概要
第一次コルナンジェ攻防戦は、
第三次ロフィルナ革命の初期に勃発した市街戦である。
ロフィルナ王国の王都コルナンジェを戦場としており、王党派の直轄軍とコックス政権軍が交戦した。共立史では、政権軍が王都の奪還を断念した局面に数えられる。
戦力
作戦目標は、王都コルナンジェを奪い返し、大宰相府の令達を街区の役場に戻すところに置かれた。グロノヴェイルへ退いた
コックス大宰相は、
ヴァルヘラ州軍政府が送る鉱物資源を臨時の兵器工場に回しており、装甲車両250台を備えた約19万人の反攻部隊を編み上げた。突入の先頭には
ロフィルナ国民武装赤軍解放戦線の部隊が立ち、キメラ部隊も同じ経路に投じられている。迎え撃つ側の指揮は王都直轄司令官
ガルヴェイン・ゾルドリックが執り、常備軍と予備役の二系統から約22万人が集められた。火力の中心には遠距離射撃兵器が据えられ、関門の突破には爆裂兵器を用いる手順が固まる。市街には三層の防衛線が敷かれ、街区の班が関門の守備を引き受けた。
アリウス公王は臨時政府の指導に専念しており、軍事の判断は司令官府に委ねられた。同盟した
サンリクト公国は、南部沿岸に迫る連合軍への備えに海軍の主力を割いていた。
ユリーベル公国も自領の防衛に兵を留め置き、王都には糧食が西海の航路を伝って運ばれ、弾薬の一部が同じ経路に乗る。連合軍との交戦が明日にも起こりうる情勢であったことから、直轄軍は西端の山脈と橋頭堡に守備隊を残した。
経過
共立公暦1001年の後半、六日間にわたる交戦が王都の街区で起こり、外周の丘陵にも戦場が広がった。
緒戦
政権軍の反攻部隊は、西部の沿岸と南部の境界の二方向から王都の圏域に踏み入った。西部では港の封鎖によって搬入路が断たれており、荷を積んだ潜水艇が沿岸の砂浜に足止めされている。南部の境界では陣地の構築が進み、砲兵が王宮の方角に照準を合わせた。直轄軍は貴族の街区の外縁に第一の防衛線を置き、予備役の装甲部隊を街路の要点に配する。街区の班長は住民の点呼を済ませたうえで、詰所に人員を送り出した。大聖堂の聖職者は避難の手順を街区の名士に伝え、堂内を負傷者の収容に開いている。交戦は貴族の街区で始まり、砲煙が河岸の段丘を覆った。武装赤軍の部隊が民衆の街区の路地に入り込むと、班の住民は橋の袂の関門を閉ざす。
市街戦
二日目、政権軍は貴族の街区に攻勢を集め、遠距離射撃の応酬の末に第一の防衛線を破った。大通りに面した建物は砲撃で崩れ、瓦礫が街路の幅を狭めている。爆裂兵器が障壁を吹き飛ばした箇所ではキメラ部隊が突入し、直轄軍の小隊が壊滅した。アリウスは臨時政府の布告を街区の役場に配らせ、班長を通じて住民に抵抗の継続を求める。夜に入ると王党派の契約兵が輸送隊の車列を襲い、手榴弾で燃料の缶を焼いた。三日目には河川の水運が復旧しており、上流の坑道から届いた弾薬が市街の工房に運び込まれる。政権軍は民衆の街区の路地でゲリラ戦を挑み、屋根を伝う経路から関門の背後に回り込んだ。交戦の中心は広場に移り、住民の避難が滞った街区では建物の倒壊による死傷者が増えている。
撤退
五日目、政権軍の先鋒は王宮から1.5キロメートルの地点まで迫ったものの、後方の搬入路は途絶えかけていた。直轄軍の別働隊が北部の線路を取り返し、東部の丘陵には予備役の装甲部隊が回り込む。弾薬の欠乏した陣地は遠距離射撃兵器の集中を浴びており、砲兵の陣が崩された。指揮所の包囲を受けた段階で、反攻部隊は投入した兵力の四割を失う。六日目に撤退が決断されると、グロノヴェイルへ通じる退路の確保に残存の部隊が割かれた。市街を離れる列は、焼け跡を縫って西へ進んだ。追撃は、州境の手前で打ち切られている。交戦の終わった王都では、市街の三分の一が瓦礫に変わった。電力の供給が止まったうえ、通信塔の倒壊によって街区間の連絡も途切れる。
影響
交戦の終結後、王都の街区では統治の実務が組み替えられ、王国の外側でも王党派を巡る見方が動いた。
帰結
王都の奪還を断念した政権軍は、ラグニア領域北部での迂回路を固め、東部のヴァルヘラ州軍政府との連携を深めた。中部を挟んだ東西から反攻をかける構想が固まり、臨時の兵器工場では砲弾の生産が続く。王党派の側では志願の受け付けに列ができており、大聖堂の前庭で誓いを済ませた者が名簿の末尾に加わった。直轄軍の再編によって、
コルナンジェ軍事クーデター事件の後に発足した臨時政府の統治が王都で保たれている。内陸の
ルガスト州軍政府は兵を送り出し、
ラグニア州軍政府が補給物資の供出を引き受けた。サンリクト公国は南部沿岸の防衛に主力を置いたまま、王党派の連合における発言の重みを保つ。ユリーベル公国の支援は、物資の輸送を軸として組み立てられた。
荒廃
六日間の交戦によって、民間人の死傷者は約12万人に達した。貴族の街区では大通りに面した建物が崩れ、高級品の取引が止まっている。民衆の街区の市は火災で焼け、配給の順番を待つ列が役場の前に伸びた。臨時政府の配給は数日おきに途切れており、割り当ての量は街区ごとの人数から改められた。役場の前に並んだ住民は、受け取りの印を押した札を班長に返している。商業組合は帳簿を別立てにしたまま資金の融通を引き受け、市街の工房には修理の受注が集まった。密輸の経路を握る商人は政権側との取引を続けており、闇市場の相場は物資の欠乏に応じて上がる。政権軍の残党による略奪が焼け跡で繰り返され、直轄軍は夜間の巡回を増やした。大聖堂では内部装飾が砲撃で損なわれ、街区の信仰施設も略奪の被害を受ける。街区の信仰施設では祭具の点検が続けられ、失われた品の目録が写字生の手で作られた。
反応
王都の防衛が保たれた事実は、
文明共立機構の側で王党派を交渉の相手と見る判断を強めた。同機構は、開戦時点から準備指定レベルを超える『執行』の通告を発しており、平和維持軍の展開規模はルガスト南部の沿岸で拡大している。
セトルラーム共立連邦の
ヴァンス・フリートン大統領は、王国の情勢を安全保障上の危険と判断し、
ジェルビア星間条約同盟の各国に協力を求めた。連合軍の進出は王国の住民に旧暦時代の植民地支配を思い起こさせ、反セトルラーム感情が街路の抗議に転じる。
イドゥニア星系諸国では、王国の分裂が交易路の安全に響くとの見通しが広がった。王党派の内部でも連合軍との交戦に備える声が強まり、王都の防空は稜線の砲座を軸に組み直されている。稜線に据える火砲の追加は坑道からの搬入に合わせて計画され、砲手の補充には予備役が充てられた。
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最終更新:2026年08月22日 09:34