『パンダのウインク』
更新日:2020/07/12 Sun 20:57:04
月日は巡り、6月の中旬。
愛歩達は動物園に遊びに行く計画を実行していた。
みくもやに集合し、バスで動物園まで行く。
「みくもやに何時集合だったかね?」
仕事用のネクタイを締めながらお父さんが確認してきた。
「10時半だよ。あ、これ美味しい」
愛歩はベーコンエッグを乗せたトーストと野菜スープの朝食を急いでかきこんでいた。
「ごちそーさま!」
手を合わせて大きな声で挨拶すると、横に置いてあったバッグを持つ。
「お父さん!行ける行ける?」
「慌てなくてもまだ九時よ。全然時間はあるわ」
「でもお母さん……」
そわそわする養娘に、実の娘の姿が重なって見え、養父は寂しい気持ちを隠して苦笑いした。
「よしよし分かった。直ぐ出ようか」
「やった!お父さんありがとう!」
愛歩はこの日を楽しみにしていたのだ。動物園なんて、話には聞いていたが実際に行けるとは思ってもいなかった。
のじゃロリ猫もいてほしいと誘ったが、生き物なら何億匹も見とるからいいと断られてしまった。
愛歩は嬉々としてお父さんの車に乗せてもらったのだった。
愛歩達は動物園に遊びに行く計画を実行していた。
みくもやに集合し、バスで動物園まで行く。
「みくもやに何時集合だったかね?」
仕事用のネクタイを締めながらお父さんが確認してきた。
「10時半だよ。あ、これ美味しい」
愛歩はベーコンエッグを乗せたトーストと野菜スープの朝食を急いでかきこんでいた。
「ごちそーさま!」
手を合わせて大きな声で挨拶すると、横に置いてあったバッグを持つ。
「お父さん!行ける行ける?」
「慌てなくてもまだ九時よ。全然時間はあるわ」
「でもお母さん……」
そわそわする養娘に、実の娘の姿が重なって見え、養父は寂しい気持ちを隠して苦笑いした。
「よしよし分かった。直ぐ出ようか」
「やった!お父さんありがとう!」
愛歩はこの日を楽しみにしていたのだ。動物園なんて、話には聞いていたが実際に行けるとは思ってもいなかった。
のじゃロリ猫もいてほしいと誘ったが、生き物なら何億匹も見とるからいいと断られてしまった。
愛歩は嬉々としてお父さんの車に乗せてもらったのだった。
青空町には天号の祖母がやっているみくもやと言う駄菓子屋がある。
「もうすぐ着くよ、準備しなさい」
「はーい」
愛歩は開いていた本から目を上げた。読んでいた本は『鐘明家・その血の呪い』だ。
あれからも愛歩は、定期的に図書館に通い、玲亜や龍香と共に、色々と調査していた。
大石家の実の娘ーーー大石早生の行方と共に、自分のルーツも突き止めようとしていた。
自分の母と思しき女性が朱夏と言う名前だった。
家督を継ぐ女性の名前、あ.い.う.え等の25文字から繰り返されている表を見ると、しの名前は確かに朱夏だった。
もう一度だけ本に目を向ける。
母親が朱夏だとしたら、自分の本当の名前はすから始まる名前になるはずだ。
さ、し、す、あった。表には墨亜と表記されていた。
「変な名前……」
愛歩も変わった名前だけれども。どうして母はこの名前をつけなかったのだろう?
「愛歩?どうかしたのかい?」
「あ、いや何でも!」
お父さんの声に、愛歩は思考することを止めたのだった。
「もうすぐ着くよ、準備しなさい」
「はーい」
愛歩は開いていた本から目を上げた。読んでいた本は『鐘明家・その血の呪い』だ。
あれからも愛歩は、定期的に図書館に通い、玲亜や龍香と共に、色々と調査していた。
大石家の実の娘ーーー大石早生の行方と共に、自分のルーツも突き止めようとしていた。
自分の母と思しき女性が朱夏と言う名前だった。
家督を継ぐ女性の名前、あ.い.う.え等の25文字から繰り返されている表を見ると、しの名前は確かに朱夏だった。
もう一度だけ本に目を向ける。
母親が朱夏だとしたら、自分の本当の名前はすから始まる名前になるはずだ。
さ、し、す、あった。表には墨亜と表記されていた。
「変な名前……」
愛歩も変わった名前だけれども。どうして母はこの名前をつけなかったのだろう?
「愛歩?どうかしたのかい?」
「あ、いや何でも!」
お父さんの声に、愛歩は思考することを止めたのだった。
みくもやに着くと、天号ちゃんが待っていた。
「天号ちゃんおはよう!」
「お、おはよ~!」
林間学校が終わってからと言うもの、天号ちゃんがよそよそしい……
愛歩はそう感じていた。
理由を聞くべきだろうか?聞かれたくないだろうか?そんな事を何度も考えていた。
「おやおや、号姫のお友達かい」
駄菓子屋のおばあちゃんがこちらに気が付いて話しかけてくれた。
私のおばあちゃんだよと、天号が紹介してくれた。
「おや、随分懐かしい顔だね」
「え?」
「その髪色、その瞳、お嬢ちゃん、鐘明家の子だろう。懐かしいなぁ。あの頃はやんちゃしてたもんだよ」
愛歩は天号のおばあちゃんを凝視した。この人は自分の母を知っているのか?
「あの…教えてください!その人の事!」
おばあちゃんは顔を綻ばせる。
「ああいいよ。わたしゃ若いもんに青空町の事を教えるのが大好きでね……そう、わたしと才花はいつも一緒でね……」
「お、おばあちゃん!今日は友達と遊びに行くから!」
天号が慌てて止め、愛歩に向かって謝った。
「ごめん、おばあちゃんこの話すると長いから……」
「そっか、こっちこそごめん。おばあちゃん、また今度来てもいいですか?」
「おおいいよ。いつでもおいで」
おばあちゃんはそういって店の奥に引っ込んでいった。
「こんにちわ~」
「あ、きゅーばんちゃんだ!」
愛歩はきゅーばんを出迎えるために外に駆け出す。何かが引っかかっていたが、それが何なのか分からなかった。
「天号ちゃんおはよう!」
「お、おはよ~!」
林間学校が終わってからと言うもの、天号ちゃんがよそよそしい……
愛歩はそう感じていた。
理由を聞くべきだろうか?聞かれたくないだろうか?そんな事を何度も考えていた。
「おやおや、号姫のお友達かい」
駄菓子屋のおばあちゃんがこちらに気が付いて話しかけてくれた。
私のおばあちゃんだよと、天号が紹介してくれた。
「おや、随分懐かしい顔だね」
「え?」
「その髪色、その瞳、お嬢ちゃん、鐘明家の子だろう。懐かしいなぁ。あの頃はやんちゃしてたもんだよ」
愛歩は天号のおばあちゃんを凝視した。この人は自分の母を知っているのか?
「あの…教えてください!その人の事!」
おばあちゃんは顔を綻ばせる。
「ああいいよ。わたしゃ若いもんに青空町の事を教えるのが大好きでね……そう、わたしと才花はいつも一緒でね……」
「お、おばあちゃん!今日は友達と遊びに行くから!」
天号が慌てて止め、愛歩に向かって謝った。
「ごめん、おばあちゃんこの話すると長いから……」
「そっか、こっちこそごめん。おばあちゃん、また今度来てもいいですか?」
「おおいいよ。いつでもおいで」
おばあちゃんはそういって店の奥に引っ込んでいった。
「こんにちわ~」
「あ、きゅーばんちゃんだ!」
愛歩はきゅーばんを出迎えるために外に駆け出す。何かが引っかかっていたが、それが何なのか分からなかった。
「これ、なんて動物やっけ?」
「何かで見たような…なんだったかな」
「えっと確か……オカピだって」
縞模様の足をした鹿のような生き物を見て首をかしげるむらサメに、同調する天号。古代はマップを確認しながら回答する。
「愛歩ちゃん、あっちにはパンダがいるんだよ!」
「へえ~生で見るの初めて!」
初めての場所に瞳をキラキラさせる愛歩と、そんな愛歩に道案内してくれるきゅーばん。
「何かで見たような…なんだったかな」
「えっと確か……オカピだって」
縞模様の足をした鹿のような生き物を見て首をかしげるむらサメに、同調する天号。古代はマップを確認しながら回答する。
「愛歩ちゃん、あっちにはパンダがいるんだよ!」
「へえ~生で見るの初めて!」
初めての場所に瞳をキラキラさせる愛歩と、そんな愛歩に道案内してくれるきゅーばん。
「ふぁぁぁ」
楽しんでいる子供らを見て、欠伸をする影がひとつ。
「遠くに行くと言うから隠れて着いてきたが、全くもって暇じゃの…」
のじゃロリ猫だ。愛歩達には姿を見せず、遠くから見守っている。その顔はひどく退屈そうだ。何千年の時間を過ごしたのじゃロリ猫にとって、動物なんて、珍しくもなんとも無いのであろう。
もう帰ろうかと考えていると、のじゃロリ猫の背中を冷たい殺意が貫いた。
「んぉ!」
ゾクゾクして思わず辺りを見渡すと、熊コーナーの檻に見知った妖気を見つけた。
チッと舌打ちする。
「面倒いの……くっそ面倒の」
厄介な事になってくれるなよ……そう思いながらのじゃロリ猫はその場に留まることにしたのだった。
楽しんでいる子供らを見て、欠伸をする影がひとつ。
「遠くに行くと言うから隠れて着いてきたが、全くもって暇じゃの…」
のじゃロリ猫だ。愛歩達には姿を見せず、遠くから見守っている。その顔はひどく退屈そうだ。何千年の時間を過ごしたのじゃロリ猫にとって、動物なんて、珍しくもなんとも無いのであろう。
もう帰ろうかと考えていると、のじゃロリ猫の背中を冷たい殺意が貫いた。
「んぉ!」
ゾクゾクして思わず辺りを見渡すと、熊コーナーの檻に見知った妖気を見つけた。
チッと舌打ちする。
「面倒いの……くっそ面倒の」
厄介な事になってくれるなよ……そう思いながらのじゃロリ猫はその場に留まることにしたのだった。
愛歩はパンダの檻に駆け寄った。
「わぁ!生パンダ!」
白と黒の模様の愛らしい熊が3頭、笹を食んでいる。
その内の1頭が愛歩にウインクしてくれる。
愛歩は嬉しくなって、そのパンダに手をふった。
「アユミン、走ると危ないで!」
むらサメ達もやってくる。
「パンダって言うとさ、中国のイメージだよね」
「そうそう、この動物園の2頭も中国から来たんだよ!」
「でも、3頭いるよ?」
きゅーばんの言葉に、愛歩はパンダを見つめながら言い返した。
「あれ?おかしいな。3頭もいたっけ?」
「愛歩ちゃん、あれ……」
「ん?何……」
古代が愛歩をつついて異変を知らせる。
愛歩が古代の指差した方を見ると、パンダが立っていた。
二足歩行でスクっと立ち、耳を立ててこちらの話をじっと聞いている。
「あ、やっぱりこの動物園、パンダ2頭しかいないよ。だってここに書かれてるもん!このパンダは珍しい種で日本にこの2頭しかいませんって!」
きゅーばんの言葉を合図に、パンダが動き出した。
「ちょ…」
「やば……」
周りの人もざわつきだす。パンダが檻をねじ曲げようとしているのだ。
檻がメキメキと弛み軋む。パンダがこちらに手を伸ばしてきた。
「愛歩ちゃん!逃げよう!」
「え?!う、うん!」
危険を感じたきゅーばん達は、愛歩の手を引っ張って逃げ出した。
後ろで悲鳴が聞こえる。バキッと言う音と悲鳴、飼育員の慌てぶりから、パンダが檻を壊したと直ぐに分かった。
「わぁ!生パンダ!」
白と黒の模様の愛らしい熊が3頭、笹を食んでいる。
その内の1頭が愛歩にウインクしてくれる。
愛歩は嬉しくなって、そのパンダに手をふった。
「アユミン、走ると危ないで!」
むらサメ達もやってくる。
「パンダって言うとさ、中国のイメージだよね」
「そうそう、この動物園の2頭も中国から来たんだよ!」
「でも、3頭いるよ?」
きゅーばんの言葉に、愛歩はパンダを見つめながら言い返した。
「あれ?おかしいな。3頭もいたっけ?」
「愛歩ちゃん、あれ……」
「ん?何……」
古代が愛歩をつついて異変を知らせる。
愛歩が古代の指差した方を見ると、パンダが立っていた。
二足歩行でスクっと立ち、耳を立ててこちらの話をじっと聞いている。
「あ、やっぱりこの動物園、パンダ2頭しかいないよ。だってここに書かれてるもん!このパンダは珍しい種で日本にこの2頭しかいませんって!」
きゅーばんの言葉を合図に、パンダが動き出した。
「ちょ…」
「やば……」
周りの人もざわつきだす。パンダが檻をねじ曲げようとしているのだ。
檻がメキメキと弛み軋む。パンダがこちらに手を伸ばしてきた。
「愛歩ちゃん!逃げよう!」
「え?!う、うん!」
危険を感じたきゅーばん達は、愛歩の手を引っ張って逃げ出した。
後ろで悲鳴が聞こえる。バキッと言う音と悲鳴、飼育員の慌てぶりから、パンダが檻を壊したと直ぐに分かった。
「あー、やはりそうなったか……」
のじゃロリ猫が嫌そうに呟く。
「うーむ、厄介な敵じゃの……」
頭をポリポリ掻いて、のじゃロリ猫は立ち上がった。
のじゃロリ猫が嫌そうに呟く。
「うーむ、厄介な敵じゃの……」
頭をポリポリ掻いて、のじゃロリ猫は立ち上がった。