【初出】
X巻
【解説】
『震威の結い手』(しんいのゆいて)の
称号を持つ、“払の雷剣”
タケミカヅチのフレイムヘイズ。
炎の色は眩い紫電。
神器は、額に四芒星の刺繍のあるベール型の“
ドンナー”。
見た目は40過ぎの修道女。聖職を辞して久しい今でも、十字を切る癖は抜けないようだ。契約した“
王”のことは、「タケミカヅチ氏」と呼ぶ。『
輝爍の撒き手』
レベッカ・リードのことを「利かん坊」と呼んでいた。
優れた討ち手からも女傑として一目置かれているが、口調や振る舞いにどこか稚気があり、歳に関係のない可愛さも感じさせる。
通称『肝っ玉母さん(ムッタークラージェ)』。
フレイムヘイズとなってから数百年ほどで、まだ千年とは経っていないようだ。
瞬間的な攻撃力ではトップクラスだが、あまり長時間は戦えず『充電期間』が必要とのことだった。『
ES』の解説では二人の友人兼幕僚である
ドゥニと
アレックスがその間の護衛をしていたとのことだった。
雷電をまとったドロップキックをぶちかますときの掛け声は「――だぁらっしゃ――っ!!」。
人間時代、二人の子供を夫に殺され、しがらみから逃れるため修道院に出家した。しかし、そこでもしがらみが争いを呼び、ついには彼女の逃避を“
徒”にとどめを刺されて契約した。
契約したばかりの頃は、雷を目の前の“徒”ではなく教会の十字架に落としてしまったことがあるようだ。
中世の『
大戦』参戦以前は、
ドゥニや
アレックスと共に欧州を渡り歩いていたようだ。また、先代『炎髪灼眼の討ち手』
マティルダ・サントメールとは知人の一人であり、共に中世の『大戦』に参戦した。
面倒見の良さと高い能力から
フレイムヘイズ兵団の総大将を満場一致で押し付けられ、不利な戦いと事後処理に腐心させられた苦労人。それは現代での[
仮装舞踏会]との戦いでも変わっていなかった。
20世紀に入っての対[
革正団]戦争では、緒戦で生涯の友二人を失い、以後は第一線を退いていた。
現代も存命で、『
炎髪灼眼の討ち手』と
アラストールが『
天道宮』から出てきたばかりの頃に、現在の情勢と人としての在りようについて同行しながら世話を焼いたりした。東欧でシャナが取り逃がしかけた
ニティカを、ゾフィー自身が討滅した。別れる前に、外界宿の重鎮である
ピエトロ・モンテベルディへの紹介状を『炎髪灼眼の討ち手』に渡した。
XVI巻まで
御崎市に滞在していた
シャナと文書で連絡をとっており、信頼は厚かった。
その後、
シュドナイたちの攻撃で壊滅状態の
外界宿を再編するため、指導者として呼び戻された。
本人は気が進まず、また古い時代の人間であるため、数ヶ月の間大変な苦労を強いられた。
欧州に対し独立の気風があった『
傀輪会』の壊滅と、[仮装舞踏会]との全面戦争という事態にいたって、ようやく全世界の外界宿の指揮権を掌握した。
フレイムヘイズ兵団を再結成し、その総司令官として、全世界の
フレイムヘイズの総力を結集した戦いに臨んだ。
ハワイからの暗号電文などいくつかの情報を元に、『
星黎殿』の座標を特定すると、
ザムエル、
フランソワ、
センターヒルと共に同じ飛行機に乗って『凪』・『交差点』両作戦を敢行した。『星黎殿』の南方百キロ地点に降下して、
フレイムヘイズ兵団を目標地点に短時間で集結させることに成功した。
兵団を率いて『
星黎殿』を目指し奇襲侵攻を仕掛けるが、長年の強敵である
デカラビアの戦術によって足止めを喰らい、『
星黎殿』直衛軍の先遣隊と戦闘になるも、自ら前線で戦うことで三十分足らずで突破した。
しかしその間に迎撃態勢が完了した直衛本軍との激突以降は、自ら三度の攻勢に加わってもその強力な守りを全く突破できず、
フレイムヘイズ兵団の前進を完全に阻まれて、膠着状態に陥った。
さらに、防衛線を構成していた各軍が反攻のために集結してきたことで、包囲殲滅の危機的状況に晒されるが、『
星黎殿』が[仮装舞踏会]の予備兵力の上に落下して大打撃を与えたことで対処の機会を掴み、さらに
シャナが『
神門』や
盟主たちの行方に関する情報を『神門』突入直前に宣告していったことで、喜色を浮かべた。
そして戦況はゾフィーたち
フレイムヘイズ兵団に優勢となり、一気に『星黎殿』に攻め上がろうとした所に、
デカラビアが自身を戦線に投入したことでゾフィーは自ら出撃。交戦の末についに
デカラビアを討滅した。
しかしその直後に、外界宿征討軍総司令官職を引き継いだ
ハボリム率いる西部方面主力軍が『星黎殿』戦場に到着し、
フレイムヘイズ兵団に猛攻を加えたことに続いて、南方防衛線の部隊の北上をフランソワが感知。その際ゾフィーは
センターヒルに単独脱出を勧めるが、ゾフィーの目論見に気付いていた
センターヒルはその申し出を断り、後方基地に留まった。
気を取り直したゾフィーは、
ハボリムに単身戦いを仕掛けるが、ザムエルたちへの攻撃を阻止することは出来なかった。
そして『
朧天震』が発生し、“
祭礼の蛇”の帰還が近いことに気付いたゾフィーは、シャナたちを見捨ててでも『神門』を破壊する苦渋の決断を下す。『神門』を落雷蹴りで破壊しようとしたその寸前、
フェコルーの『
マグネシア』で完全に防がれてしまい、“嵐蹄”健在が敵味方に知れ渡ることで、辛うじて持ち堪えていた
フレイムヘイズ兵団の士気が減衰する結果となってしまった。
さらに、“
祭礼の蛇”の帰還及び大命宣布により、
フレイムヘイズ兵団の敗北は決定し、討ち手たちの士気は最低にまで落ち込んだ。
戦場での完敗を悟ったことで、ゾフィーは撤退作戦『引潮』への移行を決断。戦場東部にザムエルが築いた保塁を経由して、敵の手薄な東方へ脱出することを計画した。
しかし、その途上で“
祭礼の蛇”
坂井悠二による二度目の宣布を受け、己の存在意義を揺るがされ拠り所を失った討ち手たちはパニックを起こして逃げ惑い、次々と殺害され、兵団は完全に崩壊・消滅した。
それでも、[仮装舞踏会]の包囲網内で未だ辛うじて生き残っていた討ち手らを助けるために、揺るがずに残った極僅かの討ち手らと共に偽『
天道宮』を用いた偽計を実行。
マージョリーが作成した光球を従えて包囲網を混乱させる囮の一人となり、戦場の真東に向けて脱出していった。
戦場を離脱した半日後には、チューリヒ外界宿総本部に帰還した。同施設内歌劇場での不毛な論戦を脇に、裁きを待つように沈黙していた。しかし、同席している世界各地の外界宿主宰者たちは、激変する戦況への恐れと完全には理性を失っていないことから、ゾフィーの総司令官職留任を暗黙の内に容認していた。
しかし、
シャナ一派の「指導部に対する実働部隊の反乱」を黙認・支援していたことから、総司令官職を解任された。以後は、チューリヒ総本部で事態の推移を見守った。
【由来・元ネタ】
『ゾフィー』(Zoffy)はウ○トラマンのM78星雲人…じゃないだろう。一般的なドイツ系の女性名「Sophie」ではないかと思われる。ギリシア語の「知恵、賢明」に由来する人名である。
『サバリッシュ』はドイツ指揮者ヴォルフガング・サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)の苗字と思われる。
20世紀の劇作家ベルトレト・ブレヒトに"Mutter Courage und ihre Kinder"という題の戯曲があり、「肝っ玉おっ母とその子供達」と邦訳されている。
困難にもくじけることのない、勇気ある母のイメージである。
「ゾフィーの子供たち」の元ネタもまた、この戯曲かもしれないと思われる。
「震威」の同音語である「神威」は神の威力を意味する。そして雷は古来より神の怒りなどとさ「震」自体にも轟く雷という意味がある。また、「結う」には結んで他のものの侵入を禁ずるという意味があり、称号全体で、「神の威力たる轟く雷によって自身への脅威を防ぐ者」という意味だと思われる。
最終更新:2024年12月15日 18:32