「なん、で…………?
あなたは、さっき、わたしが…………」
「殺した。そうだとも。
君は間違いなく私を殺した。
一切の躊躇なく、ね。素晴らしいよ。
世界を救うために人殺しの罪を背負う覚悟。
やはり君は私が思っていた通りの『主人公』だ」
自らの死をゲームで負けた程度の
事のように、どこか楽しそうに話すDr.。
あなたは、さっき、わたしが…………」
「殺した。そうだとも。
君は間違いなく私を殺した。
一切の躊躇なく、ね。素晴らしいよ。
世界を救うために人殺しの罪を背負う覚悟。
やはり君は私が思っていた通りの『主人公』だ」
自らの死をゲームで負けた程度の
事のように、どこか楽しそうに話すDr.。
なんで?どうして……?
わたしは、確かに……!
あの人の身体を、拳で貫いたのに。
「だから言ったろう?
『無駄だよ』と。装置を破壊しても無駄。
私を殺す事もできない。もう誰にも、この
世界の上書きは止められないんだ。
何度でもやってみるが良い。でもね……
私は、この世界では不死身なのさ」
Dr.マッドの服は、私に貫かれた事実なんて
まるでなかったかのように元に戻っている。
これが……Dr.の『禁忌符号』の力……?
殺せないなんて、そんなバカな事……!
わたしは、確かに……!
あの人の身体を、拳で貫いたのに。
「だから言ったろう?
『無駄だよ』と。装置を破壊しても無駄。
私を殺す事もできない。もう誰にも、この
世界の上書きは止められないんだ。
何度でもやってみるが良い。でもね……
私は、この世界では不死身なのさ」
Dr.マッドの服は、私に貫かれた事実なんて
まるでなかったかのように元に戻っている。
これが……Dr.の『禁忌符号』の力……?
殺せないなんて、そんなバカな事……!
「死なないなんて嘘だ。
絶対に、なにかタネがあるはず!
幻覚か何かを使っているのかも……!」
きゅーばんちゃんが『静動』を使い、
Dr.の動きを観察している。
「う〜ん、違うなぁ。幻覚じゃない。
これこそが私の力さ。ありとあらゆる世界の『私』から符号を貰い受けて作り上げた、世界を変える力!!
禁忌符号:『華亡き世界に安寧を』!!
無意味で無価値な世界は滅び、夢の世界こそが本物になる!!
さぁ……起動せよ、転移装置よ!
世界はここから!!裏返る!!!!」
絶対に、なにかタネがあるはず!
幻覚か何かを使っているのかも……!」
きゅーばんちゃんが『静動』を使い、
Dr.の動きを観察している。
「う〜ん、違うなぁ。幻覚じゃない。
これこそが私の力さ。ありとあらゆる世界の『私』から符号を貰い受けて作り上げた、世界を変える力!!
禁忌符号:『華亡き世界に安寧を』!!
無意味で無価値な世界は滅び、夢の世界こそが本物になる!!
さぁ……起動せよ、転移装置よ!
世界はここから!!裏返る!!!!」
ゴゴゴゴゴゴ……!!!
時空転移装置が起動し、
学園全体が揺れ始める。
いや、違う……!これは、この世界全体が、
揺れている……!!
学園全体が揺れ始める。
いや、違う……!これは、この世界全体が、
揺れている……!!
「くっ……ダメだ!転移装置も、
壊した先から直っていく!Dr.と同じ……!
これは、時間が巻き戻ってるのか……!?」
「あぁそうとも。私の禁忌符号の力さ。
『華亡き世界に安寧を(ノーリリィ ノーガーデン)』。
夢を現実にするためだけに存在する能力。それを完遂するまで、私も、装置も、破壊する事はできない!!
さて、どうする?二度と復活できないように、私をミンチにでもしてみる?」
勝ち誇ったように、腕を広げて余裕を見せるDr.マッド。
壊した先から直っていく!Dr.と同じ……!
これは、時間が巻き戻ってるのか……!?」
「あぁそうとも。私の禁忌符号の力さ。
『華亡き世界に安寧を(ノーリリィ ノーガーデン)』。
夢を現実にするためだけに存在する能力。それを完遂するまで、私も、装置も、破壊する事はできない!!
さて、どうする?二度と復活できないように、私をミンチにでもしてみる?」
勝ち誇ったように、腕を広げて余裕を見せるDr.マッド。
もう、どうしようもない。
みんなが、そんな顔をしていた。
みんなが、そんな顔をしていた。
───だけど。
わたしには、もう分かっていた。
なぜそう思うのか、はっきりとは
分からない。
けれど、間違いない。
不思議な確証があった。
なぜそう思うのか、はっきりとは
分からない。
けれど、間違いない。
不思議な確証があった。
「…………そっか、そうなんだね」
「…………ん?」
怪訝な顔をして、こちらを見るDr.。
わたしは自分の足元に落ちていた、
機人のパーツと思しき鉄片を拾い上げる。
「…………ん?」
怪訝な顔をして、こちらを見るDr.。
わたしは自分の足元に落ちていた、
機人のパーツと思しき鉄片を拾い上げる。
「この世界の『本当の』支配者は、
Dr.じゃない。
─────わたしだったんだ」
Dr.じゃない。
─────わたしだったんだ」
そして。
それを、自らの胸に─────。
ひといきに、突き刺した。
それを、自らの胸に─────。
ひといきに、突き刺した。
揺れる、天川学園の、地下深く。
転移装置の轟音が鳴り響いているのに。
まるでここだけ音がなくなったように、
静かだった。
転移装置の轟音が鳴り響いているのに。
まるでここだけ音がなくなったように、
静かだった。
「なっ…………!!!!」
「何を……!!はもはもちゃん!!!」
「何を……!!はもはもちゃん!!!」
痛みは、思ったより、なかった。
ここが、夢の世界、だから、かな…………。
ここが、夢の世界、だから、かな…………。
「なっ、何て、事を……!!
き、君は……君はっ、気付いた、のか!!
私の……符号の秘密に……!!」
き、君は……君はっ、気付いた、のか!!
私の……符号の秘密に……!!」
「はっ………………はっ………………
気付いた、わけじゃ……ない、けど……
やっぱり、そうなんだね………………」
気付いた、わけじゃ……ない、けど……
やっぱり、そうなんだね………………」
だんだん、思考に霞がかかってくる。
わたしの、意識が……消えていく。
わたしの、意識が……消えていく。
「何を……やってんだ、テメェ!!
なんで…………お前が、ここで死ぬ必要が
あるんだよ!!」
なんで…………お前が、ここで死ぬ必要が
あるんだよ!!」
気がつけば、アもちゃんの顔がすぐ横にあった。
抱きかかえられているみたいだ。
もう、身体に、力が入らない。
抱きかかえられているみたいだ。
もう、身体に、力が入らない。
残された僅かな力を振り絞って、手を差し出す。
「アもちゃん………………。
わたしの、手……握って…………?」
「分かった、分かったから……
しっかりしろよ!!おい!死ぬなよ!!」
「アもちゃん………………。
わたしの、手……握って…………?」
「分かった、分かったから……
しっかりしろよ!!おい!死ぬなよ!!」
ガシッ!
力強く、手が握られる。
ふふ、今日のアもちゃんは、素直だなぁ。
力強く、手が握られる。
ふふ、今日のアもちゃんは、素直だなぁ。
「わたしの力……全部、持って行って……。
アもちゃんなら、きっと─────」
世界を、救えるから。
そう、言おうと思ったのに。
……もう、声も出ないや。
アもちゃんなら、きっと─────」
世界を、救えるから。
そう、言おうと思ったのに。
……もう、声も出ないや。
子供の頃からずっと、
ヒーローに憧れていた。
ヒーローに憧れていた。
どんなに辛く苦しい状況でも、優しさを忘れずに戦い抜く事ができる、正義の味方。
そして、わたしが憧れるヒーローは、絶望的な戦いであっても必ず、生きて帰って来てくれた。
みんなに勇気と希望を与える存在だった。
だけど。
それは、ひとつのありようでしかなくて。
わたしは、
そうなれなかったってだけの、話なんだ。
…………………………………………
………………………………
……………………
────────────
「………………おい!!おい、はもはも……
目ぇ開けろよ!!!おい!!!!!
有葉!!!!!!!!」
オレがどんなに身体を揺すっても。
耳元でどんなに大きな声を出しても。
有葉は、二度と目を開ける事はなかった。
目ぇ開けろよ!!!おい!!!!!
有葉!!!!!!!!」
オレがどんなに身体を揺すっても。
耳元でどんなに大きな声を出しても。
有葉は、二度と目を開ける事はなかった。
抱え上げた身体から、
急速に温もりが失われていく。
はもはもは、死んだ。
死んで、しまった。
急速に温もりが失われていく。
はもはもは、死んだ。
死んで、しまった。
その事実が、頭の中をぐるぐるとかき混ぜる。
「嫌だ、嫌だ……やめて!!
やめてよ!!!はもはもちゃん!!!」
その声は、子供達の方から聞こえたものではなく。
Dr.マッドのものだった。
やめてよ!!!はもはもちゃん!!!」
その声は、子供達の方から聞こえたものではなく。
Dr.マッドのものだった。
「嫌だよ!!死なないで……!!
おね"か"いだから"ぁ!!!」
その場に崩れ落ち、泣きじゃくる姿は、
まるで、子供に戻ってしまったようだった。
おね"か"いだから"ぁ!!!」
その場に崩れ落ち、泣きじゃくる姿は、
まるで、子供に戻ってしまったようだった。
……いや。
そうだ。
コイツは、大人になんて、
なれてはいないんだ。
ずっとずっと、心は子供のまま。
そうだ。
コイツは、大人になんて、
なれてはいないんだ。
ずっとずっと、心は子供のまま。
辛い現実を受け入れたくなくて、
夢の世界へと逃避してしまうほどに。
本来なら実現できない途方もない夢を、
禁忌の力を使ってまで叶えようと
してしまうほどに。
夢の世界へと逃避してしまうほどに。
本来なら実現できない途方もない夢を、
禁忌の力を使ってまで叶えようと
してしまうほどに。
心は、幼いままなんだ。
「うっ……うっ…………こんな…………
こんなのってないよ…………!!
私は、一体何のために…………!!」
こんなのってないよ…………!!
私は、一体何のために…………!!」
ふと。
Dr.マッドの身体が、黒い霧に包まれているように見えた。
なんだ、これは…………?
Dr.マッドの身体が、黒い霧に包まれているように見えた。
なんだ、これは…………?
「ううぅっ……!!
うぐうううううううあああああああああああああああああああア"ア"あ"ア"ああア"──────ッ!!!!!!!!」
うぐうううううううあああああああああああああああああああア"ア"あ"ア"ああア"──────ッ!!!!!!!!」
バチッ!!
バチバチバチッ!!!
バチバチバチッ!!!
黒い稲妻が、彼女の身体を包む。
これは、まさか…………!
これは、まさか…………!
「これはっ……どう見ても、まともじゃねぇ!!
テメェら!!悲しむのは後にして、早く逃げろ!!」
事態が理解できず、立ち尽くす子供達に喝を入れるように、大きな声で叫んだ。
テメェら!!悲しむのは後にして、早く逃げろ!!」
事態が理解できず、立ち尽くす子供達に喝を入れるように、大きな声で叫んだ。
オレの声にはっと我に返ったのか、
皆が入り口に向かい走り出す。
皆が入り口に向かい走り出す。
…………足元に横たわる、
はもはもの身体に目を向ける。
まるで眠っているかのように、
安らかな顔だ。
はもはもの身体に目を向ける。
まるで眠っているかのように、
安らかな顔だ。
「………………絶対に、
お前の死は無駄にしない。
ヤツを倒して、世界を救ってみせる」
お前の死は無駄にしない。
ヤツを倒して、世界を救ってみせる」
背中を向け、走り出す。
きちんと弔ってやれない事を、許してくれ。
だけど。
本来の世界のお前は、まだ生きてるはずだ。
だから、「あっちのお前」を救うために、
オレは先へ進む。
見ていてくれ、はもはも!!
きちんと弔ってやれない事を、許してくれ。
だけど。
本来の世界のお前は、まだ生きてるはずだ。
だから、「あっちのお前」を救うために、
オレは先へ進む。
見ていてくれ、はもはも!!