フリーネア上空焦炎戦


概要

 フリーネア上空焦炎戦とは、共立公暦1007年、フリーネア王国領内にて発生した。大規模航空戦である。第三次ロフィルナ革命の終盤、敗北が確定したティラスト派の巨大潜水艦「ザルヴェス・クロム」がフリーネアの焦土化を狙い、大量の艦載機を発進させた。これに対し、セトルラーム本国とフリーネア政府が連携し、潜水艦の撃破と航空機の撃退に当たった戦闘である。フリーネア沖の深海に潜伏していたクロムは、1200機の航空機を発進させ、フィノを含む沿岸都市への連続攻撃を敢行した。最終的にセトルラーム空軍は航空艦150隻、戦闘機3万機、爆撃機5000機を投入し、フリーネア軍は航空機3215機、海軍艦艇103隻、100万を超える陸戦部隊で迎撃した。共立機構国際平和維持軍からの支援も受けた。上空は航空機の乱舞と対空システムの光で地獄絵図と化し、フリーネア沖ではクロムの捜索作戦が展開された。最終的にクロムは撃破され、フリーネアは量子核弾頭による壊滅を免れたものの、死傷者90万人(民間人60万、軍人30万)の甚大な被害を被った。この戦闘は革命終結を決定づけ、イドゥニア星域の勢力図を大きく変えることになった。

経緯

戦いの背景と準備(1007年2月)

 1007年初頭、第三次ロフィルナ革命は終盤を迎えていた。ティラスト派はグロノヴェイル包囲戦での敗北により、壊滅寸前の状態にあった。コックス大宰相の命令系統は事実上瓦解し、1001年のエリッツ沖海戦で逃亡したクロムは、ロフィルナ海軍残党の総意によって独立して行動する存在へと変わっていた。クロムはヴァルヘラ州の深海ドックで大規模な改装を受け、全長400m、1200機の航空機を搭載できる移動航空基地へと進化した。搭載機には量子核弾頭を装備した機体も30機含まれていた。これは失われつつある革命を延命させるための、最後の切り札として用意されたものだった。クロムの指導部は、フィノを焦土化し、フリーネアの経済・軍事中枢を破壊することで、革命の終結を阻止する計画を立案した。フリーネア沖の深度6000m付近に潜伏し、悪天候下で航空機を発進させるという戦略を採用した。フリーネア王国は、この時期、強大な軍事力を保有する大国だった。首都フィノには高度な防空体制が敷かれており、金融と文化の中心地として守られていた。国王バリオン・ヴィ・ケルシストは国民を鼓舞し、首相リドール・ベクサスは革命警戒態勢を強化した。フリーネア海軍には沖合の哨戒が命じられた。セトルラーム本国も素早く対応した。ティラスト派を完全に殲滅する決意の下、即座に軍事力を準備した。ヴァンス・フリートン大統領は、「ロフィルナの残党を星域から抹消する」と宣言し、議会は混乱の中で予算を承認した。平和維持軍も監視体制を強化し、ティラスト派の通信を監視下に置いた。周辺勢力も事態に対応した。

開戦:焦土の嵐(1007年3月1日~3月31日)

 1007年3月1日深夜、クロムから発進した800機の航空機がフリーネア大陸北部の工業都市ヴェルナッドに襲来した。ステルス性能でレーダーを回避した航空機群は、兵器工場やエネルギープラント、通信塔を攻撃した。黒煙が空を覆い、崩れたビルに市民が閉じ込められ、死傷者は5万人に達した。フリーネア空軍は戦闘機1600機、迎撃機700機、支援機350機を緊急発進させたが、敵機の質的優位に圧倒され、初戦で航空機300機を喪失した。衛星画像からクロムがフリーネア沖で活動していることが確認され、その存在が明らかになった。フリーネア海軍は、対潜作戦を開始した。巡洋艦30隻、対潜駆逐艦50隻、空軍艦艇25隻が投入され、ソナー艦10隻が深度6500mでクロムのエンジン音を捕捉した。ティラスト派の無人攻撃艇100隻が自爆攻撃を仕掛ける中、クロムは嵐を利用してフリーネア艦隊を撹乱し、海中から戦闘機を再発進させた。沿岸都市レナフィスの海軍基地と港湾施設は爆撃され、艦艇15隻が沈没した。最大の都市サリオスでも金融センターと工業地帯が被害を受け、経済機能が麻痺状態に陥った。フィノ近郊の防空基地も空襲で50%が機能停止した。フィノの地下シェルターは避難民で溢れかえり、市民は恐怖に耐えながら過ごした。3月21日。セトルラーム本国からの増援が次々と到着した。航空艦10隻がレナフィス上空で敵機200機を撃墜し、複数のT4戦闘機が支援に当たることで、連合軍の士気が高まった。

中盤:量子核の脅威(4月1日~4月30日)

 4月15日、サンパレナ共和国の偵察衛星がクロムに搭載された複数の量子核弾頭搭載機を検知した。一発で都市を壊滅させる威力を持つ、これらの兵器は、クロムの指導部がロフィルナの安泰を図るための切り札だった。フリーネア政府は全土の防空体制を強化し、空軍艦艇33隻を上空に展開させた。戦闘機1400機、迎撃機600機、支援機300機を待機させた。セトルラーム本国の航空艦150隻がフル稼働し、戦闘機25000機と対潜爆撃機4000機を投入した。サリオス上空での大規模な空戦では、敵機400機が撃墜されたが、連合軍も航空機5000機を喪失した。フリーネア海軍はフリーネア沖でのクロム捜索を加速させた。ステラム・シュラストから得た暗号データからクロムの浮上予定時刻が判明し、ソナー艦が深度7800mでクロムの航跡を捕捉した。対潜駆逐艦45隻が爆雷と誘導魚雷を投下した。クロムは支援潜水艦10隻を囮に使って反撃し、巡洋艦6隻を撃沈した。無人攻撃艇60隻が自爆攻撃でフリーネア陸軍3個師団を壊滅へと追いやった。クロムは深度9000mに逃亡した。フリーネア各地では避難が続き、社会秩序が揺らぎ始めた。陸戦部隊20万人が治安維持に投入された。ティラスト派のプロパガンダ通信がフィノをジャックし、恫喝的なメッセージを発信したが、セトルラーム空軍の電子駆逐艦がこれを攪乱した。国際社会では戦闘の長期化に対する懸念が深まっていた。

終盤:フィノ攻防戦とクロムの終焉(5月1日~6月30日)

 5月1日、クロムの指導部はフィノへの総攻撃を命令した。500機の航空機が3波に分けてフィノに突入し、王宮、金融街、エネルギー中枢を攻撃した。量子核弾頭搭載機30機は後方で待機していた。フリーネア空軍は戦闘機700機、支援機150機を動員して迎撃に当たった。防空システムがレーザー砲とミサイルで敵機300機を撃墜した。セトルラームの戦闘機5000機の支援も加わり、フィノ上空は爆音と火球で埋め尽くされた。墜落した航空機が文化遺産の近くに激突し、火災が発生した。陸戦部隊30万人が市街地に展開し、市民の安全確保に当たった。5月25日、あるティラスト戦士の情報によってクロムの浮上地点(フリーネア沖80キロメートル)が判明した。これを受けて、空軍艦艇10隻と海上艦艇37隻が対潜射撃を集中させた。クロムの甲板は炎に包まれ、航空機の発着プラットフォームが崩壊した。クロムはMQSMで反撃し、巡洋艦7隻を大破させたが、対潜駆逐艦の事象光子魚雷による連続攻撃で推進系を完全に破壊された。乗員による反乱で量子核ミサイルの発射が阻止され、クロムは深度5000mで大爆発した。乗員1200名と民兵3000名が全滅し、海面は残骸と油で覆われた。フィノ上空では、残存する敵航空機200機が量子核弾頭搭載機30機を護衛し、最後の突撃を敢行した。防空システムが量子核弾頭搭載機を優先して撃墜し、複数の戦闘機で包囲した。その結果、敵航空機と量子核弾頭搭載機29機が撃墜されたが、残る1機がフィノの行政区に突入した。フリーネア空軍のエースパイロットが核弾頭を起爆前に破壊し、フィノは壊滅を免れた。6月30日、戦闘は終結した。国王バリオンは国民に向けて演説し、人々は復興への決意を新たにした。

影響

 フリーネア上空焦炎戦によるクロムの破壊は、ティラスト派の最後の抵抗を粉砕し、1008年の第三次ロフィルナ革命を終結へと導いた。フリーネア王国は死傷者90万人(民間人60万、軍人30万)、経済損失がGDPの60%に達するという甚大な被害を被った。首都フィノの金融街とサリオスの工業地帯は壊滅状態に陥った。復興は困難な課題だったが、地域の伝統的な農業技術や環境共生技術が活用され、持続可能な再建が始まった。国民は文化的な祭礼を通じて団結を再確認し、復興への希望を繋いでいった。金融システムも国際投資家の支援により、回復の兆しを見せ始めた。セトルラーム本国は、ティラスト派殲滅の決意を示し、迅速な軍事対応で勝利を確保した。艦艇20隻と航空機400機を失ったが、フィノ防衛の成功で連合軍の士気を高めた。しかし、フリーネアにおける甚大な人的被害と経済損失の責任を問われ、ヴァンス・フリートン大統領の支持率は急速に低下した。議会では批判が相次ぎ、次期選挙での再選が危ぶまれるようになった。星域における影響力は一時的に減少したが、ティラスト派の完全排除により長期的な安定がもたらされることへの期待もあった。共立機構国際平和維持軍は、フリーネアへの救援物資と復興支援を提供し、国際的評価を高めた。ロフィルナ国内ではクロムの敗北がティラスト派の瓦解を加速させた。コックスの指揮を離れた海軍残党の失敗は、ティラスト派内部の深刻な分裂を露呈し、ロフィルナ本土の抵抗も徐々に収束する流れを辿った。1008年には革命の最終段階へと移行し、ゼノアビリティ・プランの発動と停戦に至ることになった。戦後、クロムの残骸から量子核弾頭の技術情報が流出した。星域の地下組織や周辺国家が核防衛システムの開発を加速させ、イドゥニア星域は軍拡競争の新局面へと突入した。フリーネアの戦闘は、新たな火種を星域に残すことになったのである。市民たちは、焼け跡で共同体の結束を再確認した。

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歴史
最終更新:2025年10月15日 00:47