『こんにちわ』
更新日:2020/07/07 Tue 23:25:53
『逢魔時に気を付けろ。お菓子の怪物に浚われるぞ』
コテージに帰り、着替えを済ませた愛歩は、持ってきていた『奇怪喫茶逢魔時』という本を読んでいた。
『逢魔時に浚われた子供は、お菓子の怪物に作り替えられる……』
挿し絵に水飴のような身体にされた少女達のイラストが使われている。
『逢魔時に浚われた人間は奇怪喫茶で働かされる……』
川に行く前につけたクーラーが愛歩の髪を撫でる。
『奇怪喫茶はどこにも無いようでどこにでも現れる』
愛歩は何度読んでもこれが現実の話では無い気がする。明らかに作り話だ。
でも少し気になるページもあった。付箋を張った所まで捲る。逢魔時に浚われたとされる人間達と言う章だ。
『大石早生:家のリビングで愛犬と共に拐われた』
その文字を何度も何度も指でなぞる。
大石家の本当の娘。名字も名前も同じと言うのは、果たして偶然なのだろうか?
「にゃん」
思考を巡らせる愛歩を邪魔するように、黒猫が手にじゃれついてきた。
「黒猫ちゃん……」
愛歩は本から手を離し、黒猫と戯れ始める。
「おらぁここがいいのかぁ」
さっきの天号の真似をして猫の喉を撫でる。ゴロゴロと気持ち良さそうな音を立てて喜んでくれた。
「おーいアユミン!」
「あ、今開けるよ」
むらサメの声に、立ち上がって玄関まで行く愛歩。
ドアを開けると髪から水を滴らせた4人がいた。
「楽しかった?」
「うん、四ツ橋ちゃんと遊んでた」
「私も緋雪ちゃんと遊んできた~」
どうやらむらサメときゅーばんは他のクラスの友達と遊んできたようだ。
「私は他の子にちょっかいかけたり……あ、古代ちゃんは退屈じゃなかった?」
「気にしないでよ、人と長く接するの疲れるだけだし」
天号と古代もいつも通りのようだ。
「そっかぁ、泳ぐのって楽しそうだね。……私はカナヅチだけど……」
喋りながらコテージのリビングに行くと、奇妙な光景に出くわした。
猫が明らかに本を読んでいるのだ。
目を見開き、身体をピクリとも動かさずに。時々唸りながらページを捲っている。
猫がページを捲っているのだ。
「……うわ」
誰が声を出したのか、誰にも分からなかった。きゅーばんだったかもしれないし、天号だったかもしれない。もしかしたら猫だったのかも……
猫がこっちを向く。驚いた顔で飛び上がった。
「す……」
本を読む猫なんて……愛歩は思わず口に出た。
「すご~い!」
「言葉分かるの?!」
「自分本読めるん?!」
「言葉が分かる?!おばあちゃんにも見せてあげたいよ!」
まさかこんなリアクションをするとは思わなかったのか、黒猫の方が呆気に取られている。
「おかしいな……猫の脳の大きさで本が読めるなんて……言葉を理解するってのはまだ分かるけど」
愛歩、きゅーばん、むらサメ、天号がはっちゃける中で、古代だけは冷静だった。
「ぐるるる」
撫でくり振り回された猫は、ちょっと酔ってしまったようだ。不機嫌そうな声をあげてる。
「蟹乃ちゃ~ん!飯盒炊飯遅れるよ!」
「きゅーばんちゃん!何してるの~?」
聞きなれない声がした。どうやら他のクラスの友達が迎えにきたらしい。
「四ツ橋ちゃんや!なんや、もうそんな時間かいな」
「うん、行かなきゃね。ごめんね、カレーライス持ってくるから」
「ありがとうきゅーばんちゃん。頑張ってきてね…!」
トラウマゆえに飯盒炊飯に行かない愛歩は、1人コテージに残るのだった。
コテージに帰り、着替えを済ませた愛歩は、持ってきていた『奇怪喫茶逢魔時』という本を読んでいた。
『逢魔時に浚われた子供は、お菓子の怪物に作り替えられる……』
挿し絵に水飴のような身体にされた少女達のイラストが使われている。
『逢魔時に浚われた人間は奇怪喫茶で働かされる……』
川に行く前につけたクーラーが愛歩の髪を撫でる。
『奇怪喫茶はどこにも無いようでどこにでも現れる』
愛歩は何度読んでもこれが現実の話では無い気がする。明らかに作り話だ。
でも少し気になるページもあった。付箋を張った所まで捲る。逢魔時に浚われたとされる人間達と言う章だ。
『大石早生:家のリビングで愛犬と共に拐われた』
その文字を何度も何度も指でなぞる。
大石家の本当の娘。名字も名前も同じと言うのは、果たして偶然なのだろうか?
「にゃん」
思考を巡らせる愛歩を邪魔するように、黒猫が手にじゃれついてきた。
「黒猫ちゃん……」
愛歩は本から手を離し、黒猫と戯れ始める。
「おらぁここがいいのかぁ」
さっきの天号の真似をして猫の喉を撫でる。ゴロゴロと気持ち良さそうな音を立てて喜んでくれた。
「おーいアユミン!」
「あ、今開けるよ」
むらサメの声に、立ち上がって玄関まで行く愛歩。
ドアを開けると髪から水を滴らせた4人がいた。
「楽しかった?」
「うん、四ツ橋ちゃんと遊んでた」
「私も緋雪ちゃんと遊んできた~」
どうやらむらサメときゅーばんは他のクラスの友達と遊んできたようだ。
「私は他の子にちょっかいかけたり……あ、古代ちゃんは退屈じゃなかった?」
「気にしないでよ、人と長く接するの疲れるだけだし」
天号と古代もいつも通りのようだ。
「そっかぁ、泳ぐのって楽しそうだね。……私はカナヅチだけど……」
喋りながらコテージのリビングに行くと、奇妙な光景に出くわした。
猫が明らかに本を読んでいるのだ。

目を見開き、身体をピクリとも動かさずに。時々唸りながらページを捲っている。
猫がページを捲っているのだ。
「……うわ」
誰が声を出したのか、誰にも分からなかった。きゅーばんだったかもしれないし、天号だったかもしれない。もしかしたら猫だったのかも……
猫がこっちを向く。驚いた顔で飛び上がった。
「す……」
本を読む猫なんて……愛歩は思わず口に出た。
「すご~い!」
「言葉分かるの?!」
「自分本読めるん?!」
「言葉が分かる?!おばあちゃんにも見せてあげたいよ!」
まさかこんなリアクションをするとは思わなかったのか、黒猫の方が呆気に取られている。
「おかしいな……猫の脳の大きさで本が読めるなんて……言葉を理解するってのはまだ分かるけど」
愛歩、きゅーばん、むらサメ、天号がはっちゃける中で、古代だけは冷静だった。
「ぐるるる」
撫でくり振り回された猫は、ちょっと酔ってしまったようだ。不機嫌そうな声をあげてる。
「蟹乃ちゃ~ん!飯盒炊飯遅れるよ!」
「きゅーばんちゃん!何してるの~?」
聞きなれない声がした。どうやら他のクラスの友達が迎えにきたらしい。
「四ツ橋ちゃんや!なんや、もうそんな時間かいな」
「うん、行かなきゃね。ごめんね、カレーライス持ってくるから」
「ありがとうきゅーばんちゃん。頑張ってきてね…!」
トラウマゆえに飯盒炊飯に行かない愛歩は、1人コテージに残るのだった。
愛歩は再び読書に戻った。
今度は黒猫も一緒だった。
「にゃぬぬぬ」
黒猫が何か言ってる。愛歩に猫語は分からないが、憤慨しているような気がした。
「黒猫さん、何がそんなに嫌なの?」
そんな黒猫を宥めるように額を掻いてやった。
「にゃあ!」
黒猫がそっぽを向いた。どうやらこの本がお気に召さないらしい。
「ごめんごめん、他の本にしよう……か?」
一瞬、窓の外で何かが蠢いたような気がした。
「ぬ~」
「ごめんって、ほら。こっちにしよう。『怪猫誘拐譚』だって」
窓の外でガラガラと聞き慣れない音が聞こえた。
「フーッ!」
黒猫が明確に威嚇する。
見えない敵に毛を逆立たせ、牙を剥き出しにした。
「な、なんだろう?蛇でもいるのかな?」
本を起き、窓に顔を近づけた。クーラーをつけていたので窓は閉まってるし大丈夫だと思ったのだ。
「……え?」
窓の外に、この季節には到底似合わない暑苦しそうなゴスロリとマフラーをした少女が立っていたのだった。
今度は黒猫も一緒だった。
「にゃぬぬぬ」
黒猫が何か言ってる。愛歩に猫語は分からないが、憤慨しているような気がした。
「黒猫さん、何がそんなに嫌なの?」
そんな黒猫を宥めるように額を掻いてやった。
「にゃあ!」
黒猫がそっぽを向いた。どうやらこの本がお気に召さないらしい。
「ごめんごめん、他の本にしよう……か?」
一瞬、窓の外で何かが蠢いたような気がした。
「ぬ~」
「ごめんって、ほら。こっちにしよう。『怪猫誘拐譚』だって」
窓の外でガラガラと聞き慣れない音が聞こえた。
「フーッ!」
黒猫が明確に威嚇する。
見えない敵に毛を逆立たせ、牙を剥き出しにした。
「な、なんだろう?蛇でもいるのかな?」
本を起き、窓に顔を近づけた。クーラーをつけていたので窓は閉まってるし大丈夫だと思ったのだ。
「……え?」
窓の外に、この季節には到底似合わない暑苦しそうなゴスロリとマフラーをした少女が立っていたのだった。
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