赤い雨が、降っている。
赤い水は、大人の足首ほどの高さまで溜まって、川のように路面を流れていく。
赤い水に満たされた世界、その中に。
黒い聖人と、白い悪魔が、立っていた。
神裂火織と、一方通行(アクセラレータ)が、立っていた。
一方通行「ヒャ」
一方通行が、口を歪める。
咥内に溜まっていた赤い水が、ごぽり、と口の端から溢れ出した。
一方通行「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハヒヒャヒヒャヒヒャ
ハハヒヒャヒヒハヒャヒヒヒャヒヒヒャヒャヒヒャヒヒャヒヒ
ヒャヒヒャヒアヒャヒャヒャヒャヒャヒャアアアアアアアアア」
学園都市最強の能力者『一方通行』は、既に死んでいる。
そこにいるのは、一方通行という皮を被った、異形の存在。
神裂は、何も言わず、七天七刀を構える。
恐らくは自分と同年代か、或いは年下であろうという少年に向けて、躊躇無く刃を向ける。
容赦無く、殺意を向ける。
否。躊躇などできない。容赦などできない。
神裂火織は、一方通行の名も、能力も、存在すら、知らなかった。
それでも、相対した瞬間に理解出来た。
この白髪の少年は、間違いなく、今日戦ってきたどの異形よりも、遥かに強い――――
それでも、神裂は敗けられない。
この少年が強ければ強いほど、神裂は、絶対に敗北するワケにはいかない。
白髪の少年は、未だ人間としての形を保っている。
つまり、屍人になってまだ時間はそれほど経過していない、ということ。
絶望の際まで、人間として抗っていた、ということ。
しかし、屍人になってしまった以上は、その強さが、誰かを傷付けてしまう。
生きていたかった場所を、護りたかった誰かを、傷付けてしまう。
神裂火織は、敗けられない。
一方通行「ラァァァァァァァスゥゥゥゥゥゥゥゥトォォォォォォォオオオオオオダアアアアアアア」
敗けては、いけない。
この少年が、きっと護りたかっただろう信念(もの)を、護る為に。
最終更新:2010年11月07日 05:11