラムの食料供給を多様化させ、エテルノ・コアはカルスナードの都市部で電力不足を解消した。現在では、ウェトラムの工業品がカルスナードのインフラ整備を加速し、カルスナードの薬品がウェトラムの多種族労働者の健康を支える好循環が生まれている。この取引は協商内の食料安全保障と産業基盤の均衡を保ち、外部からの経済的圧力に対する耐性を強化する重要な柱となっている。
ツォルマリアとカルスナード間の生命技術提携
ツォルマリアの生物工学技術、特に遺伝子適応型の「バイオモジュレーター」—個々の遺伝子特性に合わせて身体機能を最適化する装置—と、カルスナードの生命倫理に基づく薬品開発技術が融合し、多種族向けの医療品「ユニヴァース・レメディ」を生産している。この提携は、セクター・ツォルマリアの多種族社会で、異なる生理に対応した治療薬を低コストで供給する社会福祉事業の柱である。転移者星間戦争時、ツォルマリアは医療資源の輸入が途絶え、特に異種族難民が治療を受けられず、多くの死者を出した。この反省から、協商設立翌年の共立公暦606年に「生命共栄協定」が発効。ツォルマリアの科学者とカルスナードの聖職者が共同で研究を進め、多様な種族の健康課題に対応する薬剤やワクチンが開発された。生産された医療品は協商内の共同基金で賄われ、低所得層や難民にも無償配布される。現在、聖職者による品質管理と科学者による技術革新が両立し、異種族間の健康格差解消に貢献。経済制裁下でも自給可能な医療体制を確立し、協商全体の生活水準向上に寄与している。
エルカム交通公団とソルキア諸星域首長国連合間の宙港利活用
エルカム交通公団は、長年の交易経験から培った宙港運営技術—特に「グラヴィティ・ドック」(重力制御で大型船を効率的に着陸させるシステム)や「オービタル・シンクロ」(軌道上の物流同期技術)—をソルキアに提供。これに対し、ソルキアは豊富な軍事力と異種族傭兵団「ストームレギオン」を動員し、交易路の安全確保と星間海賊対策を担う。この協力は、オブザーバーであるソルキアを協商に引き込み、将来的な正式加盟を視野に入れた戦略的取引だ。転移者星間戦争時、エルカムの交易船団は海賊や敵対勢力に襲われ、航路が荒廃。これを防ぐため、共立公暦610年に「宙港共栄協定」が締結され、ソルキアの主要宙域にエルカム設計の中継基地「ラムティス・ノード」が設置された。ソルキアの傭兵団は、多様な種族で構成され、交易船護衛や基地防衛に従事。その報酬としてエルカムから交易利権の一部が譲渡され、ソルキア経済の安定化に寄与している。この取引は、経済的結びつきを通じて異種族間の和平を促進し、異なる背景を持つ傭兵や商人が協力する場を提供。協商全体の交易網の安全性を高める基盤となっている。
ウェトラムと聖玄羅連邦間の市場開放交渉
ウェトラム人類統一機構は、工業製品—特に「プラズマ硬化装甲」(宇宙船や基地を強化する素材)や小型輸送機「スカイフォージ」(高速かつ低燃費の運搬船)—の輸出を、
聖玄羅連邦の大規模市場に展開する取引を確立した。聖玄羅は距離的な隔たりと体制の違いから正式加盟を避けているが、人口2500億を擁するその経済規模は協商にとって魅力的な存在である。ウェトラムが協商に加盟した共立公暦960年以降、独自の工業力を背景に外部市場拡大を模索。共立公暦962年に「星間交易橋渡し協定」が提案され、聖玄羅との交渉が始まり、同965年に成功裏に締結された。聖玄羅は独占的な行動を避け、相手国に合わせて市場を柔軟に解放する方針を採る国であり、ウェトラムの工業需要に応じて希少な「星晶鉱」—高効率エネルギー結晶で、協商全体のエネルギー需要を賄う資源—の供給を開始。ウェトラムは工業製品の輸出で外貨を獲得し、聖玄羅から輸入した星晶鉱を活用してエネルギー生産を強化。これにより、セクター・ツォルマリアのエネルギー自給率が向上し、協商全体の経済的安定が一段と進んだ。この取引は、協商の経済的抑止力を高め、外部勢力との協調を深める成功例となり、聖玄羅とのさらなる連携の基盤を築いている。
関連記事
最終更新:2025年06月30日 20:12