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御坂11:53:46  >  第十八学区

初春飾利と佐天涙子は、廃ビル二階の片隅で、恐怖と疲弊に耐えていた。


佐天「大丈夫だよ、初春……学園都市には強い人も一杯いるしさ、警備員(アンチスキル)だって、皆が皆ああなってるわけじゃないし……
    それに、ほら、御坂さんだって絶対戻ってくるってば!」


 自身もセミロングの黒髪を震わせながら、佐天は初春を懸命に励ます。


初春「……っ、っ……」


 初春はそんな佐天の言葉を聞きながら、何とか涙を流すまいと堪えていた。


初春(そうだ……御坂さんも、白井さんも、私なんかとは比べ物にならないくらい強い人たちなんだから、きっと大丈夫。
    だから、あの二人ともう一度会えるまで、私も何とか頑張らなくちゃ……!)


初春「佐天さんっ!」


佐天「えう!? ど、どしたの初春」


初春「……頑張りましょう! きっと、すぐに御坂さんたちが来てくれますよ!」


 そう言って、初春は佐天の片手を、自分の両手で強く握った。
 佐天の手は、震えている。
 でもそれ以上に、初春の手も震えていた。


佐天「……ぷ」


 その様子を見て、


佐天「あは、アハハハハ!」


 佐天は、口を開けて笑った。
 大きな笑い声が廃ビルの中に反響する。


初春「な、何がおかしいんですか佐天さん! というか、声大きいです、ボリューム下げてくださいっ!」


 初春は慌てて佐天の口を手で塞ぐ。
 それでも、佐天は初春の手の中で、尚も笑いを止めようとしない。


佐天「うくくくく、いやいや、ごめんね初春。なんかおかしくなっちゃってさ。
    ……うん、そうだよね。きっと、御坂さんも、白井さんも、来てくれるよね」


初春「……はい!」


 そして、初春と佐天はお互いの手を、一層強く握った。
 手の震えは、止まっている。


カツン、と誰かの足音が、ビル内に反響した。



初春「!」
佐天「!」


 二人の身体が緊張で凝固する。


 カツン、カツン。
 高い音。女子中学生の二人がよく耳にする、革靴の足音だ。


初春「佐天さん、これって……」


佐天「シッ! 静かにっ」


 足音は段々と、階段を上って近付いてくる。
 二人は、いつでも逃げ出せるよう、立ち上がって構えておく。


 足音は、階段を登りきって、二階へやってきた。
 そして、フロア部分の入口で立ち止まる。



 沈黙。激しい雨音が、ビル壁を叩く音だけがこだまする。


 そして。



美琴「佐天さぁーん、うーいはーるさーん?」



初春「……ぁ、御坂、さんだ」


 二人の身体から、一気にこわばりが抜けた。
 初春は安堵のあまり、泣き出しそうな顔で腰を抜かしている。
 佐天は、すぐさま足音の元へ駆けていった。


佐天「御坂さんっ! 無事だったんで―――」



美琴「    ア゛ は ♪」



 そこで佐天が見た、御坂の顔は――――


―――ォォォォオオォォ―――



 数分後。
 サイレンのような音が、学園都市中に鳴り響く中。
 御坂は、十八学区の街路を歩いていた。 雨に濡れるのも、まるで気にせずに。


 いつもの通学路を歩いていた。
 いつもの道を、いつものように、歩いていた。



 ふと、御坂の視線の先で、一人の男子学生が街路を走って行った。
 ツンツンの黒髪が、雨に濡れて萎れている。相変わらず、目つきが悪い。必死に何かを探している様子だ。
 その顔に、御坂はイヤと言うほど見覚えがある。


 御坂は、その少年を見て、笑った。いつもとは違って、嬉しそうに、笑った。
 赤い液体を顔から垂れ流し、幸せそうに、笑った。


美琴「  あは   うふ   うふふ    とぉま   とぉま   かみ、じょー?
    うふ        うふふふふふふふふふふふふふふふ」


―――ォォォォオオオオオォォォォ―――


 三度目のサイレンが、雨音を掻き消すように、学園都市に響き渡っていた。
最終更新:2010年11月07日 05:25
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