神裂15:47:39  >  第七学区

神裂は、赤い雨の中を、走っていた。
 目的も無く、ただ、走っていた。

 誰かを探す為だろうか。分からない。
 何かを探す為だろうか。分からない。

 逃げていた。何かから、逃げていた。
 屍人から。
 五和から。
 自分から。
 あの場所から逃げ出した自分から、逃げていた。

 アレから、何体もの屍人を倒して。それでも、結局一体たりとも殺していない。
 気が付けば、逃げるように走っていた。
 誰にも見つからないように、誰も見つけてしまわないように、走っていた。


 けれど、見つけてしまった。出会って、しまった。

 知らない内に、第七学区まで来ていたらしい。
 第七学区。『彼ら』の住む場所。

神裂「――――あ、あ」

 分かっていた。
 こうなるかも知れないという可能性を、分かっていた。
 でも、何とかしてみせる、と思っていた。
 必ず救ってみせる、と思っていた。

神裂「――――つち、みかど」 

 でもやっぱり、何も出来なくて。
 気が付けば、世界は絶望に満たされていた。

 どうして、こうなってしまったのか。
 私の所為だ。
 私の所為だ。私の所為だ。私の所為だ。
 救える力があったのに。救わなければいけなかったのに。
 逃げていた、自分のせいだ。

土御門「――――にゃあ」

 土御門元春は、変わり果てた姿で、立っていた。
 目からは赤い水を垂れ流し、全身隈なくボロボロで、立っていた。
 化物になって、立っていた。

土御門「ねーぇ、ちーぃん?」

 同僚で、仲間だった土御門は。
 もう、ヒトでなくなっていた。

私の所為だ。
 私の所為だ。私の所為だ。私の所為だ。
 私の所為だ。私の所為だ。私の所為だ。私の所為だ。私の所為だ。

 何もしなかったから。逃げたから。
 五和からも、自分からも。

神裂「ううううううあああああああああああああああッッッッ!!!!!」

 神裂は、耐えられない。耐えられなかった。

 また、逃げ出した。土御門から、背を向けて、全速力で、逃げた。

 土御門には追いつけない速度。魔術での追撃もない。
 神裂は逃げる。逃げて、逃げて、逃げ続ける。

 一体、いつまで逃げ続ければいいのか。神裂には、分からない。

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最終更新:2010年11月07日 05:47
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