雨が激しくアスファルトの路面を叩く。
霧雨程度だったはずが、次第に雨脚を強め、今や土砂降りと言っても過言ではないくらいに降りしきっている。
しかし、御坂美琴には、そんな激しい雨ですらも、意識の外だった。
御坂美琴は、立ち尽くしている。
傷だらけで地面に倒れている白井黒子に、右掌を向けたまま、立ち尽くしている。
右肩の傷は既に塞がっていて、痛みもないようだ。
美琴「……黒子……」
かすかに呟いた声は、雨音にかき消されて、白井の耳には届かない。
初春と佐天の二人組と別れた後、御坂は周囲の『変わってしまった』人間達を片っ端から電撃で昏倒させていった。
決して死なない程度に、しかし人間を気絶させるには十分な威力の電撃。
御坂にとっては、全く難しくない範囲の能力行使である。
暫くして、白井が御坂の目の前に現れた。
空間移動(テレポート)を使ったのだろう、御坂から約20メートルほど離れた場所に、前触れもなく出現した。
その姿を見て、御坂は一瞬ぎょっとした。
手に、顔に、身体に、制服に、あらゆる場所に、御坂の私物がこれみよがしに飾り付けられていたのだ。
先ほど落としてきた通学用のバッグの中に入っていた物だろう。
しかし、御坂がひるんだのも一瞬の事。
白井が更に空間移動(テレポート)を使用して、御坂に攻撃を仕掛けてくる前に、
御坂は、手に持っていたコインを、白井の近くの地面目掛けて撃ち放った。
『超電磁砲(レールガン)』。
御坂美琴の異名にもなっている、十八番の攻撃能力である。
電位差のある2本の電磁レールを作り出し、弾丸を打ち出す事によって、レールと弾丸の間に生まれる磁場の力で弾丸を超加速させる。
初速ならば音速すら超え、コイン程度の物体でも、人間1人くらいなら『消し飛ばす』ことさえ出来る。
その超電磁砲(レールガン)が、アスファルトの地面に放たれる。
言うまでも無く、地面は爆音と共に砕け、アスファルトは瞬間的に溶解して周囲に飛散する。
その衝撃と飛礫が、白井を襲う。
その結果が、今の状態。
御坂は無傷で白井の前に立ち、白井はボロボロで地に伏せている。
美琴「黒子―――」
御坂は、もう一度、白井に呼び掛ける。
聞こえていないだろう、と分かっていても。
美琴「―――絶対に、元に戻してあげるから。少し、待ってなさい」
そう言って、御坂は笑った。
子供に言い聞かせるように、安心させるように、微笑みかけた。
そして御坂は、白井の傍に屈みこみ、頭に掌を当て、軽い電流を――――
美琴「―――え?」
御坂の身体が、崩れ落ちる。
美琴「――――」
何よコレ、と言おうとしても、喉が動かない。
頭が。頭が、割れるように痛い。
胸が苦しい。体中が焼けるように熱い。
美琴「――――」
おかしい。何が起こっているのか、よく分からない。
身体はどこも悪いところはなかったはずだ。
病気なんてしていない。
右肩の怪我だって、今はもう治っている。
美琴「―――?」
治っている。
右肩の、怪我。
鉄矢が完全に貫通していた、右肩が?
それは、おかしくないだろうか。
怪我をしたのはいつだ。ほんの、数時間前ではなかったか。
白井に肩を貫かれて、それからろくに治療も止血もせずに、ひたすら逃げ続けた。
いつのまにか痛みが引いていたから、そのままにしていた。
そのまま。 鉄矢だって、抜いた覚えもない。
でも、今、右肩には、鉄矢どころか、傷跡すらない。
完全に、治っている。
何故?
それは、多分――――
白井「 お ねエ サ マ 」
最終更新:2010年11月07日 05:24