【初出】
X巻(氏名はXVII巻)
【解説】
『犀渠の護り手』(さいきょのもりて)の
称号を持つ、“吾鱗の泰盾”
ジルニトラのフレイムヘイズ。
炎の色は薄墨色。
神器は、親指大の銀杯“
ターボル”。
孤児(シロッツィ)の
異名を持つ、600年に渡って生き抜いてきた強力なフレイムヘイズ。異名の由来は、契約以前に所属していた傭兵団の名前であった。
契約以前から戦争に明け暮れ、討ち手となってからも大所高所からの視点で“
徒”との戦いを把握する「変人」として名が通っていた。
立て襟のオーバーコートに革手袋をした、背筋を伸ばした壮年男性。将校帽のような無印の帽子を目深にかぶっており、顔の下半分しか見えない。顔の左側に大きな傷が縦に走り、左目を失っていた。常に軍人然としており、時に堅苦しいと感じられるほどに礼儀正しい。しかし、
ゾフィーらのような知己には親しみを見せた。
フレイムヘイズとしては他に類を見ない、「集団で動くことを前提とした力」を持ち、かつての欧州にて集団を率いて多くの戦果を挙げていた。また個人での戦闘においても、大地の地形を自在に組み換え建築物を構築する
自在法『
ジシュカの丘』に加えて、自身の地力も高いレベルにあるため、十分な戦闘力を発揮した。
前述の即座に出城や橋梁を構築する自在法『ジシュカの丘』を使用して味方に有利な戦場を作り出す他、『
ジクムントの門』によってザムエルの建造物に味方が注ぎ込んだ力を束ね、行使することが出来た。切り札は、石で作った武装戦車で陣を組んで戦闘させる『
車両要塞』。
生前は、傭兵としてフス戦争に参加していた。その死の間際、自分が参加していた戦争が“
徒”同士の代理戦争協定『
君主の遊戯』の一部にすぎないと知らされ、その怒りから契約した。その経緯から、『君主の遊戯』を取り仕切る
ベルペオルに強い復讐心を抱いた。
千軍万馬の卓越した将帥であり、中世の『
大戦』以降、集団戦の度に討ち手たちを纏め上げてきた、見えざる歴史の立役者。フレイムヘイズ陣営における重鎮であり、集団戦の折には常に頼られた。その経歴故か、集団戦に長けた討ち手の多い中国には多くの知己がいた模様。また、
マージョリー・ドーの世話をした事もあった。
中世の『大戦』では
フレイムヘイズ兵団の命名と、兵団の組織編制、人員結集、物資調達を引き受けた。戦場には、「事情あって」出ていないという。中世の『大戦』最終決戦の数年前には、フレイムヘイズの駐屯地でゾフィーたちの会議に参加していた。
対[
革正団]戦争では参戦が遅れ、そのために多くの戦友を失ったと、百年後の今でも悔やんでいた。
本編開始以後は、どこかで
サーレ・ハビヒツブルグ、
キアラ・トスカナを含む討ち手たちと共同で、何らかの作戦行動中だったようだ。
フレイムヘイズ兵団が再結成されるにあたり、
サーレと
キアラを先にチューリヒに送り出した後、自らもゾフィー総司令官の元に馳せ参じた。以後、フレイムヘイズ兵団総司令部の幕僚長として、現在までに確保できた要員の適切な編制を任された。
『凪』・『
交差点』作戦では、ゾフィー、
フランソワ、
センターヒルと共に、同じ飛行機に搭乗して参加。中国中南部にある『
星黎殿』より南方100キロに降下して、そこに集結したフレイムヘイズ兵団と共に『星黎殿』を目指して奇襲侵攻を仕掛けた。
しかし、長年の宿敵である
デカラビア率いる[
仮装舞踏会]直衛軍と正面から激突。その驚異的な手強さによって足止めされ、自身の能力で前哨基地は築城したものの、フレイムヘイズ兵団はそこから全く前進することが出来ず、膠着状態に陥っていた。
しかし、『星黎殿』の墜落と『
神門』に突入する直前の
シャナの宣布によって、戦況はフレイムヘイズ兵団に有利になりゾフィーたちは一気に攻勢を仕掛けようとするが、デカラビア自身が戦線に出てきたために、ゾフィーは単身出撃した。
そしてザムエルが部隊を率いて『ジシュカの丘』で『星黎殿』への橋梁を築き、その陽動によりゾフィーはデカラビアを討滅した。
しかし、その直後に
ハボリム率いる西部方面主力軍が『星黎殿』至近に到着し、フレイムヘイズ兵団に猛攻撃を加えた。さらにフランソワが接近して来る南方防衛線の部隊を感知したことで、ゾフィーたちは窮地に陥った。
しかしザムエルは窮地の中でも、ハボリムお抱えの大筒型“
燐子”たちの橋梁への砲撃を咄嗟に防御壁を築いて防ぎ、さらに新たな前線基地を築くなどの奮戦ぶりを見せた。
“
祭礼の蛇”神体の帰還によって戦いの趨勢が決した後も、戦場東部に築いた保塁で『引潮』作戦を支えるも、“祭礼の蛇”
坂井悠二による二度目の『
大命』宣布によってフレイムヘイズ兵団が壊乱し、兵団は完敗した。
その後、[仮装舞踏会]の包囲網内で散り散りになった残存の討ち手らを救出するために、目印兼陽動としてセンターヒルの灯火を冠した塔を戦場に築いた。集まってくる討ち手らを『
天道宮』へ導いて収容すると同時に、引き寄せられた敵の軍勢を『車両要塞』で押しとどめ、センターヒルとともに生存者の収容を終えるまでの時間を稼いだ。
その後も最後まで戦い続け、掃討部隊の手にかかり死亡した。
【由来・元ネタ】
「ザムエル(Samuel)」は、「神に聞き届けられた」を意味するヘブライ語が由来。『旧約聖書』の預言者サムエルなど。作曲家では、ドイツ・バロックの『3S』のひとり、ザムエル・シャイト(Samuel Scheidt)などがいる。
「デマンティウス(Demantius)」は、クリストフ・デマンティウス(Christoph Demantius)と思われる。モンテヴェルディと同時代の、ルネサンス末期からバロック初期を代表する、ドイツの作曲家である。
「犀」とは獣のサイであり、転じて堅く鋭いことを意味するようになった。「渠」の通常の意味は溝だが、頭目の意味も持ち、この用法では「巨」に通じる。
称号全体で考えれば、「絶大な堅さをもって護り通す者」だと思われる。契約した“王”の真名、
ドゥニたちを失ったことを深く悔やんでいる様子から、護ることに真価を発揮する討ち手ではないかと考えられる。
最終更新:2023年06月14日 00:31