ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!
私ひとりきりになった、青空学園。
空は、不気味なほどに晴れ渡っている。
空は、不気味なほどに晴れ渡っている。
地面が、揺れる。
いいえ、これは……この世界そのものが、
揺れている……!
「……いよいよ、と言ったところかしら」
いいえ、これは……この世界そのものが、
揺れている……!
「……いよいよ、と言ったところかしら」
私と猫は、何よりも重要な事を伝えずに、
彼女たちを送り出してしまった。
それは……確証がなかったから、
というのもある。
Dr.マッドの持つ禁忌符号の力は、
もはや私達の想像もつかないレベルに到達している可能性があったから。
彼女たちを送り出してしまった。
それは……確証がなかったから、
というのもある。
Dr.マッドの持つ禁忌符号の力は、
もはや私達の想像もつかないレベルに到達している可能性があったから。
そして、何よりも。
余りにも、残酷すぎたからだ。
余りにも、残酷すぎたからだ。
無垢で純粋な1人の少女に、
「世界のために自ら命を絶ってくれ」
なんて、言えるわけがない。
「世界のために自ら命を絶ってくれ」
なんて、言えるわけがない。
例え、その代償に世界が滅びてしまう
としても。
私達には、言えるはずがなかった。
としても。
私達には、言えるはずがなかった。
「……はもはもちゃん………………」
それが、はもはもちゃんだった。
詳細は、「かつてどこかの世界線でDr.マッドが経験した事」だから、分かりようもない。
それでも、私達は直感で感じていた。
明らかに、この世界には意図的に作られた作為……歪みがある。
物語で表現するなら、所謂「主人公」。
この世界には、最初から主人公がいたのだ。
それでも、私達は直感で感じていた。
明らかに、この世界には意図的に作られた作為……歪みがある。
物語で表現するなら、所謂「主人公」。
この世界には、最初から主人公がいたのだ。
主人公が立てた作戦は紆余曲折はあれど必ず成功し、主人公の戦いは苦戦はしても必ず勝利する。「そういうもの」なのだ。
……これが創作物ならば、
「そういうもの」として納得できたかも知れない。
でも、ここは現実だ。
……これが創作物ならば、
「そういうもの」として納得できたかも知れない。
でも、ここは現実だ。
例え夢の世界であっても、数ある現実のひとつのはずなのだ。
なのに、「彼女」はまるで主人公のように、様々な苦難を乗り越えてきた。まるで主人公のように、様々な戦いの中心にいた。
なのに、「彼女」はまるで主人公のように、様々な苦難を乗り越えてきた。まるで主人公のように、様々な戦いの中心にいた。
はもはもちゃんこそ、この世界を存続させるための要石。彼女がいる限り、Dr.マッドを倒す事も、世界の上書きを止める事もできないだろう。
……この世界を崩壊させるには、彼女の死が必要不可欠なのだ。
しかも、単なる死では、「物語上必要なピンチ」にしかならず、Dr.の禁忌符号によって復活させられてしまう可能性がある。
つまりは。
Dr.マッドが想定すらしていない死。
本来、はもはもちゃんが絶対にするはずがない、死に方。
………………自殺を、しなくてはならない、という事だ。
……この世界を崩壊させるには、彼女の死が必要不可欠なのだ。
しかも、単なる死では、「物語上必要なピンチ」にしかならず、Dr.の禁忌符号によって復活させられてしまう可能性がある。
つまりは。
Dr.マッドが想定すらしていない死。
本来、はもはもちゃんが絶対にするはずがない、死に方。
………………自殺を、しなくてはならない、という事だ。
……私達は、酷い保護者だった。
考えてみれば、彼女達には辛い思いばかりさせてしまった。
外敵から守ってきたと言えば聞こえはいいけれど……彼女達を狭い結界の中に閉じ込め、
食料も碌に与えてあげる事もできず、教えた事と言えば戦い方くらいだ。
……これではまるで、牢獄ではないか。
考えてみれば、彼女達には辛い思いばかりさせてしまった。
外敵から守ってきたと言えば聞こえはいいけれど……彼女達を狭い結界の中に閉じ込め、
食料も碌に与えてあげる事もできず、教えた事と言えば戦い方くらいだ。
……これではまるで、牢獄ではないか。
「牢獄、良いじゃないか。
この世界にはもう、ここ以外にまともな場所など残ってはいない。誰も文句など言わないだろうさ」
「……あなた…………閉じ込めておいたのに、抜け出したのね」
この世界にはもう、ここ以外にまともな場所など残ってはいない。誰も文句など言わないだろうさ」
「……あなた…………閉じ込めておいたのに、抜け出したのね」
星降 純乃。
私から見れば今でも可愛い子供だけれど、
猫の仇でもある。
……どうせあいつの事だから死んではいないだろうけど。
私から見れば今でも可愛い子供だけれど、
猫の仇でもある。
……どうせあいつの事だから死んではいないだろうけど。
「なぜ彼女達を送り出した?
私は止めようとした。お前達はただ、彼女達をむざむざ死にに行かせたようなものなんだぞ!どの道Dr.マッドの計画は止められない。
ならば、私達はここで安寧の時を過ごしていれば、それで良かったじゃないか!!」
「…………そうね。あなたの考えは正しいわ。
私も猫も、あの子達がDr.を止められるとは
思っていなかった。だけど、それでも……
信じてみたかったの。
あの子達が持つ、可能性を」
「可能性?それは何か?
はもはもちゃんが、全てを察して、自殺してくれるかもって可能性の話をしているのか!?ふざけるな!!!お前達が余計な事をしなければ、全て上手く行ったんだ!!
私は、ここでの暮らしが本当に気に入っていたんだ。
……そうさ、私は全てを知った上でここに来た。最初はどんなものか見てやろう、くらいの気持ちだったさ。だが……ここの空気は、他のどこよりも、穏やかだったんだ。
子供達も、本当に楽しそうに笑っていた。
こんな絶望的な状況で、だ。
ここは…………救いだった。絶望しか知らない、教えられていない私にとって、本当に救いだったんだ!!」
私は止めようとした。お前達はただ、彼女達をむざむざ死にに行かせたようなものなんだぞ!どの道Dr.マッドの計画は止められない。
ならば、私達はここで安寧の時を過ごしていれば、それで良かったじゃないか!!」
「…………そうね。あなたの考えは正しいわ。
私も猫も、あの子達がDr.を止められるとは
思っていなかった。だけど、それでも……
信じてみたかったの。
あの子達が持つ、可能性を」
「可能性?それは何か?
はもはもちゃんが、全てを察して、自殺してくれるかもって可能性の話をしているのか!?ふざけるな!!!お前達が余計な事をしなければ、全て上手く行ったんだ!!
私は、ここでの暮らしが本当に気に入っていたんだ。
……そうさ、私は全てを知った上でここに来た。最初はどんなものか見てやろう、くらいの気持ちだったさ。だが……ここの空気は、他のどこよりも、穏やかだったんだ。
子供達も、本当に楽しそうに笑っていた。
こんな絶望的な状況で、だ。
ここは…………救いだった。絶望しか知らない、教えられていない私にとって、本当に救いだったんだ!!」
純乃ちゃんの独白は、嘘など微塵も感じない本気のものだった。
「……やっぱり、あなたはDr.に『造られた』女の子だったのね」
「あぁそうさ。私達はいわば『舞台装置』。
物語をうまく回すための、歯車でしかない。
そんな事は承知の上だ。だが、それでも。
私達はこの世界に生を受けた。
それならばこの生を謳歌したいと思う事は、
間違っているのか!?せっかく見つけた安寧の場所を壊したくないと思う事は…………!
間違いなどでは、なかったはずなのに……」
純乃ちゃんは、がくりと膝から崩れ落ちた。
「……やっぱり、あなたはDr.に『造られた』女の子だったのね」
「あぁそうさ。私達はいわば『舞台装置』。
物語をうまく回すための、歯車でしかない。
そんな事は承知の上だ。だが、それでも。
私達はこの世界に生を受けた。
それならばこの生を謳歌したいと思う事は、
間違っているのか!?せっかく見つけた安寧の場所を壊したくないと思う事は…………!
間違いなどでは、なかったはずなのに……」
純乃ちゃんは、がくりと膝から崩れ落ちた。
あぁ、私達は…………なんて、酷い保護者だったのだろう。
世界を救うという大義名分を掲げて、
子供達を、救いのない戦いへと追いやった。
死地へと、送り出してしまった。
「ふ……ふふふ……」
そうだ。滅ぶべきは、私達だったんだ。
私は、私は…………何を、しているんだ。
「あははははははは!!!
あはははははははははははは!!!」
涙も、出てこない。
愚かな自分と、アイツなりに子供達の事を真剣に考えていた猫がしでかした事は。
子供達を、見殺しにしただけじゃないか。
子供達を、救いのない戦いへと追いやった。
死地へと、送り出してしまった。
「ふ……ふふふ……」
そうだ。滅ぶべきは、私達だったんだ。
私は、私は…………何を、しているんだ。
「あははははははは!!!
あはははははははははははは!!!」
涙も、出てこない。
愚かな自分と、アイツなりに子供達の事を真剣に考えていた猫がしでかした事は。
子供達を、見殺しにしただけじゃないか。
揺れが、激しくなる。
ギギギ……ガコン!!!
校舎の屋上に設置してあった巨大な貯水タンクの固定が外れ、こちらに向かって落下してくる。
かつての自分なら、こんなものに潰されても
すぐに復活できた。だけど、力が衰えた今の私は……恐らく蘇る事はできないだろう。
すぐに復活できた。だけど、力が衰えた今の私は……恐らく蘇る事はできないだろう。
最期の時を迎えるために、目を閉じる。
愚かな自分への罰は、
これでも軽すぎるくらいだ。
愚かな自分への罰は、
これでも軽すぎるくらいだ。
…………………………。
………………?
「はぁっ、はぁっ、はぁ……っ!」
ふと目を開けると、膝をついたまま、
手をこちらにかざした純乃ちゃんがいた。
ふと目を開けると、膝をついたまま、
手をこちらにかざした純乃ちゃんがいた。
「何を、しているんだ……お前!!」
「なに、って……純乃ちゃん、
あなたこそ…………。タンクを異界に飛ばして、私を助けてくれたの……?」
「目の前で、救える命を見殺しにするほど、
私はっ……非道ではないつもりだ……!」
息も切れ切れに、純乃ちゃんはこちらを見据える。
お前はどうだ、と言いたげな様子だ。
「なに、って……純乃ちゃん、
あなたこそ…………。タンクを異界に飛ばして、私を助けてくれたの……?」
「目の前で、救える命を見殺しにするほど、
私はっ……非道ではないつもりだ……!」
息も切れ切れに、純乃ちゃんはこちらを見据える。
お前はどうだ、と言いたげな様子だ。
「くっくっくっ、良いのぉ良いのぉ。
雨降って地固まる、というやつじゃな。
わざわざタンクを落とした甲斐があったというものよ」
「……なっ!?お前、は…………!!」
雨降って地固まる、というやつじゃな。
わざわざタンクを落とした甲斐があったというものよ」
「……なっ!?お前、は…………!!」