ゲザッセル鉄槌作戦


概要

 共立公暦1001年、第三次ロフィルナ革命戦と同時に、共立機構国際平和維持軍は、ロフィルナ航空宇宙軍の壊滅を目的とした「ゲザッセル鉄槌作戦」(オペレーション・ゲザッセル)を発動した。この作戦は、ロフィルナの302隻からなる航空宇宙戦力(戦闘母艦、潜空艦、駆逐艦、戦闘機等)を3日以内に無力化し、コックス政権の報復能力を根絶することを目指した。平和維持軍が主導し、セトルラーム共立連邦ジェルビア星間条約同盟が艦隊と技術支援を提供。ロフィルナの戦闘母艦7隻と潜空艦を優先目標とし、高度な電子戦と圧倒的な艦隊戦力で容赦ない制圧を図った。作戦名にロフィルナの神「ゲザッセル」を冠したことは、ティラスト派への明確な挑発であり、軍事的勝利を超えた象徴的打撃を意図していた。宇宙戦力の壊滅後、地上での「ヴェイルクラム作戦」へとつながり、ロフィルナの抵抗を徹底的に粉砕した。

経緯

 共立公暦1001年3月15日、平和維持軍はロフィルナ航空宇宙軍を壊滅させるため、「ゲザッセル鉄槌作戦」を開始した。この作戦には総勢2500隻の艦隊が投入され、平和維持軍が1500隻を動員したほか、セトルラーム共立連邦が700隻、ジェルビア星間条約同盟が300隻を担当した。平和維持軍は旗艦「エクセルシオル級統合指揮艦」を中心に、量子通信網で艦隊を統制し、高精度センサーと電子戦装備を活用して作戦を進めた。
 作戦はまず、ロフィルナの戦闘母艦7隻の位置を特定することから始まった。初日の3月15日、セクター・イドゥニア上空で待機中の3隻(第3世代ロフィルナ級都市型戦闘母艦および改型)を狙い、セトルラームの無人機「ハーヴェスターII」とジェルビア同盟の電子妨害艦で包囲した。平和維持軍の量子センサーで防御シールドの弱点を突き、集中砲撃で2隻を撃沈。残る1隻は駆逐艦30隻と共に深宇宙へ逃走を試みたが、平和維持軍の追跡艦隊がレーザー砲で艦載機ごと壊滅させた。この日、ロフィルナの艦載機約200機が迎撃され、戦闘母艦3隻と駆逐艦40隻を失い、指揮系統が混乱した。

 翌16日、平和維持軍は残る戦闘母艦4隻(工業母艦3隻を含む)を追撃した。セトルラームの長距離ミサイルで工業母艦の生産施設を破壊し、平和維持軍の電磁パルス(EMP)攻撃で2隻の武装を停止させた。残る2隻は駆逐艦と支援艦50隻を盾に抵抗したが、ジェルビア同盟の高速艦が側面から攻撃し、平和維持軍の量子ミサイルで全母艦が壊滅した。同時に、潜空艦10隻のうち7隻がジェルビアの探査技術で発見され撃沈され、艦載機300機以上が迎撃された。
 3日目の17日、平和維持軍は残存戦力を一掃した。潜空艦3隻がセトルラーム中枢へ自爆攻撃を試みたが、高精度センサーで動きを事前に捉え、セトルラームの砲撃艦と連携して3隻とも撃沈。駆逐艦60隻と支援艦30隻はジェルビアの戦闘機と平和維持軍の包囲網で壊滅し、戦闘機約100機も全滅した。3日目の終わりまでに、ロフィルナ航空宇宙軍302隻のうち290隻が撃沈され、残りは戦闘不能となった。この後、地上での「ヴェイルクラム作戦」が展開された。

影響

 ゲザッセル鉄槌作戦は、ロフィルナ航空宇宙軍を3日で壊滅状態に追い込み、コックス政権の宇宙戦力をほぼ根絶した。戦闘母艦と潜空艦の全滅により、ロフィルナはセトルラーム中枢への報復能力を失い、地上での本土決戦を強いられた。しかし、作戦名に神「ゲザッセル」を用いたことは、ロフィルナ国民とティラスト派にとって聖域への冒涜と受け止められ、軍事的敗北以上に深い屈辱と憤怒を刻み込んだ。平和維持軍の技術と戦力が星域にその力を示した一方、この挑発的な命名は連合軍の姿勢を「傲慢で非道」と批判する声を国際社会に広げた。
 ロフィルナ国内では、航空宇宙軍の壊滅が国民に絶望感を与えたが、「ゲザッセル」の名を敵が奪ったことへの怒りがティラスト派の士気を再燃させた。コックス政権は「神を汚した侵略者に報いを」と宣言し、残存勢力は地上でのゲリラ戦を加速。国民の間では「ゲザッセル鉄槌」が恐怖と同時に復讐の象徴となり、抵抗運動が新たな形で広がった。セトルラームとジェルビア同盟は作戦の成功を称賛したが、平和維持軍への依存が深まりつつも、この命名が連合軍内の結束に微妙な亀裂を生んだ。ヴァンス・フリートンは「ロフィルナに鉄槌を下したのは我々だ」と豪語し賠償請求を強めたが、ロフィルナ側の反発が予想以上に激化したことで、長期的な安定が遠のいた。
 星域全体では、ゲザッセル鉄槌作戦がロフィルナの軍事力を葬り、平和維持軍の介入力を示した。しかし、神聖な「ゲザッセル」の名を敵が用いた事実は、イドゥニア星系諸国で反セトルラーム感情を爆発的に高め、ティラスト派への同情や支援を誘発した。作戦は宇宙戦力の排除に成功し「ヴェイルクラム作戦」を可能にしたが、宗教的対立を煽ったことで革命の火種を消すどころか拡大させ、次の戦局をより苛烈なものへと導いた。

備考

 この作戦の時期、ユミル・イドゥアム連合帝国は内戦後の復興期にあり、セトルラーム共立連邦からの参戦要請に応じられなかった。工業基盤の疲弊と人的資源の不足から、皇帝トローネ・ヴィ・ユミル・イドラムは国力の回復を優先し、直接的な軍事介入を見送った。しかし、長年の同盟国であるセトルラームとの関係を維持するため、帝国は間接的な支援策を講じることで戦争への貢献を図った。共立公暦1002年、セトルラーム航空宇宙軍と交わした長期傭船契約により、800型宙域タンカー2隻(800-3レアル、800-4シィダ)が提供された。これらのタンカーは燃料や補給物資を運搬する後方支援の要として、セトルラームの艦隊や無人機の作戦を支えた。特に800-3レアルは補給任務で重要な役割を果たし、800-4シィダは物資輸送の安定化に寄与した。また、ユミル・ロアーネ一世級貨客船(ユ-5 アトリャナ)が新規用船契約に基づき臨時病院船に改装された。元々は貨客船として運用されていたが、改装後はセトルラーム航空宇宙軍に合流し、負傷兵の治療や避難民の救護に従事。ジェルビア星間条約同盟の人員も受け入れ、連合軍全体の後方支援に貢献した。船体には赤十字のマークが描かれ、戦場での非戦闘員としての役割を果たした。これらの支援は、帝国が戦場に兵を派遣せずとも、ロフィルナ戦線での連合軍の作戦を間接的に支える戦略的措置だった。帝国議会では一部貴族が「支援は負担が大きい」と反対したが、皇帝は「セトルラームとの信頼は我が国の利益に直結する」と説得し、支援策を完遂。タンカーの補給はセトルラームの継戦能力を高め、病院船は戦傷者や避難民の命を救い、「ゲザッセル鉄槌作戦」後の戦局で連合軍の士気を維持した。支援策は戦後も両国の協力関係を強固にし、帝国の外交的立場を間接的に強化した。

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最終更新:2025年03月30日 16:17