神裂は、赤い雨の中を、走っていた。
目的も無く、ただ、走っていた。
誰かを探す為だろうか。分からない。
何かを探す為だろうか。分からない。
逃げていた。何かから、逃げていた。
屍人から。
五和から。
自分から。
あの場所から逃げ出した自分から、逃げていた。
アレから、何体もの屍人を倒して。それでも、結局一体たりとも殺していない。
気が付けば、逃げるように走っていた。
誰にも見つからないように、誰も見つけてしまわないように、走っていた。
けれど、見つけてしまった。出会って、しまった。
知らない内に、第七学区まで来ていたらしい。
第七学区。『彼ら』の住む場所。
神裂「――――あ、あ」
分かっていた。
こうなるかも知れないという可能性を、分かっていた。
でも、何とかしてみせる、と思っていた。
必ず救ってみせる、と思っていた。
神裂「――――つち、みかど」
でもやっぱり、何も出来なくて。
気が付けば、世界は絶望に満たされていた。
どうして、こうなってしまったのか。
私の所為だ。
私の所為だ。私の所為だ。私の所為だ。
救える力があったのに。救わなければいけなかったのに。
逃げていた、自分のせいだ。
土御門「――――にゃあ」
土御門元春は、変わり果てた姿で、立っていた。
目からは赤い水を垂れ流し、全身隈なくボロボロで、立っていた。
化物になって、立っていた。
土御門「ねーぇ、ちーぃん?」
同僚で、仲間だった土御門は。
もう、ヒトでなくなっていた。
私の所為だ。
私の所為だ。私の所為だ。私の所為だ。
私の所為だ。私の所為だ。私の所為だ。私の所為だ。私の所為だ。
何もしなかったから。逃げたから。
五和からも、自分からも。
神裂「ううううううあああああああああああああああッッッッ!!!!!」
神裂は、耐えられない。耐えられなかった。
また、逃げ出した。土御門から、背を向けて、全速力で、逃げた。
土御門には追いつけない速度。魔術での追撃もない。
神裂は逃げる。逃げて、逃げて、逃げ続ける。
一体、いつまで逃げ続ければいいのか。神裂には、分からない。
最終更新:2010年11月07日 05:47