アットウィキロゴ

神裂21:21:42  >  第十五学区

神裂「――――ふ、ぅぅ」

 神裂は、漸く周囲の屍人全てを殺し終え、息を吐いた。
 七天七刀に付いた血糊と雨水を払い落し、鞘に納める。

 ステイルと別れて早一時間も時間が経過している。
 次から次へとひっきりなしに押し寄せる屍人達を、丁寧に、正確に、斬殺し続けた結果、ここまでの時間を要してしまった。

 しかし、これで当分の間、この屍人達は復活しないだろう。
 仮に復活出来たとしても、十何時間、或いは一日程度はかかる筈だ。


 神裂の周囲は、粉々に切り刻まれた肉片で埋め尽くされている。


神裂「――――」

 その惨状を改めて俯瞰して、神裂は目を伏せた。

 間違ってなんかいない。
 これは、間違った選択なんかじゃ、ない。

 自分への言い訳のように、自分へと言い聞かせるように。
 呟いた言葉は、雨音の中へと溶けるように消えていく。



神裂「…………『あの子』を、探さないと」


 ゆらゆらと、幽鬼のような足取りで、神裂は歩き出した。

 目指す場所は、この街の中心部――――第一学区。
 学園都市の主機関が集中する、政治的中心地でもある第一学区は、学園都市のおよそ中心に位置してる。

 其処を目的とするのに、確固たる理由があるワケではなかった。
 ただ単純に、この異界の真央へ向かえば、『根源』を見つける事が出来るのではないか、という希望だけ。


 サアサアと降り注ぐ小雨。赤い水に濡れる街並み。

 神裂は独り、歩き続けた。


 幾度か、道端を歩いていた屍人や、空を巡回していた羽根付きの屍人に発見されたりもしたが、
 最早刀を抜く事すら煩わしく、素の拳で顔面を叩き潰し、心臓を胸板ごと踏み潰した。

 そうやって、救えなかった人間達は、ゴミのように、潰れて死んでいく。

 否。ゴミのように潰れても、彼らは死なない。
 それが、呪いだ。死の救済すらも否定される、不死の呪い。

 神裂は、歩いていく。
 もう決して救われない人達を、その手で捻じ伏せながら。


 ふと、神裂の視界の端に、何かが写った。

 とっくに日は落ちて、辛うじて所々の街灯だけが光源となっているだけの夜の街だが、
 聖人の人間離れした視力が、闇の中からその『白色』を捉えた。

神裂「――――ッッ!!」

 視えたのは、純白の修道服。それを着て歩く、小柄な人間。
 頭であろう位置にはフードのような物が乗せられ、その隙間からは流れるように長い、銀色の髪が覗いていた。

 そんな人物が、今この学園都市に、二人といるだろうか。
 いない。いる筈がない。

 つまり、アレは―――――

神裂「インデックスゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!!」

 叫んで、跳んだ。

 一瞬、その白が見えた場所まで一秒とかからずに、神裂は跳ねた。


 けれど、もう其処には、誰も居なかった。
 まるで幻だったかのように、何の跡も残さず、白の少女は消えていた。

神裂「…………幻なんかじゃ、ない」

 疲れが見せた幻覚でも、雨の中で別の物を見間違えた訳でもない。
 確かに、今、此処に、少女はいた。

 禁書目録(インデックス)。
 十万三千冊の魔導書を有する、魔神となった少女。

 そして、この異変を引き起こした、元凶の少女


神裂「……いん、でっくす……っ」


 誰もいない街路傍で、神裂は立ち尽くしていた。
 独り、ずっと、立ち尽くしていた。
最終更新:2010年11月07日 06:02
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。