今回あらすじを担当する藤正透だ!前回は紫水が新月?とかいう組織のメンバーと会ったんだったな。んで、俺は何か怪しい魚のせいで怪物になっちまった上に今目の前の白い女の子に殺されかけてる!ギャー!どうなっちまうんだ第八話!
雪花が倒れた藤正に向けて“マタン”を振り下ろし、その刃が藤正を切り裂こうと迫った瞬間。
ガキィンと。振り下ろされた“マタン”の刃は藤正に当たる前に横からの斧によって受け止められる。
「へっ...?」
視線を移すとそこには変身した龍香がいた。龍香は“タイラントアックス”で“マタン”の刃を弾くと、藤正を庇うように前に立つ。
「アンタ....ッ!」
「ちょ、ちょっと待って!この人...シードゥスは敵じゃないの!スゴく深い事情があって。」
「シードゥス相手に深い事情って何よ!」
雪花は“マタン”を振り払って龍香に威嚇する。今は龍香に本気で攻撃するつもりはないようだが、それもいつまで持つことか。とにかく一刻も早くこの戦闘を中断せねば。
「か、彼は藤正!藤正君!とある事情でシードゥスになっちゃったの!」
「え、なんで俺の名前を?」
藤正が龍香しか知らないハズの情報を知っている目の前の少女に疑問を持つ。
「うっ、そ、その!り、龍香ちゃんから相談を受けてぇ...」
「あ、もしかして紫水の奴が言ってた相談出来る人って!」
「そ、そうなの。私が相談相手よ。」
咄嗟に嘘をついてなんとか藤正を誤魔化すが雪花は戦闘の意思を解除する気は無いようで、武器を構えたままジッとこちらをにらみ続けている。
そして雪花は切り捨てるように龍香の後ろにいる藤正を見ながら言う。
「信じられないわ。だってソイツ昨日私と嵩原を襲ったのよ。しかも何の前触れもなく、よ。」
「え?」
「や、やってない!俺はそんなことはやってない!」
藤正は手を振って否定する。だが雪花がシードゥス関連のことで嘘をつくとは思えない。
「それってホントのこと?」
「シードゥスのことで嘘をつく意味が無いわ。つまりソイツもぶっ潰すべき対象ってことよ。」
「き、昨日の何時位なの!」
「18時30位よ。」
「そ、その時間帯!藤正君は家にいたハズよ!」
「じゃあアンタはソイツをずっと見てたの?」
「そ、それは...」
「ほら。確証が持てないんじゃない。」
「うっ」
言葉に詰まる龍香。雪花は説き伏せたと言わんばかりに首を振ると“マタン”を龍香に突きつける。
「これが最後の警告よ。そこを退きなさい。」
「ぐっ...でも...」
《チッ、マジで頭硬ェな...。》
あまりの意固地さに二人が頭を悩ませ、どうするか決めかねている中、藤正はそんなやり取りを見ている内に段々と苛立ちが募っていく。
あの白い装甲の少女、恩人の少女がせっかく説明をしてあげているのに全く話を聞かず屁理屈をコネて恩人の少女を困らせている。許せない。イライラする。ムカムカが止まらない。
そんなことは露知らず雪花は“マタン”を龍香に突きつけたまま言う。
「5秒あげるわ。私が5秒数える内に選びなさい。」
《おい!お前じゃ話にならん!山形か嵩原に話をさせろ!》
「必要ないわ。現場判断で上等よ。」
「友達を殺す気!?」
「シードゥスの友達を作った覚えはないわ!」
苛立った雪花が“マタン”を地面に叩きつけた瞬間だった。苛立ちが頂点に達し藤正の中で何かが切れた。
「うぉ、ウオオ、ウオオオオオオ!!」
「!」
「な、何!?」
突然の咆哮に次の瞬間藤正は大きく跳躍すると雪花に飛び掛かる。そして身体を捻りながら思い切り雪花を蹴りつける。
「ぐゥッ!?」
雪花は蹴られる寸前に“マタン”で防御したが後ろへと大きく吹っ飛ぶ。そのまま背中から地面に叩きつけられ雪花の身体に衝撃が走る。
「ふ、藤正君!?」
「ウオオオオオオオ!」
藤正は吼えながら雪花へと突っ込んでいく。雪花が立ち上がるより先に藤正は雪花の顔面を掴んで地面に叩きつけるとそのままマウントポジションを取り、反撃しようとした右腕をもう片方の手で掴んで拘束する。
「この...野郎ォ!」
「藤正君!やめて!」
《どうしたんだアイツ!》
藤正の突然の暴挙に驚愕の余り一瞬動きが止まる。だが雪花の苦悶の声に、ハッと我に帰ると雪花に暴行しようとする藤正を止めようとした瞬間だった。上空から藤正に向けて羽根が降り注ぎ藤正に突き刺さる。
「グアアァァッ!」
流石に堪らないと藤正はマウントポジションを止めて雪花から転がるようにして離れる。
「藍!大丈夫か!」
上空を見ると黒い翼を生やした黒鳥が滞空していた。黒鳥は羽根が突き刺さり悶える藤正に向かって急降下すると思い切り蹴り飛ばす。
「藤正君!」
「アンタ...おっそいのよ!」
『スネーク』
黒鳥のマスクが爬虫類の口のようになり、翼が消え、代わりに尻尾が生える。
「それは悪かった!紫水は雪花をカバーしろ!」
黒鳥はそう叫ぶと尻尾を縦横無尽に動かし藤正を何度も尻尾で打ち据える。
尻尾に何度も打ち据えられ藤正はグロッキーでフラフラとなっており素人と龍香の目から見てもとてももう抵抗出来そうには見えないし攻撃されれば死んでしまうだろう。
「ごっ...」
「トドメだ!」
崩れ落ちるように倒れた藤正に黒鳥がトドメを刺そうと全体重を乗せた一撃をお見舞いしようとした瞬間だった。
「ダメ!」
「なっ」
横から飛び出してきた龍香に黒鳥は突き飛ばされる。流石に不意の妨害には黒鳥も対応出来ず地面に倒れ込む。
「龍香あんた!」
「ご、ごめん、ごめんなさい。でもだってこれ以上は藤正君が死んじゃう...!」
雪花は立ち上がると近づいて龍香の胸ぐらを掴む。龍香が謝る中藤正の身体が限界を迎えたのか異形の姿から元の人間の姿へと戻る。
「...人間に戻った?」
人間の姿に戻り倒れ込む藤正の姿に雪花は驚愕の色が浮かぶ。
「...マジ...だったの?」
「...うん。」
雪花は龍香から手を離す。そして龍香に突き飛ばされた黒鳥は頭を擦りながら立ち上がり、この状況に疑問符を浮かべる。
「どういうことだ...?」
「ちょっと誤解があって、その。私の友達が何者かにシードゥスにされたみたいで。」
そんな黒鳥に龍香は事情を話す。だが黒鳥は半信半疑のようで何か納得しかねている様子だ。
「...そうか。成る程な、だが...。」
『スパイダー』
黒鳥のマスクが今度は蜘蛛のようになる。そして変貌した両腕から糸を発射し気絶している藤正を絡めとり拘束する。
「何をするんですか!」
「...君の友達と言うことは分かった。だが彼は昨日は藍と嵩原さんを襲い、さっきも藍を攻撃した。念のため拘束させて貰う。」
龍香の抗議に黒鳥は糸を切り取りながら答える。龍香は何か言いたげに黒鳥を見るが、さっきのことを見るに黒鳥や雪花が警戒するのは無理は無いように思えた。
「...謝らないわよ。私昨日今日ソイツのせいで死にかけたんだから。」
雪花はつっけんどんにそう言うと変身を解除し、その場をあとにする。
「...。」
《...しょうがねぇさ。俺達もアイツが雪花を襲うのを見ちまったんだから...。》
龍香も悲壮な面持ちのまま変身を解除し、黒鳥は藤正を抱えたまま何処かへと飛び去る。
龍香はそれを黙って見ていることしか出来なかった。
ガキィンと。振り下ろされた“マタン”の刃は藤正に当たる前に横からの斧によって受け止められる。
「へっ...?」
視線を移すとそこには変身した龍香がいた。龍香は“タイラントアックス”で“マタン”の刃を弾くと、藤正を庇うように前に立つ。
「アンタ....ッ!」
「ちょ、ちょっと待って!この人...シードゥスは敵じゃないの!スゴく深い事情があって。」
「シードゥス相手に深い事情って何よ!」
雪花は“マタン”を振り払って龍香に威嚇する。今は龍香に本気で攻撃するつもりはないようだが、それもいつまで持つことか。とにかく一刻も早くこの戦闘を中断せねば。
「か、彼は藤正!藤正君!とある事情でシードゥスになっちゃったの!」
「え、なんで俺の名前を?」
藤正が龍香しか知らないハズの情報を知っている目の前の少女に疑問を持つ。
「うっ、そ、その!り、龍香ちゃんから相談を受けてぇ...」
「あ、もしかして紫水の奴が言ってた相談出来る人って!」
「そ、そうなの。私が相談相手よ。」
咄嗟に嘘をついてなんとか藤正を誤魔化すが雪花は戦闘の意思を解除する気は無いようで、武器を構えたままジッとこちらをにらみ続けている。
そして雪花は切り捨てるように龍香の後ろにいる藤正を見ながら言う。
「信じられないわ。だってソイツ昨日私と嵩原を襲ったのよ。しかも何の前触れもなく、よ。」
「え?」
「や、やってない!俺はそんなことはやってない!」
藤正は手を振って否定する。だが雪花がシードゥス関連のことで嘘をつくとは思えない。
「それってホントのこと?」
「シードゥスのことで嘘をつく意味が無いわ。つまりソイツもぶっ潰すべき対象ってことよ。」
「き、昨日の何時位なの!」
「18時30位よ。」
「そ、その時間帯!藤正君は家にいたハズよ!」
「じゃあアンタはソイツをずっと見てたの?」
「そ、それは...」
「ほら。確証が持てないんじゃない。」
「うっ」
言葉に詰まる龍香。雪花は説き伏せたと言わんばかりに首を振ると“マタン”を龍香に突きつける。
「これが最後の警告よ。そこを退きなさい。」
「ぐっ...でも...」
《チッ、マジで頭硬ェな...。》
あまりの意固地さに二人が頭を悩ませ、どうするか決めかねている中、藤正はそんなやり取りを見ている内に段々と苛立ちが募っていく。
あの白い装甲の少女、恩人の少女がせっかく説明をしてあげているのに全く話を聞かず屁理屈をコネて恩人の少女を困らせている。許せない。イライラする。ムカムカが止まらない。
そんなことは露知らず雪花は“マタン”を龍香に突きつけたまま言う。
「5秒あげるわ。私が5秒数える内に選びなさい。」
《おい!お前じゃ話にならん!山形か嵩原に話をさせろ!》
「必要ないわ。現場判断で上等よ。」
「友達を殺す気!?」
「シードゥスの友達を作った覚えはないわ!」
苛立った雪花が“マタン”を地面に叩きつけた瞬間だった。苛立ちが頂点に達し藤正の中で何かが切れた。
「うぉ、ウオオ、ウオオオオオオ!!」
「!」
「な、何!?」
突然の咆哮に次の瞬間藤正は大きく跳躍すると雪花に飛び掛かる。そして身体を捻りながら思い切り雪花を蹴りつける。
「ぐゥッ!?」
雪花は蹴られる寸前に“マタン”で防御したが後ろへと大きく吹っ飛ぶ。そのまま背中から地面に叩きつけられ雪花の身体に衝撃が走る。
「ふ、藤正君!?」
「ウオオオオオオオ!」
藤正は吼えながら雪花へと突っ込んでいく。雪花が立ち上がるより先に藤正は雪花の顔面を掴んで地面に叩きつけるとそのままマウントポジションを取り、反撃しようとした右腕をもう片方の手で掴んで拘束する。
「この...野郎ォ!」
「藤正君!やめて!」
《どうしたんだアイツ!》
藤正の突然の暴挙に驚愕の余り一瞬動きが止まる。だが雪花の苦悶の声に、ハッと我に帰ると雪花に暴行しようとする藤正を止めようとした瞬間だった。上空から藤正に向けて羽根が降り注ぎ藤正に突き刺さる。
「グアアァァッ!」
流石に堪らないと藤正はマウントポジションを止めて雪花から転がるようにして離れる。
「藍!大丈夫か!」
上空を見ると黒い翼を生やした黒鳥が滞空していた。黒鳥は羽根が突き刺さり悶える藤正に向かって急降下すると思い切り蹴り飛ばす。
「藤正君!」
「アンタ...おっそいのよ!」
『スネーク』
黒鳥のマスクが爬虫類の口のようになり、翼が消え、代わりに尻尾が生える。
「それは悪かった!紫水は雪花をカバーしろ!」
黒鳥はそう叫ぶと尻尾を縦横無尽に動かし藤正を何度も尻尾で打ち据える。
尻尾に何度も打ち据えられ藤正はグロッキーでフラフラとなっており素人と龍香の目から見てもとてももう抵抗出来そうには見えないし攻撃されれば死んでしまうだろう。
「ごっ...」
「トドメだ!」
崩れ落ちるように倒れた藤正に黒鳥がトドメを刺そうと全体重を乗せた一撃をお見舞いしようとした瞬間だった。
「ダメ!」
「なっ」
横から飛び出してきた龍香に黒鳥は突き飛ばされる。流石に不意の妨害には黒鳥も対応出来ず地面に倒れ込む。
「龍香あんた!」
「ご、ごめん、ごめんなさい。でもだってこれ以上は藤正君が死んじゃう...!」
雪花は立ち上がると近づいて龍香の胸ぐらを掴む。龍香が謝る中藤正の身体が限界を迎えたのか異形の姿から元の人間の姿へと戻る。
「...人間に戻った?」
人間の姿に戻り倒れ込む藤正の姿に雪花は驚愕の色が浮かぶ。
「...マジ...だったの?」
「...うん。」
雪花は龍香から手を離す。そして龍香に突き飛ばされた黒鳥は頭を擦りながら立ち上がり、この状況に疑問符を浮かべる。
「どういうことだ...?」
「ちょっと誤解があって、その。私の友達が何者かにシードゥスにされたみたいで。」
そんな黒鳥に龍香は事情を話す。だが黒鳥は半信半疑のようで何か納得しかねている様子だ。
「...そうか。成る程な、だが...。」
『スパイダー』
黒鳥のマスクが今度は蜘蛛のようになる。そして変貌した両腕から糸を発射し気絶している藤正を絡めとり拘束する。
「何をするんですか!」
「...君の友達と言うことは分かった。だが彼は昨日は藍と嵩原さんを襲い、さっきも藍を攻撃した。念のため拘束させて貰う。」
龍香の抗議に黒鳥は糸を切り取りながら答える。龍香は何か言いたげに黒鳥を見るが、さっきのことを見るに黒鳥や雪花が警戒するのは無理は無いように思えた。
「...謝らないわよ。私昨日今日ソイツのせいで死にかけたんだから。」
雪花はつっけんどんにそう言うと変身を解除し、その場をあとにする。
「...。」
《...しょうがねぇさ。俺達もアイツが雪花を襲うのを見ちまったんだから...。》
龍香も悲壮な面持ちのまま変身を解除し、黒鳥は藤正を抱えたまま何処かへと飛び去る。
龍香はそれを黙って見ていることしか出来なかった。
だがその光景を物影から眺める者がいた。
「奴の浸食度を増幅させるためにダストを放ったが...これは思わぬ収穫だ。」
魚の怪物のような外見のシードゥス、アルレシャだ。アルレシャは予想外の出来事に思わずほくそ笑む。
アルレシャには侵食体が何処にいるのかある程度感知出来るのだ。捕獲したと言うことは何処かしらの拠点に向かうハズであり、その拠点の位置を絞り込めると言うわけだ。
「拠点の位置が分かればあのボンクラも用済み、トゥバンも出し抜けて一石二鳥だ...!」
アルレシャはトゥバンがどうにも気に食わなかった。ツォディアではない癖にやたらと腕が立ち、プロウフからも一目置かれ、馴れ馴れしく、特別視される彼が煩くてしょうがない。
それどころか奴は自分達を下に見ている気もある。ツォディアではない“イチシードゥス”のクセに、だ。
恐らく奴が自分の申し入れに抗議しなかったのはアルレシャは失敗すると見据えてのことだろう。大いに気に食わない、
「見ていろトゥバン。お前の思い通りにはいかんぞ。」
そう呟くとアルレシャは水飛沫をあげその場から姿を消した。後に残ったのは水溜まりだけであった。
「奴の浸食度を増幅させるためにダストを放ったが...これは思わぬ収穫だ。」
魚の怪物のような外見のシードゥス、アルレシャだ。アルレシャは予想外の出来事に思わずほくそ笑む。
アルレシャには侵食体が何処にいるのかある程度感知出来るのだ。捕獲したと言うことは何処かしらの拠点に向かうハズであり、その拠点の位置を絞り込めると言うわけだ。
「拠点の位置が分かればあのボンクラも用済み、トゥバンも出し抜けて一石二鳥だ...!」
アルレシャはトゥバンがどうにも気に食わなかった。ツォディアではない癖にやたらと腕が立ち、プロウフからも一目置かれ、馴れ馴れしく、特別視される彼が煩くてしょうがない。
それどころか奴は自分達を下に見ている気もある。ツォディアではない“イチシードゥス”のクセに、だ。
恐らく奴が自分の申し入れに抗議しなかったのはアルレシャは失敗すると見据えてのことだろう。大いに気に食わない、
「見ていろトゥバン。お前の思い通りにはいかんぞ。」
そう呟くとアルレシャは水飛沫をあげその場から姿を消した。後に残ったのは水溜まりだけであった。
「...どういうことだい?」
会議室のモニター越しに本部の一室に拘束された藤正を見て、嵩原が複雑な顔をする。
昨日龍香から相談ごとがあると言われ、今朝待ち合わせ場所に行ったらすぐに本部から緊急招集がかけられ、そして来てみれば教え子がシードゥスの疑惑をかけられ拘束されている。
まさかのシードゥスの捕獲、そして龍香曰く人が変身したらしい。前例にない事態に“新月”の面々が会議室に顔を揃わせていた。
「見りゃ分かるでしょ?昨日の襲撃の犯人だったのよ。」
「ちょっと!そんな言い方...」
「実際にアンタの目の前で私に襲いかかったじゃない。」
「それは、そうだけど...」
雪花はそっぽを向きながら突き放すように言う。それに対し龍香は抗議するが雪花の一言に言い返せずそのまま黙りこくる。
「....山形さん少し彼と話をさせてくれませんか?」
「....。」
嵩原は山形に向かって言う。山形は腕を組み、考える。
「彼はたまに悪戯をしますけど、普段は友達想いで優しい子です。そんな彼がこんなことをするとは思えない。」
「そうです!藤正君はそんなことをするような人じゃないです!」
《それにあの坊主の言ってることが本当なら本体が別にいるハズだ。》
嵩原の提案に龍香とカノープスも続く。
「そうねぇ。もしホントだったら彼も被害者なワケだし。せめて拘束を解いてあげたら?」
「しかし仮に被害者だとしても藍に攻撃した事実は変わらない。万が一を考えて拘束を解くことに俺は反対です。」
風見の発言に黒鳥が異議を唱える。山形はしばし黙って考えた後に口を開く。
「今は判断を下すには情報が少ないわ。だから嵩原君。彼からできる限りの情報を引き出して。それらを吟味して今後の処遇を決めます。」
「...了解です。」
嵩原は立ち上がるとそのまま藤正の元へと行こうとする。
「わ、私も行きます!」
嵩原に続くように龍香も会議室を後にする。
「...嵩原さんも、龍香ちゃんも必死ね。」
「そりゃそうッスよ。嵩原さんからしたら大切な教え子、紫水ちゃんからすれば大事な友達らしいですし。」
火元と林張がそう話す中、雪花は立ち上がると扉へと向かう。
「雪花ちゃんもクラスメイトちゃんのとこ行くの?」
「...別にどうだっていいでしょ。」
そうぶっきらぼうに言って雪花は会議室を後にする。
「...嫌な思いさせちゃったわね。」
「山形さん...」
「本来貴方達子供を守るのが大人の役目なのに。ホント、出来ることなら変わってあげたいわ。」
自嘲しながら山形は椅子にもたれ掛かる。その言葉に黒鳥を除く全員が顔を伏せる。
「...仕方ないですよ。俺達は“選ばれてしまった”だけなんですから。」
黒鳥が会議室の皆に励ますように言う。だが結局彼女らが戦わなければならないことに変わりない。
「...ホント、嫌な役目ね。」
山形は目を細めながら静かにボヤいた。
会議室のモニター越しに本部の一室に拘束された藤正を見て、嵩原が複雑な顔をする。
昨日龍香から相談ごとがあると言われ、今朝待ち合わせ場所に行ったらすぐに本部から緊急招集がかけられ、そして来てみれば教え子がシードゥスの疑惑をかけられ拘束されている。
まさかのシードゥスの捕獲、そして龍香曰く人が変身したらしい。前例にない事態に“新月”の面々が会議室に顔を揃わせていた。
「見りゃ分かるでしょ?昨日の襲撃の犯人だったのよ。」
「ちょっと!そんな言い方...」
「実際にアンタの目の前で私に襲いかかったじゃない。」
「それは、そうだけど...」
雪花はそっぽを向きながら突き放すように言う。それに対し龍香は抗議するが雪花の一言に言い返せずそのまま黙りこくる。
「....山形さん少し彼と話をさせてくれませんか?」
「....。」
嵩原は山形に向かって言う。山形は腕を組み、考える。
「彼はたまに悪戯をしますけど、普段は友達想いで優しい子です。そんな彼がこんなことをするとは思えない。」
「そうです!藤正君はそんなことをするような人じゃないです!」
《それにあの坊主の言ってることが本当なら本体が別にいるハズだ。》
嵩原の提案に龍香とカノープスも続く。
「そうねぇ。もしホントだったら彼も被害者なワケだし。せめて拘束を解いてあげたら?」
「しかし仮に被害者だとしても藍に攻撃した事実は変わらない。万が一を考えて拘束を解くことに俺は反対です。」
風見の発言に黒鳥が異議を唱える。山形はしばし黙って考えた後に口を開く。
「今は判断を下すには情報が少ないわ。だから嵩原君。彼からできる限りの情報を引き出して。それらを吟味して今後の処遇を決めます。」
「...了解です。」
嵩原は立ち上がるとそのまま藤正の元へと行こうとする。
「わ、私も行きます!」
嵩原に続くように龍香も会議室を後にする。
「...嵩原さんも、龍香ちゃんも必死ね。」
「そりゃそうッスよ。嵩原さんからしたら大切な教え子、紫水ちゃんからすれば大事な友達らしいですし。」
火元と林張がそう話す中、雪花は立ち上がると扉へと向かう。
「雪花ちゃんもクラスメイトちゃんのとこ行くの?」
「...別にどうだっていいでしょ。」
そうぶっきらぼうに言って雪花は会議室を後にする。
「...嫌な思いさせちゃったわね。」
「山形さん...」
「本来貴方達子供を守るのが大人の役目なのに。ホント、出来ることなら変わってあげたいわ。」
自嘲しながら山形は椅子にもたれ掛かる。その言葉に黒鳥を除く全員が顔を伏せる。
「...仕方ないですよ。俺達は“選ばれてしまった”だけなんですから。」
黒鳥が会議室の皆に励ますように言う。だが結局彼女らが戦わなければならないことに変わりない。
「...ホント、嫌な役目ね。」
山形は目を細めながら静かにボヤいた。
...くん!..正くん!
誰かが自分を呼んでいる。聞いたことのある声だ。
澱んでいた意識が徐々に鮮明になっていく。その声に応えるように重たい瞼を開くとそこには嵩原がいた。
「嵩原センセー!!?ど、どうして」
身を起こそうとして自分が糸のようなもので完全に拘束されていることに気づく。
「な、なんで俺縛られて...」
「落ち着くんだ藤正君。君は自分が今まで何をしてたか何処まで思い出せる?」
藤正に嵩原が尋ねる。何処まで答えて良いか悩んだようだがすぐに藤正は嵩原に数日の出来事を話し始める。
「お、俺。一昨日友達と遊んだ帰り道に、変な魚みたいな奴に会って、そしたらなんか怪物に変われるようになってて、昨日はそれで紫水を助けて、で今日変な奴がいたから、変身して...倒したら...女の子が乱入してきて...」
そこまで答えた瞬間藤正にあの時の記憶がフラッシュバックする。苛立ちが募って自分が自分でなくなって、制御出来なくなる感覚。まるで仄暗い海の底に沈んでしまうような感覚に藤正は途方もない恐怖を覚える。
「せ、センセ、お、俺俺、ど、どうしよう」
「落ちつくんだ。藤正君。僕の顔を見て、落ちつくんだ。深呼吸をして。」
恐怖に怯える藤正を宥めるために嵩原は藤正の顔を自分に向けさせて言葉をかけ続ける。
「大丈夫だ。僕がいる。だから落ち着いて。」
「ハァ...ハァ...」
嵩原の呼び掛けが届いたのか徐々に藤正は落ち着きを取り戻す。
「落ち着いたかい?じゃあゆっくり情報を整理していこう。まず君は一昨日怪しい人物に話しかけられ、そして何かをされたことで怪物に変身出来るようになった。」
藤正はコクリと頷く。
「そして、昨日。君はその力で紫水君を救った。ここまでは良いかい?」
その言葉にも藤正は頷いて返す。
「じゃあ次だ。君は昨日の六時から何をしていたか思い出せるかい?」
嵩原がそう問いかけると藤正は頭を捻りながら思い出すような仕草をした後、嵩原に言う。
「確か...その時スゴい疲れてて自分の部屋で7時まで寝てました。多分母さんに聞いたら分かると思う。」
「成る程...」
嵩原はそこまで聞くと思案に耽る。嵩原が襲われた時間彼は寝ていた。となるとあの時嵩原を襲ったのは別個体と言うことになる。
裏付けは得られてないため藤正が嘘をついている、もしくは勘違いしているかもしれないが、彼がそんな性格でないことは嵩原は重々承知している。
「分かった。じゃあ次だ。君は今日紫水君に呼ばれて行ったところトラブルがあったと。」
「...そうです。」
「...直球で悪いけど聞かせて欲しい。なんでその娘を襲ったんだい?」
嵩原が核心をつく質問をすると藤正は顔を伏せて、しばし黙った後、答える。
「その...せっかく俺を庇ってくれた女の子の話をその娘が聞かなくて、それに急にムカついて...段々ワケが分からなくなって。」
「襲った時の記憶がない...のかい?」
「はい、気がついたらここで縛られてて...センセー!俺、これからどうなるん...です?」
不安そうにこちらを見つめる藤正に嵩原は藤正の頭に手を置いて微笑みかける。
「安心して。ちょっと時間がかかるかもしれないけど、君を傷つけはさせないよ。」
「センセー...!」
「ちょっと待っててくれ。」
そう言って嵩原はその部屋を後にする。部屋を出ると今までのやり取りをマジックミラー越しに見ていた龍香が話し掛けてくる。
「先生!ふ、藤正君は...」
「彼には記憶の混濁が見られるね。正直ちょっと情報不足で他の人達を説き伏せるには信頼には欠ける。」
《山形は結構疑り深いし、実際に襲われた雪花と黒鳥も納得はしないだろうな。》
「そ、そんなぁ...」
悲観する龍香に嵩原は少し黙った後、話を切り出す。
「だけど一つだけ、昨日の一件は彼ではないという証拠を裏付ける方法がある。」
「え?」
「恐らく彼の話が本当だと仮定すると別の個体が存在する。その個体を見つけることが出来れば彼の無実を証明できるかもしれない。」
「ホントですか!」
「まぁ...それが出来れば昨日の一件は彼が関与してない証明に近づけるね。まぁ他にやれる事は彼の発言の裏付けかな。」
《なら話は決まりだな。俺達はその別個体の捜索。嵩原はあの小僧の証言の裏付け。》
藤正の無実の証明に光明が見え、龍香に気合いが入る。
「よーし、探すぞー!」
そう言うと龍香は脇目も振らず外へと向かう。
「...さて。後で黒鳥君にも手伝って貰うよう言おうか。」
そんな龍香の後ろ姿を眺めながら嵩原はこの事を報告するために司令室へと向かった。
誰かが自分を呼んでいる。聞いたことのある声だ。
澱んでいた意識が徐々に鮮明になっていく。その声に応えるように重たい瞼を開くとそこには嵩原がいた。
「嵩原センセー!!?ど、どうして」
身を起こそうとして自分が糸のようなもので完全に拘束されていることに気づく。
「な、なんで俺縛られて...」
「落ち着くんだ藤正君。君は自分が今まで何をしてたか何処まで思い出せる?」
藤正に嵩原が尋ねる。何処まで答えて良いか悩んだようだがすぐに藤正は嵩原に数日の出来事を話し始める。
「お、俺。一昨日友達と遊んだ帰り道に、変な魚みたいな奴に会って、そしたらなんか怪物に変われるようになってて、昨日はそれで紫水を助けて、で今日変な奴がいたから、変身して...倒したら...女の子が乱入してきて...」
そこまで答えた瞬間藤正にあの時の記憶がフラッシュバックする。苛立ちが募って自分が自分でなくなって、制御出来なくなる感覚。まるで仄暗い海の底に沈んでしまうような感覚に藤正は途方もない恐怖を覚える。
「せ、センセ、お、俺俺、ど、どうしよう」
「落ちつくんだ。藤正君。僕の顔を見て、落ちつくんだ。深呼吸をして。」
恐怖に怯える藤正を宥めるために嵩原は藤正の顔を自分に向けさせて言葉をかけ続ける。
「大丈夫だ。僕がいる。だから落ち着いて。」
「ハァ...ハァ...」
嵩原の呼び掛けが届いたのか徐々に藤正は落ち着きを取り戻す。
「落ち着いたかい?じゃあゆっくり情報を整理していこう。まず君は一昨日怪しい人物に話しかけられ、そして何かをされたことで怪物に変身出来るようになった。」
藤正はコクリと頷く。
「そして、昨日。君はその力で紫水君を救った。ここまでは良いかい?」
その言葉にも藤正は頷いて返す。
「じゃあ次だ。君は昨日の六時から何をしていたか思い出せるかい?」
嵩原がそう問いかけると藤正は頭を捻りながら思い出すような仕草をした後、嵩原に言う。
「確か...その時スゴい疲れてて自分の部屋で7時まで寝てました。多分母さんに聞いたら分かると思う。」
「成る程...」
嵩原はそこまで聞くと思案に耽る。嵩原が襲われた時間彼は寝ていた。となるとあの時嵩原を襲ったのは別個体と言うことになる。
裏付けは得られてないため藤正が嘘をついている、もしくは勘違いしているかもしれないが、彼がそんな性格でないことは嵩原は重々承知している。
「分かった。じゃあ次だ。君は今日紫水君に呼ばれて行ったところトラブルがあったと。」
「...そうです。」
「...直球で悪いけど聞かせて欲しい。なんでその娘を襲ったんだい?」
嵩原が核心をつく質問をすると藤正は顔を伏せて、しばし黙った後、答える。
「その...せっかく俺を庇ってくれた女の子の話をその娘が聞かなくて、それに急にムカついて...段々ワケが分からなくなって。」
「襲った時の記憶がない...のかい?」
「はい、気がついたらここで縛られてて...センセー!俺、これからどうなるん...です?」
不安そうにこちらを見つめる藤正に嵩原は藤正の頭に手を置いて微笑みかける。
「安心して。ちょっと時間がかかるかもしれないけど、君を傷つけはさせないよ。」
「センセー...!」
「ちょっと待っててくれ。」
そう言って嵩原はその部屋を後にする。部屋を出ると今までのやり取りをマジックミラー越しに見ていた龍香が話し掛けてくる。
「先生!ふ、藤正君は...」
「彼には記憶の混濁が見られるね。正直ちょっと情報不足で他の人達を説き伏せるには信頼には欠ける。」
《山形は結構疑り深いし、実際に襲われた雪花と黒鳥も納得はしないだろうな。》
「そ、そんなぁ...」
悲観する龍香に嵩原は少し黙った後、話を切り出す。
「だけど一つだけ、昨日の一件は彼ではないという証拠を裏付ける方法がある。」
「え?」
「恐らく彼の話が本当だと仮定すると別の個体が存在する。その個体を見つけることが出来れば彼の無実を証明できるかもしれない。」
「ホントですか!」
「まぁ...それが出来れば昨日の一件は彼が関与してない証明に近づけるね。まぁ他にやれる事は彼の発言の裏付けかな。」
《なら話は決まりだな。俺達はその別個体の捜索。嵩原はあの小僧の証言の裏付け。》
藤正の無実の証明に光明が見え、龍香に気合いが入る。
「よーし、探すぞー!」
そう言うと龍香は脇目も振らず外へと向かう。
「...さて。後で黒鳥君にも手伝って貰うよう言おうか。」
そんな龍香の後ろ姿を眺めながら嵩原はこの事を報告するために司令室へと向かった。
落ち着いた色の調度品や備品が並ぶ社長室とおぼしき場所で一人の青年が呻いていた。
昨日の一件からイライラが全く消えないのだ。あまりにも募る苛立ちが不快で仕方ない。
「クソッ、あの白い女と男の邪魔が入らなければこんなことには...!」
原因は分かっている。自分に土をつけたあの少女を仕留め切れなかったからだ。せっかくこの力を得たのにも関わらず、だ。
しかもあれから何度か呼び掛けてみたがシードゥスサイドからは何にも反応がない。
「どいつもコイツも俺をコケにしやがって...!」
「コレがお前のやってきたことの結末だ。」
声がした方を振り向くと龍賢が壁に寄りかかっていた。その目は嘲るように龍斗を見つめる。
「仲間を裏切り、俺を殺し、龍香を傷つけ、シードゥスの連中に媚を売ってまで得た結果がコレとはな。」
「うるさい!」
龍斗は机の上の資料を龍賢に向かって投げつける。だが資料は龍賢をすり抜けるだけだ。
「今は言わないが龍香もお前を見限る時が近いかもな。」
「黙れ!あんな奴に見限られるのがなんだってんだ!」
「アイツはお前を信じている。だがお前のせいで俺が死んだと知れば龍香は絶対にお前を許さないだろうな。」
「だからそれがなんだってんだ!俺はアイツを」
「...ならなんで龍香に真相を話さない。」
龍賢の言葉に龍斗は言葉に詰まる。
「ホントは気づいてるんだろう?」
龍賢は壁から離れると机の前の来客用のソファーに座り込む。
「俺を殺し、仲間を裏切り、敵に媚を売って、そうまでして得たモノはなんだ?自分の無力感、後悔、苛立ちを俺への当て付けと都合の良い解釈で龍香にぶつけているだけだと。」
「うるさい...」
「唯一自分を許して受け止めてくれる龍香にお前は甘えてるんだ。」
「うるさい!」
龍斗は声を荒げる。だが龍賢は龍斗の声などどこ吹く風と言わんばかりに涼しげにしている。
「お前は龍香を傷つけるくせに嫌われたくない。そんな矛盾を抱えているんだよ。」
「うるさぁぁぁぁぁぁい!!」
感情が昂り、龍斗の身体が怪物の姿へと変貌する。
「しゃ、社長!ど、どうなさ、ヒッ!?」
龍斗の声に驚いて入ってきた女性社員が怪物と化した龍斗を見て悲鳴を上げようとする。
だが悲鳴を上げるより先に龍斗は手を女性社員にかざし、叫ぶ。
「黙って去れ!」
「....はい。」
龍斗の催眠術にかかった女性社員が去っていくと龍斗は怪物の姿から人に戻り、社長室を出ていく。
あの女、あの女さえいなければ。あの女が来てから自分にケチがつき始めたのだ。
消さなければ。早急に。そうすればこの苛立ちも。あの忌まわしい幻影も消えるだろう。
その瞳は完全に狂気に満ちていた。
昨日の一件からイライラが全く消えないのだ。あまりにも募る苛立ちが不快で仕方ない。
「クソッ、あの白い女と男の邪魔が入らなければこんなことには...!」
原因は分かっている。自分に土をつけたあの少女を仕留め切れなかったからだ。せっかくこの力を得たのにも関わらず、だ。
しかもあれから何度か呼び掛けてみたがシードゥスサイドからは何にも反応がない。
「どいつもコイツも俺をコケにしやがって...!」
「コレがお前のやってきたことの結末だ。」
声がした方を振り向くと龍賢が壁に寄りかかっていた。その目は嘲るように龍斗を見つめる。
「仲間を裏切り、俺を殺し、龍香を傷つけ、シードゥスの連中に媚を売ってまで得た結果がコレとはな。」
「うるさい!」
龍斗は机の上の資料を龍賢に向かって投げつける。だが資料は龍賢をすり抜けるだけだ。
「今は言わないが龍香もお前を見限る時が近いかもな。」
「黙れ!あんな奴に見限られるのがなんだってんだ!」
「アイツはお前を信じている。だがお前のせいで俺が死んだと知れば龍香は絶対にお前を許さないだろうな。」
「だからそれがなんだってんだ!俺はアイツを」
「...ならなんで龍香に真相を話さない。」
龍賢の言葉に龍斗は言葉に詰まる。
「ホントは気づいてるんだろう?」
龍賢は壁から離れると机の前の来客用のソファーに座り込む。
「俺を殺し、仲間を裏切り、敵に媚を売って、そうまでして得たモノはなんだ?自分の無力感、後悔、苛立ちを俺への当て付けと都合の良い解釈で龍香にぶつけているだけだと。」
「うるさい...」
「唯一自分を許して受け止めてくれる龍香にお前は甘えてるんだ。」
「うるさい!」
龍斗は声を荒げる。だが龍賢は龍斗の声などどこ吹く風と言わんばかりに涼しげにしている。
「お前は龍香を傷つけるくせに嫌われたくない。そんな矛盾を抱えているんだよ。」
「うるさぁぁぁぁぁぁい!!」
感情が昂り、龍斗の身体が怪物の姿へと変貌する。
「しゃ、社長!ど、どうなさ、ヒッ!?」
龍斗の声に驚いて入ってきた女性社員が怪物と化した龍斗を見て悲鳴を上げようとする。
だが悲鳴を上げるより先に龍斗は手を女性社員にかざし、叫ぶ。
「黙って去れ!」
「....はい。」
龍斗の催眠術にかかった女性社員が去っていくと龍斗は怪物の姿から人に戻り、社長室を出ていく。
あの女、あの女さえいなければ。あの女が来てから自分にケチがつき始めたのだ。
消さなければ。早急に。そうすればこの苛立ちも。あの忌まわしい幻影も消えるだろう。
その瞳は完全に狂気に満ちていた。
会議室を出た雪花は休憩室の簡素なベッドに寝っ転がって天井を眺めていた。
あの時、あの判断。自分は何一つ間違っていなかったハズだ。自分に非など何一つ無いハズなのに。
どうしてこうも胸のモヤモヤは消えないのだろう?
「ご機嫌ナナメって感じね。」
「山形...」
「さんをつけなさいさんを。」
そう言いながら休憩室に入ってきた山形は雪花が寝ているベッドに座る。
「全く...そういうとこ亜美と全然と似てないわね。」
「...お姉ちゃんは関係ないでしょ。」
姉の名前を出された藍はふてくされるように呟く。そんな藍を見ながら山形は尋ねる。
「自分のやったことに自信が持てなくなっちゃった?」
その質問に藍がピクッと反応する。
「龍香ちゃんや嵩原君を見て本当にに正しいなか段々分からなくなって来ちゃったんでしょ。」
「...私、間違えてないし。」
「強がらなくて良いのよ。別に責めてるんじゃないんだから。」
ムクれる雪花に山形は話を続ける。
「ただこれだけは覚えといて。最善なんてその人次第って事をね。」
「....」
「同じ状況でもその人にとっての最善はそれぞれよ。アナタの最善はシードゥスの殲滅。けど龍香ちゃんや嵩原君にとっての最善はあの男の子の保護。あの状況だとアナタの取った行動は正しかった。けど龍香ちゃんの行動も決して間違っているとは言えないわ。」
「....ならどうしたら良いのよ。」
雪花の問いに山形は雪花の頭に手を置いて笑って返す。
「相手の主張を頭ごなしに否定せずまずは受け入れること。別に自分の意見を取り下げろって事じゃないわ。龍香ちゃん達だって事情があるんだって理解してあげることよ。」
「...考えとく。」
雪花は天井を眺めたままそう答える。
「ま、大人になっても中々難しいモンよ。常に一旦相手の考え方を受け入れるなんて。大人でもそうそう出来る人いないし。こう言うのは長い人生の中でゆっくりと養っていくモノだから焦る必要はないわ。」
「...なんかババ臭い。」
「あら?何か言ったかしら?」
雪花の失言に山形は笑顔を浮かべながらグリグリと捩じ込むように拳骨で雪花のこめかみに刺激を与える。
その顔は笑顔を浮かべているが目は全く笑ってない。
「いっ!いだだだだ!何も言ってない!言ってないですー!」
「なら良いわ。」
山形はそう言うと拳骨を雪花から離す。一方の雪花はまだ痛むのか涙目で頭を擦る。
「でもアナタがそういうことに悩むようになる程成長するなんてね。これも龍香ちゃんのお陰かしら?」
「...別にアイツのお陰じゃないし。」
「そういうことにしときましょうか。」
山形と雪花がそう話している時だった。休憩室に黒鳥が慌てて入ってくる。
「山形さん!」
「どうしたの?」
山形の問いに黒鳥は神妙な面持ちで答えた。
「....シードゥスです!」
あの時、あの判断。自分は何一つ間違っていなかったハズだ。自分に非など何一つ無いハズなのに。
どうしてこうも胸のモヤモヤは消えないのだろう?
「ご機嫌ナナメって感じね。」
「山形...」
「さんをつけなさいさんを。」
そう言いながら休憩室に入ってきた山形は雪花が寝ているベッドに座る。
「全く...そういうとこ亜美と全然と似てないわね。」
「...お姉ちゃんは関係ないでしょ。」
姉の名前を出された藍はふてくされるように呟く。そんな藍を見ながら山形は尋ねる。
「自分のやったことに自信が持てなくなっちゃった?」
その質問に藍がピクッと反応する。
「龍香ちゃんや嵩原君を見て本当にに正しいなか段々分からなくなって来ちゃったんでしょ。」
「...私、間違えてないし。」
「強がらなくて良いのよ。別に責めてるんじゃないんだから。」
ムクれる雪花に山形は話を続ける。
「ただこれだけは覚えといて。最善なんてその人次第って事をね。」
「....」
「同じ状況でもその人にとっての最善はそれぞれよ。アナタの最善はシードゥスの殲滅。けど龍香ちゃんや嵩原君にとっての最善はあの男の子の保護。あの状況だとアナタの取った行動は正しかった。けど龍香ちゃんの行動も決して間違っているとは言えないわ。」
「....ならどうしたら良いのよ。」
雪花の問いに山形は雪花の頭に手を置いて笑って返す。
「相手の主張を頭ごなしに否定せずまずは受け入れること。別に自分の意見を取り下げろって事じゃないわ。龍香ちゃん達だって事情があるんだって理解してあげることよ。」
「...考えとく。」
雪花は天井を眺めたままそう答える。
「ま、大人になっても中々難しいモンよ。常に一旦相手の考え方を受け入れるなんて。大人でもそうそう出来る人いないし。こう言うのは長い人生の中でゆっくりと養っていくモノだから焦る必要はないわ。」
「...なんかババ臭い。」
「あら?何か言ったかしら?」
雪花の失言に山形は笑顔を浮かべながらグリグリと捩じ込むように拳骨で雪花のこめかみに刺激を与える。
その顔は笑顔を浮かべているが目は全く笑ってない。
「いっ!いだだだだ!何も言ってない!言ってないですー!」
「なら良いわ。」
山形はそう言うと拳骨を雪花から離す。一方の雪花はまだ痛むのか涙目で頭を擦る。
「でもアナタがそういうことに悩むようになる程成長するなんてね。これも龍香ちゃんのお陰かしら?」
「...別にアイツのお陰じゃないし。」
「そういうことにしときましょうか。」
山形と雪花がそう話している時だった。休憩室に黒鳥が慌てて入ってくる。
「山形さん!」
「どうしたの?」
山形の問いに黒鳥は神妙な面持ちで答えた。
「....シードゥスです!」
「飛び出したは良いけど、いないね....」
《ノーヒントだもんな...。》
龍香とカノープスは路地裏や公園、河原などかつてシードゥスと激闘を繰り広げた場所を重点的に探していた。しかし手がかりは全く見つからない。藤正のためにも一刻も早く見つけねばならないのに。
「どーしよ...。」
《...根気よく行くしかねぇな。そもそもいるのか分からないものを探しているんだからな。》
「...ちょっと休憩。」
龍香は流石に長距離の移動に疲れたのか訪れた河原に座り込む。龍香が一息ついているとカノープスが龍香に話し掛ける。
《...なぁ。ちょっと聞いて良いか?》
「なに?」
《...俺と出会う前、お前はどんな生活を送っていたんだ?》
「カノープスと出会う前、かぁ。」
龍香は少し顔を曇らせるもカノープスの問いに答えようとする。
「...お兄ちゃんがいなくなってからアタシ一人になるのが怖くて寂しくて仕方なかったの。学校に行けなくなって。ばあやに一、二週間は一緒にいてもらったけどやっぱりばあやがいない間は学校に行こうってなって。友達と久しぶりに会ったけど一人になるのが怖くてずっとかおりや藤正君、友達と一緒にいた。家に帰るのも一緒に帰って貰って...。」
《....》
「龍斗兄さんにその...殴れた時もあって。もういっぱいいっぱいになってダメかなって思った時に藤正君に言われたの。“お前がどんなことになっても俺はずっとお前の味方だ”って。」
龍香はそう言って恥ずかしそうに頬を掻く。
「なんかちょっと告白っぽくてドキドキしちゃうよね。けど本当に嬉しくてなんか頑張ろうって気になれたんだ。」
《あの小僧が、ねぇ。》
「うん!だから今度は私が藤正君を助ける番!」
そう言うと龍香は立ち上がって気合いを入れ直す。
「充分休んだし次どこ行こうか!」
《そうだな。次は...》
龍香とカノープスが次の場所へ行こうとした瞬間だった。
「龍香ァ....」
その声に龍香の背筋が凍る。反射的に頭のカノープスを取るとポケットにしまう。
「その声...。」
「見つけたぞ...。」
龍香が振り返ると龍斗がいた。その目に狂気を滾らせながら。
《ノーヒントだもんな...。》
龍香とカノープスは路地裏や公園、河原などかつてシードゥスと激闘を繰り広げた場所を重点的に探していた。しかし手がかりは全く見つからない。藤正のためにも一刻も早く見つけねばならないのに。
「どーしよ...。」
《...根気よく行くしかねぇな。そもそもいるのか分からないものを探しているんだからな。》
「...ちょっと休憩。」
龍香は流石に長距離の移動に疲れたのか訪れた河原に座り込む。龍香が一息ついているとカノープスが龍香に話し掛ける。
《...なぁ。ちょっと聞いて良いか?》
「なに?」
《...俺と出会う前、お前はどんな生活を送っていたんだ?》
「カノープスと出会う前、かぁ。」
龍香は少し顔を曇らせるもカノープスの問いに答えようとする。
「...お兄ちゃんがいなくなってからアタシ一人になるのが怖くて寂しくて仕方なかったの。学校に行けなくなって。ばあやに一、二週間は一緒にいてもらったけどやっぱりばあやがいない間は学校に行こうってなって。友達と久しぶりに会ったけど一人になるのが怖くてずっとかおりや藤正君、友達と一緒にいた。家に帰るのも一緒に帰って貰って...。」
《....》
「龍斗兄さんにその...殴れた時もあって。もういっぱいいっぱいになってダメかなって思った時に藤正君に言われたの。“お前がどんなことになっても俺はずっとお前の味方だ”って。」
龍香はそう言って恥ずかしそうに頬を掻く。
「なんかちょっと告白っぽくてドキドキしちゃうよね。けど本当に嬉しくてなんか頑張ろうって気になれたんだ。」
《あの小僧が、ねぇ。》
「うん!だから今度は私が藤正君を助ける番!」
そう言うと龍香は立ち上がって気合いを入れ直す。
「充分休んだし次どこ行こうか!」
《そうだな。次は...》
龍香とカノープスが次の場所へ行こうとした瞬間だった。
「龍香ァ....」
その声に龍香の背筋が凍る。反射的に頭のカノープスを取るとポケットにしまう。
「その声...。」
「見つけたぞ...。」
龍香が振り返ると龍斗がいた。その目に狂気を滾らせながら。
「シードゥスがこの周辺に?」
「はい。黒鳥君のカラスが見つけたようで。基地周辺のセンサーにも引っ掛かっています。」
会議室で山形が火元に現状の確認をする。
「黒鳥君と雪花は?」
「既に攻撃に向かってるッス。」
「嵩原君と龍香ちゃんは?」
「二人とも藤正君のアリバイの裏付けの調査に向かってて呼び戻すのには時間かかるワ。」
「そう。」
山形はマイクを通して二人と回線を繋げる。
「聞こえたわね。当面は二人で頑張って貰うわ。」
『了解です。』
『アテにしてないわ。私達二人で充分よ。』
「結構。では気をつけて行きなさい。」
通信が切れる。山形との通信を切り上げた二人はカラスとセンサーが反応した地点へと向かう。
「しかし、ここまで近くに現れるなんて。」
「飛んで火に入るなんとやら、よ。」
そして二人がその地点に到着すると、そこには魚のような外見をした...藤正が変身した姿に非常に酷似した怪物がその場にいた。
「お、来たか。ってことはこの周辺にあるのか?」
「...!?」
「アイツ...!」
怪物は二人が現れたことに全く驚いていない。しかし雪花や黒鳥は直感的にこの怪物が今回の一件に深く関係していると感じる。
「先手必勝!」
雪花は腰部ラックから“モルゲン”を取り出すと怪物に向けて発砲する。
しかし怪物は放たれた弾丸を腕を振り払って弾く。
「やれやれ。いきなりとは無作法だな。」
黒鳥も飛翔すると上空から羽根を放つ。しかし怪物は両手から水を発生させ渦のような盾を作り、その攻撃を防ぐ。
その隙をついて雪花は両腕に装備したチェーンソー“マタン”で怪物に斬りかかる。怪物はすぐにもう片方の手から三叉状の武器でその一撃を受け止める。雪花がもう片方の腕の“マタン”で攻撃しようとする。だがその攻撃に移る前に怪物は雪花を蹴り上げる。
「ごっ...!?」
「雪花!」
「よそ見なんてなぁ!」
黒鳥に向けて怪物は水の刃を飛ばす。雪花に気が向いていた黒鳥その一撃を避けられずなんとかギリギリで翼を使い防御するが撃ち落とされてしまう。
「コイツ...強い...!」
「当然だ。なんてったって。」
怪物はもう片方の手にも三叉状の剣を取り出し両手に剣を持ち構えながら自信たっぷりに言う。
「私はアルレシャ。ツォディアの一人だ。」
「はい。黒鳥君のカラスが見つけたようで。基地周辺のセンサーにも引っ掛かっています。」
会議室で山形が火元に現状の確認をする。
「黒鳥君と雪花は?」
「既に攻撃に向かってるッス。」
「嵩原君と龍香ちゃんは?」
「二人とも藤正君のアリバイの裏付けの調査に向かってて呼び戻すのには時間かかるワ。」
「そう。」
山形はマイクを通して二人と回線を繋げる。
「聞こえたわね。当面は二人で頑張って貰うわ。」
『了解です。』
『アテにしてないわ。私達二人で充分よ。』
「結構。では気をつけて行きなさい。」
通信が切れる。山形との通信を切り上げた二人はカラスとセンサーが反応した地点へと向かう。
「しかし、ここまで近くに現れるなんて。」
「飛んで火に入るなんとやら、よ。」
そして二人がその地点に到着すると、そこには魚のような外見をした...藤正が変身した姿に非常に酷似した怪物がその場にいた。
「お、来たか。ってことはこの周辺にあるのか?」
「...!?」
「アイツ...!」
怪物は二人が現れたことに全く驚いていない。しかし雪花や黒鳥は直感的にこの怪物が今回の一件に深く関係していると感じる。
「先手必勝!」
雪花は腰部ラックから“モルゲン”を取り出すと怪物に向けて発砲する。
しかし怪物は放たれた弾丸を腕を振り払って弾く。
「やれやれ。いきなりとは無作法だな。」
黒鳥も飛翔すると上空から羽根を放つ。しかし怪物は両手から水を発生させ渦のような盾を作り、その攻撃を防ぐ。
その隙をついて雪花は両腕に装備したチェーンソー“マタン”で怪物に斬りかかる。怪物はすぐにもう片方の手から三叉状の武器でその一撃を受け止める。雪花がもう片方の腕の“マタン”で攻撃しようとする。だがその攻撃に移る前に怪物は雪花を蹴り上げる。
「ごっ...!?」
「雪花!」
「よそ見なんてなぁ!」
黒鳥に向けて怪物は水の刃を飛ばす。雪花に気が向いていた黒鳥その一撃を避けられずなんとかギリギリで翼を使い防御するが撃ち落とされてしまう。
「コイツ...強い...!」
「当然だ。なんてったって。」
怪物はもう片方の手にも三叉状の剣を取り出し両手に剣を持ち構えながら自信たっぷりに言う。
「私はアルレシャ。ツォディアの一人だ。」
「龍斗兄さん....」
龍香は龍斗から距離を取るように後ずさる。龍斗にはシードゥスに操られている疑惑がある上に今の龍斗は目付きも雰囲気も狂気を感じ、とてもまともではないように思える。
「龍香ァ...あの金髪の小娘は何処だ...?」
「...雪花ちゃんに何の用があるの?」
龍香の問いが気に食わなかったのか龍斗の目付きが急に鋭くなり、龍香の頬をぶつ。
「いいから答えろ!あのガキは何処だ!?」
「...ない。」
「アァ?」
ぶたれた頬を押さえ涙目ながらも龍香は真っ直ぐ龍斗を見据える。
「教えない。今の龍斗兄さんに雪花ちゃんは会わせられない。」
その真っ直ぐな瞳に龍斗に動揺が走る。
「龍香、お前俺に逆らうのか...!」
「...私。今まで龍斗兄さんを信じてた。暴力を振るわれても、いつか。いつかきっと元に戻ってくれるって。けど、それは間違ってた。」
龍香は龍斗に言う。
「結局私はそうやって信じることで逃げてた。龍斗兄さんと向き合うこともせずただ信じてるだけ。だからもう逃げない。龍斗兄さんと真っ正面から向き合う。間違っていることは間違っているって言う。だから今の龍斗兄さんの言うことは聞けない。」
ハッキリとした拒絶。あんなに泣いてうずくまっていた龍香が。自分に対してハッキリとした拒絶を見せた。
『言っただろう?龍香もいずれ今のお前を拒絶する時が来る、と。』
龍賢の幻覚が話し掛ける。龍斗の中で何かがぐちゃぐちゃに崩れていく。苛立ちと虚しさが心の中で荒れ狂う。
「どいつも...!」
シードゥスの連中の嘲り、龍賢の瞳、あの少女の軽蔑の顔、そして龍香の拒絶。
「コイツも...!どいつもコイツもォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!俺を馬鹿にしやがってェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」
怒りが頂点に達した龍斗の身体が怪物へと変貌していく。
「り、龍斗兄さん!?」
その姿は藤正が変身した姿と非常に酷似していた。変貌した龍斗は腕を龍香に振り下ろすが龍香はすぐに真横に跳んでその一撃を回避する。
「龍斗兄さんが変わった!?」
《昨日の雪花へ攻撃した一件、真犯人は龍斗か!これなら動機も何もかも説明がつく!》
「オオオオオオオオオオ!」
「とにかく!兄さんを止めるよ!ダイノフォーゼ!!」
唸り声を上げながら龍斗は拳を振るい、振るわれた拳が龍香に直撃...する寸前、変身完了した龍香はその拳を受け止める。
「タァッ!」
受け止めた拳を弾いて渾身の蹴りを龍斗にお見舞いする。蹴っ飛ばされた龍斗はそのまま土手の壁に激突する。
《とにかく適度にボコして戦闘不能に追い込むぞ!》
「うん!」
追撃をしようとした瞬間軽快な音楽が鳴る。龍香はそれに気づくと慌てて出る。
「わわっ!こんな時に誰から...」
《おいおい。》
携帯の画面を開くとそこには嵩原と表示されていた。
「先生だ!」
龍香は龍斗の一件を伝えるべく電話に出る。
「もしもし!」
『もしもし!龍香君!今何処だい?』
「今昨日の真犯人を見つけて...」
『それはお手柄だね。けどどうやら今本部が奇襲を受けていて黒鳥や雪花ちゃんが戦っているがどうにも苦戦しているらしい!済み次第救援に向かってくれ!』
「え、ええ!?ちょ、ど、どういう」
嵩原の通話が切れる。そしてその直後に土手の壁に激突した龍斗が瓦礫を押し退けながら龍香に迫り来る。
《チッ!とにかくコイツを速攻で黙らせるぞ!俺に触れろ!》
「うん!」
龍香がカノープスに触れると龍香は黄緑色のラインが入ったアンキロカラーへと変わり、戦槌“ヘヴィプレッシャー”構えて龍斗の攻撃を受け止める。
「ごめん!」
龍香はそのまま“ヘヴィプレッシャー”で龍斗を殴り付け、怯んだ隙に腹部に“ヘヴィプレッシャー”で重い一撃を叩き込んで吹き飛ばす。吹き飛ばされた龍斗は川に水飛沫を上げながら叩きつけられる。
《今だ!》
「うん!」
もう一度カノープスに触れ、赤い姿“スピノカラー”に変身した龍香は追撃で“フォノンシューター”を構えて龍斗に撃ち込む。
流石にこの怒涛の攻撃には龍斗も堪らず意識を失って倒れ、元の人間の姿へと戻る。
龍香は川から気絶した龍斗を引っ張り上げると河原に寝かせる。
《面も割れてるしコイツはいつでもとっちめれる。今は本部へと急ぐぞ。》
「うん!」
龍香はチラッと気絶している龍斗を見た後すぐにカノープスに触れ、黄色の形態“プテラカラー”になり、翼を生やすと救援のために大空へと飛翔した。
龍香は龍斗から距離を取るように後ずさる。龍斗にはシードゥスに操られている疑惑がある上に今の龍斗は目付きも雰囲気も狂気を感じ、とてもまともではないように思える。
「龍香ァ...あの金髪の小娘は何処だ...?」
「...雪花ちゃんに何の用があるの?」
龍香の問いが気に食わなかったのか龍斗の目付きが急に鋭くなり、龍香の頬をぶつ。
「いいから答えろ!あのガキは何処だ!?」
「...ない。」
「アァ?」
ぶたれた頬を押さえ涙目ながらも龍香は真っ直ぐ龍斗を見据える。
「教えない。今の龍斗兄さんに雪花ちゃんは会わせられない。」
その真っ直ぐな瞳に龍斗に動揺が走る。
「龍香、お前俺に逆らうのか...!」
「...私。今まで龍斗兄さんを信じてた。暴力を振るわれても、いつか。いつかきっと元に戻ってくれるって。けど、それは間違ってた。」
龍香は龍斗に言う。
「結局私はそうやって信じることで逃げてた。龍斗兄さんと向き合うこともせずただ信じてるだけ。だからもう逃げない。龍斗兄さんと真っ正面から向き合う。間違っていることは間違っているって言う。だから今の龍斗兄さんの言うことは聞けない。」
ハッキリとした拒絶。あんなに泣いてうずくまっていた龍香が。自分に対してハッキリとした拒絶を見せた。
『言っただろう?龍香もいずれ今のお前を拒絶する時が来る、と。』
龍賢の幻覚が話し掛ける。龍斗の中で何かがぐちゃぐちゃに崩れていく。苛立ちと虚しさが心の中で荒れ狂う。
「どいつも...!」
シードゥスの連中の嘲り、龍賢の瞳、あの少女の軽蔑の顔、そして龍香の拒絶。
「コイツも...!どいつもコイツもォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!俺を馬鹿にしやがってェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」
怒りが頂点に達した龍斗の身体が怪物へと変貌していく。
「り、龍斗兄さん!?」
その姿は藤正が変身した姿と非常に酷似していた。変貌した龍斗は腕を龍香に振り下ろすが龍香はすぐに真横に跳んでその一撃を回避する。
「龍斗兄さんが変わった!?」
《昨日の雪花へ攻撃した一件、真犯人は龍斗か!これなら動機も何もかも説明がつく!》
「オオオオオオオオオオ!」
「とにかく!兄さんを止めるよ!ダイノフォーゼ!!」
唸り声を上げながら龍斗は拳を振るい、振るわれた拳が龍香に直撃...する寸前、変身完了した龍香はその拳を受け止める。
「タァッ!」
受け止めた拳を弾いて渾身の蹴りを龍斗にお見舞いする。蹴っ飛ばされた龍斗はそのまま土手の壁に激突する。
《とにかく適度にボコして戦闘不能に追い込むぞ!》
「うん!」
追撃をしようとした瞬間軽快な音楽が鳴る。龍香はそれに気づくと慌てて出る。
「わわっ!こんな時に誰から...」
《おいおい。》
携帯の画面を開くとそこには嵩原と表示されていた。
「先生だ!」
龍香は龍斗の一件を伝えるべく電話に出る。
「もしもし!」
『もしもし!龍香君!今何処だい?』
「今昨日の真犯人を見つけて...」
『それはお手柄だね。けどどうやら今本部が奇襲を受けていて黒鳥や雪花ちゃんが戦っているがどうにも苦戦しているらしい!済み次第救援に向かってくれ!』
「え、ええ!?ちょ、ど、どういう」
嵩原の通話が切れる。そしてその直後に土手の壁に激突した龍斗が瓦礫を押し退けながら龍香に迫り来る。
《チッ!とにかくコイツを速攻で黙らせるぞ!俺に触れろ!》
「うん!」
龍香がカノープスに触れると龍香は黄緑色のラインが入ったアンキロカラーへと変わり、戦槌“ヘヴィプレッシャー”構えて龍斗の攻撃を受け止める。
「ごめん!」
龍香はそのまま“ヘヴィプレッシャー”で龍斗を殴り付け、怯んだ隙に腹部に“ヘヴィプレッシャー”で重い一撃を叩き込んで吹き飛ばす。吹き飛ばされた龍斗は川に水飛沫を上げながら叩きつけられる。
《今だ!》
「うん!」
もう一度カノープスに触れ、赤い姿“スピノカラー”に変身した龍香は追撃で“フォノンシューター”を構えて龍斗に撃ち込む。
流石にこの怒涛の攻撃には龍斗も堪らず意識を失って倒れ、元の人間の姿へと戻る。
龍香は川から気絶した龍斗を引っ張り上げると河原に寝かせる。
《面も割れてるしコイツはいつでもとっちめれる。今は本部へと急ぐぞ。》
「うん!」
龍香はチラッと気絶している龍斗を見た後すぐにカノープスに触れ、黄色の形態“プテラカラー”になり、翼を生やすと救援のために大空へと飛翔した。
「ほらほらどうした!」
「コイツ...!」
アルレシャは余裕を見せながら黒鳥と雪花の攻撃をさばいていく。黒鳥が翼を翻し薙ぐように振るうがそれを剣で受け流す。そして間髪入れず“マタン”で突っ込んでくる雪花を回し蹴りで迎撃する。
「そら喰らいな!」
アルレシャは腕を大きく振るい水滴を弾丸のように撒き散らす。シードゥスの人外レベルの膂力から放たれた水滴は二人に炸裂すると大きく吹き飛ばす。
「今までのシードゥスとは段違いだ...!レベルが違う!」
「魚野郎が...!」
二人が立ち上がるがアルレシャは一定の距離を保ったまま追撃をしない。寧ろ目の前の二人よりも何かに集中しているようだ。
「ふむ...。ふむ。」
アルレシャの様子に黒鳥は違和感を覚える。今この瞬間アルレシャは追撃しようと思えば追撃出来たハズだ。あの水滴を連打するだけでも二人には脅威だ。
しかしアルレシャは動かない。慢心か、それとも何かを企んでいるのか。
「三枚に下ろしてやるわよ!この魚野郎!」
雪花は“マタン”を構えて再び突撃の構えを見せるが次の瞬間アルレシャから見えない波動のような何かが放たれる。
思わず雪花と黒鳥は身構えるが何も起こらない。何秒待ってもだ。
「何だ...?」
「おい魚野郎!今何をした!」
雪花が叫ぶとアルレシャはフフッと笑い二人に言う。
「まぁ、ちょっと待てば分かるさ。」
意味深なアルレシャの言葉に二人は警戒し、これ以上何かをしでかす前に止めなければならないと判断しアルレシャに攻撃を仕掛けようとした瞬間通信が入る。
『黒鳥君!』
「山形さん!どうしました!?」
『その、捕らえていた男の子が急に暴れだして、拘束を破って部屋をぶち破って外に出たわ!』
「なんですって!?」
どうやら通信は雪花も聞いていたようで若干困惑している。二人が一瞬どうするか思案した瞬間咆哮が聞こえ、次の瞬間アルレシャの横に何かが降ってくる。
もうもう舞い上がる土埃が晴れるとそこには変貌した藤正がいた。どうやら正気は無く、アルレシャの隣にいることから操られているらしい。
「...まぁあの馬鹿が魚野郎につくわけないか。」
「これで二対二だな。」
アルレシャは笑う。確かに二人がかりでも手こずるアルレシャがいるのにさらに藤正が加わると戦いにくいことこの上ない。
「くっ...」
唸り声を上げながら藤正が二人に襲いかかろうとした瞬間だった。
上空から矢が降り注ぐ。その矢は藤正の目の前に威嚇するように降り注ぎ、行く手を阻む。アルレシャは上空から矢を打ち込んだ人物に気づくと呟く。
「...来たか!」
そして龍香が黒鳥と雪花、二人の前に地面に降り立つ。
「二人とも大丈夫!?」
「...アンタ来なくてもそろそろやれたわよ。」
「え?でも苦戦してるって山形さんが。」
「してない!」
「今喧嘩してる場合か!」
黒鳥の一喝に龍香と雪花はアルレシャと藤正を見据える。
《アルレシャか。シードゥスの幹部の内の一人でかなりの強敵だぞ。...まさか自己増殖能力を持っていたとはな。》
「...アイツが藤正君と龍斗兄さんを...!」
龍香はカノープスに触れ、紫色の“ティラノカラー”に戻る。
「...気を付けなさい。アイツ藤正を操っているわ。」
「え!?なんで藤正君が!?」
「すまない俺の拘束が甘かった。あの魚野郎に呼ばれてしまったようだ。」
雪花の忠告に龍香は驚く。まさか藤正が本格的に敵になるとは。少し迷った後龍香は二人に言う。
「...私が藤正君を止めます。二人はあのシードゥスを。」
「...いいのか?」
龍香を心配して黒鳥が声をかけるが龍香は藤正を見据えながら言う。
「任せて下さい。」
「...任せたわよ!」
龍香の宣言を聞き、雪花は“マタン”を構えてアルレシャに突っ込む。遅れて黒鳥も続く。此方へと咆哮を上げながら走り出す藤正に龍香が向かう。
「藤正君!目を覚まして!」
「オオオオオオオオオオ!」
藤正は大きく跳躍すると空中で身を捻りながら龍香に蹴りをお見舞いする。その攻撃を龍香は両腕をクロスして受け止めようとするが龍香の両腕を足場に大きく跳躍することで龍香に更なる衝撃が加えられ、堪えきれず龍香は大きく後ろへと蹴り飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「ッ!」
藤正は着地すると同時に再び飛び上がり、龍香へと襲いかかる。龍香は避けきれずマウントポジションを取られ、藤正は龍香の首を締め上げ始める。
「...ッ、カッ...!」
《龍香!》
藤正の腕を掴んで何とか引き剥がそうとするが余りの握力のせいで龍香はなんとか呼吸をするのが精一杯程度しか引き離せない。
「龍香!」
雪花が龍香に気づくがアルレシャの猛攻に手一杯でとても龍香への援護は出来そうにもない。
こうしている間にも龍香の首を徐々に藤正の手が絞めていく。
「...私」
龍香は抵抗しながら何とか声を出す。
「私も...!」
首を絞められながらも龍香は藤正の目を見据えてありったけの力を込めて叫ぶ。
「何があっても藤正君の味方だから!だって私も藤正君を信じているから!」
「....!」
いよいよ龍香が限界を迎えようとした瞬間、ピタッと。藤正の動きが止まる。
「!...?」
突然動きが止まった藤正に龍香は戸惑う。藤正は止まったまま動かない。
「...」
「コイツ...!」
アルレシャは余裕を見せながら黒鳥と雪花の攻撃をさばいていく。黒鳥が翼を翻し薙ぐように振るうがそれを剣で受け流す。そして間髪入れず“マタン”で突っ込んでくる雪花を回し蹴りで迎撃する。
「そら喰らいな!」
アルレシャは腕を大きく振るい水滴を弾丸のように撒き散らす。シードゥスの人外レベルの膂力から放たれた水滴は二人に炸裂すると大きく吹き飛ばす。
「今までのシードゥスとは段違いだ...!レベルが違う!」
「魚野郎が...!」
二人が立ち上がるがアルレシャは一定の距離を保ったまま追撃をしない。寧ろ目の前の二人よりも何かに集中しているようだ。
「ふむ...。ふむ。」
アルレシャの様子に黒鳥は違和感を覚える。今この瞬間アルレシャは追撃しようと思えば追撃出来たハズだ。あの水滴を連打するだけでも二人には脅威だ。
しかしアルレシャは動かない。慢心か、それとも何かを企んでいるのか。
「三枚に下ろしてやるわよ!この魚野郎!」
雪花は“マタン”を構えて再び突撃の構えを見せるが次の瞬間アルレシャから見えない波動のような何かが放たれる。
思わず雪花と黒鳥は身構えるが何も起こらない。何秒待ってもだ。
「何だ...?」
「おい魚野郎!今何をした!」
雪花が叫ぶとアルレシャはフフッと笑い二人に言う。
「まぁ、ちょっと待てば分かるさ。」
意味深なアルレシャの言葉に二人は警戒し、これ以上何かをしでかす前に止めなければならないと判断しアルレシャに攻撃を仕掛けようとした瞬間通信が入る。
『黒鳥君!』
「山形さん!どうしました!?」
『その、捕らえていた男の子が急に暴れだして、拘束を破って部屋をぶち破って外に出たわ!』
「なんですって!?」
どうやら通信は雪花も聞いていたようで若干困惑している。二人が一瞬どうするか思案した瞬間咆哮が聞こえ、次の瞬間アルレシャの横に何かが降ってくる。
もうもう舞い上がる土埃が晴れるとそこには変貌した藤正がいた。どうやら正気は無く、アルレシャの隣にいることから操られているらしい。
「...まぁあの馬鹿が魚野郎につくわけないか。」
「これで二対二だな。」
アルレシャは笑う。確かに二人がかりでも手こずるアルレシャがいるのにさらに藤正が加わると戦いにくいことこの上ない。
「くっ...」
唸り声を上げながら藤正が二人に襲いかかろうとした瞬間だった。
上空から矢が降り注ぐ。その矢は藤正の目の前に威嚇するように降り注ぎ、行く手を阻む。アルレシャは上空から矢を打ち込んだ人物に気づくと呟く。
「...来たか!」
そして龍香が黒鳥と雪花、二人の前に地面に降り立つ。
「二人とも大丈夫!?」
「...アンタ来なくてもそろそろやれたわよ。」
「え?でも苦戦してるって山形さんが。」
「してない!」
「今喧嘩してる場合か!」
黒鳥の一喝に龍香と雪花はアルレシャと藤正を見据える。
《アルレシャか。シードゥスの幹部の内の一人でかなりの強敵だぞ。...まさか自己増殖能力を持っていたとはな。》
「...アイツが藤正君と龍斗兄さんを...!」
龍香はカノープスに触れ、紫色の“ティラノカラー”に戻る。
「...気を付けなさい。アイツ藤正を操っているわ。」
「え!?なんで藤正君が!?」
「すまない俺の拘束が甘かった。あの魚野郎に呼ばれてしまったようだ。」
雪花の忠告に龍香は驚く。まさか藤正が本格的に敵になるとは。少し迷った後龍香は二人に言う。
「...私が藤正君を止めます。二人はあのシードゥスを。」
「...いいのか?」
龍香を心配して黒鳥が声をかけるが龍香は藤正を見据えながら言う。
「任せて下さい。」
「...任せたわよ!」
龍香の宣言を聞き、雪花は“マタン”を構えてアルレシャに突っ込む。遅れて黒鳥も続く。此方へと咆哮を上げながら走り出す藤正に龍香が向かう。
「藤正君!目を覚まして!」
「オオオオオオオオオオ!」
藤正は大きく跳躍すると空中で身を捻りながら龍香に蹴りをお見舞いする。その攻撃を龍香は両腕をクロスして受け止めようとするが龍香の両腕を足場に大きく跳躍することで龍香に更なる衝撃が加えられ、堪えきれず龍香は大きく後ろへと蹴り飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「ッ!」
藤正は着地すると同時に再び飛び上がり、龍香へと襲いかかる。龍香は避けきれずマウントポジションを取られ、藤正は龍香の首を締め上げ始める。
「...ッ、カッ...!」
《龍香!》
藤正の腕を掴んで何とか引き剥がそうとするが余りの握力のせいで龍香はなんとか呼吸をするのが精一杯程度しか引き離せない。
「龍香!」
雪花が龍香に気づくがアルレシャの猛攻に手一杯でとても龍香への援護は出来そうにもない。
こうしている間にも龍香の首を徐々に藤正の手が絞めていく。
「...私」
龍香は抵抗しながら何とか声を出す。
「私も...!」
首を絞められながらも龍香は藤正の目を見据えてありったけの力を込めて叫ぶ。
「何があっても藤正君の味方だから!だって私も藤正君を信じているから!」
「....!」
いよいよ龍香が限界を迎えようとした瞬間、ピタッと。藤正の動きが止まる。
「!...?」
突然動きが止まった藤正に龍香は戸惑う。藤正は止まったまま動かない。
「...」
闇の中にいた。闇は藤正に語りかけてくる。
《あのまま捕らわれていたらお前は殺されるかもしれない。》
《だったらさっさと逃げ出して気になるあの子を思い通りにすればいいじゃないか。》
《お前はそれが出来る力を持っているんだ。》
《何でも言うことを聞いてくれるんだ。美味しい話じゃないか。》
たしかに。そうかもしれない。アイツが俺の側にいる。それだけで良い気がしてきた。
あの子の顔が思い浮かぶ。最初の出会いは学校のグループワークで一緒の班になった時だ。一緒に作業をして。その中で笑顔で言われた言葉。
《藤正君ありがとう。》
何てことない一言。ホントに何てことない一言だった。それから自分でも不思議な位にあの子を見ていく中で惹かれて言った。
何かあるとすぐにあの子のことが思い浮かんだ。もっと知りたい。一緒にいたい。そのためならこの闇の言うとおりにしても良いんじゃないか。
...これでいいのだろうか?
俺はそんなことであの子の隣に胸を張って立てるのだろうか。後悔は無いのだろうか。あの子を意思を無視してホントに欲しいモノは手に入れる事が出来るのだろうか?
なら。答えは一つだ。
《あのまま捕らわれていたらお前は殺されるかもしれない。》
《だったらさっさと逃げ出して気になるあの子を思い通りにすればいいじゃないか。》
《お前はそれが出来る力を持っているんだ。》
《何でも言うことを聞いてくれるんだ。美味しい話じゃないか。》
たしかに。そうかもしれない。アイツが俺の側にいる。それだけで良い気がしてきた。
あの子の顔が思い浮かぶ。最初の出会いは学校のグループワークで一緒の班になった時だ。一緒に作業をして。その中で笑顔で言われた言葉。
《藤正君ありがとう。》
何てことない一言。ホントに何てことない一言だった。それから自分でも不思議な位にあの子を見ていく中で惹かれて言った。
何かあるとすぐにあの子のことが思い浮かんだ。もっと知りたい。一緒にいたい。そのためならこの闇の言うとおりにしても良いんじゃないか。
...これでいいのだろうか?
俺はそんなことであの子の隣に胸を張って立てるのだろうか。後悔は無いのだろうか。あの子を意思を無視してホントに欲しいモノは手に入れる事が出来るのだろうか?
なら。答えは一つだ。
「...動きが止まった?」
「何をしている?」
せっかく操っている侵食体の一匹が動きを止めていることにアルレシャは疑問符を抱く。侵食体となった人間は自分の欲望に忠実となる。そのためには殺しさえ厭わない程にだ。それにもう一体、あのボンクラ社長が来るハズなのだがいくら待てども来ない。どうやら行動不能になっているらしい。
「使えないな...!」
一方龍香の上で動きを停止していた藤正は、次の瞬間龍香の首から手を離す。
「ゴホッゴホッ...」
《離した...?》
そして藤正は立ち上がると龍香から離れる。そして辺りを見回す
「藤正君...?」
「...おい。アンタ!」
「...何?」
藤正はアルレシャの方を向くと元の人間の姿に戻る。
「何故意識を...」
「この力、返すよ。俺には必要ない力だ。」
「...なんだと?」
藤正の言葉にアルレシャが驚愕する。それもそうだ。自らの欲望が楽に叶うハズなのにそれを捨てて失敗するかもしれない道へと進んでいくからだ。今まで見たことのないタイプの人間にアルレシャは驚きを隠せない。
「馬鹿な...その力があれば、何でも出来るんだぞ!?邪魔な人間を消すことも!思い通りにすることも!」
「...でもそれは悪い力なんだろ?人を傷つけるモンだ。」
藤正はアルレシャに宣言をするように力強く叫ぶ。
「俺が好きなあの子はそんなことをしたって絶対に俺に振り向かないし、そんなことで振り向いてもらっても俺にあの子の隣に立つ資格は無い!俺は俺の力であの子と向き合う!余計なことをするんじゃねぇ!」
「くっ...」
藤正の気迫に圧されアルレシャがたじろぐ。
「...あんなに堂々と告白する位藤正君好きな子いるんだ...なんか聞いてるだけなのにこっちが照れちゃうね。」
大好きなコイバナみたいな話に龍香はキャーと照れる。そんな龍香を見ながらカノープスはため息をつく。
《...お前って罪な女だよなぁ。》
「?」
「...なんかこう、むず痒いな。うん。」
『ヤァダアタシこういう話大好物よ!』
『私も好きよ。』
『ワタシもですー。』
『ノーコメントで。』
「あ、アンタ達...。」
こういう話に慣れてないのか黒鳥と雪花は頬を赤くする。
「き、貴様...!」
激昂したアルレシャは藤正に向けて水弾を発射する。
「!危ない!」
龍香は庇うように藤正の前に立ち、その水弾を全て受け止める。
「痛ッ...」
「邪魔を!」
「!させない!」
庇った龍香を見てアルレシャがさらに追撃の水弾を発射しようとした瞬間雪花がいち早く腰部ラックから“シャハル”投擲装甲炸裂弾を取り出し投擲する。投げられた“シャハル”がアルレシャの腕に炸裂して爆発する。
「ぐおっ...!?」
「ようやく隙を見せたわね...!」
アルレシャは被弾した片腕を押さえながら雪花を見る。
「だ、大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫。これくらいなんともないわ。それよりも早く隠れて。ここ危ないから。」
龍香は藤正に隠れるように指示を出す。
「さっきの。スッゴくカッコ良かったよ!」
「え?お、う、うん。」
龍香は藤正が隠れるのを見届けると雪花、黒鳥と一緒に並び立つ。
「形成逆転、だな。」
「ふん...私を追い詰めたつもりらしいが。それは大間違いだ。」
アルレシャは剣を構えて地面に突き刺す。すると水が溢れて固まりもう一人のアルレシャを作り出す。
「増えた!?」
「まだまだ勝負はこれからってことか。」
龍香は斧“タイラントアックス”を構え、雪花も“マタン”を、黒鳥も翼を広げる。
「行くぞ!」
「おう!」
三人が駆け出すと同時にアルレシャ達もそれを迎え撃つよつに走り出す。
龍香と雪花がアルレシャに突っ込み、“タイラントアックス”と“マタン”を同時に振るうがアルレシャはそれを剣で受け止め、弾くと二人を柄で殴り付けて蹴り飛ばす。
「きゃっ!」
「さっきは油断しただけだ!まともに戦えば俺に敵うハズがないだろう!」
分身体に向けて黒鳥も翼から羽根を発射するが、分身体は大きく跳躍してその攻撃を避けながら黒鳥に飛び蹴りをかます。
「うお!?」
蹴られた黒鳥が地面を転がる。
龍香と雪花が再び同時にアルレシャに仕掛けるがアルレシャはまたも攻撃を裁いて迎撃する。
「無駄なことを!」
「なら戦い方を変える!」
《いくぞ!》
龍香はカノープスに触れオレンジ色の形態“プレシオカラー”に変わると鞭“インパルスウィップ”を構える。
「ならこっちも!」
雪花は“マタン”をパージすると再び“モルゲン”を構えて発砲する。その銃撃をアルレシャは腕で弾こうとするが“インパルスウィップ”がアルレシャの腕に巻き付き防御することを妨害する。
「なんだと!?」
そして防御は間に合わずアルレシャに銃弾が炸裂する。
「ぬぉぉ!?」
アルレシャが堪らず後ずさる。主人をピンチと見たか分身体がアルレシャに駆け出そうとする。
「そうはさせん!」
《スパイダー》
黒鳥も翼をしまい、両手を蜘蛛のように変形させ、そこから糸を発射し、分身体をがんじがらめに拘束する。
アルレシャは慌てて“インパルスウィップ”を切断しようとするが今度は雪花の銃弾が炸裂し、切断を妨害する。
「くっ!」
「はあああああ!!」
龍香は叫ぶと思い切り“インパルスウィップ”を引っ張り、アルレシャは大きく宙を舞う。そしてそのまま地面へと叩きつけられる。
「ば、馬鹿な!?私が押されている...!?ツォディアのこの私が...!?こんなガキどもに!?」
驚愕するアルレシャに龍香は叫ぶ。
「人の心につけこんで!藤正君と龍斗兄さんにヒドイ事をした貴方を私は許さない!」
「私が一気に片付ける!龍香!ソイツをあの分身に向かって投げなさい!」
雪花の指示に龍香はコクリと頷くと“インパルスウィップ”を再び引っ張りアルレシャをブン回し黒鳥によって糸で拘束されている分身体に向けて投げ飛ばす。
そしてアルレシャに向けてプラズマ砲“ヘオース”を構え照準を二体に合わせる。
「二体まとめてグリルにしてやるわ!」
「こ、この私が負けるハズは...!?」
アルレシャは防御の構えを取り、水の障壁を作り出すが雪花がトリガーを引いた瞬間放たれたプラズマの塊は障壁を一瞬で蒸発させ、アルレシャと分身体を焼く。
「これで終わったと思うな!!いつか、いつか必ず」
言葉は途切れアルレシャがいた場所は大爆発を起こす。凄まじい爆風に思わず目を閉じる。そして再び目を開けるとアルレシャがいた場所は黒焦げとなっていた。
《終わったな...。》
「あ、藤正君!」
「無事だ。気絶しているっぽいがな。」
「丁度いいわ。もう“デイブレイク”の稼働時間限界だったし、」
黒鳥が意識を失った藤正を抱え、雪花は“デイブレイク”を解除する。すると嵩原から連絡が入る。
『よくやったね三人とも。一旦基地に戻っておいで。』
「あ、先生。」
『さっき着いたけど...どうやらもう解決したみたいだね。』
「なんとかですけどね。」
龍香も変身を解こうとした瞬間だった。またもや背筋に電流が走ったような感覚を覚える。と同時に通信が入る。
『センサー感知!気を付けて!何か来るわ!』
三人の空気が再び張り詰めた瞬間目の前に一体の怪物が降り立つ。まるで龍のような鎧を身に纏った頑強そうな外見、そして溢れる重圧感を漂わせたその出で立ちは素人よ龍香でもただ者ではないと感じさせる。が不思議な事に龍香はその怪物に妙な胸騒ぎを覚える。
「やっぱお前じゃ勝てないよなぁアルレシャ。ま、知ってたけどな。」
《...その声。姿は変わってるがお前...!?》
「お、気づいたか。流石にお前らも消耗してるっぽいから今日は挨拶だけだが嬉しいぜカノープス。」
「...誰なの?」
《アイツは...》
龍香の問いにカノープスは何故か言葉に詰まる。だがそんなカノープスを見て怪物は面白そうに割って入る。
「言いにくいんなら言ってやろうか?俺はトゥバン、ソイツの前任者を倒した男さ。」
「....え?」
龍香が固まる。二年前、兄がいなくなったのはシードゥスとの戦いに破れたからだと聞いていた。つまり兄を倒したのはこの...。
「あなたが...お兄ちゃんを...!」
「ん?兄?あぁ。お前コイツの妹か!ハハハ!これは楽しめそうだ!まぁお前の兄は強かったぞ。何せこの俺をあそこまで追い詰めたのはプロウフを除いたらアイツだけだったからな。」
トゥバンはどうやら挨拶を済ませ、満足したのかトンッと大きく跳躍し、木の枝に着地する。
「待てッ!」
「心配すんな。またちょっとしたら会いに来てやるよ。そん時は心いくまで殺し合おうや。じゃあな。」
そう言うとトゥバンは消える。残された龍香は歯噛みをする。
「あれがお兄ちゃんの...仇。」
「何をしている?」
せっかく操っている侵食体の一匹が動きを止めていることにアルレシャは疑問符を抱く。侵食体となった人間は自分の欲望に忠実となる。そのためには殺しさえ厭わない程にだ。それにもう一体、あのボンクラ社長が来るハズなのだがいくら待てども来ない。どうやら行動不能になっているらしい。
「使えないな...!」
一方龍香の上で動きを停止していた藤正は、次の瞬間龍香の首から手を離す。
「ゴホッゴホッ...」
《離した...?》
そして藤正は立ち上がると龍香から離れる。そして辺りを見回す
「藤正君...?」
「...おい。アンタ!」
「...何?」
藤正はアルレシャの方を向くと元の人間の姿に戻る。
「何故意識を...」
「この力、返すよ。俺には必要ない力だ。」
「...なんだと?」
藤正の言葉にアルレシャが驚愕する。それもそうだ。自らの欲望が楽に叶うハズなのにそれを捨てて失敗するかもしれない道へと進んでいくからだ。今まで見たことのないタイプの人間にアルレシャは驚きを隠せない。
「馬鹿な...その力があれば、何でも出来るんだぞ!?邪魔な人間を消すことも!思い通りにすることも!」
「...でもそれは悪い力なんだろ?人を傷つけるモンだ。」
藤正はアルレシャに宣言をするように力強く叫ぶ。
「俺が好きなあの子はそんなことをしたって絶対に俺に振り向かないし、そんなことで振り向いてもらっても俺にあの子の隣に立つ資格は無い!俺は俺の力であの子と向き合う!余計なことをするんじゃねぇ!」
「くっ...」
藤正の気迫に圧されアルレシャがたじろぐ。
「...あんなに堂々と告白する位藤正君好きな子いるんだ...なんか聞いてるだけなのにこっちが照れちゃうね。」
大好きなコイバナみたいな話に龍香はキャーと照れる。そんな龍香を見ながらカノープスはため息をつく。
《...お前って罪な女だよなぁ。》
「?」
「...なんかこう、むず痒いな。うん。」
『ヤァダアタシこういう話大好物よ!』
『私も好きよ。』
『ワタシもですー。』
『ノーコメントで。』
「あ、アンタ達...。」
こういう話に慣れてないのか黒鳥と雪花は頬を赤くする。
「き、貴様...!」
激昂したアルレシャは藤正に向けて水弾を発射する。
「!危ない!」
龍香は庇うように藤正の前に立ち、その水弾を全て受け止める。
「痛ッ...」
「邪魔を!」
「!させない!」
庇った龍香を見てアルレシャがさらに追撃の水弾を発射しようとした瞬間雪花がいち早く腰部ラックから“シャハル”投擲装甲炸裂弾を取り出し投擲する。投げられた“シャハル”がアルレシャの腕に炸裂して爆発する。
「ぐおっ...!?」
「ようやく隙を見せたわね...!」
アルレシャは被弾した片腕を押さえながら雪花を見る。
「だ、大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫。これくらいなんともないわ。それよりも早く隠れて。ここ危ないから。」
龍香は藤正に隠れるように指示を出す。
「さっきの。スッゴくカッコ良かったよ!」
「え?お、う、うん。」
龍香は藤正が隠れるのを見届けると雪花、黒鳥と一緒に並び立つ。
「形成逆転、だな。」
「ふん...私を追い詰めたつもりらしいが。それは大間違いだ。」
アルレシャは剣を構えて地面に突き刺す。すると水が溢れて固まりもう一人のアルレシャを作り出す。
「増えた!?」
「まだまだ勝負はこれからってことか。」
龍香は斧“タイラントアックス”を構え、雪花も“マタン”を、黒鳥も翼を広げる。
「行くぞ!」
「おう!」
三人が駆け出すと同時にアルレシャ達もそれを迎え撃つよつに走り出す。
龍香と雪花がアルレシャに突っ込み、“タイラントアックス”と“マタン”を同時に振るうがアルレシャはそれを剣で受け止め、弾くと二人を柄で殴り付けて蹴り飛ばす。
「きゃっ!」
「さっきは油断しただけだ!まともに戦えば俺に敵うハズがないだろう!」
分身体に向けて黒鳥も翼から羽根を発射するが、分身体は大きく跳躍してその攻撃を避けながら黒鳥に飛び蹴りをかます。
「うお!?」
蹴られた黒鳥が地面を転がる。
龍香と雪花が再び同時にアルレシャに仕掛けるがアルレシャはまたも攻撃を裁いて迎撃する。
「無駄なことを!」
「なら戦い方を変える!」
《いくぞ!》
龍香はカノープスに触れオレンジ色の形態“プレシオカラー”に変わると鞭“インパルスウィップ”を構える。
「ならこっちも!」
雪花は“マタン”をパージすると再び“モルゲン”を構えて発砲する。その銃撃をアルレシャは腕で弾こうとするが“インパルスウィップ”がアルレシャの腕に巻き付き防御することを妨害する。
「なんだと!?」
そして防御は間に合わずアルレシャに銃弾が炸裂する。
「ぬぉぉ!?」
アルレシャが堪らず後ずさる。主人をピンチと見たか分身体がアルレシャに駆け出そうとする。
「そうはさせん!」
《スパイダー》
黒鳥も翼をしまい、両手を蜘蛛のように変形させ、そこから糸を発射し、分身体をがんじがらめに拘束する。
アルレシャは慌てて“インパルスウィップ”を切断しようとするが今度は雪花の銃弾が炸裂し、切断を妨害する。
「くっ!」
「はあああああ!!」
龍香は叫ぶと思い切り“インパルスウィップ”を引っ張り、アルレシャは大きく宙を舞う。そしてそのまま地面へと叩きつけられる。
「ば、馬鹿な!?私が押されている...!?ツォディアのこの私が...!?こんなガキどもに!?」
驚愕するアルレシャに龍香は叫ぶ。
「人の心につけこんで!藤正君と龍斗兄さんにヒドイ事をした貴方を私は許さない!」
「私が一気に片付ける!龍香!ソイツをあの分身に向かって投げなさい!」
雪花の指示に龍香はコクリと頷くと“インパルスウィップ”を再び引っ張りアルレシャをブン回し黒鳥によって糸で拘束されている分身体に向けて投げ飛ばす。
そしてアルレシャに向けてプラズマ砲“ヘオース”を構え照準を二体に合わせる。
「二体まとめてグリルにしてやるわ!」
「こ、この私が負けるハズは...!?」
アルレシャは防御の構えを取り、水の障壁を作り出すが雪花がトリガーを引いた瞬間放たれたプラズマの塊は障壁を一瞬で蒸発させ、アルレシャと分身体を焼く。
「これで終わったと思うな!!いつか、いつか必ず」
言葉は途切れアルレシャがいた場所は大爆発を起こす。凄まじい爆風に思わず目を閉じる。そして再び目を開けるとアルレシャがいた場所は黒焦げとなっていた。
《終わったな...。》
「あ、藤正君!」
「無事だ。気絶しているっぽいがな。」
「丁度いいわ。もう“デイブレイク”の稼働時間限界だったし、」
黒鳥が意識を失った藤正を抱え、雪花は“デイブレイク”を解除する。すると嵩原から連絡が入る。
『よくやったね三人とも。一旦基地に戻っておいで。』
「あ、先生。」
『さっき着いたけど...どうやらもう解決したみたいだね。』
「なんとかですけどね。」
龍香も変身を解こうとした瞬間だった。またもや背筋に電流が走ったような感覚を覚える。と同時に通信が入る。
『センサー感知!気を付けて!何か来るわ!』
三人の空気が再び張り詰めた瞬間目の前に一体の怪物が降り立つ。まるで龍のような鎧を身に纏った頑強そうな外見、そして溢れる重圧感を漂わせたその出で立ちは素人よ龍香でもただ者ではないと感じさせる。が不思議な事に龍香はその怪物に妙な胸騒ぎを覚える。
「やっぱお前じゃ勝てないよなぁアルレシャ。ま、知ってたけどな。」
《...その声。姿は変わってるがお前...!?》
「お、気づいたか。流石にお前らも消耗してるっぽいから今日は挨拶だけだが嬉しいぜカノープス。」
「...誰なの?」
《アイツは...》
龍香の問いにカノープスは何故か言葉に詰まる。だがそんなカノープスを見て怪物は面白そうに割って入る。
「言いにくいんなら言ってやろうか?俺はトゥバン、ソイツの前任者を倒した男さ。」
「....え?」
龍香が固まる。二年前、兄がいなくなったのはシードゥスとの戦いに破れたからだと聞いていた。つまり兄を倒したのはこの...。
「あなたが...お兄ちゃんを...!」
「ん?兄?あぁ。お前コイツの妹か!ハハハ!これは楽しめそうだ!まぁお前の兄は強かったぞ。何せこの俺をあそこまで追い詰めたのはプロウフを除いたらアイツだけだったからな。」
トゥバンはどうやら挨拶を済ませ、満足したのかトンッと大きく跳躍し、木の枝に着地する。
「待てッ!」
「心配すんな。またちょっとしたら会いに来てやるよ。そん時は心いくまで殺し合おうや。じゃあな。」
そう言うとトゥバンは消える。残された龍香は歯噛みをする。
「あれがお兄ちゃんの...仇。」
「藤正君は無事家に返しましたよ。特に身体に異常はありませんでしたし。三人も今日は家に帰って休ませることにしました。」
「そう。」
司令室で嵩原と山形は今回の件をまとめていた。そしてあらかた資料を作り終えて嵩原が一息入れていると山形が嵩原の前にコーヒーを差し出す。
「ありがとうございます。」
「...今回龍香ちゃんは仇と遭遇したみたいだけどどうだった?」
「...藍君程直情的にはならなかったみたいですが、まぁ良い感情は抱いていないでしょう。彼女は元々優しい気質ですから、あまり復讐という言葉に素直にはなれないようですね。」
「大変ね...。」
沈黙。二人の間に静寂が漂う中、コーヒーを啜る音だけが聞こえる。そして嵩原が切り出す。
「今回の件で龍香ちゃんから龍斗君について色々と聞きました。そして龍斗君はシードゥスと関わりがある可能性が高いと僕は考えています。」
「....どうするつもり?」
山形の問いに嵩原は山形の目を見ながら答える。
「会社に潜入し、私がシードゥスと関わりがあった証拠となるデータを盗み出します。」
「....あの会社はシードゥスの警備がいるかもしれないのよ?それに潜入なら黒鳥君が適任だわ。」
「...彼はまだ若い。それに未来があります。この任務はかなり危険で命を落とす可能性が高い。だから僕が行きます。...残された時間が少ない僕が。」
「...悪いけど死んで元々なんて考えてる奴にそんな任務を任せる気はないわ。」
嵩原の提案を山形は切り捨てる。嵩原が黙る中、山形はコーヒーを啜る。
「...貴方のその“瞳”を敵に渡すわけにも行かないし何より、あの子との約束がある。」
「....分かりました。」
嵩原はそう言うと部屋を後にする。そして残された山形はコーヒーの苦味を味わいながら天井を見つけて呟く。
「....二年前からせっかく生き残ったんだから死に急ぐんじゃないわよ全く。ホント龍那、アンタがいてくれたら...。私には荷が重いわ。」
その表情は苦々しくその言葉は虚しく部屋に響いた。
「そう。」
司令室で嵩原と山形は今回の件をまとめていた。そしてあらかた資料を作り終えて嵩原が一息入れていると山形が嵩原の前にコーヒーを差し出す。
「ありがとうございます。」
「...今回龍香ちゃんは仇と遭遇したみたいだけどどうだった?」
「...藍君程直情的にはならなかったみたいですが、まぁ良い感情は抱いていないでしょう。彼女は元々優しい気質ですから、あまり復讐という言葉に素直にはなれないようですね。」
「大変ね...。」
沈黙。二人の間に静寂が漂う中、コーヒーを啜る音だけが聞こえる。そして嵩原が切り出す。
「今回の件で龍香ちゃんから龍斗君について色々と聞きました。そして龍斗君はシードゥスと関わりがある可能性が高いと僕は考えています。」
「....どうするつもり?」
山形の問いに嵩原は山形の目を見ながら答える。
「会社に潜入し、私がシードゥスと関わりがあった証拠となるデータを盗み出します。」
「....あの会社はシードゥスの警備がいるかもしれないのよ?それに潜入なら黒鳥君が適任だわ。」
「...彼はまだ若い。それに未来があります。この任務はかなり危険で命を落とす可能性が高い。だから僕が行きます。...残された時間が少ない僕が。」
「...悪いけど死んで元々なんて考えてる奴にそんな任務を任せる気はないわ。」
嵩原の提案を山形は切り捨てる。嵩原が黙る中、山形はコーヒーを啜る。
「...貴方のその“瞳”を敵に渡すわけにも行かないし何より、あの子との約束がある。」
「....分かりました。」
嵩原はそう言うと部屋を後にする。そして残された山形はコーヒーの苦味を味わいながら天井を見つけて呟く。
「....二年前からせっかく生き残ったんだから死に急ぐんじゃないわよ全く。ホント龍那、アンタがいてくれたら...。私には荷が重いわ。」
その表情は苦々しくその言葉は虚しく部屋に響いた。
To be continued....